京極夏彦4

邪魅の雫


 もういい。もういいのです。京極堂がオールマイティーなジョーカーでも。全てを見通す案内人でも、最後にしか出さない必殺技でも、水戸黄門の印籠でも。最初からそれ出しとけや、みたいに思いません。「いつ?いつくるの?」とわくわくしながらお預けされておきます。予定調和結構です。おいしいとこ取りでもいいのです。京極堂が好きなんです。榎木津が好きなんです。信者と呼ばれても構わない。
 あーもう、キャラが好き。やっぱり好き。ストーリー?難しくてよくわかりませんでしたよ。人の世界は砂粒みたいに小さい。砂粒が一適の海水によって攫われてしまうような、小さなものだ。世間はその砂粒が集まってできている。そんな趣旨のお話。事件っぽいことが起こる→誰か調査する→混迷→榎木津→京極堂→解決って流れ。今回は榎木津絡みでした。なのに出番が少なくてちょっと残念。でも好き。
 榎木津の見合い相手に起こる不可解な謎を解いてくれ、と依頼された薔薇十時社の益田君。依頼人は榎木津の叔父。榎木津に会うと見透かされちゃうので、こそこそと動き回ります。そんな折、世間では不可解な殺人事件が続きます。その二つが絡まりあってなんかめっちゃ複雑になるのですが、「京極堂の推理力は世界一ィィ!」というお話でした。
 途中、大変に空気の読めない男が出てきますが、こいつの思考が読んでいてすごーく興味深かった。天然とか不思議ちゃんとか空気読めない奴と世間では呼ばれる人って、こういう思考回路してんのかなぁと。人をイライラさせる技を持っていて、ふとしたことでそれが炸裂するんですが、こんな風に分析されると「あーこんな風になるのね、じゃあもうしょうがないかな」って納得しちゃう。難しい話はほとんどすっ飛ばしちゃったけど、ここは読んでよかったと思います。
 面白いか、と聞かれても良く分からない。だって既にレギュラーが出ているだけで嬉しいんですもの。でも前作よりは面白かったかな。複雑度を増しているような気はする。憑き物落としシーンはやっぱり良い。私も騙されたい、落とされたい、口車に乗せられたい。まぁ京極堂シリーズが好きな人は読んどけ、それ以外の人は一作目から読めとは思います。レギュラーや過去の事件のことほとんど覚えて無いですが、それありきで来ますから。

 ここから先はネタバレです。
 と言っても、キャラ好きな私の単なる叫びなんですが。見るだけ無駄かもしれません。
 榎木津が「益田」って呼んだとき、不覚にもときめいてしまったのですが!というかちょっと涙ぐんじゃったんですが!
 ラストの「僕は君が嫌いだ」ってどういう意味?昔はちゃんと好きだったの?あんなことしたから嫌いなの?本当は何がしたかったの?止めたかったの?どんなロマンスがあったの?
 ちょっと弱ってる探偵も素敵ー!それを心配して出てくる京極堂も素敵ー!ついでに関君も今回はちょっとかっこよかったー!

 あー感想そんだけって切ないな。色んな意味で。でも難しかったんですもん。途中の「だから殺した」みたいな独白、誰だったんだろう。あの膨大なページの中から見つけ出すには、HPが足りませんでした。
(2008/10/30)

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最終更新:2009年06月07日 17:15
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