なだらかな平原。呆れるほどに澄んだ青空。遠くには、崩れた古城が佇んでいる。もしここでピクニックでもしたら、それはきっと一生の思い出になるだろう!
ドガガガガガガガガガガガ!!!!
ドォン!!!!ズドォォン!!!
ドォン!!!!ズドォォン!!!
……現在進行形で巨大な鉄塊同士が爆音を撒き散らしつつ暴れていなければ、だが。
「おほほほほ!古臭いだいいちせだいにしてはずいぶんとせいのうがいいようですが、ずいぶんとむりをしているのではなくて?いつまでよけつづけられるかみものですわね!」
巨大なガトリング砲を携えた鉄塊──ガトリング033に搭乗したエリートが美しい光景を粉砕しながら挑発を繰り出す。
『いやねえ、そっちの第二世代のせいのうがひくいだけじゃないの?こんなオンボロ第一世代にくせんするくらいなら引退したらどうかしらぁ?』
それに対し、ヘンテコな形状の砲を搭載した鉄塊、改めオブジェクト──エリーゼのエリートは、のらりくらりと攻撃を、挑発を往なし続ける。
ガトリング033の主砲がエリーゼを捉え、轟音と共にビームを放つ。
しかしそれに対してエリーゼは紙一重で砲撃を避け、反撃と言わんばかりにその奇妙な主砲を発射した。
ボン、という少々間の抜けた音と共に無数の砲弾が放たれる……が、その全てがガトリング033とは見当違いの方向に飛んでいく。一見攻撃を外したように思ったその瞬間。
ズドォォン!!!という音と共にガトリング033の足元が爆発する。よく見ると地面一帯に、粘土の塊のような物が転がっている。ガトリング033がそれらに近づくたびに、爆発が連続して巻き起こる。
ボボボボボン、と連続した間の抜けた音と共に展開される簡易的な地雷原の中、ガトリング033はお得意の機動性能でするすると地雷の間をすり抜ける。互いに損害は軽いかすり傷程度。すると、ガトリング033が勝負に出た!
主砲を乱射しつつ、エリーゼに急接近する。当然それに反応し、地雷、もとい粘着爆弾が炸裂する……が、地面目掛けて放たれた連速ビーム式ガトリング砲により、粘着爆弾が次々と地表から引きはがされ、消し飛ばされる。
ガトリング033の主砲がエリーゼを捉え、轟音と共にビームを放つ。
しかしそれに対してエリーゼは紙一重で砲撃を避け、反撃と言わんばかりにその奇妙な主砲を発射した。
ボン、という少々間の抜けた音と共に無数の砲弾が放たれる……が、その全てがガトリング033とは見当違いの方向に飛んでいく。一見攻撃を外したように思ったその瞬間。
ズドォォン!!!という音と共にガトリング033の足元が爆発する。よく見ると地面一帯に、粘土の塊のような物が転がっている。ガトリング033がそれらに近づくたびに、爆発が連続して巻き起こる。
ボボボボボン、と連続した間の抜けた音と共に展開される簡易的な地雷原の中、ガトリング033はお得意の機動性能でするすると地雷の間をすり抜ける。互いに損害は軽いかすり傷程度。すると、ガトリング033が勝負に出た!
主砲を乱射しつつ、エリーゼに急接近する。当然それに反応し、地雷、もとい粘着爆弾が炸裂する……が、地面目掛けて放たれた連速ビーム式ガトリング砲により、粘着爆弾が次々と地表から引きはがされ、消し飛ばされる。
(こうも至近距離でばくはつがおきればたしょうのそんしょうはでるでしょうが、このままうちあっていても千日手になるだけですわ。超至近距離からのほうげきでしとめきる……!)
爆発による損傷を若干受けながらも、エリーゼを完全に捉えたガトリング033が主砲を一斉に叩き込んだ!
……瞬間、ガトリング033が凄まじい大爆発を巻き起こした。ガトリング033の主砲がエリーゼを捉えると同時に、エリーゼの主砲もガトリング033を捉えていたのだ。超至近距離で大量の粘着爆弾の爆発を受け、ガトリング033の主砲が完全に大破した。しかしそれはエリーゼも同じこと。連速ビーム式ガトリング砲の直撃を喰らい、エリーゼの主砲も砲身が半ばから折れている。
二機のオブジェクトがお互いに睨みあう。主砲はお互いに壊れ、有効打が無い。ならば、やる事は一つ。ガトリング033が機体を180度旋回させ、地雷原をするすると抜けながらエリーゼから離れていく!
……瞬間、ガトリング033が凄まじい大爆発を巻き起こした。ガトリング033の主砲がエリーゼを捉えると同時に、エリーゼの主砲もガトリング033を捉えていたのだ。超至近距離で大量の粘着爆弾の爆発を受け、ガトリング033の主砲が完全に大破した。しかしそれはエリーゼも同じこと。連速ビーム式ガトリング砲の直撃を喰らい、エリーゼの主砲も砲身が半ばから折れている。
二機のオブジェクトがお互いに睨みあう。主砲はお互いに壊れ、有効打が無い。ならば、やる事は一つ。ガトリング033が機体を180度旋回させ、地雷原をするすると抜けながらエリーゼから離れていく!
