青の地平のトーラ プレイログ B組:CSLv.2 後半

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                レベル2後日談 (外部サイト)




    文字色説明

    GM: トーラ  PC発言 行動説明、PL発言など  ナレーション、状況説明  雑談、システム文など
    SGM: カルム PC発言 行動説明、PL発言など
    PL :  沙紗   PC発言 行動説明、PL発言など



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  セッションB-2-4 2016/03/30
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沙紗:「トーラさんが見つからないのは、こういうことだったのね……」
カルム:「領主に捕まってるらしい? どうすれば……」
沙紗:「……まずは、カナメさんに話すわ。あの人も心配してたから」
沙紗:「カナメさんを探しに行きましょう」
カルム:「わかったよ。相談に乗ってくれれば良いね」



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  [永久の町]に移動します。ダイブポイントの消費はありません。

    BGM: 帝都の影
        from イリスのアトリエ エターナルマナ2(ガスト, 2005)



ようやくトーラの状況をつかみ、沙紗たちは工房を出た。

沙紗(カナメさん、どこにいるのかな)

  会えるかどうか【幸運】で判定です 難易度13

  5+2D 幸運
  DiceBot : (5+2D6) → 5+4[1,3] → 9


沙紗は広場でカナメを探した。しかし、もうカナメの姿は見当たらない。


        [雑談] 沙紗さんの判定失敗は初めてかも
        [雑談] 初ですねー 新鮮味あります


沙紗:「うーん、いないか……。どうしようかしら……」
沙紗(ひとまず領主とお話するべきかしら)

沙紗は先ほど行商人から教えてもらった方角を見ながら考えている。

沙紗:「領主様……領主様……と。言い間違えないようにしないとね」
カルム:「この街で一番偉い人だと思うけど、悪人なのかな?
     真実は、その目で確かめるしかないね。トーラの元へ行こう」

沙紗:「そうしましょ」



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  [暗星城]に移動します。ダイブポイントを100ポイント消費します。
  DP: 1070

    BGM: 大剣の渓谷/夜
        from ゼノブレイド(任天堂/モノリスソフト, 2010)
        Composed by 清田愛未



領主の城は、名前から受ける印象と違い、ごく普通の屋敷である。
沙紗は衛兵に名乗りでて、謁見希望の者だと伝えると、
意外にもあっさりと領主に会うことができた。


現れた領主は、まだ若い少女のようだ。外見上は沙紗とそれほど変わりない歳に見える。
領主はぞんざいな口調で沙紗に話しかけた。



波部:「どうも、妾が領主の波部よ。
    あんたは誰? 何か用なの?」



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  ここから先は、沙紗が領主・波部に質問をすることで話が進みます。
  ただし、領主は忙しいため、質問ができる回数には限りがあります。

  具体的には、質問1項目につきDPを40消費します。
  なお、質問でDPを消費するイベントは後でまたあるため、
  使いすぎないことをおすすめします。


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        [雑談] 今回DPを大量消費するのは、このような「質問」が主です
        [雑談] 展開によっては別の消費もあるかもしれません
        [雑談] 悩むところではあるね
        [雑談] ロールを交えたギミックですね


沙紗:「沙紗と申します、領主様。
    あたしは今日この街に来たばかりなのですが、教えて頂きたいことがあります」

波部:「まあいいけど。時間がないから手短にね」

沙紗:「……ひとつは、この街の規則である『調和律』についてです。
    街の人から聞きましたが、なぜこのような規則をお作りになられたのですか?」


  DP: 1030

波部:「なぜ……って、この町には必要だからよ。理由を話すと長くなるけど」
沙紗:「……どうして必要なのですか? あたしには分かりません」
波部:「前提として、この町は――いえ、妾の領地を含むこの国は、隣の国と冷戦状態にあるのは知ってるわね?」
沙紗:「……いいえ。今知りました」
波部:「……どんだけ情勢に疎いのよ」


        [雑談] 戦争してた……だと!?
        [雑談] もう一つ国があったことに驚き


波部:「ともかく、この国は、敵国――暁ノ国、に比べれば人口も少ないし産業もない。
    兵も装備も貧弱、だからといって傭兵を雇うあてもない。
    実際に戦争になったら不利になるのは避けられない」

波部:「だから、全ての住民が友情を結び、いざというときには全員が一丸となって
    協力しあえるように『調和律』を作った」

波部:「そういうわけ。理解できた?」
沙紗:「内輪揉めをしている場合ではない、そういうことですね?」
波部:「大丈夫なようね。よろしい」

沙紗(領主様は、友情というものが何なのか分かってないのね……)

沙紗:「ですが、反発する方はいなかったのですか?」

  DP: 990

波部:「愚かにも妾に楯突こうという者も、いなくはなかったわね。
    まあ、そういう分からず屋は、適当に処分するしかないけど」



        [雑談] 賛成と反対がいるのは世の常……
        [雑談] あ、これマズイやつだ


沙紗(処分!?)
沙紗:「そう……ですか」
沙紗(ダメ、もう少し抑えなきゃ……)

沙紗:「分かりました。今聞きたいことは以上です。
    貴重な時間を割いて頂き、ありがとうございました」

波部:「もういいのね? じゃあね」

沙紗は礼をして、館から出ていった。

沙紗(今ここで反対の姿勢を見せれば、必ず捕まってしまう。それだけは絶対に避けないと……)



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  [鋼の庵]に移動します。ダイブポイントを50ポイント消費します。
  DP: 940

    BGM: 小さな屋根の下で
        from イリスのアトリエ エターナルマナ2(ガスト, 2005)
        Composed by 中河健



領主との会見を終え、沙紗は自らの店に戻ってきた。

沙紗:「どうも、あの空気は慣れないわね……」
沙紗:「それに、トーラさんのこと、結局聞き出せなかったなぁ」
カルム:「あそこで聞いていたら処罰が下っていたかも知れないから、一度戻って正解なのかもしれないよ。
     機会があれば、もう一度行けば良いし」

