志水辰夫

行きずりの街


 「暗いわー!」というのが読み終わった一言目。ユーモアが全く無いハードボイルドな小説て感じでした。面白くないわけではないけれど、中年以降の男性向きちゃうかな。
 元教師で今は塾講師の主人公は、教え子が行方不明になったので東京へ探しに行ってくれと依頼されます。主人公には東京にしか苦い思い出しかありませんが、複雑な環境で育った教え子に真摯に接してあげられなかった負い目から、彼女を探しに行きます。主人公は過去、高校の教師をしており卒業生と結婚しました。結婚までしたのに「不道徳だ」との突き上げを喰らい騒ぎが大きくなり、学校を巻き込んで結局離婚、退職の道を余儀なくされます。失意のうちに一人故郷に帰り、塾の講師を始めたわけです。
 さてそんな嫌な思い出のある土地へ何年かぶりに足を踏み入れた主人公。ささっと見つけて帰りたいのはやまやまなのですが、教え子の失踪に関わっているであろう中年男性を追いかけるに従い、過去の学校関係者達に近づかざるを得なくなります。無事教え子見つかるんかね?というお話です。
 なんかね、もう暗いの。何が暗いのかよくわかんないんだけど、全体的に暗い。登場人物皆が屈折してるし、笑えるシーンもないし、かといって気持ちの良い熱さも無い。進めども進めども光見えず。ほっとする場面がないというか。文章自体は綺麗だと思うし、読みやすいし、ハードボイルドだって私は多分そんなに嫌いじゃないんです。でもなぁ。多分私は対象読者じゃないんだと思う。前述しましたが、妙に純情な主人公とか元妻の描写から、男性向けな印象を受けました。好きな人はすごく好きそう。
 解説が大絶賛していて、その温度差に笑えました。えーそんな期待作なのに、こんな感想でごめんなさいって思えて。
(2007/07/29)

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最終更新:2007年07月30日 00:04
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