安価でオブジェクト製作スレ @ ウィキ

事例:ネスト535AV事件

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『ふはははよし分かったジェシカ様がなんとかしてやる全員こーい!!』

 冷めた目を、少女はしていた。
 死んだと思っていた家族を見つけて。対等な友人としての盃を交わして。そして、自分たちの最高作である物語の役者だったドラゴンキラーの今を酒の肴にしようと、まだ生きていたプロメテウスインダストリーの隠し通信を通して戦場を眺めようと。そう言って始まりの場所である映画館巻で再生していた。
「ガハハハ!!やっぱいいよなあ、エロとバカは華だ」
「R18じいちゃん、ちょっと空気を汚すのをやめてもらえるかな?」
「なに、俺は今機械だぜ?空気なんて汚れねえよ」
「汚れるの。存在で」
 3パーセント程度のアルコールの酎ハイを一気にあおる。それを見ながら掃除ロボットが首を振るように動く。
「おいおい、まだ若いんだ、酒なんて飲み過ぎたらダメだろう」
「ねえビリー。ビリーは生前一ヶ月でどれくらい飲んでいたの?確か軽自動車が買えるくらいは飲んでたよね?」
「そりゃセッ クスと酒は人生の楽しみだろう?そこに暴力が加わりゃ最高だ」
「そう」
 正統王国の山岳部の国境近く。特殊な金属を違法に発掘するオブジェクトたちと、その裏に潜むSHIMAGUNI。そんな最上級の材料は、料理下手な若奥様が雑に放り込んだ醤油に全ての味を上書きされていた。
 本来閑静な山岳部では、喘ぎ声が響いていた。女の嬌声に、男の嬌声が混ざって、山々で木霊している。死んだ目をしたドラゴンキラーたちと、半狂乱の『ネスト535』のエリート。爆発する資源。まさにカオスだった。
「ハ、腹が、腹が痺れる、ちょ、待って。つーかいい声してんなこの女優!ハハハ!!!」
「ビリー、私がまだ尊敬できるまで人間性を保って。そろそろナンバリングが急に生えた第二作目の映画の脇役くらいに降格してる」
「けどよお、笑えるだろ?」
「その回答は孫に求めるものじゃないと思うの」
『アァンっあ、ああー!!』
『ほらまだへばるな、うっ、あ、ああその調子だ新米諸君』
『た、隊長……うぁ』
『そうだ、いい子だ、あぅ、んン』

 大惨事だった。即興の最終音響兵器A Vの音が映画館でさらに美しく、鮮明に再生される。
「あの男優、なかなか上手いな」
「ねえ、ビリー。再起動の予定はない?」
「この世紀的な瞬間に立ち会えて、俺は今非常に感動してんだよ。ああ、生きててよかった」
「もう死んで生まれ変わってるんだけど?」

オオンと、濁った男と女の嬌声が映画館を満たす。祖父が最後まで鑑賞する気だと理解して。少女は一気に酒を喉に流し込んだ。
「大人になるって悲しいことね」
 少女の声は、男の喘ぎ声にかき消された。



「機材の設置および確認を完了。これより検証実験を開始します」
「よし」

 『正統王国』本国、旧フランスのパリ郊外の牧場を潰した平野に彼らはいた。
 誰もが『正統王国』技術士官の軍服と白衣を纏い、そして死んだ目をしている。
 目線の先にあるのは回収した『アントヒル』の子機とオブジェクトに関わる人員全てに悪寒を走らせた奇跡のレアメタル、アンオブタニウム。

「こちらが『アントヒル』の子機となります。数少ない綺麗な状態のものです。基本的な性能は現代戦車とほぼ同等。対オブジェクト戦闘を考慮し、艦砲射撃ほどの威力を持つ主砲を積んでおり、無人化されているため機内に空白が存在します。ここに発掘したアンオブタニウムを積んで輸送していたという訳ですね」
「それで、金属に関してはともかく子機制御技術の解析具合はどうなのだね」
「はい。子機自体は前述の通りの素直な性能です。制御中枢に関しても通常のドローンとなんら変わりはありません。膨大な数の同時子機制御は全てエリートの並列思考操作に依存するため、解析するにはエリート本人を獲得できなければ、どうにも」
「エリートは『情報同盟』所属。白旗によって正式に保護された捕虜だ。戦時国際法に背くわけにもいかないか」
「エリートに関しては大人しく諦めましょう。幸い、並列思考自体は一般人にも確認できている個人技能です。執着する必要はないかと」
「執着はしていない。私は単に、”ソレ”に触れたくないだけか」
「あぁ、そうですか」

