木村友馨

御赦し同心


 お蔦のお話が面白かったので、他の本にも手を出してみた。これは長編小説。
 これも面白いんだけど、お蔦シリーズほどにわくわくしなかったのは明確な悪役が出てきているからだと思う。
 定廻同心の籐四郎は年若い娘に暴行する(女捕)事件を追いかけていた。髪結い兼手下の錠吉を女装させて張り込んでいると、顔馴染みの町娘お凛が無残な姿で発見された。頭に血が上った籐四郎は犯人を捕らえるが、犯人は大店の息子で悪びれるところが全くない。あまりに腹の立った籐四郎は犯人に手を出してしまい、閑職に回されてしまう。
 苦手な婦女暴行がテーマなのと、悪役が胸糞悪くなるような悪い奴なのと、身分や世間体が今の時代よりも厳しいことで、読んでいてもどかしかった。それが時代小説の持ち味でもあり、むしろそちらの方が過去よくあったのだろうとは思うのだけど。
 ただテーマは重くても、籐四郎が若はげの家系ではげると引退しなくてはならないこととか、弟が変わり者とか、そういうユーモアはちりばめられていて面白かったのは本当。
(2010/07/03)

わすれ雪―天眼通お蔦父娘捕物ばなし つついづつ―天眼通お蔦父娘捕物ばなし



 母親の影響で時代小説が好きだ。歴史が絡んでくるようなものではなく、江戸時代の市井の人々を描いた人情話が。連作短編が多いのも、読みやすかった理由かもしれない。現代ものよりも安心して読めて、私にとってはファンタジーに近い位置づけだ。
 そういえば時代ものは割と年配の人が描いていると思い込んでいた。宮部みゆきが時代ものを描いた時は嬉しかったし、あの人の時代ものはどれも大好きだ。このお話は読んだ後作者のプロフィールを見てびっくりした。私の一歳下。若い感覚で書いた時代もののせいか、とても面白い。
 お蔦という女の子が主人公。幼い頃に両親をなくし、手下だった御用聞きの井蔵に引き取られた。普段は井蔵の妻が切り盛りする一膳飯屋井筒で働いているが、天眼通という父親譲りの推理力を発揮し、時折井蔵の捕物に首を突っ込む。
 登場人物の描写がうまくて、読んでいて「こいつ誰だっけ?」って思うことがなかった。お話としては時代小説ではありそうな設定、ありそうな内容なんだけど、とにかく読みやすいし、現代人に受け入れやすい時代ものだと思う。
(2010/07/03)

  • いつになったらしんかんがでるのかな。毎週、ほんやにいくたびにさがしています。 -- 加藤T (2011-11-23 19:47:59)
  • まったく同感です。 -- ニジノタマ (2011-11-27 21:01:49)
  • 知らない内に続きが何冊か出てる!これは買いに行かねば! -- May (2012-06-22 20:26:30)
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最終更新:2012年06月22日 20:26
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