大鐘稔彦

孤高のメス-外科医 当麻鉄彦






 医療物です。漫画の「医龍」みたいなお話。学閥が幅を利かす地方病院を舞台に、技術と心意気がピカイチな外科医当麻鉄彦が主人公です。
 普通の本とは違うのが作者の経歴でしょうか。実際に医療に携わった方らしく、ホスピスを作ったり、「エホバの証人」の無輸血治療を行ったそうです。作中にもそういったエピソードが出てきました。主人公の当麻を自分に投影しているのならかなりのナルシストのように思えますが、作者はどのあたりに思い入れがあるのかな、ちょっと気になります(笑)。なんせ当麻先生モテモテなので。
 お話は割と長いのですが、よくある医療物とそんなに変わらないように感じます。現場を知っているだけにあまりに現実とかけ離れた劇的な展開にはならないのかな、と思ったり。割と淡々と進みます。面白いような面白くないような、微妙な感想です。ノンフィクションにしちゃったほうが良かったように感じました。それからある程度の年齢の男性が書いたお話なんだなぁと感じたのが、女性の描き方。古風な人が多かったです。
 当麻は肝移植に乗り気でそれについてのエピソードが多いです。私は心臓移植よりも肝臓の方が難しいって全然知りませんでしたので、その辺は勉強になりました。先進的な手術をすることによって、マスコミや仲間に叩かれたり、読んでいて嫌になる場面も沢山あります。それが現実なのでしょうか。今まで医療系のニュースにはあまり興味がなかったのですが、当事者にとっては大きな出来事だったのでしょうね。これからは注意して見るかな。
 医者としてというか人間として「どうなの?」という人がたくさん出てくるのですが、こういうお話を読むと、大病院って腐ってるんだなぁと思います。本当にこんなんなんでしょうか。そうだとしたら、病院への信頼がなくなるなぁ。むしろ盲目的にあがめるのが間違っているのか。
 トータルとしては微妙感が拭えないまま読み終わりました。医療物が好きなので、あまり気になりませんが、そうでない人は不満かも。漫画のノベライズらしいですが、そっちは面白いのかなぁ。
(2009/02/13)

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最終更新:2009年02月13日 23:57
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