 老齢の技術士官が指差す先に存在するのは例の子機。
 しかし、他のものと違うのは機内の空白にアンオブタニウムを積んでいること。

「貴方に確認する必要もありませんが、念の為。このレアメタルの名前はアンオブタニウム、特定の振動を与えるとこの金属以外に対して触れた物質の分子結合を極めて脆弱にする性質を持つ鉱石です。今までは不可能かつ非現実的だとされていた対オブジェクトの近接物理兵装の実現を可能にする夢の金属ですね」
「特定の振動というのは」
「はい。それは後回しにしましょう。こちらをご覧ください」

 説明をする眼鏡をかけ、二徹目の隈をくっきりと残した技術士官が様々な器具を取り付けられたガラスケースに指を指す。
 ガラスケースの中には木製の台座が存在し、その上に掘り出した手の平大のアンオブタニウムがゴトリと剥き出しで鎮座していた。

「今までは用途不明の貴重金属でしたが、例のドラゴンキラーによって、反応する特定周波が判明しました」
「『クール女軍人悦楽㊙︎おっぱい猛特訓』か」
「はい。『クール女軍人悦楽㊙︎おっぱい猛特訓』です」

 白衣の中からサッと取り出したのは扇情的な写真が貼り付けられた旧式の薄型ケース。

「正確には、『クール女軍人悦楽㊙︎おっぱい猛特訓』の01:19、02:13、03:41、04:05、06:09、07:21、08:01、08:10......」
「そんな情報はいらん」
「分かりました。このシーンは全て女優と男優の声が重なるシーンです。再生します。ガラスケースの中を注視していてください」

『アァンっあ、ああー!!』

 アンオブタニウムがヒクリと反応した。

「この後ろの部分ですが、女優の声と男優の声が重なっていることが分かりますか? 下僕の男その3の男優とクール女軍人の声が重なるところです。再生します」

『ああー!!』

 アンオブタニウムがピクリと反応した。

「この部分をさらに抽出します」

『ァー!』

 アンオブタニウムがビクリと反応した。

「ドラゴンキラーの所属する第37部隊とベイビーマグナムはこれを大音量で流すことで盗掘したアンオブタニウムを満載している『アントヒル』子機および『カバーロック』を撃破したとされています」
「『アントヒル』に関してはエリート......これはいいか」
「では、実際にヘイヴィア=ウィンチェル上等兵が子機を撃破したときの音量、携帯機器の最大音量で流します」

『ァアーー!!』

 アンオブタニウムが粉々に砕けた。

「では、確認してみましょう」

 眼鏡の技術士官はうんざりしたような顔でガラスケースを開き、アンオブタニウムをどかして、保存用のパッケージに収める。
 アンオブタニウムをなくして空気にさらされた木製の台座に触れると、まるで砂のように粒子となって解けていき、木製の台座は丸ごと粒子状の木片となった。

「この通り、掘り出したばかりのものでも、触れた部分を分解することができるのです」
「なるほど理解したくないが理解した。では、あれはなんのために?」
「そりゃあ、決まっているでしょう。レーダー分析官」
「はい」

 どこぞのドラゴンキラーと異なり、順当に昇進した技術士官が子機の方を向いているスピーカーを起動する。

『ンアァーーー!!!』

 子機が爆散した。

「特定の周波に反応したアンオブタニウムが共振して、子機の内部を粉砕。また衝撃と莫大な共振によって子機内部の砲の炸薬および自爆火薬が反応して爆発したと思われます」
「そうか、そうか」



「そうかぁ......」

 そこには新発見のレアメタルにアンオブタニウムと名付け、歳不相応にウキウキしていた、王国技術士官にして、大学付きの教授の項垂れる姿があった。

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