一瞬で治療していたのに役立たずと追放された天才治癒師、闇ヒーラーとして楽しく生きる

登録日:2025/06/16 Mon 00:17:13
更新日:2025/07/18 Fri 10:57:58
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この闇ヒーラー、規格外につき

一瞬で治療していたのに役立たずと追放された天才治癒師、闇ヒーラーとして楽しくいきる』は、菱川さかくにによるライトノベル作品である。
小説家になろう」に2020年より連載されており*1、GAノベル(SBクリエイティブ)より2021年から刊行されている。
イラストはだぶ竜。
略称は「闇ヒーラー」。

既刊8巻(2025年3月現在)


【概要】

小説家になろう」で掲載されていたファンタジー小説である。
本作はタイトルのように追放された治癒師が実はヒーラーとしてかなり優秀で、追放先で多くの仲間やヒロインと共に活躍を収め、成り上がっていく様を描いている。

治癒師・ヒーラーにスポットを描いた作品はこれまでのなろう系作品には存在しており、ヒール1つにとっても他の治癒魔導士以上の力を秘め、数多くのキャラクターを救うことも珍しくない。
本作はそれだけでなく、「闇ヒーラー」ということで、本来であれば、医療行為にはライセンスが必要であるのだが、上述の経緯もあり、ライセンスを持たないヒーラーが、開業医になったことで、数多くの人々の命を救い、慕われていく様を描いている。
いわばファンタジー版「ブラック・ジャック」のような趣を持った作品と言えるだろう。(両者は共に無免許医という特徴がある)


【メディアミックス】

①コミカライズ版
  • 十乃壱天作画によるコミカライズ版がピッコマより掲載されている。
  • RocketStaff Inc.によるクレスフォール潜入偏が同じくピッコマより掲載されている。
②テレビアニメ版
2025年4月~6月にかけてテレビアニメ版が放送されている。
アニメーション制作はマカリア。


【あらすじ】

「お前最近何もしていないよな、ぶっちゃけもういらないんだ」
冒険者パーティから役立たずと言われ、
一枚の金貨を手切れ金に追放された治癒師の青年ゼノス。
貧民の生まれで、自己流の治癒魔法を使うゼノスは治癒師のライセンスも持たない。
行く先をなくしたゼノスが路地を歩いていると、腹を刺された瀕死のエルフの少女リリと出会う。
「大丈夫だ、この程度なら助かる」
「……あれ、痛くないし傷もない。なんで元通りになってるの!?」

貧民街の外れにある廃墟街にひっそりと開業した治療院を舞台に、
無免許天才治癒師による無自覚最強ファンタジーが始まる―。
(テレビアニメHPより引用)


【キャラクター】

(主要人物)

・ゼノス
CV:坂田将吾
本作の主人公。
貧民街の生まれの為、治癒師のライセンスを持っていない。
しかし、自分を拾ってくれたアストンに恩返しするためにパーティで治癒魔術の腕を磨いていった。その結果、少しの傷を一瞬で治療し、斬れた腕の再生や能力強化魔法や防護魔法も併用して、パーティの名を挙げることに貢献していくことになる*2
しかし、思いあがったアストンらパーティメンバーたちは、これらの功績は自分たちのおかげでゼノスはお荷物だと認定して彼を「追放」してしまう。

そこから彼は、たまたま治療して助けたエルフのリリと共に、個人の治療院を開き、やがてその確かな腕を聞き付けた様々な種族や冒険者たち(なぜか女性が多い)に一目置かれる存在になっていく。

クールな性格で、まずは患者の救命を第一として淡々と治癒をこなしてしまう。
流石に某無免許医と違い、法外な報酬はとらない。

・リリ
CV:花井美春
エルフの少女で奴隷として買われてしまっていたが、逃亡する際、購入主らによって負傷*3して、見捨てられていたところをゼノスに拾われた。
負傷した時は瀕死かつほぼ手おくれ状態の彼女を「買った」あと、治癒魔法で完治させた。一応金で買った「奴隷」であり彼女も良き場を失っていたのも相まって、ゼノスと共に暮らすことを決めた。

主人であるゼノスのことは上述の経緯もあって慕っている様子である。
その後は、ゼノスが開く開業医で助手的な役割を担っている。
子どもではあるがエルフということもあって、膨大な魔力と魔法の才能を持っている。

某無免許医の助手的な存在である。

(廃墟街の闇ヒーラー編)