沙紗:「もう一度、話を聞いてくれるといいな……」

沙紗:「とりあえず、今ある情報を整理しないと」
沙紗:「暁ノ国……話には出ていたけど、どんな場所なのかしら……」


        [雑談] 暁の国はこの層のポインタにありますか?
        [雑談] 行こうと思えば行けます
        [雑談] ただし、それで有用な情報が得られるか、というとはっきり言って微妙です
        [雑談] ふむふむ……。ハイリスクローリターンというところかな
        [雑談] なにぶん、まだトーラにすら会えてないですからね


沙紗はこの町に来てから見聞きした情報をもう一度振り返っている。

カルム:「僕の見聞きした情報はこんな感じだね。
     前領主は他界しており、調和律を作ったのは現領主様
     そして、隣国と冷戦状態で、調和律は、戦争を意識している
     現領主様は、反逆者は許さない姿勢だね
     トーラは罪に問われ、暗星城にいるかもしれない
     かな? 間違ってたらごめんね」

沙紗:「大丈夫よ」

カルム:「ここから導き出す答えは、手紙に書いてあった調和律を止める理由だと思うよ。
     カナメさんの言ってた内容に違和感を感じるけど……」

カルム:「仲良くすることは良いことだよ、でも、それを止める理由が何処かにあるはず」
沙紗:「仲良くしない理由、ね……」
カルム:「本当に仲良くしないのか、仲良くしたくて調和律を止めるのか。難しいね」
カルム:「行動権、決定権は沙紗さんにあるよ。心を拓くのは、任せたよー」

沙紗:「……」
沙紗:「調和律の中では、表面上仲良くできても、実際には仲良くなんてならない……。
    相手のことを理解してない状態で、仲良くなんてできるわけがないわ。
    一度、本気でぶつかって、相手のことを理解しなきゃ……」


沙紗の言葉を聞き、カルムも頷いている。

沙紗:「さっきは怖くて本気で言えなかったけど、領主様は分かってくださるかしら……?」
沙紗:「もし理解してくださらなかったら、あたしは捕まるのよね……」
沙紗(ううん、何としても理解して頂かないと!)

沙紗:「トーラさんも、もしかして同じことを考えてたのかな……」
カルム:「確かに、捕まるかもしれない。
     でも、心に溜まっている言葉を、偽り無く話すしかないよね」

沙紗:「そうね。何もしないままでいるよりは、この想いを伝えたいわ。
    もう一度、領主様に話をしに行きましょう」




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  [暗星城]に移動します。ダイブポイントを50ポイント消費します。
  DP: 890

    BGM: 大剣の渓谷/夜


沙紗は再び領主の館へとやってきた。
前回同様、問題なく謁見はできたが、領主の表情は硬い。


波部:「また来たの? 妾だって暇じゃないのよ」

沙紗:「先ほどのお話を聞いて、考えたことがあるんです。
    今回は、それを聞いて頂きたいのです」

波部:「あんた、この町の人じゃないって言ってたわよね。
    ……もしかして、暁ノ国のスパイじゃないでしょうね?」

沙紗:「違います」
波部:「冗談よ。あんたみたいなスパイがいてたまるもんですか。で、何よ?」

沙紗:「領主様は、どのように『仲良くなる』のか、ご存知ですか?」
波部:「はあ? 言ってる意味が分かんないわよ」
沙紗:「最初から仲の良い人達はいません。なら、仲良くなった人達は、どうして仲良くなったのだとお考えになりますか?」

  DP: 850

波部:「『仲良くなる』にどうもこうもないでしょ。
    同じ場所で生活し、互いに相手の状況を知る同士なら、仲良くなるのは自然じゃないの?」

沙紗:「たしかにそうです。では、相手の状況を知るにはどうなさいますか?」
波部:「このたいして大きくもない町に住んでれば、誰のことでも多かれ少なかれ知ることになる。そうでしょ?」
沙紗:「……それで知ることができるのは、うわべだけです。
    相手が何を考えているのか、自分に対してどのように思っているのか、それらを知ることはできません」

波部:「言いたいことはわからなくもないわ。だから、後押しするために『調和律』を作ったんじゃない。
    妾だってこうして、謁見ぐらいは積極的にやっているのよ? 感謝しなさい」

沙紗:「私の話を聞いてくださることには感謝しています。
    しかし、『調和律』は何の効果も生み出していないことを把握しておられますか?」


  DP: 810

波部:「はあ? その言い方じゃ、『何の効果も生み出していない』みたいじゃない。
    妾が間違えているとでも? そんなわけありえないでしょ」

沙紗:「いいえ、残念ながらその通りです。
    町の空気は重かった。もし仲良くなっているなら、町の空気はもっと明るいはずです」

波部:「ちょっとぐらいは仕方ないでしょ? もし戦争になったらそれどころじゃなくなるんだから」
沙紗:「そうかもしれません」
波部:「意外と物分かりがいいじゃない。こないだ捕まえた女もあんたぐらい聞きわけが良ければよかったのに」
沙紗:「ですが……え? 今何と?」
波部:「え? な、なによ」
沙紗:「この間捕まえた女、とおっしゃいましたよね?
    その方、青い髪をしていませんでしたか?」


  DP: 770

波部:「なんであんたが知ってるのよ」
沙紗:「あの人は、あたしの知り合いだからよ」
波部:「そう」

沙紗:「それよりも、まだあたしが伝えたいことは残っています」
沙紗:「先ほどの話を聞いて確信しました。
    あなたは、真に『仲良くなる』方法をご存知じゃないですね?」

波部:「何ですって?」
沙紗:「うわべだけ仲が良い状態を、『調和律』なんて規則で深くできると思い込んでいること、
    それが間違いなんです。人の心は、そこまで単純ではありません」

沙紗:「では、どうしたら仲良くなれるのか、それを今から話します」

波部:「ちょっと待って」
波部:「ひとつ思いついたわ」
沙紗:「なんでしょうか?」
波部:「さっき『知り合いだ』って言っていた女って、トーラという名前で間違いないわよね?」
沙紗:「え、ええ」
波部:「その知り合いというのは、『仲が良い』のかしら?」
沙紗:「っ……」
波部:「どっちなの?」
波部:「答えられないの? あんたとトーラが『仲が良い』か、ただそれだけのことを聞いてるのに」

