妖怪大戦争(2005年の映画)

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&font(#6495ED){登録日}:2020/11/30 Mon 00:36:10 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 19 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- #center(){&bold(){&sizex(16){&color(red){――この夏 史上最大の《冒険》が始まる。}}}} 2004年、秋。調布市にある角川大映スタジオにて、ある映画のリメイクが行われると発表された。 その映画のタイトルは『妖怪大戦争』。1968年に公開された大映制作による妖怪三部作の2作目だ。 既にクランクインしており、監督は三池崇史、主演は当時11歳の[[神木隆之介]]であることなどが発表された。 それから約1年後の2005年8月に松竹配給で封切られ、様々な著名人が特殊メイクで妖怪に扮するという話題性も手伝ってか、20億円の興行収入を得ている。 本作は漫画家の[[水木しげる]]が陣頭指揮を執る[[角川書店>角川書店/KADOKAWA]]の季刊誌『[[怪>怪(ムック本)]]』執筆陣が発起人となってリメイクを進めたという経緯があり、 原案は博物学者・作家の荒俣宏が担当。氏は本作のノベライズ版も執筆している。 このノベライズ版、映画公開より前に発売されたこともあってか本作の原作小説だと勘違いしている人も多いようだが、あくまでも&font(b){映画をノベライズ化したもの}である。 映画では説明不足だった箇所を補完する内容となっているが、完全に同じストーリーというわけではなく細部は異なっている。 水木氏も『水木版 妖怪大戦争』のタイトルでコミカライズ版を『怪』誌上にて連載していた。 こちらは序盤以降の展開は完全にオリジナルとなっており、後述するように登場人物の変更も行われている。 本作公開から6年もの月日が流れた後、今度は発起人の一人である小説家・意匠家の[[京極夏彦]]による[[小説版>虚実妖怪百物語]]が発表された。 本作、そして1968年版へのオマージュこそふんだんに盛り込まれているものの徹頭徹尾オリジナルの展開となっており、こちらはこちらで&font(b){「京極版 妖怪大戦争」}としての立ち位置を確立している。 **【あらすじ】 #center(){&font(White,#000000,16px){あの夏、僕は初めて恋をした}} #center(){&font(White,#000000,16px){そして……まっ白な嘘をついた}} #blockquote(){今年10歳になるタダシは両親の離婚により、父親と4歳年上の姉と別れ、母親と祖父と共に母の故郷・鳥取で暮らす日々。 そんなある日、タダシは神社のお祭りで、大勢の子供の中から《麒麟送子》に選ばれる。麒麟送子は世界の平和をもたらすという正義の味方の役で、大天狗が守る伝説の聖剣を取りに山の洞窟に行かなくてはならないという。 勇気を振り絞って山に登っていくタダシだったが、やはり怖くなり途中で引き返してしまい、ちょうどやって来たバスに飛び乗る。 そのバスでタダシは言葉の分かる、愛らしい不思議な妖怪・すねこすりと出会い、家に連れて帰るのだった。 そんな中、日本各地では、突然子供が消えたり、恐ろしい化け物が人間を襲ったりする事件が多発していた。それは、この世に恨みをもつ悪霊たちの仕業だった。 #right(){(KADOKAWAのサイトに掲載されたあらすじより抜粋)} } **【主な登場人物・妖怪】 ・稲生タダシ 演:[[神木隆之介]] 主人公。両親の離婚が原因で[[東京>東京都]]から母親の故郷である[[鳥取>鳥取県]]へと転校してきた小学生。 都会から来たということでクラスではいじめられている。 作中では&b(){&color(hotpink){入浴シーンがあったり着替えシーンがあったり}}と、ヒロイン以上にヒロイン的なことをしている。 おかげで[[某漫画>さよなら絶望先生]]では、わざわざ[[ショタ好きキャラ>小森霧]]に&font(b){「神木君の尻みせ映画じゃん!!」}と主張させるという形でイジられている。((とは言うもののモロではないし、後述する『金曜ロードショー』での地上波放送だと該当シーンはカットされている。)) ちなみに神木氏は16年後の『妖怪大戦争 ガーディアンズ』にも別な役で参加しているが、その名前は…。 ・稲生俊太郎 演:菅原文太 ちょっとボケが始まっているタダシのじいちゃん。 ・稲生タタル 演:成海璃子 タダシの姉。 父親についていったため出番は非常に少ないが、 ノベライズ版では両親がまだ離婚していないためか出番も多く、一転して重要キャラに格上げされている。 ・佐田五朗 演:宮迫博之 雑誌『怪』の編集者で、麒麟獅子の取材のために鳥取を訪れていた。 幼いころ川で溺れかけていたところを川姫に助けられ、それを機に妖怪に興味を持ち今の仕事に就いた。 既に妖怪は見えなくなっているが、終盤にてアルコールを摂取し理性が吹っ飛ぶ=一種のトランス状態に入ることで強引に妖怪を見られるようになった。 その際、川姫と再会を果たすが……。 『水木版 妖怪大戦争』には登場せず、そのポジションは怪執筆陣の一人である村上健司が担っている。((ただし、この物語はフィクションであり実在の人物・団体・事件とは一切関係ありませんということで、名前が村神に変更されている。)) ・編集長 演:佐野史郎 『怪』の編集長。雑誌が休刊の危機に陥ったことでピリピリしている。 そのことを佐田に電話で伝えるシーンでは、すぐ傍に&font(b){当時の『怪』の本物の編集長が立っていたりする。} 演じる佐野氏は芸能界随一の水木マニアとして知られており、本作以外にも多くの妖怪関係の作品に出演するほか、『怪』のイベントに出演したこともある。 ・宮部先生 演:宮部みゆき タダシのクラスの担任の先生。 いじめっ子の頭を&font(l){リズムゲームの如くリズミカルに}叩いていたのが印象に残る。 演じるは『怪』執筆陣の一人にして&font(l){[[ガチゲーマー>ここはボツコニアン]]}直木賞作家の宮部みゆき。 女優の室井滋とは親友であり、今回の出演にあたってガッツリ演技指導を受けてきたとか。 ちなみに宮部女史こそが本作のリメイクを提案した張本人なのだが、 後日京極氏の聞き取りで&font(b){妖怪三部作の1作目『妖怪百物語』とガチでタイトルを勘違いしていたという事実が判明している。} ・読書好きのホームレス 演:大沢在昌 &font(b){身も蓋もない役名である。} 演じるは『新宿鮫』などのハードボイルド小説を得意とする直木賞作家の大沢在昌。 京極、宮部両氏の所属事務所のボスということで『怪』連載陣でも何でもないのに出演している。 直前まで日本推理作家協会の理事長を務めていたため、作中それをイジった発言が出てくる。 ヨモツモノが名古屋城をぶっ壊したシーンが出番なのは、氏が[[名古屋>名古屋市]]出身のため。 ・すねこすり [[声>声優(職業)]]:[[竹内順子]] タダシが大天狗の山で出会った小妖怪。 [[猫]]に似た姿のため、当初はタダシから「ネコモドキ」と呼ばれていた。 アギによって捕らえられてしまい……。 漫画版ではなぜか喋れる。 ・川姫 演:高橋真唯 本作のヒロインで、女性の姿をした水怪。 &b(){&color(hotpink){ただひたすら太ももがエロい。}} 河童は藁人形が変化したモノという説があるが、それを踏まえて彼女も藁人形が妖怪化したモノであると設定されており、 人形から妖怪へと変貌を遂げる過程で加藤と因縁が生じている。 実際の伝承としては[[福岡県]]や[[大分県]]に伝わっており、九州寄りの文化を持つ[[高知県]]西部にもその話が伝わっている。 ・猩猩 演:近藤正臣 麒麟送子を導く役目を帯びた、全身まっ赤な姿の妖怪。タダシに勇気を試す試練を与えた。 加藤の野望を阻止するべく日本妖怪たちに協力を要請するが……。 [[鬼太郎>ゲゲゲの鬼太郎(キャラクター)]]よろしく、髪の毛を立てて妖気を探る能力を持つ。 ちなみに演じた近藤氏は、以前ドラマ『京極夏彦「怪」』で「中禅寺州斎」という[[どっかで聞いたような名前>中禅寺秋彦(京極堂)]]の憑物落としの男性を演じていた。 ・川太郎 演:阿部サダヲ いわゆる一つの[[河童]]。本作におけるコメディリリーフ。 正義感が強く、基本的にやる気がない妖怪たちの中でタダシに協力する道を選んだ数少ない妖怪の一人(一匹)。 川太郎は本来関東地方での河童の呼び名なのだが、何故かこやつは関西弁を喋る。 ・油すまし 演:竹中直人 普段は水木氏の妖怪画と同じ巨大な頭をしているが、通常サイズに縮めることも可能。 1968年版では日本妖怪のまとめ役として活躍を見せたのだが本作では……。 ちなみに竹中氏は、かつて単発ドラマ版『ゲゲゲの鬼太郎』で[[ねずみ男]]役を担当していた。 ・[[ぬらりひょん]] 演:忌野清志郎 日本妖怪の総大将。 演じる忌野氏は、三池作品には2001年の『カタクリ家の幸福』に続いて2作目の出演。&s(){ちなみに本人は『カタクリ家』後、監督に次は忍者をやりたいと言っていたそうな} アーティスト仲間である井上陽水とともに本作の主題歌および挿入歌も担当している。 ・[[小豆洗い>小豆洗い/小豆とぎ]] 演:[[岡村隆史]] 成り行きからタダシたちと行動を共にすることになってしまった、小豆を洗うだけしか能がない妖怪。 しかし彼の小豆が終盤の逆転に繋がることに。 演じる岡村氏はレギュラー番組である『[[めちゃ2イケてるッ!]]』のコントコーナーにこのメイクと衣装のままで出演、 よっぽど気に入ったのかはたまた視聴者からの評判が良かったのか、&font(b){上映が終了して宣伝する必要がなくなってからも引き続き小豆洗いの格好で出演している。} ・大天狗 演:遠藤憲一 かつて麒麟送子に退治され家来となった、その名の通り巨大な[[天狗>天狗(妖怪)]]。 麒麟送子の聖剣を保管し守っている。 戦闘時には葉団扇から物凄い勢いの突風を出すが、そのパワーを狙われて……。 ・一本ダタラ 演:田口浩正 その名の通り一本足をした獣の妖怪。 山中のタタラ場を由来とする妖怪のため、作中では刀鍛冶という設定になっており、 折れた麒麟送子の聖剣を修復できる存在とされている。 ・豆腐小僧 演:蛍原徹 終盤の妖怪大戦争&font(l){という名のお祭り騒ぎ}では、そこらをウロチョロしていた。&font(b){それだけ。} まあ実際にそういう出オチみたいな妖怪だからしょうがない。 他の出演者がガッツリ特殊メイクをして妖怪を演じているのに対し、 蛍原氏は&font(b){全くのノーメイクだということで話題になった。} 相方の宮迫氏にとっても強く印象に残っていたらしく、後年氏に京極氏原作の『豆富小僧』の出演オファーが来た際、 タイトルを聞いて真っ先に&font(b){「ホトちゃんがやってたやつや」}と思ったそうな。 ・加藤保憲 演:豊川悦司 帝都の滅亡を望み古より暗躍を続ける魔人。 ヨモツモノを利用し、機械と妖怪を&font(l){悪魔合体}融合させた&font(b){機怪}を先兵に用いる。 元々は荒俣氏の代表作『[[帝都物語]]』シリーズの登場キャラクターで、[[実写版>帝都物語(映画)]]、OVA版、更に『[[仮面ノリダー]]』では俳優の嶋田久作が演じている。 あまりにもはまり役だったため原作小説でも嶋田氏の容姿を意識した描写が文庫版にて加筆されるなど、嶋田氏の加藤は作者公認状態だった。 ところが本作では諸事情でトヨエツこと豊川氏に交代となり、 そのため荒俣氏は&font(b){時代や場所に応じてその都度容姿を変える能力を持つ}という設定を急遽用意する羽目になっている。 姿もいつもの軍服ではなくなっており、事情を知らない人が見たらたぶん誰も加藤保憲とは思わないだろう。 ・鳥刺し妖女アギ 演:[[栗山千明]] 妖怪仲間を裏切り、加藤に与した女妖怪。鞭を手に前線に立ち指揮を執る。 妖艶……と言うか&b(){&color(hotpink){エロい。}} 『水木版 妖怪大戦争』では、『河童の三平』などの水木作品に登場するオリジナルキャラクターの&font(b){魔女花子}に差し替えられている。 また、加藤の切り札が『[[悪魔くん]]』などに登場した&font(b){ナンジャラモンジャラ}に変更されるなど、 水木版は全体的に氏のセルフオマージュ登場率が高い作品となっている。 ・山ン本五郎左衛門 演:荒俣宏 『[[稲生物怪録]]』に登場する魔王。 宿敵の神ン野と共に妖怪大翁に仕えている。 加藤の野望が潰えるのを遠くから見届けていた。 ・神ン野悪五郎 演:京極夏彦 山ン本とその勢力を二分する魔王。 手には小さな匣を提げており、中には小さな女性が入っている。&font(l){[[「みつしり」>魍魎の匣(小説)]]とは入っていない。} 演じる京極氏は、本作に出演する妖怪のチョイスも行っている。 ・妖怪大翁 演:水木しげる 日本妖怪の頂点に君臨する存在。その姿は輿の中に鎮座する巨大な顔。 山ン本からは&font(b){&ruby(おおせんせい){大先生}}と呼ばれている。 神ン野の「勝ち戦」という発言に対し、&b(){&color(red){「戦争はいかんです。腹が減るだけです」}}と返した。 この台詞は、『[[ゲゲゲの鬼太郎>ゲゲゲの鬼太郎(原作)]]』にて[[ねずみ男]]が発言した&b(){&color(red){「けんかはよせ 腹がへるぞ」}}という台詞が元になっている。((初出は『墓場鬼太郎』の「ボクは新入生」。そのセルフリメイクである「朧車」のエピソードでも用いられた。アニメでは6期最終回にてアレンジされたものが用いられている。)) 水木氏の思想や水木作品の根底に流れるものを端的に言い表した名言としてファンの間では非常に評判が良く((水木作品の名言集のタイトルにも採用されている。)) それ故に台詞として採用されたものと思われる。 **【キーワード】 ・麒麟送子 麒麟獅子によって選ばれた少年のこと。伝説では世界を救う英雄とされる。 地元の少年曰く、&font(b){かつて[[アントニオ猪木]]も噛まれたことがあるらしい}が真偽は定かではない。 祭りそのものは鳥取県に実在する伝統芸能。こちらの方でも実際に猩猩がセットになって登場する。 ・ヨモツモノ 加藤が復活させた大怨霊。 現代人によって消費され打ち捨てられてきた器物に宿る魂が、人間への憎しみから怨霊と化したモノ。 加藤が拠点としている機怪の製造工場それ自体に憑依しており、その恨みが溶け込んだ&font(b){妖怪溶鉱炉}から様々な種類の機怪を生み出す。 鯨に獣の脚が生えたかのような奇怪な姿をしており、山よりも巨大な体で空を飛び移動する。 ・機怪 廃棄された人工物と妖怪が融合して生まれた魔物。 素体となった妖怪の意思は残っておらず、怨念によって突き動かされ人間やかつての妖怪仲間を無差別に襲う。 基本的に名称は「〇〇機怪」という形で統一されており、何の機械から生まれたか、あるいはどういう用途かによって〇〇部分が異なるのだが、 [[バイク]]の機怪のみ何故か&font(b){Zモンスター}という他とは異なるパターンのネーミングが用いられている。 ちなみに機怪のデザインを担当したのは韮沢靖。%%なるほど通りで%% ・まっ白な嘘 本作全体を通しての重要なキーワード。 &font(#0000ff,u){&font(#ffffff){本作の妖怪たちは大人になると見えなくなるが、大人の階段を上る条件の一つとして方便を用いることが挙げられている。}} &font(#0000ff,u){&font(#ffffff){全てが終わった後、タダシは佐田のために相手の気持ちを慮っての優しい嘘、俗に言う「ホワイトライ(まっ白な嘘)」をついたがそれがトリガーとなっている。}} &font(#0000ff,u){&font(#ffffff){エピローグにて大人になったタダシが登場するが、彼には最早すねこすりの存在も感じられず、魔人加藤の復活も示唆されるという非常に後味の悪い結末となっている。}} &font(#0000ff,u){&font(#ffffff){この大人になったタダシは、タダシの父親役の津田寛治が二役で演じている。いつの間にか嫌っていた父親と同じ存在になってしまったという隠喩である。}} &font(#0000ff,u){&font(#ffffff){ノベライズ版ではまっ白な嘘をついたシチュエーションや嘘の内容が別のものに変更されている。}} ・小豆 &b(){&color(#A04940){小豆は&ruby(みがら){体}にええだ}} &b(){&color(#A04940){byじいちゃん}} **【余談】 本作が『金曜ロードショー』枠で地上波放送された後の土日は、 境港の水木しげるロードの観光客数がいつもより増えたという報告が観光協会よりなされている。 ただしこの地上波放送、尺に収める必要があるためか非常に大胆な編集が行われており、 前述の「まっ白な嘘」関係の描写がことごとくカットされた結果&font(b){地上波ではオチが流れないため後味が悪くならないまま終わっている。} 尤もそのせいでTV放送しか見ていない視聴者の中には、「この映画は投げっぱなしエンドだ」と勘違いしている人も多いようだが。