重松清

流星ワゴン


 子供は引き籠もり、妻には離婚を要求され、人生に疲れてしまった主人公が、事故で死んでしまった父子が乗る不思議なワゴン車に乗って、人生を旅するお話です。割と軽くて読みやすく、あまり読書をしない人にもお勧めしやすい本です。特に男の子がいるお父さんにとっては、涙腺が弛むお話ではないでしょうか。父と子の関係について力を入れて書いており、亭主関白な父を持つ私にはちょっと身につまされました。

 チュウさんには私の父とかぶるところがあり、読んでいて「嫌な奴!」という思いを隠せませなかった。あと、そうはなりたくないと足掻いた挙げ句に、家族がばらばらになってしまった息子にも。一貫性がないところは主人公の方が嫌だったかも。チュウさんも橋本さんもそれなりに一本通っていたのに。チュウさん親子は「そんな気はなかったのに」と言いながら結果的に誰かを傷つけてしまっていた。性格は違うのに二人は似たもの同士だ。
 美代子の離婚理由は今イチぴんと来なかった。それは主人公のせいじゃないし。あれは本当に主人公が後悔するところだったのかなぁ。分岐点という意味では、あっているのかもしれないけど。
 あといいお話なんだけど橋本さん親子の結末はあまり好きじゃない。結局彼らはこれからもずっとワゴン車を走らせるんよね。永遠くらいに長い時間。それはお互いにとって本当に幸せなことなの?成仏させてあげるのが橋本さんの望みだったのに、それをあっさり覆せるの?なんか消化不良だなぁ。
あと解説は割と面白かった。家庭を省みない親を持った子供は、家庭的な親になる。けどその子供にはそれが情けなく映るという社会現象の話だった。正解はなく、このお話も完全なハッピーエンドではない。だけど希望の種は残っていると思う。読後感は(一部を除いて)爽やかでした。
(2006/03/21)

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最終更新:2007年04月02日 23:46
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