沙紗:「あたしの考えで言えば、まだ仲が良い状態とは言えません」
波部:「それなら好都合ね」
沙紗:「……どういうこと?」

波部:「今からここにトーラを連れてくる」

波部:「あんたは、妾の目の前で、トーラと『仲良く』なってみなさい」



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        [雑談] おつかれさまでした 長くなって申し訳ないです ヒヤヒヤしたけどちゃんとルート入りましたね
        [雑談] いえいえ、こちらこそ相変わらずの長考で申し訳ない
        [雑談] いまだトーラは出てきてないですが、レベル2の問題が出されました
        [雑談] これをどう乗り越えるかが宿題ですね
        [雑談] 前にも言いましたが、悩んでもらうのがこのシナリオの本質なので…… >長考

        [雑談] 非常に緊張しましたw
        [雑談] 自分も緊張しました はべ様の立場で全力で沙紗に反論しつつ、先の展開を考えて
        [雑談] 議論の余地を残したりひっかかりを作ったり、ですから余計に

        [雑談] 踏み込む範囲の難しさを感じましたね そこが面白いのだが
        [雑談] 氷水さんには申し訳ない 工房のシーンでは助けられっぱなしですね
        [雑談] 感謝しかないっす

        [雑談] やっぱり心の護はGMがやったほうが安心度高そうですね GMにとっては
        [雑談] 最初に城に来たときにトーラのことを何も聞かずに帰った時はどうしようかと思いましたよ
        [雑談] 聞くに聞けないじゃないですかー
        [雑談] 僕はクリティカルダウンルートが脳内で見えましたけどねw
        [雑談] そこは反省点ですね >聞くに聞けない
        [雑談] その辺の線引き、かなり考えてました。どんな質問をしたらクリティカルダウンされるのか……
        [雑談] あっと、そう簡単にクリティカルダウンはしませんよ?
        [雑談] なぜなら、最初にクリティカルダウンの条件を提示しましたよね?
        [雑談] つまり、はべ様にどんな酷いことしようが、「トーラに対して」酷くなければ、
        [雑談] クリティカルダウンはしないわけです
        [雑談] もちろん、あまり変なことするとクリアの難度が上昇してしまうことはあり得ますが……
        [雑談] 変なことしないように質問の回数はなるべく減らす方向だったのです
        [雑談] なるほど



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  セッションB-2-5 2016/04/04
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沙紗:「……何が狙いなの?」

あからさまに嫌な表情を見せる沙紗。

波部:「何がって、あんたが言ったことじゃない。
    どうしたら仲良くなれるか話すって。話す代わりに実際にやってもらうだけよ」

沙紗:「……そういうことね」
波部:「納得いったなら、さっそく呼んでくるわよ」



波部は執事を呼び、トーラを連れてくるよう命じた。
ほどなく、トーラが部屋に姿を見せた。



    BGM: 慶雲の彼方
        from 信長の野望 覇王伝(光栄, 1992)
        Composed by 菅野よう子


トーラ:「沙紗さん…… どうして逃げなかったのですか!?」
沙紗:「どうしてって……。あたしは、トーラさんに会うためにずっと探していたのよ」
トーラ:「手紙を見なかったのですか? 危険があるかもしれないと、置いてきたのに……」
沙紗:「手紙は読んだよ。だから、ここに来たの」


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  「仲良くなるの実演」の前に、トーラに質問をすることができます。
  再び、質問1項目につきDPを40消費します。

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トーラ:「…… どうして、……」
トーラ:「どうして、私なんかのために……」
沙紗:「それはこっちの台詞。あたしのために手紙を書いたの?」
トーラ:「……はい」
沙紗:「捕まる危険を冒してまで、あたしにやってもらいたいことがあったからじゃないの?」

  DP: 730

トーラ:「いいえ、ただ、沙紗さんだけは無事でいてほしい、と……」
沙紗:「あたしが無事なら、トーラさんはどうなってもいいって……?
    あたしの気持ちはどうなるのよ?」

トーラ:「……」
沙紗:「そこが、あたしの納得できないところなの。本当にそう思ってるなら、あたしは……」
トーラ:「なら、どうすればよかったと言うのですか!?」
沙紗:「……」

トーラ:「……ごめんなさい、言いすぎました。
     沙紗さんに心配をかけていたのは私だというのに……」

沙紗:「ううん、あたしこそごめん。でも、それだけ迷っていたんでしょう?」
トーラ:「……はい」
沙紗:「迷っていたなら、少しくらい相談してほしかったな……」
トーラ:「ごめんなさい、本当に……」

沙紗:「…… あたしじゃなくても……」
沙紗:「あたし以外にも、相談できる人はいるでしょ? どうしてその人にも相談しなかったの?」
    
トーラ:「私がどうしてこうなっているのか、沙紗さんはもう分かっているのですよね?」
沙紗:「……知ってるわ」
トーラ:「どういう理由で捕まっているのか、も?」
沙紗:「手紙に書いてあった内容と同じなら、ね」
トーラ:「はい。私は『調和律』を止めようとしました。その過程で、もちろん他の人に相談もしました。
     しかし……その中には賛成派の人もいたのです。
     その人たちと揉めてしまい、通報され、捕まってしまったのです」

沙紗:「相談した結果が、今の状態ってことなのね……」
トーラ:「……」


沙紗:「……どうして、『調和律』を止めようと思ったの?」

  DP: 690

トーラ:「沙紗さんは、『調和律』の内容はもうご存知ですよね?」
沙紗:「町の人から聞いたわ」
トーラ:「……この規則は、一言で言えば、『友情を強制する』というものです」
トーラ:「だけど、考えてみて下さい。
     このような状況で、誰かが沙紗さんに好意を伝えたとします。
     そのとき沙紗さんは、その人が本当に好意を持っているのか、
     それとも単に規則だからそうしているのか、どうやって判断するというのでしょうか?」

