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&font(#6495ED){登録日}:2023/07/30 Sun 10:02:44
&font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red)
&font(#6495ED){所要時間}:約 25 分で読めます
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&tags()
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&bold(){&ruby(リアル){現実}もたまには嘘をつく}は、にいちによるWeb漫画。
単行本は既刊4巻、そのほか[[同人誌]]9巻が出版されている(2023年7月末現在)。
*概要
本作を端的に表現するなら、&bold(){「ゲームで知り合った友達が実は女の子で、成り行きで[[女装]]して交流を重ねてゆくことになったお話」}。
「オンラインゲームがきっかけの出逢い」という導入は今でこそありふれたものではあるが、そこに「女装」を組み合わせるというアイデアが受け、SNS上で大きな反響となった。
基本的にはメインキャラクターである薫と七海の何気ない(?)青春を描く日常ラブコメで、会話のテンポが小気味よくサラッと読める作風。
しかしこの2人を初めとして&color(purple){主要人物の多くが心にどこか「影」を抱えている}ことが会話の節々から読み取れるようになっており、その温かくも「良くも悪くも人間らしい」キャラクター性も特徴のひとつ。
各キャラクターの魅力を描きつつもそれぞれが足を踏み出し切れずにいる事情を少しずつ解き明かしてゆき、丁寧に張り巡らされた多くの伏線を回収しつつ彼らの人間関係を一歩一歩前に進めてゆく……そんな少しずつ読者を引き込んでゆくようなストーリー構成になっている。
また、メイン2人の関係が進展してゆくと共に周囲の人間関係も少しずつ変化してゆく様子がさりげなく描かれており、こうしたサブキャラクター同士の関係性も世界観を深く掘り下げるキーである。
総じて「軽く読めて、少しずつ引き込まれる。でも重すぎたり、くどくなったりはしない」という絶妙な匙加減が本作の特徴でもあり、物語が終盤に向かいつつある単行本第4巻時点でもこのリズム感は保たれている。
ちなみに、にいち先生が既に展開している他シリーズとのリンクもこっそりなされており、過去作の登場人物が端役として顔を出していることも。
特にとある老夫婦の会話には感慨深いものがある。
元々本作はSNS上にて連載していたもので、「&bold(){ゲーム好きの友達と色々する話}」のタイトルでも投稿されていた。
当初の予定では[[同人誌]]一冊分程度の物語にする予定だったとのことだが、連載が予想外の好評を受けた結果長編となり、商業化にも至った旨が作者インタビューにて語られている。
単行本発売以降も一般誌ではなく[[pixiv]]やニコニコ静画などにて投稿を継続しており、23年7月末現在も毎週最新話を公開中。既に単行本に収録されているエピソードも引き続き無料公開されている。
[[同人誌]]から始まり、人気に伴って商業化に移行した形ではあるが、「既に[[同人誌]]版を購入してくれたファンへの配慮」として原則として[[同人誌]]に掲載したエピソードは単行本には載せず、登場人物の紹介等必要最低限の引用に留める形としている。
以降の[[同人誌]]も「番外編」として位置付けられており、連載版および単行本で描かれた物語の間を補完する内容として書き下ろされている。
単行本と各[[同人誌]]の時系列としては、
単行本①巻([[同人誌]]①巻)
|
|[[同人誌]]②巻
|[[同人誌]]④巻
|
単行本②巻([[同人誌]]⑤巻)
|
単行本③巻/[[同人誌]]③・⑥巻
|
単行本④巻/[[同人誌]]⑦巻
|
|[[同人誌]]⑨巻
|[[同人誌]]⑧巻
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の順で対応していることが作者より明かされている。
ただし、&bold(){同人誌①巻・⑤巻に関しては新キャラの紹介など物語の進行上外せないエピソードが収録されている関係でほぼ全ページが単行本にも収録済}。