((某所の映画レビューのコメント欄が特に顕著。)) 作中には数多くの妖怪たちが出演するが、その多くが名前を名乗らないため 後述する書籍や映画パンフレットを読まなければ誰が誰だか分からないようになっている。 その点を妖怪の大安売りみたいに感じて不満に思う人もいるようだが、 本来妖怪とは&font(b){名前が存在しないモノである}という民俗学的事実((学者や作家などに後付けで名前を付けられる妖怪が非常に多く、その事実を知らない一般人が口出ししてくるため研究の妨げになっていると国際日本文化研究センターの「怪異・妖怪伝承データベース」管理者がイベントで零したこともあるほど。))を踏まえると、作中での描写は非常に正しいと言える。 本作のDVDは通常版に加え、 特典ディスク1枚と特製シールが付いたDTSスペシャル・エディション、 特典ディスク2枚と[[PSP>PlayStation Portable]]で視聴するためのUMDが付いたDTSコレクターズ・エディションがそれぞれ初回限定生産で発売されている。 また、『怪』本誌の通販限定で愛蔵版も発売されており、 こちらは特典ディスクが更に1枚追加されて計3枚となっているのに加え、&font(b){撮影に用いられたすねこすりのパペットの1分の1レプリカが特典として付いている。} ただし追加された特典ディスクの内容は、本作とは関係ない『怪』の歴代イベントの様子を収めたものとなっており、完全にコアなヲタ向けの内容となっている。 本作のメイキングを収録した『妖怪大戦争~ある夏の冒険記~』というDVDも発売されている。 コレクターズ・エディションに封入されている2枚目の特典ディスクには、なんと&font(b){京極氏が監督・編集した寸劇が収録されている。} 京極氏が小説家としてデビューする以前に映像制作の仕事に携わっていたという事実はファンの間では有名な話であり、 本作にて氏の非凡な才能の片鱗を窺うことができるだろう。ファン必見。 なおブルーレイ版にはコレクターズ・エディションの2枚の特典ディスクが最初から付いてくるので、今から視聴するのであればそちらをお勧めする。 本作に登場するモブも含めた主要妖怪の写真を集め、そこに解説を加えた『写真で見る日本妖怪大図鑑』という本が当時発売されていた。 佐田が書いたという体だが、実際には村上氏が文章を担当している。 モブ妖怪の中には撮影所にあった適当な衣装を着用しただけのオリジナル妖怪も多々含まれるのだが、&font(b){それら全てに名前と解説が与えられている}のが特徴。 これらオリジナル妖怪の設定を考えるのは非常に楽しかったと、後年村上氏は公の場で語っている。 また、本書のカバーデザインは京極氏が、掲載されたイラストは妖怪研究家の多田克己が担当しており、何気に[[「妖怪馬鹿」の3名が揃っての仕事>ひどい民話を語る会]]となっている。 ちなみにこの本、企画ものということもあって重版は掛かっておらず、現在は定価の倍ぐらいの値段で取り引きされているため注意。 2020年1月、妖怪映画のエキストラ募集がSNS上で行われた。 後に発表された映画のタイトルは『妖怪大戦争 ガーディアンズ』。 三池氏が引き続き監督を担当していることもあり、本作の続編だと解釈している人も多いようだが、 荒俣氏こそ製作総指揮に名を連ねているものの、それ以外の関係者は誰一人関与していないことに留意されたし。 &font(l){一方、脚本があの『[[ガッチャマン>ガッチャマン(実写映画)]]』や『[[進撃の巨人>進撃の巨人(実写版)]]』2部作の渡辺雄介氏という事で一部からは既に不安の声も……} その『妖怪大戦争 ガーディアンズ』公開直前特番として、2021年8月9日に『午後のロードショー』枠で久々に地上波放送されている。 『金ロー』にてカットされた結末部分が放送されたため、SNS上では&font(b){「俺の知らないエンディングが流れた」}と驚く視聴者も見受けられた。 しかしながら、それ以外の部分で大量のカットが行われており、一例を挙げると ・タダシが川太郎たちと共に山中を冒険するシーンが丸々カットされ、&font(b){CMが明けたらいつの間にかタダシが大天狗から聖剣を授かっていた。} ・機怪が一般市民を次々と襲撃していく中、赤飯を食べていたじいちゃんだけが襲われないという伏線がカットされたため、終盤の展開がますます唐突になった。((この場面は『金曜ロードショー』の方でもカットされている。)) ・佐田が大量のビールを飲んでトランス状態に入るシーンがカットされたため、先程まで目に見えない妖怪たちに翻弄されていた佐田がカットが変わった瞬間、いつの間にか妖怪が見えるようになっていて狂喜乱舞している。 ・本作のミソである妖怪大翁の金言が&font(b){出番も含めて丸々カット。} といった感じで、初見の人間でも明らかに繋がりがおかしいと分かる内容になっていた。 『金ロー』『午後ロー』が揃いも揃ってカット祭りになった理由として、本作がノーカットだと120分越えの大作であることが挙げられる。CMを除いて100分あるかないかの地上波ではそもそもまともに放送するのが困難だったのだ。 &font(l){そして物語序盤に登場する名優・柄本明は、毎回カットされるため地上波放送しか見たことのない層からは出演していること自体知られていないのであった。} 追記・修正は麒麟送子に選ばれてからお願いします。 ---- &link_up(△)メニュー &link_edit(text=項目変更)&link_copy(text=項目コピー) &link_diff(text=項目変更点)&link_backup()&link_upload(text=アップロードページ) ---- #include(テンプレ3) #center(){ &font(b,red){ここから先、物語のクライマックスについてのネタバレがあります。} &font(b,red){本作を未視聴の方はご注意ください。} } さて、本作の視聴者が不満点として挙げることが多いのが ・妖怪大戦争というタイトルでありながら肝心の妖怪たちが全く戦おうとしない ・加藤の野望が&b(){たった一粒の小豆で阻止される} という2点である。 妖怪同士の派手なアクションやバトルシーンを期待した層は肩透かしを喰らい、しかも加藤保憲という超大物があんまりにもあんまりな最期を迎えたことで尻すぼみに感じてしまったわけである。 が、これらは全て&font(b){荒俣、京極両氏が企画段階で既に決めていたこと}だというのはあまり知られていない。 ・&font(b){何故妖怪たちは戦わないのか} まず妖怪たちが一向に戦おうとしない理由について。これは荒俣、京極両氏が揃って &font(b){「妖怪は基本的に人を驚かしたり馬鹿騒ぎが好きなだけの怖くもなんともない愉快な存在」}という見解を持っているため。 人に危害を加える妖怪もいるではないかと反論される方もおられるだろうが、それらは人間側が妖怪のテリトリーに踏み込んだために起こる出来事であり、 基本的に妖怪は自分たちから戦おうとはしない。 妖怪同士が合戦している古い絵を見たことがある人もおられるかもしれないが、 ああいった錦絵の類は、そのまま描くと当時のコンプライアンスに引っかかる題材を妖怪に見立ててあるだけで妖怪そのものを描いているわけではない。 一方で妖怪たちは馬鹿騒ぎ、特にお祭りが大好きだ。 夏祭りの風物詩である盆踊りは、本来は目に見えない存在と一緒になって踊り楽しむためのものだ。 だから妖怪たちは加藤との抗争には消極的で、にも拘らず日本最大級のお祭りがあると聞くと我慢できずに各地から駆け付けたわけである。 監督の三池氏は最初妖怪のバトルシーンを撮るつもりで脚本を準備していたが『怪』サイドからNGが出てしまい、 何故なのか分からず困惑していたところに&font(b){荒俣、京極両氏から付きっきりで説明を受けた}ことでようやく戦ってはいけない理由に納得したそうな。 ちなみに荒俣氏は、タダシが廃屋でぬらりひょんたちと出会うシーンの撮影を見学に訪れた際、 休憩時間に妖怪メイクの出演者と普通の格好のスタッフが入り乱れて談笑する様子を見て、これが一番コンセプトに近い状態だったと語っている。 ・&font(b){何故小豆なのか} 次に小豆についてだが、作中でじいちゃんが語っている通り小豆にはタンパク質、食物繊維、ビタミンB1やB2といった豊富な栄養素が含まれている。 だがそれだけではない。 古来より日本では&font(red){赤}は&font(red){太陽}や&font(red){炎}を象徴する色であり、邪気を祓う効果があるとされた。 