沙紗:「確かに、判断は出来ないわね」
波部:「……うっさいわね」
トーラ:「だから、意味がないどころか、逆効果になるかもしれません。それが、理由です」

沙紗:「……よかった……」
トーラ:「? 何が、ですか?」
沙紗:「トーラさんも、仲良くなるってどういうことか、分かってるんだなって思ったの」
波部:「……?」
トーラ:「いいえ、私には、今でも分かりません」
沙紗:「そんなことないと思うな。そうじゃなかったら、今の理由は出てこないはずだもの」
トーラ:「これだけ生きてきたのに、分からないことだらけです」
沙紗:「それが普通だと思うわ」
トーラ:「……そうでしょうか」
沙紗:「どれだけ長い間生きたとしても、全てのことを知るなんて無理だと思わない?
    あたしなんて、知ってることより知らないことの方が多いと思うわ」

トーラ:「沙紗さんは、分かっているのですか?」
沙紗:「これが正解かどうかなんて分からないわ。でもね……
    今までの経験から、正しいんじゃないかなって思えるの」

トーラ:「……」

波部:「今までの経験って、あんたの方が若そうに見えるんだけど」
沙紗:「もちろん、あたしの方が若いわよ。でも、皆が同じ経験をするわけじゃないのよ?
    あたしに経験してないことをトーラさんは経験しているでしょうし、
    トーラさんが経験してないことをあたしは経験している」

波部:「それで、なにが言いたいのよ」
沙紗:「人が仲良くする方法、それは……」

沙紗:「『喧嘩する』ことよ!」



波部:「はあ?」
沙紗:「さっき、トーラさんが『調和律』を反対した理由にもヒントはあるわ。
    友情を強制された社会の中で、本音なんて言えるわけがない。
    好きだと告白されても、嫌いだと言えない。
    本音で話せない相手と仲良くなるなんて、不可能よ!」

トーラ:「……」
沙紗:「だから、あたしはトーラさんの本音を聞こうとしたのよ。
    あたしのことをどう思ってるのかを、ね」

トーラ:「……沙紗さんのこと、ですか」

波部:「じゃあ、喧嘩っ早そうなあんたは、さぞやお友達が多いんでしょうねえ」
沙紗:「そんなことはないわ」
トーラ:「そう、なんですか?」
沙紗:「あたしが本音で話そうとしても、相手が本音で話してくれなければ、意味がないもの」
トーラ:「……」
波部:「相手のせいにするんだ?」
トーラ:「本音で、ですか……」
沙紗:「本音が出なかったら、人を理解するなんて出来ないもの。
    理解できない相手に仲良くなれなんて、それこそ嫌よ」


波部:「じゃあ聞くけど、あんたは本音で話してるの?」
沙紗:「いつもじゃないわ。でも、今話したことは全部本音よ」
波部:「いつもじゃないのはどうして? 言ってることとやってることが一致してないじゃない」
沙紗:「いつも本音で話せるなら、そうしてるわよ。今のトーラさんみたいなことにならないなら、ね」
波部:「どういうことよ」
沙紗:「自分から不利益になるようなことを言う人なんてごく少数よ。
    本音を言ったら、全てが良い方向に進むわけじゃないのよ」


波部:「それは、たとえこの『調和律』がなかったとしても、同じことじゃないの」
波部:「あんたは相手が本音じゃないから本音を話さない。
    相手もあんたが本音じゃないなら同じようにするわよね?
    結果的に、誰も仲良くなれない。違う?」


沙紗:「本音が言える環境と、そうじゃない環境ではまったく違うわ。
    『調和律』がある環境は、『本音が言えない』状態よ。
    それがない環境は、『本音を言う機会がある』状態ね。
    本音を言うことがまったくできない環境では、人が仲良くなる可能性はない。
    だけど、本音を言える機会があるなら、人が仲良くなる可能性はあるわ」


波部:「もう一度聞くわよ? あんた、最初に『今日この町に来たばかり』と言ったわよね。合ってる?」
沙紗:「そうよ」
波部:「あんたはこの町の人間じゃない。したがって『調和律』には縛られない。
    あんたは友達が多いわけじゃない。本音を言わないと仲良くなれない。
    つまり、結局あんたは本音を言ってないわけじゃない。環境は整っているのに」

波部:「どうして、いつもは本音で話してないの? さっきもそう聞いたはずよ」

沙紗:「本音を話して必ずしも良い方向に進むことはないって、さっき話したと思うのだけど……」
波部:「そういう風に皆が思っているなら誰も仲良くならないと妾は言った。
    ただし今度は“環境”の言い訳は使えないわよ?」


沙紗:「最初から本音で話す人なんてまず居ないわ。
    初めて出会う人なら、まずは他愛のない会話で相手を知ることから始めるの。
    もちろん、それで知ることができる情報なんてたかが知れてるわ。
    その少ない情報から考えて、本音で話せるかどうか見極めるのよ。
    本音で話せると考えたなら本音で、そうでなければ上辺だけの付き合いになるわ」


波部:「あっそう。……ひとつ聞くわよ? あんたは今は本音を言っていると言ってたわよね」
沙紗:「ええ、そうよ」
波部:「妾はいつも本音なんだから、もしあんたが正しければ、妾とあんたの仲が良くなるはず。そうじゃないの?」
沙紗:「仲良くなるというのは、常に良い関係になるということじゃないわ。
    当然、衝突することもある」

波部:「まさか、妾とあんたはもう仲が良いとか言い出す気じゃないでしょうね」
沙紗:「そんなことはないわよ。
    それに、本音を話したからって必ずしも仲良くなれるとは言ってないわ」


波部:「あーもう、のらりくらりと、イライラする!」
波部:「あんた、妾がなぜトーラを連れてきたか忘れてないでしょうね!?
    さっさと実演してみなさいよ! 喧嘩するならしてみなさい!」


トーラ:「……どういうことですか? 私はまだ事情がよく分かっていないのですが」
沙紗:「領主様に、『調和律』に頼らずに仲良くなる方法を実演しろ、と言われちゃってね……」
トーラ:「なるほど、そういうことなのですね、領主さま」
波部:「そうよ。ほら、早く仲良くなってみなさい!」
トーラ:「いいえ」
波部:「は?」



    BGM: 優しいとき
        from ヴィオラートのアトリエ(ガスト, 2003)
        Composed by 中河健



トーラ:「私にはもう、十分に伝わりました」

トーラ:「まずは相手と仲良くなろうと、自らしっかり心に思うこと。
     思いやりをもって接し、少しずつ探り合いながらも、お互いに自らの情報と意見を交換していくこと。
     そうやっているうちに、いつの間にか仲良くなっている。
     そういうことを沙紗さんは言いたいのだと思います」