[[同人誌]]は現在⑦巻まで電子書籍化されているため気軽に入手可能だが、購入にあたっては上記の件注意するよう作者よりアナウンスされている。
*あらすじ
#center(){オンラインゲームで出会った女の子と趣味の話で盛り上がり、&br()彼女の自宅に遊びに行くことになったものの、&br()&color(#ffffff,#000000){どうやら彼女はこちらを女子だと思っている}らしい。&br()しかも彼女の家には&color(#ffffff,#000000){「娘に近づく男絶対なぎ倒すマン」}な、&br()お父様までいるという。すべての問題を解決するために&br()残された道はひとつ。それは……&br()&color(#ffffff,#000000){性別を偽ること……!}}
#right(){(単行本第1巻・巻末あらすじより引用)}
*主要人物
**メインキャラクター
***&color(#000000,#87cefa){寺崎 薫}
#center(){&font(#000000,#f08080){そこは一日の長を活かしてよ&br()何のためのネカマよ}&br()&font(#000000,#87cefa,b){初対面の女の子の家で両親と&br()ライアーゲームやるためではねぇよ}}
主人公。中学3年(初登場時)→高校1年(単行本2〜4巻)→高校2年(同人8巻〜)
ネットゲームが趣味の、ごく普通の少年。誕生日は6/7。
[[ゲーム]]では女性のアバターを用いる所謂ネカマだが、単に「装備品など見た目でおしゃれできて楽しいから」というだけの理由で深い意味はない。
……なのだが、ロールプレイにはこだわる性格なのか「かなり込み入った話」にもその場で調べるなどして合わせてしまいがちで、それゆえリアルで女性のプレイヤーにも本気で女性と勘違いされてしまい&ruby(ひきぎわ){COする機会}を自ら失ってしまうことも多々。なんならこの物語のきっかけもそんな性格のせいでもある。
[[ゲーム]]上でNanamiこと七海と意気投合するも、彼女が自分のことを「女友達」と思っての誘いだと知りながら断れずにリアルで会う約束をしてしまい、集合前には罪悪感に潰れかかっていた。
さらには七海の事情で「七海とゲームで知り合った女友達・&bold(){カオリ}」として女装する羽目にまでなってしまい、&bold(){性別を偽って初対面の女の子の部屋に上がり込む}という中々に際どい経験をする事態に。
しかしリアルの七海が見せる人となりを目にしたことや彼女の両親の言葉を聞いたこともあって、以降も定期的に七海と遊びに行くようになるのだった。……もちろん(?)女装して。
そんなわけで物語中では女装した姿の「カオリ」として登場することが多いのだが、元々中性的な顔立ちで、かつまだ成長期の途上だったこともあってかその女装姿は「似合う」「可愛い」&bold(){「向こう3年は大丈夫」}ともっぱらの評判で、作中でも性別を疑われたことはほとんどない。
彼に女装をさせた張本人である七海からも、&font(#000000,#f08080,b){「…何かに目覚めそう」}との評。
薫&font(#000000,#87cefa,b){「眠ってて」}
それほどのクオリティゆえに「薫」を知っている人々に「カオリ」の姿を見られてもまず見破られず、正体・性別がバレたのはこれまで3例しかない。
しかもうち1件は薫の自爆、1件は相手がコスプレイヤーだったためにウィッグや「姿の偽り方」に詳しかったことが要因であり、ノーヒントで女装に気づいたのは現状1人だけということになる。
しかし「カオリ」が実は男であることを知っている面々ですらも&bold(){「あの子本当に男の子なの?」と逆に性別を疑われることすらある}ほどにその女装は様になっており、おかげでpixivでは&bold(){「性別:薫」}というタグが完全に定着している。
なんなら&color(red){水着姿での女装すら自然にこなす。}&s(){違和感?奴さん死んだよ}
&font(#000000,#f08080){…あんたマジで女装似合うわね……&br()その格好で生きた方が幸せになれるまであるわよ}
&font(#000000,#87cefa,b){無いよ}