アズキは&font(#A04940){「小豆」}という漢字が当てられているが、本来&font(#A04940){「ア」}とは&font(red){「赤」}を指す言葉である。((英語では「レッドビーンズ」と、より直接的な名称が与えられている。)) 小豆にはそれ自体に邪気を祓い、更には&font(b){霊的影響を断ち切る力がある}と記紀神話の時代から信仰されているのだ。 慶弔時に赤飯を炊く習慣はそこから来ていると民俗学者の柳田國男は説を述べており、 また、小豆を地面や床に撒くことで魔を祓うという言い伝えから、小豆洗いや小豆はかりといった妖怪との関連性を指摘されることもある。 つまり怨念の塊であるヨモツモノに対し小豆は特効だったのである。この「断ち切る力」によって加藤はヨモツモノとの融合を阻止されてしまったというわけ。 余談になるが、特定の穀物や果実などが邪気を祓うという伝承は世界各地に見受けられる。 たとえばキリスト教圏では古代ケルトの時代からヘーゼルナッツが神聖なものとして扱われてきており、 その事実を踏まえて視聴すると、[[序盤のとあるシーンが全く別の意味に見えてくる海外ホラー映画>ヘレディタリー/継承]]も存在する。 これらについて作中で具体的な説明は行われていない。おそらくストーリーのテンポを阻害すると判断されたのだろう。 しかしながらその結果、戦わない妖怪たちに困惑したり小豆が唐突に感じられた視聴者が多く現れ、物語の評価にも影響を及ぼしてしまっているのは否めない。 ノベライズ版ではその辺りの補完がきちんとなされているのを見るに、単純に脚本の問題かもしれないが。 なお当時発売された「妖怪大戦争 公式ガイド」と銘打った『怪 vol.19』には、ここで述べた内容をより詳しく解説した記事が掲載されているので 興味のある人は古本屋などで探してみるのもいいかもしれない。 逆に言うと『怪』を読んでいるようなコアでディープな妖怪ファンからは意図が汲める分ウケが良く、 中途半端に妖怪が好きなライト層や妖怪に興味のない層からは低く評価されることが多い作品と言い換えることもできる。 追記・修正は盆踊りで楽しんだ後、赤飯を美味しく頂いてからお願いします。 #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,5) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - TVで放送してたやつしか観てなかったからエピローグがカットされてたこと知らなかった。子供のころ「え?これで終わり?」と呆気に取られたの覚えてる -- 名無しさん (2020-11-30 04:29:16) - 地上波でもエピローグをカットしなかったバージョンが流れたことがあったような -- 名無しさん (2020-11-30 06:40:43) - 最後の加藤は、小豆のせいで毒気が抜けて普通の人間になってしまってるんじゃないかなぁ? -- 名無しさん (2020-11-30 07:27:28) - 幻想郷の妖怪(やくもゆかり)が厳密には妖怪とは違うってそういうことなのかなあ -- 名無しさん (2020-11-30 07:44:29) - 適当な終わりかただなあ、と思ってたらカットされてたのか。 -- 名無しさん (2020-11-30 07:48:42) - 『写真で見る日本妖怪大図鑑』、当時本屋で何んとなしに買って面白かった覚えがあるけど手放しちゃったなぁ……残念無念 -- 名無しさん (2020-11-30 07:57:38) - 妖怪大戦争というタイトルといかにもバトル物っぽい宣伝さえなければガッカリされることもなかったんだろうなとは思う。 -- 名無しさん (2020-11-30 09:28:22) - なんで小豆???と思ったらちゃんと理由があったのね… -- 名無しさん (2020-11-30 10:18:17) - まあこの世界には芋羊羹で倒された宇宙の支配者もいるんだけどね! -- 名無しさん (2020-11-30 12:28:43) - 現地で買ったパンフで三池監督が「『大戦争』として準備してたら先生方が『妖怪は戦いません』と口を揃えるからもうどうしようかと」と述べてるのがすごく印象的だったが、やっぱりキーだったんすねそこが……小豆も小豆でなければならなかったというのは初耳だが -- 名無しさん (2020-11-30 14:49:22) - そもそも麒麟送子とかいう人間側の正義の味方みたいなヒーローものっぽいポジションをぶち込んだこともどっちつかずな原因だったと思う。-- 名無しさん (2020-11-30 15:55:25) - CMで油すましが飛んでるとこで、古いほうの映画で杖でぶっ指すとこのオマージュかと思ったら、ただ吹っ飛んだだけだった -- 名無しさん (2020-11-30 19:19:31) - 敵の機怪が韮沢靖デザインでフルCG前提で特撮の怪人みたいにスーツ体型に合わせなくていいから自由かつ氏の趣味てんこ盛りなデザインが見られる。韮沢怪人が好きならデザイン画は一見の価値アリ -- 名無しさん (2020-11-30 21:43:04) - 結末こんななのか。「子供は妖怪と人間の間にいる存在」とゲゲゲの鬼太郎でやってたし、やはり子供の方が妖怪と近しいのだな。 -- 名無しさん (2020-12-01 00:40:39) - ラストは主人公の彼がすねこすりが見えなくなって..そのすねこすりの元に...!? -- 名無しさん (2020-12-01 01:07:05) - エンタメに、専門家にマジレスさせた結果みたいな感じか -- 名無しさん (2020-12-01 01:31:05) - リメイク元の1968年版の妖怪大戦争はちゃんと日本侵略を目論むオリジナル西洋妖怪とそれを防ごうとする日本妖怪とでちゃんと戦ってたんだけどねぇ -- 名無しさん (2020-12-03 00:36:52) - 日本古来の伝承や妖怪像を描きはしたものの、そのために本来観客が期待していたであろうエンタメではなくなったってことかな。いっそ子供向け映画の体じゃないほうが良かったのかも -- 名無しさん (2020-12-03 00:41:05) - というか上の人も言ってるように妖怪“大戦争”というタイトルと戦うかのような番宣が期待と違ったことでガッカリさせられたのでは。 -- 名無しさん (2021-01-10 10:49:57) - 久々に見返したら面白かった。たしかに言われてみれば「大戦争」はしてなかったなぁw今の今まで気にしたことなかった。 -- 名無しさん (2021-05-15 12:28:37) - 新しいのやるからテレビでやらんかなぁと思ったが闇営業のせいでやれないな -- 名無しさん (2021-08-11 16:15:16) - リメイク版は大魔神出てくるらしいがどうなるか -- 名無しさん (2021-08-11 17:34:52) - 相談所に報告のあった違反コメントとそれに触れたコメントを削除しました。 -- 名無しさん (2022-10-12 18:37:39) - 柳田國男は妖怪を神の零落した姿と解釈したけど、妖怪は本当はそんな大層なものじゃない。もっと卑俗でバカバカしいものなんだよってのが水木先生とその弟子たちの解釈だからね。 -- 名無しさん (2022-10-29 17:54:09) - 昔、図鑑版を古本屋で読んだときサルティンバンコって名前の妖怪がいた気がするんだけど、多分オリジナルだよね? -- 名無しさん (2023-05-28 19:03:57) - 力を狙われて捕まった大天狗が巨大機怪にされて川姫達が曇る展開かと思ったが別にそんな事は無かったぜ!…捕まった後フェードアウトしたけど無事なのかなあ -- 名無しさん (2023-08-01 22:41:51) - チーム怪の考える妖怪像を描きたいという意図は解ったが、タイトル詐欺になってるのはエンタメとして致命的だったと思う。キッズ向けだし宣伝の打ち方からして純粋に期待して観に行ったファミリー層からは拍子抜けと評されてもしゃーない -- 名無しさん (2024-05-13 11:17:28) - 自分も小さい頃地上波初のを最後まで見たけど、結末が「あれっ?」って感じで疑問に思ってたが、やっぱりカットされてたのね。後々考えてみると黒幕の野望も岡村隆史演じる小豆洗いの小豆でおじゃんになるのも変だったし -- 名無しさん (2024-05-13 13:09:13) - スネコスリも加藤も復活してるからアギだけ無駄死になんだよな…… -- 名無しさん (2024-06-17 19:23:55) #comment #areaedit(end) }