沙紗:「……人は知らないうちに仲良くなるわ。強制なんてなくても、いえ、強制がないからこそね」
波部:「なによそれ!? ふざけてるんじゃないわよ!」
トーラ:「別にふざけてはいませんよ?」
トーラ:「だいたい、仲良くなったかどうかなんて、誰が判断するのですか?
     他の誰でもなく私たちが判断すること、そうでしょう」


波部:「なによ!? そんなの認めない!」
沙紗:「領主様が認めなくても、あたしたちは互いに認めてる。だから……」
波部:「うっさい! そんなの知らない!」

沙紗:「『調和律』なんてなくても、人は仲良くなれる。領主様が信じなくて、誰が信じるんですか?」

波部:「あー、もう!!
    顔も見たくないわ! ここから出ていきなさい! 今すぐ!!」

波部:「衛兵! こいつらを追い出して!」



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        [雑談] ふーっ……
        [雑談] というわけで、本当におつかれさまでした 難易度9の地獄を見てもらいました
        [雑談] なるほど、これが難易度9か……
        [雑談] それでもなんとか乗り越えてくれました そこは素直に賞賛したいと思います
        [雑談] 目頭熱い……緊張の糸が切れたからかなw

        [雑談] GMにもたいへん負担のかかるイベントでした なんせ、ゴール条件設定していませんでしたからね
        [雑談] おおぅ!?
        [雑談] つまり、「説得された」と思えた時がゴールです
        [雑談] なるほど…… 悩みを解消するのってホント大変……
        [雑談] 沙紗さんの「本当の」本音を引き出すのには苦労しました
        [雑談] こんな厳しいイベント、もう二度とはやりたくなくはないですね
        [雑談] www
        [雑談]

        [雑談] 本当に考えさせられるシナリオだなぁ、とつくづく感じますね。
        [雑談] ……「分析」しました、からね
        [雑談] 今回のシナリオは言ってみれば、ゲーム本編にもありそうな典型的な「コスモスフィア」です
        [雑談] それでも、実際にダイバーとなってみると、これだけの体験になります
        [雑談] 普段の発言の分析、そんな生易しいものではないと思うのですが
        [雑談] 作る側としては、PLとPCの共通部分を丁寧に突いてみた、ただそれだけなのですが
        [雑談] それをするためには、やはり相手のことをより深く知ろうとする努力が必要です
        [雑談] 普段の会話の中で、そしていままでのプレイのなかでそれをすること
        [雑談] それがまさに「ダイブ」に他ならないのです



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  セッションB-2-6 2016/04/10
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  [鋼の庵]に移動します。ダイブポイントの消費はありません。


城から追い出された沙紗とトーラは、遠くで光の柱が立ちのぼるのを見た。
どうやらパラダイムシフトが起こったようだ。

二人は、まずは沙紗の店へと戻ってきた。



    BGM: 小さな屋根の下で


トーラ:「……たいへんな迷惑をかけてしまいましたね、わざわざありがとうございます」
沙紗:「トーラさんに会って、話をしたかったから…… たしかに、大変だったけどね」

トーラ:「……あれは、本当のことなのですか?」
沙紗:「あれって?」
トーラ:「領主さまとやりあっていたじゃないですか」
沙紗:「うん……本当よ」
トーラ:「……友達が多いわけではないというのも?」
沙紗:「そうね……。
    でも、あたしにとっては友達じゃなくても、その人にとってあたしは友達だって言う人はいるかもしれないわ」

トーラ:「そうですか……難しいですね」
沙紗:「どんな関係なら友達なのか、それは人によって違うもの」
トーラ:「そうですね、人によって違うと思います。
     『本音』というのが何を指すのか、ということも……」

沙紗:「そうね。人によってものの考えは違うから、まずは相手の考えを理解して、それから……」

一呼吸おいて、

沙紗:「それから、自分の考えを伝えないといけないと思ってるわ」

トーラ:「……沙紗さんは、私が本音を言っていると思いますか?」
沙紗:「……そうであってほしいわ。それじゃだめなのかしら?」
トーラ:「そういうところ、とっても沙紗さんらしいですね。いい意味でも、悪い意味でも」
沙紗:「そ、そう?」
トーラ:「慎重に探りを入れている、そんな感じですね。今は、まだ」
沙紗:「ごめん……。こんな人間で……本当に……」
トーラ:「謝ることではありませんよ、最初はそういうものだと自分で言っていたじゃないですか」
トーラ:「私だって――」

トーラは少しの間を作り、沙紗に問いかける。

トーラ:「相手に言葉を伝えることと、想いを伝えることは違います。
     言葉と比べて、想いを伝えるというのは、そう簡単なことではありません。
     相手を思いやるがゆえに本当のことを言わないことも、またありますからね」


トーラ:「そんなとき……沙紗さんなら、どうしますか?
     伝える言葉が相手を傷つけてしまう可能性が、見えているときは」

沙紗:「あたしは……あたしなら……」

沙紗:「本当のことを伝えたい。人が傷つくのを見るのは確かに辛いけど……。
    それでも、その嘘が分かってしまった時、余計に傷ついてしまうかもしれないから……」


トーラ:「それが、沙紗さんの『本音』ということですね」
トーラ:「私も、それに応えなければなりませんね。
     『本音には本音で』応じれば、きっと仲良くなれるわけですから」

沙紗:「少なくとも、あたしはそうだと信じてるわ」
トーラ:「はい」


ちょうどそのとき、店の入口のドアを叩く音がした。


???:「すみませーん、誰かいますかー?」
沙紗:「はい。今行きますね」

沙紗が店の扉を開けると、

カナメ:「あっ、やっぱりここにいた!」

トーラ:「カナメ……!?」
沙紗:「カナメさん!? どうしてここに……」
カナメ:「沙紗さんという名前を町の人に聞いて回って、ここに来たんです」
カナメ:「探したんだからね? もう、心配かけないでよ……」
トーラ:「ご、ごめんなさい、本当に……」