そして2024年夏の同人誌にて(ifという形だが)&bold(){ついに女体化させられた。}&s(){正に公式が最大手}
相方の七海とは対照的に高い対人スキルの持ち主で、どんな人にも同じように接することができる。
また気遣い上手でもあり、七海に対してはもちろん周囲の友人や家族に対しても何かと気を回している様子が常々うかがえる。
が、&bold(){案外言動に容赦がない}一面があり、率直に思ったことをそのまま口に出してしまうことも多い。
どうも&bold(){気を許した相手ほど失言癖が酷くなる}傾向があるようで、度々七海の「失礼オブザイヤー」を更新している。
親が多忙で家では基本的に一人、かつその親もあまり料理しないという環境もあって料理もかなり得意で一通りの家事スキルは習得済……と&bold(){女装を抜きにしても女子力はかなり高い。}
しかし人間関係を作ることに対しやや冷めている所があり、「友達」は作れてもその先には踏み込もうとせず、むしろ「それ以上の存在」と認識することを避けている節すらある。
#openclose(show=その理由は……(ネタバレ注意)){実は幼い頃に実の母である透花を病で喪っており、その経験から&bold(){「大切な人を作ること」に対し強いトラウマを抱いていた}。
その心の傷もあってか登場当初はぶっきらぼうな言動が目立ち、七海に対するリアクションを筆頭にわりと辛辣なコメントも度々発している。
七海との関係についても、「ただの友達」と言うにはあまりに仲良くなりすぎてしまっていることを薄々自覚しながらも、それをはっきりと認めることを恐れていたことが本人の口から明かされている。
だが、林間学習で体調を崩した七海が目の前で倒れてしまい、その光景にかつてのトラウマを刺激され激しく動揺。
皮肉にもそれがきっかけとなり彼女が自分にとってどうしようもないほど「大切な存在」であることを実感し、ついに七海からの告白を受け止めたのだった。
そして、同じく母の死に無念を抱いていた父からも「自分と同じ後悔だけはしないように」と背中を押されたことで、彼女との関係を前に進めていく決意を固めることになる。}
***&font(#000000,#f08080){&ruby(おうさか){逢坂} 七海}
#center(){&font(#000000,#87cefa){…僕 女の子のファッションなんて&br()全然分かんないんだけど…}&br()&font(14px,#000000,#f08080){私だって分かんないわよ 服なんて}&br()&font(#000000,#87cefa,b){いや君は分かっててくれよ}}
[[メインヒロイン]]。誕生日は10/2。
ダークブラウンのロングヘア、右目の下にある[[泣きぼくろ]]が特徴。ややものぐさでぶっきらぼうな性格の持ち主。
[[ゲーム]]では男性アバターを使用する所謂ネナベ。
ただし中身が女性であることは[[ゲーム]]中でも特に隠していないらしく、薫もリアルの七海と初対面した際には特に驚く様子はなかった。
男性アバターを使っている理由は、&font(#000000,#f08080){「女キャラなんて使ったら出会い目的の変な人たちが引っかかるじゃない!!」}とのこと。
薫&font(#000000,#87cefa){(君も引っかかった内の一人だけどね!?)}
Kaoriこと薫とは「推しが同じ」という共通点もあってか[[ゲーム]]中でも「息の合う相手」として仲良くなっていった様子で、2人の推しキャラである「ペテンちゃん」に女性ファンが少ないということもあってかより親近感を感じて急接近、七海の方から誘う形でリアルで会うことになったのだった。
その「推し愛」は本物で、自室は無数のペテンちゃんコレクションが所狭しと並べられているほか、ゲーセンでペテンちゃんのフィギュアが景品になっていることを知れば慣れないUFOキャッチャーにも取れるまで張り付く。成り行きで薫がペテンちゃんのコスプレをさせられることになった際には、その完成度の高さもあって&bold(){本人の目の前で限界化}していた。
女同士だと思っていたKaoriが実は男だったという事実には当初激しく動揺したものの、元々&s(){コミュ障特有の距離感バグ}「七海に近づく男絶対なぎ倒すマン」な父のいる家に呼ぶ約束だったため既に引くに引けない状況であったところ、薫がやや中性的な容姿だったことに目をつけ咄嗟の手段で彼に女装を提案。かくして、2人のいびつな交流関係が幕を開けるのだった。