&font(#6495ED){登録日}:2020/11/30 Mon 00:36:10 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 19 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- #center(){&bold(){&sizex(16){&color(red){――この夏 史上最大の《冒険》が始まる。}}}} 2004年、秋。調布市にある角川大映スタジオにて、ある映画のリメイクが行われると発表された。 その映画のタイトルは『妖怪大戦争』。1968年に公開された大映制作による妖怪三部作の2作目だ。 既にクランクインしており、監督は三池崇史、主演は当時11歳の[[神木隆之介]]であることなどが発表された。 それから約1年後の2005年8月に松竹配給で封切られ、様々な著名人が特殊メイクで妖怪に扮するという話題性も手伝ってか、20億円の興行収入を得ている。 本作は漫画家の[[水木しげる]]が陣頭指揮を執る[[角川書店>角川書店/KADOKAWA]]の季刊誌『[[怪>怪(ムック本)]]』執筆陣が発起人となってリメイクを進めたという経緯があり、 原案は博物学者・作家の荒俣宏が担当。氏は本作のノベライズ版も執筆している。 このノベライズ版、映画公開より前に発売されたこともあってか本作の原作小説だと勘違いしている人も多いようだが、あくまでも&font(b){映画をノベライズ化したもの}である。 映画では説明不足だった箇所を補完する内容となっているが、完全に同じストーリーというわけではなく細部は異なっている。 水木氏も『水木版 妖怪大戦争』のタイトルでコミカライズ版を『怪』誌上にて連載していた。 こちらは序盤以降の展開は完全にオリジナルとなっており、後述するように登場人物の変更も行われている。 本作公開から6年もの月日が流れた後、今度は発起人の一人である小説家・意匠家の[[京極夏彦]]による[[小説版>虚実妖怪百物語]]が発表された。 本作、そして1968年版へのオマージュこそふんだんに盛り込まれているものの徹頭徹尾オリジナルの展開となっており、こちらはこちらで&font(b){「京極版 妖怪大戦争」}としての立ち位置を確立している。 **【あらすじ】 #center(){&font(White,#000000,16px){あの夏、僕は初めて恋をした}} #center(){&font(White,#000000,16px){そして……まっ白な嘘をついた}} #blockquote(){今年10歳になるタダシは両親の離婚により、父親と4歳年上の姉と別れ、母親と祖父と共に母の故郷・鳥取で暮らす日々。 そんなある日、タダシは神社のお祭りで、大勢の子供の中から《麒麟送子》に選ばれる。麒麟送子は世界の平和をもたらすという正義の味方の役で、大天狗が守る伝説の聖剣を取りに山の洞窟に行かなくてはならないという。 勇気を振り絞って山に登っていくタダシだったが、やはり怖くなり途中で引き返してしまい、ちょうどやって来たバスに飛び乗る。 そのバスでタダシは言葉の分かる、愛らしい不思議な妖怪・すねこすりと出会い、家に連れて帰るのだった。 そんな中、日本各地では、突然子供が消えたり、恐ろしい化け物が人間を襲ったりする事件が多発していた。それは、この世に恨みをもつ悪霊たちの仕業だった。 #right(){(KADOKAWAのサイトに掲載されたあらすじより抜粋)} } **【主な登場人物・妖怪】 ・稲生タダシ 演:[[神木隆之介]] 主人公。両親の離婚が原因で[[東京>東京都]]から母親の故郷である[[鳥取>鳥取県]]へと転校してきた小学生。 都会から来たということでクラスではいじめられている。 作中では&b(){&color(hotpink){入浴シーンがあったり着替えシーンがあったり}}と、ヒロイン以上にヒロイン的なことをしている。 おかげで[[某漫画>さよなら絶望先生]]では、わざわざ[[ショタ好きキャラ>小森霧]]に&font(b){「神木君の尻みせ映画じゃん!!」}と主張させるという形でイジられている。((とは言うもののモロではないし、後述する『金曜ロードショー』での地上波放送だと該当シーンはカットされている。)) ちなみに神木氏は16年後の『妖怪大戦争 ガーディアンズ』にも別な役で参加しているが、その名前は…。 ・稲生俊太郎 演:菅原文太 ちょっとボケが始まっているタダシのじいちゃん。 ・稲生タタル 演:成海璃子 タダシの姉。 父親についていったため出番は非常に少ないが、 ノベライズ版では両親がまだ離婚していないためか出番も多く、一転して重要キャラに格上げされている。 ・佐田五朗 演:宮迫博之 雑誌『怪』の編集者で、麒麟獅子の取材のために鳥取を訪れていた。 幼いころ川で溺れかけていたところを川姫に助けられ、それを機に妖怪に興味を持ち今の仕事に就いた。 既に妖怪は見えなくなっているが、終盤にてアルコールを摂取し理性が吹っ飛ぶ=一種のトランス状態に入ることで強引に妖怪を見られるようになった。 その際、川姫と再会を果たすが……。 『水木版 妖怪大戦争』には登場せず、そのポジションは怪執筆陣の一人である村上健司が担っている。((ただし、この物語はフィクションであり実在の人物・団体・事件とは一切関係ありませんということで、名前が村神に変更されている。)) ・編集長 演:佐野史郎 『怪』の編集長。雑誌が休刊の危機に陥ったことでピリピリしている。 そのことを佐田に電話で伝えるシーンでは、すぐ傍に&font(b){当時の『怪』の本物の編集長が立っていたりする。} 演じる佐野氏は芸能界随一の水木マニアとして知られており、本作以外にも多くの妖怪関係の作品に出演するほか、『怪』のイベントに出演したこともある。 ・宮部先生 演:宮部みゆき タダシのクラスの担任の先生。 いじめっ子の頭を&font(l){リズムゲームの如くリズミカルに}叩いていたのが印象に残る。 演じるは『怪』執筆陣の一人にして&font(l){[[ガチゲーマー>ここはボツコニアン]]}直木賞作家の宮部みゆき。 女優の室井滋とは親友であり、今回の出演にあたってガッツリ演技指導を受けてきたとか。 ちなみに宮部女史こそが本作のリメイクを提案した張本人なのだが、 後日京極氏の聞き取りで&font(b){妖怪三部作の1作目『妖怪百物語』とガチでタイトルを勘違いしていたという事実が判明している。} ・読書好きのホームレス 演:大沢在昌 &font(b){身も蓋もない役名である。} 演じるは『新宿鮫』などのハードボイルド小説を得意とする直木賞作家の大沢在昌。 京極、宮部両氏の所属事務所のボスということで『怪』連載陣でも何でもないのに出演している。 直前まで日本推理作家協会の理事長を務めていたため、作中それをイジった発言が出てくる。 ヨモツモノが名古屋城をぶっ壊したシーンが出番なのは、氏が[[名古屋>名古屋市]]出身のため。 ・すねこすり [[声>声優(職業)]]:[[竹内順子]] タダシが大天狗の山で出会った小妖怪。 [[猫]]に似た姿のため、当初はタダシから「ネコモドキ」と呼ばれていた。 アギによって捕らえられてしまい……。 漫画版ではなぜか喋れる。 ・川姫 演:高橋真唯 本作のヒロインで、女性の姿をした水怪。 &b(){&color(hotpink){ただひたすら太ももがエロい。}} 河童は藁人形が変化したモノという説があるが、それを踏まえて彼女も藁人形が妖怪化したモノであると設定されており、 人形から妖怪へと変貌を遂げる過程で加藤と因縁が生じている。 実際の伝承としては[[福岡県]]や[[大分県]]に伝わっており、九州寄りの文化を持つ[[高知県]]西部にもその話が伝わっている。 ・猩猩 演:近藤正臣 麒麟送子を導く役目を帯びた、全身まっ赤な姿の妖怪。タダシに勇気を試す試練を与えた。 加藤の野望を阻止するべく日本妖怪たちに協力を要請するが……。 [[鬼太郎>ゲゲゲの鬼太郎(キャラクター)]]よろしく、髪の毛を立てて妖気を探る能力を持つ。 ちなみに演じた近藤氏は、以前ドラマ『京極夏彦「怪」』で「中禅寺州斎」という[[どっかで聞いたような名前>中禅寺秋彦(京極堂)]]の憑物落としの男性を演じていた。 ・川太郎 演:阿部サダヲ いわゆる一つの[[河童]]。本作におけるコメディリリーフ。 正義感が強く、基本的にやる気がない妖怪たちの中でタダシに協力する道を選んだ数少ない妖怪の一人(一匹)。 川太郎は本来関東地方での河童の呼び名なのだが、何故かこやつは関西弁を喋る。 ・油すまし 演:竹中直人 普段は水木氏の妖怪画と同じ巨大な頭をしているが、通常サイズに縮めることも可能。 1968年版では日本妖怪のまとめ役として活躍を見せたのだが本作では……。 