(機体のしゅうふく、かんそうはパーツがユニット化されたガトリング033のほうがゆうり。それにたいしてあいては多少かいぞうされているとはいえ、ただのだいいちせだい。じらいのいちはジュリエットがすべてはあくしている!あとは──)
勝ちを確信したガトリング033のエリートが地雷原を突破し、ベースゾーンへ向かおうとしたその時
世界が斜めに傾いた。
「……えっ?」
少し遅れて、轟音。凄まじい衝撃と共に視界が元に戻る。それに続いて、ビー、ビーと機体がエラー音を吐き出す。
【脚部大破】
無数のエラーが吐き出される中、一際目立つそのエラーは、ガトリング033が戦闘能力を完全に失ったことを示していた。
「な、なにが──」
慌てて周囲を見渡す。何かが爆発した様子は無い。土煙が立ち込む中、背後にエリーゼの影が見えた。……よく見ると、何かがおかしい。
破損して、使えなくなった筈の主砲が完全に消えてる。どこへ消えた、という疑問の前に一つの滅茶苦茶な答えが浮かび上がる。
慣性を利用し、パージした主砲をガトリング033を目掛けて『投げつけた』。
破損して、使えなくなった筈の主砲が完全に消えてる。どこへ消えた、という疑問の前に一つの滅茶苦茶な答えが浮かび上がる。
慣性を利用し、パージした主砲をガトリング033を目掛けて『投げつけた』。
『んまぁ!!背中を見せて敵前逃亡とは、ずいぶんとはしたないですこと!れでぃとしてのじかくがないんじゃないかしらぁん?』
通信越しに敵エリートの声が聞こえると同時に、ガトリング033の緊急脱出装置と機密保護用の自爆装置が起動する。
「こんな、ことがっ……!?」
ガトリング033のエリートが撃ち出され、それと共に真下のオブジェクトが大爆発を巻き起こす。ようやく姿を現したそのエリートは、10歳に満たないだろう幼女だった。
『……あんらぁ?ああ、ごめんなさいねぇ?まさかれでぃじゃなくておこちゃまだったとは!大人の色気にあこがれてせのびしてたのかしらぁ?残念、あと10年早いわよん!さあとっとと白旗あげててったいしなさいな。こっちも捕虜なんかとってるよゆうないのよ。しっしっ!』
主砲が消えたとはいえ、大小無数の副砲は未だ顕在。あちらも積極的に撃つ気は無いようだが、もはやこちら側に勝てる要素は何一つ無い。パラシュートで地上に着地し、味方側から放たれた白旗の信号を聞きつつ、その幼いエリートは顔を俯けゆっくりとランデブーポイントへと歩いて行った。
少し離れた、情報同盟軍の合流地点にて。
「よかった...!貴方は無事生き残れたようで何よりよ……ガトリング033を失ったのは痛いけども、せめてエリートを失わなかったのは……」
「……やる」
「へ?」
「あのオカマ、ぜったい吠え面かかせてやるぅぅぅぅぅ!!!!!なにが『10年早い』よ!ぜったいに次あったらぶっとばしてやる!ぼっこぼこのめっためたにしてにどとなめたくちきけないようにしてやる!うわあああああああ!!!」
「え!?ちょ、ちょっと?!落ち着きなさい!落ち着き…痛っ!?まって暴れないで?!少し落ち着いて?!落ち着いて?!」
「……やる」
「へ?」
「あのオカマ、ぜったい吠え面かかせてやるぅぅぅぅぅ!!!!!なにが『10年早い』よ!ぜったいに次あったらぶっとばしてやる!ぼっこぼこのめっためたにしてにどとなめたくちきけないようにしてやる!うわあああああああ!!!」
「え!?ちょ、ちょっと?!落ち着きなさい!落ち着き…痛っ!?まって暴れないで?!少し落ち着いて?!落ち着いて?!」
……完全に予想外の一手で破壊され、挙句の果てに情けを掛けられ、煽られた。その事がよっぽど悔しかったのか、幼女エリートが暴れまわり、兵士たちが慌てて止めようと集まってくる。果たして彼女がやり返せる日が来るかどうかは…まあ、神のみぞ知るといった所だろう。
同時刻、資本企業軍の基地にて。
「……さーて、契約通りのおきゅうりょうももらったし、わたしはしばらく有休をとらせてもらうわよん。さいきんしゅつげきつづきでつかれていたのよねえ、どこかのスパにでもいこうかしらぁ?」
「……ふん、お前には高い金を払っているんだ。精々役に立つ事だな。自称『2000回出撃で無敗』。『カリブ・カリモーチョ』……いや、『カリオストロ伯爵』、とでも呼んだ方が良いかね?」
「……ふん、お前には高い金を払っているんだ。精々役に立つ事だな。自称『2000回出撃で無敗』。『カリブ・カリモーチョ』……いや、『カリオストロ伯爵』、とでも呼んだ方が良いかね?」