そんな彼女だが、リアルでの姿はハッキリ言って&bold(){ポンコツ}の一言で、出来ないことが多すぎて出来ることを数えた方が圧倒的に早いほどに全方位弱点の塊。それゆえ、特に家の外での生活は薫のサポートが欠かせない。
-極度の人見知りで、特に男が苦手。人酔いしやすいのももちろん、「リア充オーラ」の漂うような場所も苦手。
-ものぐさ気味な性格なことも相まって「女子力」というものにはとんと縁がなく、身の回りのことはほとんど母親任せ。
--料理をしようと包丁を握れば&bold(){一太刀目で流れるように指を切る}、髪のお手入れについて薫から聞かれても&bold(){トリートメントやコンディショナーという単語自体に聞き馴染みがない}と相当にひどい((髪質そのものは至って良好らしく、薫からも「そのくらいのケアで今の様子なら、きちんとお手入れすればすっごく綺麗になるかも」とコメントされている))。
-根っからのインドア派な上に後述の理由でろくに運動をしてこなかったため、運動神経というものにはまるで縁がなくスタミナも皆無。加えて三半規管もかなり弱いようで種類問わず乗り物に乗るとだいたい酔う。
-「得意」とハッキリ断言できるものはゲームの腕前くらいのものだが、薫と対等な条件で対戦すると&bold(){基本的に圧勝する}。しかしかなりの負けず嫌いに加えてメンタルが揺れやすいようで、動揺すると一気に凡ミスが増えるほか不測の事態を前にするとパニックを起こして絶叫することも。
--また廃ゲーマーライフが完全に板についてしまっており、徹夜常習犯で昼間に「電池切れ」になってしまうことも多々。ベッドがひとつしかないと言われて「私が徹夜すれば解決」とサラッと言い出して実行してしまう人物である。&s(){おかげで「お決まりのイベント」がなかなか起きない。}
…とざっと上げただけでも相当数の弱点の塊で、それにもかかわらず&bold(){変なところで見栄っ張り}なため作中ではあらゆることに不慣れだったり不器用に対応しようとして結局上手くいかずに薫の手を借りている姿が見られる。日常の何気ない物事に四苦八苦する七海の、どこか小動物的なリアクションも本作の魅力のひとつである。
薫に出会う直前までずっと引きこもっていたことが七海の両親から明かされており、物語開始以降も暫くは学校に通っていなかった。上記の「弱点」の数々も、そのうちの多くがこの経緯に原因が集中している。
どうも友達との付き合い方に対し「周囲とのズレ」を感じる日々だったようで、そこに異性とのトラブルが加わったことが不登校の決定的なきっかけとなったらしく、七海の人見知り…特に男子と上手く話せないのはこの[[トラウマ]]を今も引きずっているため。
しかし薫と出会い、彼を振り回しながらも交流を重ねてゆく中で少しずつ外の世界にも慣れていく。
やがて、自分の都合で趣味でもない女装までさせて振り回しているのに、薫は文句ひとつ言わずに「友達同士」で居続けてくれることや、出来ないことだらけで薫に頼ってばかりな自分の不甲斐なさから、少しは自分も役に立ちたい、自立したいという想いが時を追うごとに強くなっていった。
それと同時に、徐々に「友達として」以上の興味を薫に抱き始めていることも自覚し始めるようになり、少しずつ自分磨きを始めてゆく。
そこにふとしたきっかけから引きこもりになった境遇を薫に明かしたところ、「じゃあ、僕のいる学校にいっしょに通おう」と誘われたことで復学を決意するのだった。
このように、苦手なことや未体験の物事が多く何かと薫を頼りがちな彼女ではあるが、実は&bold(){物語が大きく動く選択はいつも七海の方から踏み出しており}、本当は責任感と行動力を兼ね備えた人物であることがうかがえる。
実は年齢も薫のひとつ上で、初登場時で高校1年。しかし出席日数の問題で留年が確定していたため、薫と同じ高校に転入する形で復学して以降は薫と同級生である。
両親のことは「ママ」「パパ」呼び。
しかし薫の前では格好つけたいのか「母さん」と呼ぼうとしており、徹底できずに&bold(){「マ…母さん」}となることも。
