概要

スカルオーネの戦いとは、アルファ1741年3月に、アルビス国とリヴォル帝国の間で行われた戦いであり、ドラグゥーン作戦最大の山場となった決戦である。
大国同士の大決戦でありながら、一方のみが壊滅し、もう一方の損害がほとんど出なかったという戦史上稀有な例となる戦いである。


戦闘に至るまでの背景


スカルオーネの戦いとは、あくまでもドラグゥーン作戦の一環であり、同時に最大の山場であった。
この戦いに至るまでの伏線は、何重にも用意されていた。

唯一アルビス国に誤算があったとすれば、アディス国の短絡的行動によりミリィが殺害され、シャラダン自身は帰国していたことだが、愛娘を失った心痛からシャラダン本人は帝都から動かず、また、まさかアルビス国が国の命運をかけた乾坤一擲の勝負だとは思わず、せいぜい国境を脅かす威嚇行為であると思い、「四方将を派遣すれば撃退するくらいは容易であろう」と考えていたこともアルビス国にとっては幸運であった。

この戦いにおいて、後世に語り継がれた戦法が法術部隊であった。
法術部隊とは本来部隊の一兵種に過ぎず、遠距離攻撃が可能といっても決して万能ではなく、あくまでも支援攻撃であり、存在そのものが勝敗に直接関与することはこれまでなかった。
無論、だからといってその存在が軽視されることはなく、間接的に勝敗に関与する要素の一つとしては重要な地位を占めていた。
だが、このときアルビス国が用意した戦術は、本来の法術部隊ではない一般兵までも水晶を施した武器を渡され、ほぼ全員を強制的に法術部隊として編成し、荷駄部隊にあらかじめ完成させた柵を分解して積み込み、短時間でスカルオーネの地に簡易な防波堤を作り上げ、その後方から一方的に法術攻撃を浴びせるというものであった。

敵軍を法術の「的」にする為には、敵をこの地に引きずり込み、緩やかな下り坂を利用して敵の追撃隊に騎馬と歩兵の間に距離をあけさせる必要があった。
アルビス国軍は、リヴォル帝国領土にリヴォル帝国を恐れているという噂と流し、それを裏付ける消極的な進軍ルートを選んでいた。
スカルオーネの地は、この戦術ありきで最初から選ばれた理想的な地形であり、全てはこの地に敵を誘い込むための罠であった。


両軍の戦力

攻撃側 守備側

アルビス国軍
軍勢
リヴォル帝国軍
総兵力62000 兵力 総兵力43000
カルディナ 総指揮 イズ
エリシア 軍師
主要参戦者

カルディナ

エリシア

ルティエ

レイス

ラギ

イズ

ガミラン

リオン

サンド

サヌア

ロリスザード

レイア

ダイルーガ

シーナ

ヴィル

マルキィ


戦闘経緯


アルビス国の思惑通り、先発したアルビス国軍はリヴォル帝国軍の前に撃退され逃走、これを追撃するべく、リヴォル帝国軍は一気に加速、スカルオーネの緩やかな下り坂へと差し掛かっていた。


スカルオーネは、下り坂といってもその傾斜がゆるやかな為、当人達が気付かないまま追撃部隊は騎馬と歩兵に間ができはじめていた。
そして、逃走していたアルビス国軍が突如として二手に別れると、その先に彼らを待ち構える柵が姿を現す。
リヴォル帝国軍は勢いに乗ってそのまま突撃を敢行するが、そこに法術部隊による一斉砲火、通称ドラゴンブレスが襲い掛かる。
すぐに終わると思われたこの法術一斉攻撃が一向に終わりをみせず、勢いのまま攻め込んだリヴォル帝国軍の前衛部隊は次々と倒れていく。
この時、法術攻撃を防ぐ事のできる重装部隊は、下り坂で勢いのついた騎馬部隊の速度に追いつける筈がなくまだ戦場に到着していなかった。