カナメ:「急に変化があったから何かあったんじゃないかと思ってたけど、
     トーラがここにいるってことは、やっぱりそうだったんだね」

沙紗:「変化? それって……」
カナメ:「あれ? 広場の高札、見なかった?」

沙紗に思い当たるものは、一つしかない。

カナメ:「緩和されるらしいよ、『調和律』。
     廃止になるわけじゃないけど、それで罰を与えたり監視したりはもうないってさ」

沙紗:「そう……。領主様、分かってくれたのね」
トーラ:「……」
カナメ:「いなくなる前に相談してきたことがあったよね? それで、ようやく分かったんだよ」
トーラ:「はい。心配かけて、ごめんなさいね」
カナメ:「沙紗さんもありがとうございました、ずっと探してくれてたんですよね」
沙紗:「うん。苦労したけど、この通りよ。
    それに、礼を言われることじゃないわ。あたしも、トーラさんに会いたかったからね」

トーラ:「探してくれたどころか、領主さまを説得までしてくれたのですよ、沙紗さんは」
カナメ:「えっ、本当に!?」
沙紗:「あたしは、あたしの考えを伝えただけよ」
トーラ:「それで私を助けてくれた上にこの結果ですから、すごいと思いませんか?」
カナメ:「あの領主を…… うん、すごいと思う」
沙紗:「……」 反応に困っている

カナメ:「そうするともしかして、これからどうするのか作戦会議中だったりするのかな?
     えーっと、じゃあ、家に戻ってるから。落ち着いたら顔出してよ」

トーラ:「はい、必ず」
カナメ:「沙紗さん、ありがとうございました。このお礼は、またいつかさせてください」
沙紗:「カナメさん、こちらこそありがとね」
カナメ:「では失礼します。また後でね、トーラ」


カナメはそう言って去っていった。工房にはまた二人だけが残される。

トーラ:「……」
沙紗:「カナメさんは、あたしにこの街のことを教えてくれたんです。
    あの人がいなかったら、あたしはまだ迷ってたかもしれない」

トーラ:「そうだったんですね、どうしてお二人が知り合いになっていたのだと思っていたのですが」

沙紗:「トーラさんは、カナメさんとは友達……なんですよね?」
トーラ:「友達というよりは、“家族”に近いかもしれません」
沙紗:「それは、トーラさんがカナメさんの後見人だから?」
トーラ:「それもありますが、そもそも後見人になれるということは、
     それ以前からの何らかの付き合いがあってしかるべきですからね」

沙紗:「それは……たしかにそうね。
    家族と、そう呼べるくらい仲が良いのは少し羨ましいわ」

トーラ:「……」

トーラは何かを口に出そうとして、躊躇っている様子を見せる。

トーラ:「私のはカッコつきの『家族』ですから、そう見えるだけかもしれませんよ?」
沙紗:「トーラさん、その言い方はちょっとずるいわ」
トーラ:「ふふっ、これでおあいこですよ?」
沙紗:「そうね」


        [雑談] 沙紗さんの家族はもういないことを知っているのでちょっとためらった
        [雑談] そのことを踏まえての発言ですから。
        [雑談] まぁ、少しは気にしていますが、とても気落ちしているわけではないので
        [雑談] そのことを踏まえた上での発言ということを踏まえた上での発言です
        [雑談] トーラは本当の家族を知らないので、「羨ましい」という感情すら分からないのです
        [雑談] βだもんね


トーラ:「では、そろそろ行きましょうか」
沙紗:「カナメさんの家には行かなくていいの?」
トーラ:「大丈夫ですよ、それはまた後でも。
     実際のところ、この世界がなくなるわけでも、私がこの世界から消えるわけでもありませんから」

沙紗:「トーラさんがそう言うなら。なら、ストーンヘンジね」
トーラ:「はい」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



  [ストーンヘンジ]に移動します。ダイブポイントの消費はありません。

    BGM: 大切な人
        from イリスのアトリエ グランファンタズム(ガスト, 2006)
        Composed by 中河健



トーラ:「これで、二度目のパラダイムシフトですね」
沙紗:「そうね。もっともっと躓くと思ってたわ」
トーラ:「そんな、必ずつまずくみたいに言わないでくださいよね」
沙紗:「他人の考え方を変えるのは、そんな簡単なことじゃないですから」
トーラ:「そうですね。領主さまも、またの機会を狙ってるかもしれませんよ?」
沙紗:「う……もうそれは勘弁してほしいかな」

トーラ:「ところで、ずっと気になっていたのですが、沙紗さんは、永久の町の住人ではないのですか?」
沙紗:「町の衛兵さんはそれらしいことを言ってたのだけど……。
    あたしはさっぱりよ。あの町で知ってたものってあたしの店くらいだもの。
    どうしてその中にあるのかも分からないし……」

トーラ:「そうですか。ちょっとだけ、残念ですね」
沙紗:「でも、やっぱりあたしの店はあたしの店よ。どこにあっても、ね」
トーラ:「……」
沙紗:「もしあたしがあの町の人だったら?」
トーラ:「それは、私にとって嬉しいことですね」
沙紗:「どうして?」
トーラ:「それは、秘密です」
沙紗:「えー? 教えてくれてもいいじゃない。気になるわ」
トーラ:「まあ、そのうち、分かるかもしれませんよ? コスモスフィアの世界は『本音』に他ならないですからね」
沙紗:「うーん……。まぁいいわ。その時が来るのを楽しみにしてる。
    深い層に潜る覚悟は、まだ出来てないけどね」

トーラ:「はい」



トーラ:「……沙紗さんは、この『調和律』が、本当にあったことだと思いますか?」
沙紗:「……なかったなら良かったと、そう思うわ。実際はどうなの?」
トーラ:「もちろん、これは実際にあったことではありません。でも、似たようなことはありました」

トーラ:「もうお分かりだとは思いますが、暗星城(くらすたじょう)とはクラスタニアのことです。
     暁ノ国(あきらのくに)がアルキア。永久の町(とこしえのまち)がどこだかは言うまでもありませんね」