**2人の親族
***&color(#000000,#9acd32){七海の母}
#center(){&color(#000000,#9acd32){(七海 あなた……甘やかされてる…!?)}}
本名は「祥子」。
七海と同じ髪色のロングヘアを1つ結びにして右肩にかけている。
あらあらうふふなおっとり系で、並大抵のことには動じず静かに七海達を見守る、そんな理想の母親を体現したような人柄である。
しかしのんびりしているようで非常に鋭い視点の持ち主でもあり、時折本質をお見通しであるかのような発言をしたかと思えばからかうかのようにあしらったりもする、そんな掴みどころのない底知れなさを見せる女性である。
また何かと気難しい夫のことも&bold(){手綱の引き方含め}よく扱いを心得ており、あの夫でさえ彼女には頭が上がらない。
#center(){&font(15px,#000000,#9acd32){……ねぇ あなた&br()心配もいいですが&br()あんまり過ぎるようだと&br()&bold(){…七海に嫌われますよ♡}}}
&s(){娘に近づく男絶対なぎ倒すマンを止められる祥子さん、ひょっとしなくても逢坂家最強なのでは……?}
七海の[[ゲーム]]趣味にも理解があり、時折一緒に遊んでもいる様子。
それゆえに腕前も相当なもののようで、気まぐれにカオリに対戦を持ちかけて勝ってみせた際にはさすがの彼女&s(){(?)}も呆然としていた。
娘に対しても容赦はなく、ババ抜きでは&bold(){七海が心理戦に弱いことを突いて、率先して揺さぶりをかけて負かす}という大人気ない一面も。ある意味この娘にしてこの母あり。
#openclose(show=──あら 母娘だと意外とできるものね …声真似♡(*本作の核心に纏わるネタバレにつき閲覧注意*)){
&bold(){実は「カオリ」が男であることをかなり早い段階で察していた。&br()薫の項にて述べた、「ノーヒントでカオリの正体に気付いた唯一の人物」こそ彼女である。 }
ついでに、カオリの本名が「薫」であることも娘の失言から知っていた。
#center(){&font(#000000,#87cefa){じゃ…じゃあ&br()なんで僕のこと信用してくれたんですか?&br()&br()だって僕&br()&font(15px,#000000,#87cefa,b){自分を女子って嘘ついて&br()娘さんの部屋に上がり込んだり&br()お出かけに連れ出したり&br()自分の家に娘さんを&br()とっ…泊めた男ですよ!?}}&br()&color(#000000,#9acd32){全部事実なのがすごいわよね…}}
その理由は至極シンプル、「&bold(){七海が信じたから}」。
ただでさえ&bold(){「それまで対人関係を怖がって引きこもっていた娘が、ある日突然『ネットで知り合った友達と会いに行く』と言って出かけていった」という状況}ゆえ、内心では心配が絶えなかったと、後に薫に打ち明けている。&s(){まぁこの状況で心配しない方が親としておかしいので当然ではある。}
しかし初めてカオリと会った日の七海がそれまで長らく見せなかった笑顔をしていたこと、その後もカオリと会う度に良い方向へと変化し続けてゆく娘の姿から、カオリこと薫は信頼できる子だと判断。
彼が男の子だと薄々察してもとやかくは言わず、むしろ「正体」を知ったら黙ってはいないだろう夫を引き留めつつ2人の味方としてそっと見守ることを決めていたのだった。
……それにしても、薫に真相を明かした時点でその「正体」に祥子が気付いてから一年あまりが経っている。
それだけの期間、2人を信じて陰ながら支え続けていた彼女の忍耐と包容力には脱帽するほかない。間違いなく、本作のMVPの一人と言えよう。
とはいえ「娘が同年代の男の子と2人っきり」という状況は流石に母として思うところもある様子で、不可抗力とはいえ七海が薫の家に泊まることになった際には内心かなりハラハラしていたことがうかがえる。
2人が付き合うことになってからも「親としてそこは…」と最低限の一線だけは引いている。
祥子&color(#000000,#9acd32){「薫さん家でのお泊まりだけは無しね…?」}
七海&font(#000000,#f08080){「しっしないわよそんなこと!」}
祥子&font(#000000,#9acd32,b){「したから言ってるのよ」}
}
