【初出】
V巻
元は[
とむらいの鐘]最高幹部である『
九垓天秤』の『
両翼』が右。
顕現した姿は、精悍な顔付きの長髪美青年。中世の騎士によく似た銀の胸甲と草摺りを身に纏い、金冠を模した額当て、襷のような太い剣帯でサーベルを下げていた。プライドが高く、傲慢な性格。
宿敵である
フレイムヘイズ・先代『炎髪灼眼の討ち手』マティルダに一方的に思いを寄せ、逆に彼を慕う『
万条の仕手』
ヴィルヘルミナに対しては一顧だにしなかった。
また、マティルダを取り合った仲であるため、
天罰神アラストールとは仲が悪く、最後の最後まで喧嘩していた。
愚直なほど自分の想いに真っ直ぐで、見るのはマティルダ一人きり、手段は戦い一つきりというある意味筋の通り過ぎた男。
中世ヨーロッパでは「災厄の“王”」とまで称され、無敵と謳われたほどの実力者だった。得意技である
自在法『
虹天剣』は、中世の『
大戦』当時、当代最強の攻撃系
自在法と称されていた。
加えて“
燐子”『
空軍』や分身法を使う等、破壊力に巧みさも兼ね備えた高等な戦闘技術を持っていた。
自在法を繰る技術だけでなく、生身での戦闘能力も非常に高く、剣術の腕も相当なもの。
その体術の程は、白骨姿で
自在法を全く使わずに
ウィネとまともに渡り合ったことからも窺い知れた。
中世の『大戦』では、[とむらいの鐘]の主戦力一番手として、『両翼』の左“
甲鉄竜”
イルヤンカと共に
フレイムヘイズ兵団と戦い、愛するマティルダとの幾度にも亘る激闘の末、最終決戦にて敗れた。
その際にマティルダに次代『炎髪灼眼の討ち手』を鍛えるよう誓わされ、『大戦』後は顕現を最小限に留めた白骨姿で『
天道宮』にてヴィルヘルミナと共に誓いの時を待っていた。
次代の鍛錬においては、単純な体術および不意打ちへの対処訓練の相手となっており、人間時代の
シャナも基本的な戦い方や「殺し」の読み方・使い方をこれで覚えた。
その鍛錬の日々の中、成長を自慢しようと
シャナが仕掛けた落とし穴の罠に引っかかった際、穴の中のトマトケチャップを浴びたことでマティルダの死と『壮挙』の失敗がフラッシュバックしてパニックを起こし、『
虹天剣』を暴発させて『秘匿の聖室』を破ってしまった。
その後は襲来した“琉眼”ウィネを足止めして戦っていたが、遅れて現れた“天目一個”に真っ二つにされ戦闘不能に陥る。そして、『炎髪灼眼の討ち手』が数百年ぶりに誕生すると、マティルダとの誓いを果たすため、残された“
存在の力”を使いかつての姿で顕現。ヴィルヘルミナと戦っていた“千征令”オルゴンを肩ならしに消し飛ばし、新たな『炎髪灼眼の討ち手』に戦いを挑んだ。その戦いの中で“徒”との戦い方を教え、討ち倒された後には『
最強の自在法』の存在を彼女に教え、誓いの完遂に満足しつつ『
天道宮』の崩壊と共に散っていった。
なお、
シャナが御崎市に居着き、ヴィルヘルミナがやって来てから、悠二も
シャナの過去については知らされたが、メリヒムのことだけはなぜか教えられておらず、人数で「他にも一人いた」ことを示唆する程度に留まっている。
【由来・元ネタ推察】
名前の元ネタは地獄の九階級の第六位、アエリアエ・ポテスタテス("空の軍勢"の意)の君主 メリジム(Merizim)と思われる。
字面通りに解釈すれば、「虹の光でできた翼」「虹の如き飛翔」といった感じだが、少し「虹」という言葉の意味について深く考えると意味も変わってくる。
「虹」とは古代中国で幻想種のしかも竜種の類とされていた。空を貫くように掛かる虹を古代の人は幻想種と考えたのである。そして「翼」とは竜(この場合西洋のドラゴンが被るが)の力強い飛行の要となる部分である。
この空を貫く力強い飛行が、彼の能力である全てを破壊する虹という破壊のイメージの元になっているのかもしれない。更に、「虹」とは虹霓で番とされる虹の雄であり、メリヒムの行動理念(マティルダに対する態度)は男性原理の純粋な発露であった。彼にはそもそも本質の時点で雄という要素が入っていたのかもしれない。
これらを総合して真名全体の意味を考えると「空を貫く七色の雄竜の飛翔」といった感じになる。
また虹は多様性や共存、キリスト教においては約束の徴とされている。それ故一番の理由は“愛”だろうが、気まぐれで傲慢な性格にもかかわらず、約束を遵守したのかもしれない。
最終更新:2025年03月11日 17:48