ちなみに竹中氏は、かつて単発ドラマ版『ゲゲゲの鬼太郎』で[[ねずみ男]]役を担当していた。 ・[[ぬらりひょん]] 演:忌野清志郎 日本妖怪の総大将。 演じる忌野氏は、三池作品には2001年の『カタクリ家の幸福』に続いて2作目の出演。&s(){ちなみに本人は『カタクリ家』後、監督に次は忍者をやりたいと言っていたそうな} アーティスト仲間である井上陽水とともに本作の主題歌および挿入歌も担当している。 ・[[小豆洗い>小豆洗い/小豆とぎ]] 演:[[岡村隆史]] 成り行きからタダシたちと行動を共にすることになってしまった、小豆を洗うだけしか能がない妖怪。 しかし彼の小豆が終盤の逆転に繋がることに。 演じる岡村氏はレギュラー番組である『[[めちゃ2イケてるッ!]]』のコントコーナーにこのメイクと衣装のままで出演、 よっぽど気に入ったのかはたまた視聴者からの評判が良かったのか、&font(b){上映が終了して宣伝する必要がなくなってからも引き続き小豆洗いの格好で出演している。} ・大天狗 演:遠藤憲一 かつて麒麟送子に退治され家来となった、その名の通り巨大な[[天狗>天狗(妖怪)]]。 麒麟送子の聖剣を保管し守っている。 戦闘時には葉団扇から物凄い勢いの突風を出すが、そのパワーを狙われて……。 ・一本ダタラ 演:田口浩正 その名の通り一本足をした獣の妖怪。 山中のタタラ場を由来とする妖怪のため、作中では刀鍛冶という設定になっており、 折れた麒麟送子の聖剣を修復できる存在とされている。 ・豆腐小僧 演:蛍原徹 終盤の妖怪大戦争&font(l){という名のお祭り騒ぎ}では、そこらをウロチョロしていた。&font(b){それだけ。} まあ実際にそういう出オチみたいな妖怪だからしょうがない。 他の出演者がガッツリ特殊メイクをして妖怪を演じているのに対し、 蛍原氏は&font(b){全くのノーメイクだということで話題になった。} 相方の宮迫氏にとっても強く印象に残っていたらしく、後年氏に京極氏原作の『豆富小僧』の出演オファーが来た際、 タイトルを聞いて真っ先に&font(b){「ホトちゃんがやってたやつや」}と思ったそうな。 ・加藤保憲 演:豊川悦司 帝都の滅亡を望み古より暗躍を続ける魔人。 ヨモツモノを利用し、機械と妖怪を&font(l){悪魔合体}融合させた&font(b){機怪}を先兵に用いる。 元々は荒俣氏の代表作『[[帝都物語]]』シリーズの登場キャラクターで、[[実写版>帝都物語(映画)]]、OVA版、更に『[[仮面ノリダー]]』では俳優の嶋田久作が演じている。 あまりにもはまり役だったため原作小説でも嶋田氏の容姿を意識した描写が文庫版にて加筆されるなど、嶋田氏の加藤は作者公認状態だった。 ところが本作では諸事情でトヨエツこと豊川氏に交代となり、 そのため荒俣氏は&font(b){時代や場所に応じてその都度容姿を変える能力を持つ}という設定を急遽用意する羽目になっている。 姿もいつもの軍服ではなくなっており、事情を知らない人が見たらたぶん誰も加藤保憲とは思わないだろう。 ・鳥刺し妖女アギ 演:[[栗山千明]] 妖怪仲間を裏切り、加藤に与した女妖怪。鞭を手に前線に立ち指揮を執る。 妖艶……と言うか&b(){&color(hotpink){エロい。}} 『水木版 妖怪大戦争』では、『河童の三平』などの水木作品に登場するオリジナルキャラクターの&font(b){魔女花子}に差し替えられている。 また、加藤の切り札が『[[悪魔くん]]』などに登場した&font(b){ナンジャラモンジャラ}に変更されるなど、 水木版は全体的に氏のセルフオマージュ登場率が高い作品となっている。 ・山ン本五郎左衛門 演:荒俣宏 『[[稲生物怪録]]』に登場する魔王。 宿敵の神ン野と共に妖怪大翁に仕えている。 加藤の野望が潰えるのを遠くから見届けていた。 ・神ン野悪五郎 演:京極夏彦 山ン本とその勢力を二分する魔王。 手には小さな匣を提げており、中には小さな女性が入っている。&font(l){[[「みつしり」>魍魎の匣(小説)]]とは入っていない。} 演じる京極氏は、本作に出演する妖怪のチョイスも行っている。 ・妖怪大翁 演:水木しげる 日本妖怪の頂点に君臨する存在。その姿は輿の中に鎮座する巨大な顔。 山ン本からは&font(b){&ruby(おおせんせい){大先生}}と呼ばれている。 神ン野の「勝ち戦」という発言に対し、&b(){&color(red){「戦争はいかんです。腹が減るだけです」}}と返した。 この台詞は、『[[ゲゲゲの鬼太郎>ゲゲゲの鬼太郎(原作)]]』にて[[ねずみ男]]が発言した&b(){&color(red){「けんかはよせ 腹がへるぞ」}}という台詞が元になっている。((初出は『墓場鬼太郎』の「ボクは新入生」。そのセルフリメイクである「朧車」のエピソードでも用いられた。アニメでは6期最終回にてアレンジされたものが用いられている。)) 水木氏の思想や水木作品の根底に流れるものを端的に言い表した名言としてファンの間では非常に評判が良く((水木作品の名言集のタイトルにも採用されている。)) それ故に台詞として採用されたものと思われる。 **【キーワード】 ・麒麟送子 麒麟獅子によって選ばれた少年のこと。伝説では世界を救う英雄とされる。 地元の少年曰く、&font(b){かつて[[アントニオ猪木]]も噛まれたことがあるらしい}が真偽は定かではない。 祭りそのものは鳥取県に実在する伝統芸能。こちらの方でも実際に猩猩がセットになって登場する。 ・ヨモツモノ 加藤が復活させた大怨霊。 現代人によって消費され打ち捨てられてきた器物に宿る魂が、人間への憎しみから怨霊と化したモノ。 加藤が拠点としている機怪の製造工場それ自体に憑依しており、その恨みが溶け込んだ&font(b){妖怪溶鉱炉}から様々な種類の機怪を生み出す。 鯨に獣の脚が生えたかのような奇怪な姿をしており、山よりも巨大な体で空を飛び移動する。 ・機怪 廃棄された人工物と妖怪が融合して生まれた魔物。 素体となった妖怪の意思は残っておらず、怨念によって突き動かされ人間やかつての妖怪仲間を無差別に襲う。 基本的に名称は「〇〇機怪」という形で統一されており、何の機械から生まれたか、あるいはどういう用途かによって〇〇部分が異なるのだが、 [[バイク]]の機怪のみ何故か&font(b){Zモンスター}という他とは異なるパターンのネーミングが用いられている。 ちなみに機怪のデザインを担当したのは韮沢靖。%%なるほど通りで%% ・まっ白な嘘 本作全体を通しての重要なキーワード。 &font(#0000ff,u){&font(#ffffff){本作の妖怪たちは大人になると見えなくなるが、大人の階段を上る条件の一つとして方便を用いることが挙げられている。}} &font(#0000ff,u){&font(#ffffff){全てが終わった後、タダシは佐田のために相手の気持ちを慮っての優しい嘘、俗に言う「ホワイトライ(まっ白な嘘)」をついたがそれがトリガーとなっている。}} &font(#0000ff,u){&font(#ffffff){エピローグにて大人になったタダシが登場するが、彼には最早すねこすりの存在も感じられず、魔人加藤の復活も示唆されるという非常に後味の悪い結末となっている。}} &font(#0000ff,u){&font(#ffffff){この大人になったタダシは、タダシの父親役の津田寛治が二役で演じている。いつの間にか嫌っていた父親と同じ存在になってしまったという隠喩である。}} &font(#0000ff,u){&font(#ffffff){ノベライズ版ではまっ白な嘘をついたシチュエーションや嘘の内容が別のものに変更されている。}} ・小豆 &b(){&color(#A04940){小豆は&ruby(みがら){体}にええだ}} &b(){&color(#A04940){byじいちゃん}} **【余談】 本作が『金曜ロードショー』枠で地上波放送された後の土日は、 境港の水木しげるロードの観光客数がいつもより増えたという報告が観光協会よりなされている。 ただしこの地上波放送、尺に収める必要があるためか非常に大胆な編集が行われており、 前述の「まっ白な嘘」関係の描写がことごとくカットされた結果&font(b){地上波ではオチが流れないため後味が悪くならないまま終わっている。} 尤もそのせいでTV放送しか見ていない視聴者の中には、「この映画は投げっぱなしエンドだ」と勘違いしている人も多いようだが。((某所の映画レビューのコメント欄が特に顕著。)) 作中には数多くの妖怪たちが出演するが、その多くが名前を名乗らないため 後述する書籍や映画パンフレットを読まなければ誰が誰だか分からないようになっている。 