紅茶には並々ならぬこだわりがあり、茶葉選びをしている時だけは易々と話しかけられないオーラを放つ。
高校時代からかなりの紅茶好きだったようで、初恋のきっかけも紅茶である。
七海から初キスがいつかを問われた際は、その時の七海よりは上だったはずとはぐらかしていたが、本当は&bold(){初キス16歳と1か月}、&bold(){結婚20歳}である。早い。
***&color(#ffffff,#000000){七海の父}
#center(){&color(#ffffff,#000000){し しかしだな…&br()最近は誰かと電話してることも増えたし…&br()以前は興味も持たなかった&br()服のカタログも見るようになったし…&br()&br()&font(15px,b){七海に一体何が…?}&br()&color(#000000,#9acd32){どこからどうみても&br()一人娘の健全な成長ですよ}}}
「七海に近づく男絶対なぎ倒すマン」こと七海の父親。本名は「俊雄」。
大柄で筋肉質の肉体にスキンヘッド、おまけに頬には大きな傷痕が残る強面と&bold(){威圧感が人の形をしている}とでも言うべき威容を誇る。
その巨体に違わず柔道三段・剣道二段の有段者にして勤め先も警備会社と、実績面でもまず正面から挑んではいけないであろう実力の持ち主であることをうかがわせる。
……が、その中身は冒頭のセリフの通り、娘を心から心配する等身大の父親である。
と、いうよりも娘に対する愛情はもはや&bold(){溺愛}と言っていいレベルのもので、七海が初めて弁当を作って渡してくれた日には「なんとかこの弁当を永久保存できないか」と&bold(){真顔で}会社の同僚に相談するほど。
またその全身から溢れ出るオーラとは裏腹に気さくで優しい性格の持ち主であり、カオリとの初対面時にも笑顔で出迎えているほか、すっかりカオリと顔なじみとなってからはなにかと彼女&s(){(男だけど)}のことも気にかけており、「実質一人暮らし」という境遇も心配している。&s(){笑うと迫力が増して&bold(){余計怖い}のは内緒。少なくとも当人に悪気はないのだ…}
……が、七海の周囲に男の影がある時だけはは話は別。
実際に手を上げたことこそ現状一度もないものの、娘に近づこうとする男の気配を察知すると持ち前の威圧感を存分に発揮し、相当な気迫で七海との関係を問いただしに来る。
……「七海が目当てではない」と答えようものなら&font(#ffffff,#000000,b){「貴様…七海より他の女がいいと…?」}と余計気配が険しくなるという鉄板確キルコンボ付きである。「なぎ倒すマン」の異名は伊達ではないのだ……。
……それはそれとして、家の中ではともかく&bold(){外でも「&color(#ffffff,#000000){愛娘}」Tシャツ}はどうかと思うよお父様。
&bold(){本作における「最大の障壁」といえる存在}であり、薫が女装をしなければならない理由のうち最も大きなものがこの父親の存在である。
現状こそカオリの「正体」に気付く気配は一向にないものの、「親の目の前で性別を偽って娘に会い続けている」という状況は控えめに言ってもリスク以外の何物でもない。
そのため、薫と七海の関係が進展してゆくにつれて「どうやって『薫として』嘘偽りなく接することができるようにするのか」が物語の大きなカギとなってゆく。
#openclose(show=しかし、ことはそう簡単な話でもないようで……(*本作最大級のネタバレのため閲覧注意*)){実は、彼本人が男を嫌っているわけではない。
彼がここまで男を毛嫌いするようになったのには、七海の過去が深く関係している。
七海の項にもある通り、かつて彼女は人間関係で失敗してしまい他人を恐れるようになってしまったのだが、その決定的なきっかけが「男友達とのトラブル」だったようだ。
そのため七海は特に男性に対して激しい恐怖心を抱くようになってしまい、ついには学校にも通えなくなってしまうほどだった。
そんな様子を、父親であるがゆえにずっと傍で見ていた。
ゆえに、守ろうとしたのだ。
もうこれ以上、七海が傷ついて怖い思いをしなくて済むように。
少しでも娘の苦しみを和らげてあげられたらと、彼女が特に恐れていた対象である男子を、その周りから遠ざけた。
全ては、七海のためだったのだ。