トーラ:「クラスタニアという国は、長きに渡ってこのソル・クラスタを支配してきましたが、
     その支配体制は決して盤石なものではありませんでした。
     私がこういうことを言うのもなんですが、無理に無理を積み重ねた
     薄氷の体制であったことも、また事実なんです」

トーラ:「もちろん、だからと言って私たちの行いが正当化できるものだとは思ってはいませんが……」

沙紗:「その体制が崩れたのも、まだ記憶に新しいね。
    今は、どの地域も協力しあってる」

トーラ:「そうですね。こうなるには時間がかかりましたが……」

トーラ:「ともかく、クラスタニアには監視社会という一面もあったのです。
     それに、レーヴァテイルしかいない国、人間との戦争が絶えない国ですから、
     人と人との豊かな関係を育むにはなかなか不都合の多い場所だったのですよ」

沙紗:「レーヴァテイル同士で争いが起こらないように、そういうこと?」
トーラ:「もちろん、それもあります」
沙紗:「集団の目的のために、個を省みない……ね。あまり好きな考えじゃないかも」
トーラ:「沙紗さんならそう言ってくれると思っていましたよ」
沙紗:「そうせざるを得ない状況を作らないようにしないとね」


トーラ:「……現在、クラスタニアでは人間との融和政策を進めています。
     たとえば、子どものレーヴァテイルが人間と一緒に教育を受ける期間を設ける、
     なんてことをやっていたりしますね」

トーラ:「だけど、この急激な改革に対して戸惑いを覚える人は多いのです。
     正直言って、私も、この方針に疑問があることはあります」



        [雑談] 出典:ドラマCDサキ >子どものレーヴァテイルが~
        [雑談] ドラマCDか。
        [雑談] 公式内容使ってくスタイル


沙紗:「あの日から、まだ四年しか経ってないものね。不安があるのは仕方ないわ」
トーラ:「そうですね、不安を抱えている人は多いです。
     でも、私が言いたいのは、そういうことではないのです」

沙紗:「そういうのは、強制されるものじゃないものね」
トーラ:「そう言うと思っていましたよ」
沙紗:「自らそういう環境に臨んでこそ、意味がある。
    あたしは、あの日よりも前から人ともレーヴァテイルとも接してきたから抵抗はないけれど、ね」



トーラ:「……沙紗さんは、『人間』と『レーヴァテイル』が仲良くなれるためには、
     なにが必要だと思いますか?」


沙紗:「互いを認めること、かな。
    『人間』と『レーヴァテイル』は違うことをちゃんと理解して、その違いを受け入れること。
    あたしはそれが必要だと思うわ」


トーラ:「ありがとうございます、その言葉、どうか忘れないでいてくださいね」

トーラ:「では、現実世界で会いましょう」
沙紗:「ええ。待っててね」
トーラ:「はい」



トーラはストーンヘンジの中央へと進み、振り返って一礼した。
そして、笑顔を見せながら、光の柱の中に消えていった。



    BGM: ヴァルシャー(雨季)
        from メールプラーナ(ガスト, 1996)
        Composed by 山西利治



カルム:「2階層も完了、おめでとう。一階層深く潜った訳だけど、無事完了できて良かったよ」
沙紗:「今回もカルムには助けてもらったわね。ありがと、カルム」
カルム:「そうなのかな? 今回は沙紗さんの力で道を切り開いたと思ってるよ」
沙紗:「人が一人でできることって限られるのよ?
    あたしが一人でできるのはお店のことくらいだから、ね」

カルム:「うん、そうだね。僕は立場上、階層が深まるごとに制約は強くなるから、
     どうしても沙紗さんのみで進まないといけない部分が増えてしまうからね」

沙紗:「そう……。少し心細くなるわね」
カルム:「お店のことを知っていたから、お城にトーラが居るって分かったんだから、別に謙遜することないさ」

沙紗:「でも、あたしはトーラさんのことは好きだし、あたしがダイブすることでトーラさんが少しでも楽になるなら……」
カルム:「心の不安を取り除くってことだね」
沙紗:「またここに来るわ。カルムにも会いたいし」
カルム:「それは、嬉しいね。ダイブする要因は人それぞれだし、沙紗さんの信じる道を進むと良いよ」
沙紗:「ありがとう、カルム。それじゃあね。また会いに来るわ」
カルム:「はーい、トーラに宜しくね」
沙紗:「ええ」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



このレベルを完了するため、沙紗はストーンヘンジの中心へと歩を進めた。
光の柱に包まれながら、遠くに見える永久の町を見やり、そして消えていった。



沙紗の想いにより緑の大地が蘇った世界。
いまださまざまな問題を抱えながらも、人々はここで暮らしていた。


多くの人が不安を感じているこの地は、まだ平和とは言い難いかもしれない。
それでも、希望さえ失わなければ、一つ一つ乗り越えていくことができる。
真摯な想いは、きっと世界を変える力になる。


「調和律」の緩和を告げる高札が広場に掲げられた
永久の町の人々には、久しぶりの笑顔が輝いていた――




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



    BGM: Di-Ve
        from ロビン・ロイドの冒険(ガスト, 2000)
        Composed by 土屋暁



  cosmosphere.TORAI.Lv.2 - nowhere dense country - Cleared.
  トーラのコスモスフィアレベル2<愛し疎国>が沙紗によって完了されました。

  トーラのダイブレベルが2になりました。
  トーラは経験点を5ポイント獲得しました。

  沙紗のダイブレベルが2になりました。
  沙紗は経験点を5ポイント獲得しました。

  ダイブを終了します。お疲れさまでした。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



    BGM: 闇市場
        from アルトネリコ3(バンダイナムコ/ガスト, 2010)
        Composed by 中河健



ダイブを終え、二人はトコシヱのミズモリ広場に戻ってきた。


トーラ:「……」
沙紗:「えーっと……」
トーラ:「……また、変な世界だったら、ごめんなさいね。前回が前回だから……」
沙紗:「そ、そういうことじゃないわ!? むしろ凄い景色だったのよ!」
トーラ:「そう、なのですか? 前は何もなかったのですよね?」
沙紗:「あたしもあんな自然豊かな場所で住んでみたいなぁって……。
    そのくらい凄かったんだから」