その点を妖怪の大安売りみたいに感じて不満に思う人もいるようだが、 本来妖怪とは&font(b){名前が存在しないモノである}という民俗学的事実((学者や作家などに後付けで名前を付けられる妖怪が非常に多く、その事実を知らない一般人が口出ししてくるため研究の妨げになっていると国際日本文化研究センターの「怪異・妖怪伝承データベース」管理者がイベントで零したこともあるほど。))を踏まえると、作中での描写は非常に正しいと言える。 本作のDVDは通常版に加え、 特典ディスク1枚と特製シールが付いたDTSスペシャル・エディション、 特典ディスク2枚と[[PSP>PlayStation Portable]]で視聴するためのUMDが付いたDTSコレクターズ・エディションがそれぞれ初回限定生産で発売されている。 また、『怪』本誌の通販限定で愛蔵版も発売されており、 こちらは特典ディスクが更に1枚追加されて計3枚となっているのに加え、&font(b){撮影に用いられたすねこすりのパペットの1分の1レプリカが特典として付いている。} ただし追加された特典ディスクの内容は、本作とは関係ない『怪』の歴代イベントの様子を収めたものとなっており、完全にコアなヲタ向けの内容となっている。 本作のメイキングを収録した『妖怪大戦争~ある夏の冒険記~』というDVDも発売されている。 コレクターズ・エディションに封入されている2枚目の特典ディスクには、なんと&font(b){京極氏が監督・編集した寸劇が収録されている。} 京極氏が小説家としてデビューする以前に映像制作の仕事に携わっていたという事実はファンの間では有名な話であり、 本作にて氏の非凡な才能の片鱗を窺うことができるだろう。ファン必見。 なおブルーレイ版にはコレクターズ・エディションの2枚の特典ディスクが最初から付いてくるので、今から視聴するのであればそちらをお勧めする。 本作に登場するモブも含めた主要妖怪の写真を集め、そこに解説を加えた『写真で見る日本妖怪大図鑑』という本が当時発売されていた。 佐田が書いたという体だが、実際には村上氏が文章を担当している。 モブ妖怪の中には撮影所にあった適当な衣装を着用しただけのオリジナル妖怪も多々含まれるのだが、&font(b){それら全てに名前と解説が与えられている}のが特徴。 これらオリジナル妖怪の設定を考えるのは非常に楽しかったと、後年村上氏は公の場で語っている。 また、本書のカバーデザインは京極氏が、掲載されたイラストは妖怪研究家の多田克己が担当しており、何気に[[「妖怪馬鹿」の3名が揃っての仕事>ひどい民話を語る会]]となっている。 ちなみにこの本、企画ものということもあって重版は掛かっておらず、現在は定価の倍ぐらいの値段で取り引きされているため注意。 2020年1月、妖怪映画のエキストラ募集がSNS上で行われた。 後に発表された映画のタイトルは『妖怪大戦争 ガーディアンズ』。 三池氏が引き続き監督を担当していることもあり、本作の続編だと解釈している人も多いようだが、 荒俣氏こそ製作総指揮に名を連ねているものの、それ以外の関係者は誰一人関与していないことに留意されたし。 &font(l){一方、脚本があの『[[ガッチャマン>ガッチャマン(実写映画)]]』や『[[進撃の巨人>進撃の巨人(実写版)]]』2部作の渡辺雄介氏という事で一部からは既に不安の声も……} その『妖怪大戦争 ガーディアンズ』公開直前特番として、2021年8月9日に『午後のロードショー』枠で久々に地上波放送されている。 『金ロー』にてカットされた結末部分が放送されたため、SNS上では&font(b){「俺の知らないエンディングが流れた」}と驚く視聴者も見受けられた。 しかしながら、それ以外の部分で大量のカットが行われており、一例を挙げると ・タダシが川太郎たちと共に山中を冒険するシーンが丸々カットされ、&font(b){CMが明けたらいつの間にかタダシが大天狗から聖剣を授かっていた。} ・機怪が一般市民を次々と襲撃していく中、赤飯を食べていたじいちゃんだけが襲われないという伏線がカットされたため、終盤の展開がますます唐突になった。((この場面は『金曜ロードショー』の方でもカットされている。)) ・佐田が大量のビールを飲んでトランス状態に入るシーンがカットされたため、先程まで目に見えない妖怪たちに翻弄されていた佐田がカットが変わった瞬間、いつの間にか妖怪が見えるようになっていて狂喜乱舞している。 ・本作のミソである妖怪大翁の金言が&font(b){出番も含めて丸々カット。} といった感じで、初見の人間でも明らかに繋がりがおかしいと分かる内容になっていた。 『金ロー』『午後ロー』が揃いも揃ってカット祭りになった理由として、本作がノーカットだと120分越えの大作であることが挙げられる。CMを除いて100分あるかないかの地上波ではそもそもまともに放送するのが困難だったのだ。 &font(l){そして物語序盤に登場する名優・柄本明は、毎回カットされるため地上波放送しか見たことのない層からは出演していること自体知られていないのであった。} 追記・修正は麒麟送子に選ばれてからお願いします。 ---- &link_up(△)メニュー &link_edit(text=項目変更)&link_copy(text=項目コピー) &link_diff(text=項目変更点)&link_backup()&link_upload(text=アップロードページ) ---- #include(テンプレ3) #center(){ &font(b,red){ここから先、物語のクライマックスについてのネタバレがあります。} &font(b,red){本作を未視聴の方はご注意ください。} } さて、本作の視聴者が不満点として挙げることが多いのが ・妖怪大戦争というタイトルでありながら肝心の妖怪たちが全く戦おうとしない ・加藤の野望が&b(){たった一粒の小豆で阻止される} という2点である。 妖怪同士の派手なアクションやバトルシーンを期待した層は肩透かしを喰らい、しかも加藤保憲という超大物があんまりにもあんまりな最期を迎えたことで尻すぼみに感じてしまったわけである。 が、これらは全て&font(b){荒俣、京極両氏が企画段階で既に決めていたこと}だというのはあまり知られていない。 ・&font(b){何故妖怪たちは戦わないのか} まず妖怪たちが一向に戦おうとしない理由について。これは荒俣、京極両氏が揃って &font(b){「妖怪は基本的に人を驚かしたり馬鹿騒ぎが好きなだけの怖くもなんともない愉快な存在」}という見解を持っているため。 人に危害を加える妖怪もいるではないかと反論される方もおられるだろうが、それらは人間側が妖怪のテリトリーに踏み込んだために起こる出来事であり、 基本的に妖怪は自分たちから戦おうとはしない。 妖怪同士が合戦している古い絵を見たことがある人もおられるかもしれないが、 ああいった錦絵の類は、そのまま描くと当時のコンプライアンスに引っかかる題材を妖怪に見立ててあるだけで妖怪そのものを描いているわけではない。 一方で妖怪たちは馬鹿騒ぎ、特にお祭りが大好きだ。 夏祭りの風物詩である盆踊りは、本来は目に見えない存在と一緒になって踊り楽しむためのものだ。 だから妖怪たちは加藤との抗争には消極的で、にも拘らず日本最大級のお祭りがあると聞くと我慢できずに各地から駆け付けたわけである。 監督の三池氏は最初妖怪のバトルシーンを撮るつもりで脚本を準備していたが『怪』サイドからNGが出てしまい、 何故なのか分からず困惑していたところに&font(b){荒俣、京極両氏から付きっきりで説明を受けた}ことでようやく戦ってはいけない理由に納得したそうな。 ちなみに荒俣氏は、タダシが廃屋でぬらりひょんたちと出会うシーンの撮影を見学に訪れた際、 休憩時間に妖怪メイクの出演者と普通の格好のスタッフが入り乱れて談笑する様子を見て、これが一番コンセプトに近い状態だったと語っている。 ・&font(b){何故小豆なのか} 次に小豆についてだが、作中でじいちゃんが語っている通り小豆にはタンパク質、食物繊維、ビタミンB1やB2といった豊富な栄養素が含まれている。 だがそれだけではない。 古来より日本では&font(red){赤}は&font(red){太陽}や&font(red){炎}を象徴する色であり、邪気を祓う効果があるとされた。 アズキは&font(#A04940){「小豆」}という漢字が当てられているが、本来&font(#A04940){「ア」}とは&font(red){「赤」}を指す言葉である。((英語では「レッドビーンズ」と、より直接的な名称が与えられている。)) 