やがて時は過ぎ、薫との日々を送る中で七海は少しずつ男子への苦手意識を克服していき、学校にもまた通えるようになった。
しかし、父にとっては、七海の姿はまだ「あの頃」のまま。
今でこそ前より笑うようになったが、もしかしたらまた傷ついて一年前に逆戻りしてしまうかもしれない。
加えて、七海がその「苦手意識」を克服できたのは薫との日々の積み重ねがあったから。
だが、俊雄にとってカオリは今も「七海の女友達」のままで、「薫」との時間はゼロのまま。
そんな境遇の中、いきなり「娘の友達だと思っていた相手が実は彼氏が性別を偽った姿で、いつの間にか娘は彼氏を持てるまでに男嫌いを克服していた」という事実を突きつけられて、受け入れろという方が酷な話であろう。
……父親は今も守り続けている。
娘が自ら扉を開き出ていった、空っぽの部屋を。
その部屋がもう娘には必要ないと父が悟るには、まだもう少し時間が必要なのだ。
}
妻が紅茶派なら、こちらは[[コーヒー]]派。
こちらもこちらで並々ならぬこだわりがあるようで、豆を選んでいる間の後ろ姿は&s(){いつも以上に}近寄り難い存在感を放っている。
だが、娘が初めて淹れた&bold(){フィルターを使わず粉に直接湯を注いで淹れたコーヒー}には静かにツッコみつつも&color(#ffffff,#000000){「これはこれで飲んでおきたい」}と感慨深く味わっていたのだった。
一方で意外にも甘党でもあり、[[コーヒー]]に合う洋菓子探しも趣味のひとつ。
&s(){……結構お洒落な趣味をお持ちのお父様である。}
***薫の父
物語中では&s(){ラブコメのお約束で}海外に赴任中で、多忙のため1年近く家を空けることも珍しくない模様。そのため、基本的に薫は事実上一人暮らしである。
しかし仕事一辺倒の人物[[というわけ]]ではなく、薫を一人にしてしまうことには後ろめたさを感じておりどうにかして一緒に暮らせないかと考えている。
……残念ながらその願いは叶わなかったものの、物語中盤で海外での仕事が一段落し帰国、本国配属となったためたびたび薫や(話で聞いていた)七海の様子を見に帰宅している。
#openclose(show=「──あなたが その人たちをみーんな助けるの! ──立派な仕事でしょ?」(ネタバレ注意)){彼の仕事先は製薬会社で、ある薬の開発プロジェクトを取り仕切っていた。
それは、10年前に妻・透花の命を奪った難病の治療薬。
かつて透花が生きているうちに薬を完成させて治してみせることを誓っていたが、それが「果たせぬ約束」であることに2人は薄々気付いていた。
しかし「もしも間に合わなかったとしても、私以外の薬を待っている人の為にも決して投げ出さないで欲しい」という妻の「優しい呪い」に応え続け、10年経った今ようやく薬の販売に必要な承認をクリアしたのだった。
一世一代の悲願をついに叶えた形ではあるのだが、それでも妻を救えなかったことは彼の中で無念として残り続けており、「せめてあともう少し早く関係を進められていたら」と悔やんでも悔やみきれない想いを抱いている。
それゆえに薫には自分と同じ後悔を味わって欲しくないと思っており、やっと息子がトラウマから無意識に作り続けていた「心の壁」を取り払うことができたことを喜びながらもその後悔を語り、「どれだけ『好きだ』と伝えても、伝えすぎることはない」とその背中を押している。
……後日、その言葉を聞いた薫が&bold(){全力フルスロットルで気持ちを伝えに行ってしまい、顛末を聞いた父は「伝え過ぎることもあるんだなぁ」と思うことになった}のは、また別のお話。}
**クラスメイト
***佐々木龍二
薫の友達で、薫とは登場時からずっと同じクラス。
金髪セミロングの「ツンツンした」髪型が特徴の、いかにも体育会系な男子。
周囲からの…とくに女子からの人物評は「バカで鈍くて空気読めない」とかなり散々で、同じテニス部の先輩でダブルスペアのみるくからも度々「腑抜け」と言われてしまう始末。……その様子に彼が気付く様子は、今のところ、ない。
とはいえその周囲があまり気を使わなくていい明るい性格もあってか七海が薫の次に話せる男友達でもある。
そんな色恋沙汰とはまるで無縁な彼だったが、スーパーでの買い物途中に財布を落としてしまったことをきっかけに、その財布を拾ってくれた&bold(){カオリにまさかの一目惚れ}をしてしまい……!?