「何故だっ!!何故敵の法術攻撃が一向に止まない……アルビスの魔力は無限だとでもいうのかっ!!」
リヴォル帝国軍がそう叫ぶ中、アルビス国軍は柵の背後から部隊をスライドさせ、間断なく法術を打ち続けていく。
引き返そうにも事情を知らない後続部隊が次々と下り坂を突撃する為、仲間に押されてしまい、リヴォル帝国軍前衛は完全に崩壊した。
「地形や情報操作、あらゆる条件がすべて揃った上で、未知の戦法だから初見の一回だけ成功する作戦」そう称されたこのドラゴンブレス作戦によって、最強を誇ったリヴォル帝国軍は、アルビス国の兵士を一人も倒せないまま次々と法術攻撃を受け、一方的に壊滅していった。

だが、柵の後方にいたアルビス国軍も、決して余裕ではなかった。
一度でも柵を突破されると、普段は剣を持っているのに、それを水晶に持ち替えた即席法術部隊は、接近戦ができずに一瞬にして崩壊する。
この戦いは、圧勝か、完敗かしか存在しない戦いであり、兵士たちの緊張感はいつも以上のものであった。

さらなる攻撃を受け、リヴォル帝国軍は兵が完全に混乱状態となり、半狂乱となって突撃を繰り返し、次々と討ち果たされていった。
総指揮官イズがいかにこの混乱を収めようとしても、もはや不可能であった。
更に、最初に演技で逃走していたアルビス国軍が、そのまま二手に別れて後方に回り込むという、普段の冷静な状態なら決して許さなかった行軍をみすみす許してしまい、後方に回り込んだ部隊があらかじめ仕組んでおいた油を染み込ませた布に着火、火の壁を作り上げリヴォル帝国軍に退路すらないという絶望的な光景を見せる。


これも、普段の冷静な状態のリヴォル帝国なら十分突破できる程度の炎の壁であったが、火は人間の心理に多大な影響を与える。半狂乱になったリヴォル帝国軍は、もはや退路もなくなったとますます柵の突破に固執することとなる。

戦いの決着はつき、リヴォル帝国軍は屍をスカルオーネの地に晒し、ガミランも全身に法術攻撃を受けて戦死、リヴォル帝国軍が完全に崩壊すると、アルビス国軍は柵から出陣して追撃戦を展開、総指揮官イズは手柄を争ったアルビス国軍兵士によって五体を切り刻まれた。
リヴォル帝国軍兵士は7割が戦死、生還者にも無傷の者は皆無という燦々たる有様であった。


戦いの結末

誰もが想像していなかったリヴォル帝国軍主力部隊の壊滅、それも、敵軍に全く損害を与える事のない一方的な全滅。この戦いは、まさにリヴォル帝国落日の戦いであった。
主力部隊の半数をアディス国制圧に向かわせていたリヴォル帝国軍は、主力軍不在のままアルビス国軍の攻撃を受けることとなった。
そのアディス国においても、首都を完全包囲しているものの、最後の抵抗にあい首都攻略ができないまま時間を消耗していた。

魔王シャラダンは、自ら剣を握り、迫りくるアルビス国軍を向かい討つべく玉座に構える。
友、娘、部下、全てを手に入れ、全てを失った男の最後の戦いがはじまろうとしていた。

なお、このドラゴンブレス作戦は、限られた土地、相当な準備が必要な上に、一度種を知ってしまえばいくらでも回避方法がある為、戦史上再び使われることはなかった。


後世における議論

歴史とは結果だけが全てであり、そこに「もしも」を語るのはタブーである。
だが、それを知っていても後世の人間は、「もし、このとき」という言葉を使いたくなるものである。
スカルオーネの戦いにおいてもっとも話題となるのは、「もし、この戦いにベルンハルトが参戦していたら、法術が全て無効化された為、アルビス国軍はこの地で壊滅したのでは」というものである。
ただ、この件に関しては「情報を何よりも重視するアルビス国軍上層部は、既にベルンハルトの法術無効化の事まで知っており、彼が戦陣にいないことを確認してからスカルオーネの戦いを開戦させた」との説もある。(ただしそれを裏付ける資料は残っていない)


最終更新:2024年06月30日 04:37