三浦しをん

風が強く吹いている


 すっごく面白い!分厚いけど、一気に読んでしまった。ああ面白かった!と言い切ってしまえる清清しさ。魅力的なキャラが好きな私には、面白い面白いもう一つおまけに面白いお話だった。
 大学1年生の「走」は住む所もなく万引きをして逃げているところを、同じ大学の先輩灰二に走りを見込まれ、竹青荘への入居を打診される。そこには9人の大学生が入居していて、走によって10人になったところで、いきなり「箱根駅伝に参加する」と灰二によって宣言される。元陸上経験者から漫画オタクの運動オンチまで、人選は滅茶苦茶なのだが、次第に走る楽しみに目覚め箱根を目指していく、というお話。
 私は陸上に疎いけど、正月の真昼間にテレビ放送される位なんだから、箱根駅伝の競争率は高いのだと思う。だからこのお話はある意味ファンタジーだ。少なくとも走るの大嫌いな私だったら、脅されようが箱根を目指そうなんて思わない。でも竹青荘のメンバーは、煽て上げられたり弱みを握られたりでなんだかんだで青春するのだ。この本の面白い点はなんといっても一人一人のキャラクターが魅力的なところだろう。時折あざとさまで感じるが、それ無しではこれほど熱くはなれなかった。
 だって、言いだしっぺの灰二は、竹青荘の管理人(食事込み)業務をこなしつつコーチ兼選手とかやっちゃうし、走はなんか灰二や走ることに盲目的だし、お調子者の双子とか、なんかもうステレオタイプ。でもステレオタイプって、結局万人受けする魅力があるからそういう傾向になるんよねーと納得してしまった。
 無口で世話焼きで俺について来いよでも無理強いはしないタイプ?いいじゃないですか。
 陸上馬鹿でアンカーの先輩に「すぐに行きます」とか言っちゃう忠義タイプ?いーんです。
 お調子者で楽天家な双子?ハリポタでもホスト部でも見たよ?構いません!
 オタクで美形で勿体無い?渾名が王子?私も会いたいよ、そういう人に。
 おっさんキャラが久しぶりに熱くなる展開?渋くて大好きですよ。私より年下ですけどね!
 て読み終わってからは思うんだけど、読んでる間はあざとさを感じる暇もなくあっという間。後半はメンバー一人一人の目線から語られていて、長いお話も飽きさせない。できすぎなくらいに面白かった。
 表紙の絵がなんだか浮世絵調なんだけど、全員の絵が描かれているので、読んでいる間人物紹介みたいに何度も見てしまいました。絵柄の好き嫌いはともかくとして、ああいうのいいなぁ。
(2010/04/19)

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最終更新:2010年04月20日 01:01
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