・カーミラ
CV:日笠陽子
死霊王と呼ばれる。
アンデッド系の魔物の頂点に君臨する存在である。
ゼノスが開業医として開く屋敷に住み着いていた。
最初はゼノスやリリに勝負を挑んできたものの、彼の回復魔法の前に観念したのか*4、以降は屋敷の1階をゼノス達に使わせ、自身は2階に住むというすみわけをすることで落ち着いた。彼を気に行ってか、度々現れお茶を共にしたり、結果的に彼を助けたりすることもある。

・ゾフィア
CV:永瀬アンナ
リザードマンの盗賊団を率いている貧民街の顔役の1人である。
悪徳商人から金を奪い、貧民たちに金を還元する義賊でもあることから貧民街の英雄とも呼ばれている。
アストンの魔法銃で片腕を失っていたが、ゼノスの治療で腕を再生することが出来た。(治療費に100万ウェンを請求されたが)

・リンガ
CV:陽高真白
ワーウルフと呼ばれる亜人達を束ねている。
指先の鋭い爪、肩にかかる灰色の頭髪に間から突き出す狼の獣が特徴的である。
裏街の非合法賭博の元締めとも言われている。
ゾフィアたちとはライバル関係のため、彼女やその部下を治療しているゼノスら治療院を潰そうとして襲撃して来た。
しかし、寝床を襲撃されて怒ったカーミラが参戦すると血相を変えてしまった。

・レーヴェ
CV:菊池紗矢香
貧民街を従える三大勢力であるオークの一族を束ねる女性。
悪食で握り飯と間違えて、攻撃用魔石の「爆発(エクスプロージョン)」をたべてしまい、体内でそれが爆発する危険な状態を迎えていた。このことから察するに「おむすび」が好きである。
ゼノスが「執刀(メス)」を使った治療技術と防御魔法を駆使して魔石を取り出したおかげで事なきを得る。

・クリシュナ
CV:中島由貴
近衛騎士団の副師団長。
鉄のように固い意志で任務を遂行することから「鋼鉄の淑女(アイアンローズ)」と呼ばれている*5
三大勢力の亜人達が急に和睦するムードになったことから、調査をして仲裁者であるゼノスの下に辿り着いた。これには仲裁者が貧民街を暗躍する危険な存在がいるのではないかという貴族たちの思惑があったためである。

後にカレンドール卿の人身売買の事件を知り、彼に始末されかける(脇腹を抉られ、左手が吹き飛ぶほどのものでかなりの重傷だった)が、ゼノスに助けられ、治療を受けてもらった。
最初は貴族に唆されていたこともあり、ゼノスを信じていなかったが、子どもたちを人身売買から守った姿から「ヒーロー」だと彼に言われ、自信を取り戻し、彼に信頼を寄せる。

・カレンドール卿
CV:間宮康弘
王都の貴族特区に住む人格者として知られていたが、屋敷の井戸の下に子どもたちを監禁して人身売買を行っていた非道な人物。
クリシュナによって罪が露呈するも、魔法銃で彼女を負傷させる。しかし、その後乗り込んできたゼノスによって形勢逆転。奪われた魔法銃によって自身の肥満体が吹き飛んで倒される(一応命は奪っていないとのこと)

・アストン
CV:水中雅章
ゼノスが所属していたパーティのリーダーで、貧民街出身の彼に差別意識を抱いており、彼がいたからこそ、成しえた功績も認めず邪魔者扱いしたあげく、彼を追放した。
しかし、その後はパーティの実績を作ることが出来ず、クライアントである貴族たちからの信頼も失墜する。そこでゼノスをパ―ティに戻してこき使わせようとするも、彼に拒否されてしまう。
その後“案内人”と呼ばれる謎の人物が持っている魔石によって、ゴーレムにさせられて、ゼノスと戦うことになる。
追放系のなろうアニメでよく出てくる「ざまあ枠」を担ってしまった人物である。

(王立治療院編)

・ウミン
CV:遠野ひかる
王立治癒院所属の治癒師。眼鏡をかけている。
ゼノスとはフラム温泉郷で出会った。
その後、彼が王立治癒院に出向いた際は、彼を支える役回りとなった。
同期にクレソンがいるが、彼に対して基本辺りはキツイ・・・。