小豆にはそれ自体に邪気を祓い、更には&font(b){霊的影響を断ち切る力がある}と記紀神話の時代から信仰されているのだ。 慶弔時に赤飯を炊く習慣はそこから来ていると民俗学者の柳田國男は説を述べており、 また、小豆を地面や床に撒くことで魔を祓うという言い伝えから、小豆洗いや小豆はかりといった妖怪との関連性を指摘されることもある。 つまり怨念の塊であるヨモツモノに対し小豆は特効だったのである。この「断ち切る力」によって加藤はヨモツモノとの融合を阻止されてしまったというわけ。 余談になるが、特定の穀物や果実などが邪気を祓うという伝承は世界各地に見受けられる。 たとえばキリスト教圏では古代ケルトの時代からヘーゼルナッツが神聖なものとして扱われてきており、 その事実を踏まえて視聴すると、[[序盤のとあるシーンが全く別の意味に見えてくる海外ホラー映画>ヘレディタリー/継承]]も存在する。 これらについて作中で具体的な説明は行われていない。おそらくストーリーのテンポを阻害すると判断されたのだろう。 しかしながらその結果、戦わない妖怪たちに困惑したり小豆が唐突に感じられた視聴者が多く現れ、物語の評価にも影響を及ぼしてしまっているのは否めない。 ノベライズ版ではその辺りの補完がきちんとなされているのを見るに、単純に脚本の問題かもしれないが。 なお当時発売された「妖怪大戦争 公式ガイド」と銘打った『怪 vol.19』には、ここで述べた内容をより詳しく解説した記事が掲載されているので 興味のある人は古本屋などで探してみるのもいいかもしれない。 逆に言うと『怪』を読んでいるようなコアでディープな妖怪ファンからは意図が汲める分ウケが良く、 中途半端に妖怪が好きなライト層や妖怪に興味のない層からは低く評価されることが多い作品と言い換えることもできる。 追記・修正は盆踊りで楽しんだ後、赤飯を美味しく頂いてからお願いします。 #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,5) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - TVで放送してたやつしか観てなかったからエピローグがカットされてたこと知らなかった。子供のころ「え?これで終わり?」と呆気に取られたの覚えてる -- 名無しさん (2020-11-30 04:29:16) - 地上波でもエピローグをカットしなかったバージョンが流れたことがあったような -- 名無しさん (2020-11-30 06:40:43) - 最後の加藤は、小豆のせいで毒気が抜けて普通の人間になってしまってるんじゃないかなぁ? -- 名無しさん (2020-11-30 07:27:28) - 幻想郷の妖怪(やくもゆかり)が厳密には妖怪とは違うってそういうことなのかなあ -- 名無しさん (2020-11-30 07:44:29) - 適当な終わりかただなあ、と思ってたらカットされてたのか。 -- 名無しさん (2020-11-30 07:48:42) - 『写真で見る日本妖怪大図鑑』、当時本屋で何んとなしに買って面白かった覚えがあるけど手放しちゃったなぁ……残念無念 -- 名無しさん (2020-11-30 07:57:38) - 妖怪大戦争というタイトルといかにもバトル物っぽい宣伝さえなければガッカリされることもなかったんだろうなとは思う。 -- 名無しさん (2020-11-30 09:28:22) - なんで小豆???と思ったらちゃんと理由があったのね… -- 名無しさん (2020-11-30 10:18:17) - まあこの世界には芋羊羹で倒された宇宙の支配者もいるんだけどね! -- 名無しさん (2020-11-30 12:28:43) - 現地で買ったパンフで三池監督が「『大戦争』として準備してたら先生方が『妖怪は戦いません』と口を揃えるからもうどうしようかと」と述べてるのがすごく印象的だったが、やっぱりキーだったんすねそこが……小豆も小豆でなければならなかったというのは初耳だが -- 名無しさん (2020-11-30 14:49:22) - そもそも麒麟送子とかいう人間側の正義の味方みたいなヒーローものっぽいポジションをぶち込んだこともどっちつかずな原因だったと思う。-- 名無しさん (2020-11-30 15:55:25) - CMで油すましが飛んでるとこで、古いほうの映画で杖でぶっ指すとこのオマージュかと思ったら、ただ吹っ飛んだだけだった -- 名無しさん (2020-11-30 19:19:31) - 敵の機怪が韮沢靖デザインでフルCG前提で特撮の怪人みたいにスーツ体型に合わせなくていいから自由かつ氏の趣味てんこ盛りなデザインが見られる。韮沢怪人が好きならデザイン画は一見の価値アリ -- 名無しさん (2020-11-30 21:43:04) - 結末こんななのか。「子供は妖怪と人間の間にいる存在」とゲゲゲの鬼太郎でやってたし、やはり子供の方が妖怪と近しいのだな。 -- 名無しさん (2020-12-01 00:40:39) - ラストは主人公の彼がすねこすりが見えなくなって..そのすねこすりの元に...!? -- 名無しさん (2020-12-01 01:07:05) - エンタメに、専門家にマジレスさせた結果みたいな感じか -- 名無しさん (2020-12-01 01:31:05) - リメイク元の1968年版の妖怪大戦争はちゃんと日本侵略を目論むオリジナル西洋妖怪とそれを防ごうとする日本妖怪とでちゃんと戦ってたんだけどねぇ -- 名無しさん (2020-12-03 00:36:52) - 日本古来の伝承や妖怪像を描きはしたものの、そのために本来観客が期待していたであろうエンタメではなくなったってことかな。いっそ子供向け映画の体じゃないほうが良かったのかも -- 名無しさん (2020-12-03 00:41:05) - というか上の人も言ってるように妖怪“大戦争”というタイトルと戦うかのような番宣が期待と違ったことでガッカリさせられたのでは。 -- 名無しさん (2021-01-10 10:49:57) - 久々に見返したら面白かった。たしかに言われてみれば「大戦争」はしてなかったなぁw今の今まで気にしたことなかった。 -- 名無しさん (2021-05-15 12:28:37) - 新しいのやるからテレビでやらんかなぁと思ったが闇営業のせいでやれないな -- 名無しさん (2021-08-11 16:15:16) - リメイク版は大魔神出てくるらしいがどうなるか -- 名無しさん (2021-08-11 17:34:52) - 相談所に報告のあった違反コメントとそれに触れたコメントを削除しました。 -- 名無しさん (2022-10-12 18:37:39) - 柳田國男は妖怪を神の零落した姿と解釈したけど、妖怪は本当はそんな大層なものじゃない。もっと卑俗でバカバカしいものなんだよってのが水木先生とその弟子たちの解釈だからね。 -- 名無しさん (2022-10-29 17:54:09) - 昔、図鑑版を古本屋で読んだときサルティンバンコって名前の妖怪がいた気がするんだけど、多分オリジナルだよね? -- 名無しさん (2023-05-28 19:03:57) - 力を狙われて捕まった大天狗が巨大機怪にされて川姫達が曇る展開かと思ったが別にそんな事は無かったぜ!…捕まった後フェードアウトしたけど無事なのかなあ -- 名無しさん (2023-08-01 22:41:51) - チーム怪の考える妖怪像を描きたいという意図は解ったが、タイトル詐欺になってるのはエンタメとして致命的だったと思う。キッズ向けだし宣伝の打ち方からして純粋に期待して観に行ったファミリー層からは拍子抜けと評されてもしゃーない -- 名無しさん (2024-05-13 11:17:28) - 自分も小さい頃地上波初のを最後まで見たけど、結末が「あれっ?」って感じで疑問に思ってたが、やっぱりカットされてたのね。後々考えてみると黒幕の野望も岡村隆史演じる小豆洗いの小豆でおじゃんになるのも変だったし -- 名無しさん (2024-05-13 13:09:13) - スネコスリも加藤も復活してるからアギだけ無駄死になんだよな…… -- 名無しさん (2024-06-17 19:23:55) - 子供の頃から妖怪好きで親が借りてきてくれたDVDで見たけど当時は怖かった。何がって、鉄漿べったり(と思われるやつ)。 -- 名無しさん (2025-01-08 13:13:57) #comment #areaedit(end) }

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