質素だが、見るからに高級なソファーや絨毯が置かれたその部屋で、エリーゼのエリート、カリブ・カリモーチョと資本企業の将校が対面していた。
「いやねえ、人をきだいの詐欺師よばわりなんてぇ。わたしは!スペシャルで!パーフェクトな!2000連勝のスーパーエースの!カリブ・カリムーチョよ!まちがえないでちょうだい。それはそれとして有休にかんしてはオッケーってことでいいかしらん?」
依然変わらず、のらりくりとした態度で将校の発言をするりと往なす。
「……三日間だけだ。重要な作戦が予定されている。それまでに士気を養っておけ。」
眉一つ動かさずに、将校も言い返す。
眉一つ動かさずに、将校も言い返す。
「んまあ!愛してるわよん、ローズちん♡あ、このあいだの作戦でたたかってたばしょ。あそこの景色綺麗だったしピクニックにでもいこうかしらん?」
投げキッスをしつつ、カリブがそそくさと扉から出て行った。少したってから、将校の横に立っていた兵士が口を開いた。
「ローズベルト中佐、本当にあんな怪しい男をエリートにしておいて大丈夫なんですか!?何ですか2000連勝って!まだ配備されてから3ヵ月も経って無いじゃ無いですか、馬鹿馬鹿しい!完全に舐められてますよ私たち!」
明確な苛立ちと怒りを見せながら、将校に抗議をする。
「口を慎め、ポート上等兵。お前には関係の無い話だ。」
「関係ないって、なんですかそれ!?自分だけじゃありませんよ、他の兵士や整備士だって不満や文句を出している。奴をエリートとして置いておくならそれ相応の理由を下さいよ!」
「第二世代相手に15戦13勝2引き分け。理由はこれで充分か?」
「充分じゃありませんよ!奴が実力者だって事はこの基地の奴らは皆知ってる。問題なのはそれ以外の所ですよ!ある日なんの説明も無しにふらっと現れて、一瞬の内にこの基地の上層部にのし上がった。いくら実力があっても納得できる訳がありません!」
「関係ないって、なんですかそれ!?自分だけじゃありませんよ、他の兵士や整備士だって不満や文句を出している。奴をエリートとして置いておくならそれ相応の理由を下さいよ!」
「第二世代相手に15戦13勝2引き分け。理由はこれで充分か?」
「充分じゃありませんよ!奴が実力者だって事はこの基地の奴らは皆知ってる。問題なのはそれ以外の所ですよ!ある日なんの説明も無しにふらっと現れて、一瞬の内にこの基地の上層部にのし上がった。いくら実力があっても納得できる訳がありません!」
上等兵が将校に対して不満を溢す。
「……ポート上等兵。奴は、軍部上層部から直接ここに配備されてきた。」
「それがなんだって、」
「私も唐突にエリートが配属されると聞いて、真っ先に怪しいと思った。当然、奴の経歴を洗ってみた。だが……」
「だが、なんですか!?」
「……何も出なかった。何一つ、奴に関する情報が出てこなかったんだよ、ポート上等兵。出生記録も、口座も、経済記録も、犯罪履歴も、整形手術の経歴も、軍部の情報部の機密ファイルにも。痕跡すら無かった。奴はある日、唐突に現れて、そのまま上層部に推薦されてここに送られてきたんだよ。」
「……はっ?ま、待ってください。それって」
「ポート上等兵。もう二度とこの話題には首を突っ込むな。貴様だけの問題では済まんぞ。」
「それがなんだって、」
「私も唐突にエリートが配属されると聞いて、真っ先に怪しいと思った。当然、奴の経歴を洗ってみた。だが……」
「だが、なんですか!?」
「……何も出なかった。何一つ、奴に関する情報が出てこなかったんだよ、ポート上等兵。出生記録も、口座も、経済記録も、犯罪履歴も、整形手術の経歴も、軍部の情報部の機密ファイルにも。痕跡すら無かった。奴はある日、唐突に現れて、そのまま上層部に推薦されてここに送られてきたんだよ。」
「……はっ?ま、待ってください。それって」
「ポート上等兵。もう二度とこの話題には首を突っ込むな。貴様だけの問題では済まんぞ。」
会話を終えると、将校は椅子から立って、そのばから歩いて去っていった。
「……疲れたわぁ。嫌ねえ、エリートのお仕事も楽じゃ無いわぁ。ローズちんは利口で助かるわぁ、私だって無駄な仕事はしたくないわよう。まあ、当分は資本企業に残れそうで良かったわぁ。」
真っ白な通路を、茶髪の髪をバンドでまとめた男が歩いている。研究者のような白衣を纏い、一人でどこかへ向かっている。ふととある扉の前に立つと、懐からUSBを取り出し、ほくそ笑んだ。
「──さあ、足搔ける所まで足搔いて見ましょうか。」