・ベッカー
CV:子安武人
王立治癒院の特級治癒師である。
治癒魔法はからきしだという彼であるが、かつて多くの人々の命を奪った赤色肺の特効薬を生成した凄腕である*6
ゼノスが闇営業で治癒師をしていることを摘発しない(厳密に言えば猶予を与える)条件として王立治癒院への潜入調査を依頼した人物である。

・クレソン
CV:伊藤節生
王立治癒院に所属しているウミンの同期。
副院長のゴルドランの派閥に入ってからはウミンやゼノスにマウントを取っている。
しかし、アンデッドの討伐やゴルドランの愛犬の治癒を難なくやってのけた彼を見て、彼の実力を認めていく。
結果的には彼を「兄貴」と呼んで尊敬している。

・ゴルドラン
CV:稲田徹
王立治癒院の副委員長。
次期院長選挙での勝利を目指し、派閥拡大に余念がない。
回診の時間では派閥の治癒師を率いて回診にあたっている。
白い巨塔とかであるような光景が見られる。
なお、その際に相手をするのは有力貴族など金や権力を持っている患者に集中している。

・シャル
CV:倉持若菜
フェンネル卿の愛娘で顔面に腫瘍のようなものが出来る。
最初はニキビのようなものだが、酷くなると人面相のような腫瘍になり、治療のためには手術が必要だと言う。
貴族令嬢である彼女は手術の痕が残り、社交界にも影響が出てしまうことを恐れ、手術を拒むが、ゼノスの腕により手術痕は残らずに済んだ。

(その他)

・師匠
CV:中村悠一
ゼノスの師匠。彼に治癒魔法を授けた男であるが、正体は分からず、不明なことも多い。


【用語】

・ハーゼス王国
本作の舞台。
王族を頂点にして、貴族・市民と階級が分かれている。
最下層に位置付けられる貧民は差別の対象となっている。
中心部に王都。貴族が住む場を特区。その周辺を市民が住む街区。さらに外側に貧民街が転々としている。
数多くの治癒師が在籍していることから「太陽王国」とまで称される。

・治癒師
治癒魔法や医療技術を駆使して患者や負傷者の治癒にあたる。
治癒師になるには正式なライセンスを必要とするが、貧民街出身のゼノスはライセンスを所持していない。

・闇治癒師(闇ヒーラー)
上述の通りライセンスを所持していないゼノスは開業医にはなれない。
開業するにはライセンスと開業届が必要になる。
ゼノスが開業した場合、それは違法な闇医者による治癒院ということになる。

・レイス
アンデッド系の魔物。ヒールと言った回復魔法に弱い。

・貧民街
ハーネス王国の王都周辺に存在している。
そこには貧民だけでなく多種多様な亜人がおり、縄張り争いのための小競り合いも見られている。

・王立治癒院
ハーネス王国の治癒師たちが日夜研鑽と治療に励んでいる総本山である。
数多くの施設が存在しており、治癒棟・教育棟・管理棟・職員寮・カフェテリア・日用雑貨店・食料品店など、その種類は多種多様である。

・特別研修生
正規ルートとは別に推薦などによって、王立治癒院の各研究教育プログラムを受けられる制度である。ゼノスはその制度を使い王立治癒院に潜入した。


【テレビアニメ】

2025年4月~6月にかけてテレビアニメ版が放送されている。
細かいところで原作との差異が見られるが大まかな流れは原作の王立治癒院編までの内容を描いている。
前述のコラボ企画はこのアニメ化に際して行われたものであり、コラボイラストの掲示や特性ステッカーの配布が実施された。

アニメーション制作はmakaria。

OP:「ライトメイカー」 bokula.によるオープニングテーマ。
ED:「月に願う」 soratoによるエンディングテーマ。



追記・修正は治癒師のライセンスが取れた時にお願いします。

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最終更新:2025年07月18日 10:57
添付ファイル

*1 「小説家になろう」に掲載されていた際は、「一瞬で治癒していたのに、何もしてないとパーティを追放された天才治癒師~今更戻ってこいと言われても、闇ヒーラーとして楽しくやっているので治療は高額になるけどおたくら払えますか?~」というタイトルだった

*2 こうしたこともありアストンのパーティは「不死身」と呼ばれるくらいになる

*3 原作なろう小説版では背後から矢を射られ、アニメ版などではさらにナイフで斬られている

*4 アンデッド系の魔物は回復魔法に弱い

*5 原作なろう小説版では「石の淑女(ストーン・ローズ)という二つ名を持っている

*6 他にも、千日咳・桜毒といった病気の特効薬も作り上げた