トーラ:「……そんなに、ですか?」
沙紗:「そうよ。あんなに変われるなんて思ってなかったもの」
トーラ:「うーん……自分のことながら、予想が全くつきませんね」

トーラ:「そうすると、たぶん、前の時とは全然違う内容だったのでしょうね」
沙紗:「同じ、もしくは似た内容だったら、それはそれで問題よ?」
トーラ:「そうですね」
トーラ:「実際、あのとき沙紗さんのお店に感じたような、変化した実感はあまりないですね。
     しいて言えば、少しだけ、沙紗さんが身近に感じるようになった気がします」

沙紗:「身近?」
トーラ:「えーと、何て言えばいいのか分からないのですが……」

言葉を選ぶのに時間がかかっているような、そんな歯切れの悪さを見せるトーラ。

トーラ:「どう表現すればいいのでしょうか。
     沙紗さんと一緒にいることが楽しくて嬉しい、そのような感覚を」

沙紗:「うーん、難しいわね……」
トーラ:「まあ、ともかく、そんな感じなんです」
沙紗:「分かるような、分からないような……。そんな感じね」
トーラ:「言葉にするのは難しいですね。想いはちゃんとここにあるのに」
沙紗:「でも、少しでも心が晴れたなら良かったわ」
トーラ:「はい、少しだけ、気持ちが変わりましたね。
     少なくとも、この想いを、伝えたいという意思が生まれたことは間違いないですから」

沙紗(それを伝えるのに、とっても苦労しただなんて言えないわね……)
沙紗:「なかなか、伝えるのって難しいですよね……」

ダイブ中の苦労を思い出しながら、沙紗は言う。

トーラ:「沙紗さんもそう感じますか?」
沙紗:「お店をやってると、人の依頼を聞いたりこちらから頼むことがあるのだけど……。
    その言葉から想いを汲み取るのは難しいし、なかなかあたしが言いたいことが伝わらないこともあるからね。
    何度も経験はしてるけど、それでも難しいことに変わりはないわ」

トーラ:「なるほど、私も同じような経験があります」
トーラ:「それに、私はレーヴァテイルだからダイブができますが、
     ダイブですら、想いが伝わるというわけにもなかなかいかないですからね」

沙紗:「……」

少し不安を感じる沙紗。

トーラ:「これだけ生きてればそれなりの人数にダイブさせているものですが――少なくともクラスタニアでは、ですね、
     …… その、最近は、クリティカルダウンが多かったんですよ。最初のダイブの段階で」


沙紗:「クリティカルダウン?」
トーラ:「あっ、ダイブの強制終了のことですね。ダイバーとレーヴァテイルの想いの不一致を原因とするタイプの。
     つまり、仲違いしてダイブが続行不可能になった状態です。大雑把に言えば」

沙紗:「な、なるほど……。って、それがダイブの最初に起きるってかなり問題じゃないの?」
トーラ:「そうなんですよ…… おかげで、私も自信を無くしていて。
     私の人との付き合い方は間違っているのではないかと、不安で」

沙紗:「そ、そんなことはないと思うよ?
    もしそうだとしたら、あたしもその、クリティカルダウンを起こしていたかもしれないし……」

トーラ:「……えっ?」
沙紗:「だから、自信持って大丈夫だと思うよ。あたしが保証する!」
トーラ:「……沙紗さんがそう言うなら、信じてみようと思います」

トーラ:「私と沙紗さんの距離。レーヴァテイルと人間の距離。
     少しでも縮めたい、その想いはあっても、
     一度躊躇した足を再び踏み出すには、最初の時よりも勇気が要るものです」


沙紗:「……でも、もし踏み出せたら……。
    最初に踏み出した時よりも、少しは楽に想いを叶えることが出来るかもしれないわ」

トーラ:「? よく分かりませんが、そういうことにしておきます」
沙紗:「踏み出すときは大変かもしれない。迷う時もあるかもしれないけど、その時は相談に乗るよ?」
トーラ:「はい、その時はまたよろしくお願いします」


トーラ:「それでは、またいつかお邪魔しますね。このナイフの使い心地も報告したいですし」
沙紗:「あ、それは期待しておくわ」
トーラ:「はい。では、また会いましょう」
沙紗:「ええ、また今度」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



上帝門への出入り口に向かうトーラを見届けてから、沙紗は一度店へと戻った。


    BGM: カリンの製鉄工房
        from リリーのアトリエ(ガスト, 2001)
        Composed by 小林美代子


沙紗:「今日も、いろんなことがあったなぁ……。
    お客さんの依頼もそうだけど、やっぱりトーラさん……かな」


トーラとの会話、ダイブ中のことを思い返しながら、店内を歩き回る。
ふと目に付いた設計書。それは、トーラに渡したナイフのものだった。

沙紗:「……まさかね」

設計書の裏を見てみる。もちろん、そこには何も書いていなかった。

沙紗(少しは、近くなったのかな?)


        [雑談] これで柱にナイフが刺さった傷があったというオカルトオチとか
        [雑談] そんなものはありませんw
        [雑談] www


ダイブが終わった後、トーラが言っていた台詞。
先ほどの会話で、たしかにそれは実感していた。

すでに時間は遅い。明日に備えなければ。

沙紗:「明日も、精一杯やりますか」

こうして、沙紗の非日常(?)は終わりを告げた――



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



        [雑談] それではお疲れさまでした これにてレベル2完了です
        [雑談] お疲れ様でした!
        [雑談] ハードル上がりまくったシナリオでしたが、やればできるものですね
        [雑談] 高くなりすぎて手から汗ビッショリ
        [雑談] シナリオ内容結構敷居高いと感じましたが。クリアできましたね
        [雑談] 元のシナリオの想定よりもさらに上がってましたからね
        [雑談] この時期あまり汗かきたくないよ!?
        [雑談] www

        [雑談] 自分でも分かってますが、このレベル2、無茶振りの連続ですからね
        [雑談] ほ ん と そ れ な
        [雑談] 無理難題もいいところですね
        [雑談] それに応える演技力(ドヤァ)
        [雑談] このドヤ顔は否定できない
        [雑談] この演技力を、現実で発揮できれば……





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