&s(){友達すら撃墜するカオリちゃん、恐ろしい子である……。だが奴は男だ}
***白川寧音
七海の友達トリオその1。栗色の髪を後頭部でお団子にまとめている。
薫たちのクラスの委員長で新聞部員。周囲からのあだ名も「いいんちょ」で、七海との初対面時には&bold(){なぜか本名を名乗らず「いいんちょ」で通そうとした。}
ふわふわマイペースな性格の持ち主だが、どちらかというと&bold(){自由奔放という意味での「マイペース」}で、「フリーダム委員長」という読者からの呼称が全てを物語る。
新聞部所属ということで特ダネ探しに余念がなく、特に色恋沙汰には誰より敏感で気配を感じとるや&bold(){「学級新聞のネタにしたいから」と真っ向ストレートで聞き出しに来る}。そのため、薫たち2人にとっては&color(red){学内一の危険人物}と見られている…。&s(){恋愛関係+女装趣味とか特ダネ待ったなしなのでさもありなん。}
かなり食い意地が張っており、好物はカツ丼。調査対象への聞き出しの際にも「お約束」として&bold(){初手から}カツ丼を出すのがお決まりだが、&bold(){ただし食べるのは寧音の方。}
誕生日ケーキも&bold(){1人で1ホール丸々平らげるので、誕生会では必ず2ホール以上用意されている。}
しかし伊達に委員長を務めてはおらず、転入したばかりでクラスに馴染めていない七海を自然とグループの輪に入れてあげたり彼女の「苦手」にもフォローを入れたりと、周囲との輪を取り持つ能力は流石といったところ。普段の彼女は「その方が面白いから」あえて空気を読んでいないだけなのだ。
「新聞のネタにしたいから」と学内の噂を集めて回るのももちろん「楽しい話題を集める」ことが目的なので、当人達が本気で困るようならネタにはしないと誓うなど実際にはきちんと良心も備えた人物である。&s(){でも恋バナは聞き出したがる。}
***篠原葎子
友達トリオその2。周囲からのあだ名は「りっちゃん」
金髪のロングヘアに若干男っぽい口調が特徴。
ギャルっぽい見た目なのにチャラい男が苦手で誠実な人がタイプ、そして恋愛にはビックリするほどウブでピュア……と&bold(){ギャップ萌え要素の塊}のような存在。
実家が洋菓子屋で、自身は厨房には入れないもののある程度お菓子作りなどを教わってはいるようで度々七海にチョコ作りなどを教えている。
七海と一緒に高校生活を送るようになる中で、&bold(){ごく自然に恋人ムーブをする薫・七海カップル}の様子を一人目撃することも多く、大抵隣には「校内で一番関係を知られてはいけない人」こと寧音がいることもあって&color(red){当人達以上にハラハラさせられる}ことも多い。
その後葎子も七海より一足先に想い人への告白を成功させ恋人関係を作るのだが、その恋愛の進展模様は七海達とどっこいである…。
***向日路郁
友達トリオその3。「&bold(){む}こうじ &bold(){い}く」であだ名は「むいちゃん」
紫色のパッツンヘアと京都弁が特徴。
女子友トリオ一の常識人。純粋すぎる葎子にはまだ早い光景からさりげなく遠ざけたり、放っておくと何しでかすかわからない寧音の手綱を引いたりと何かと気配りスキルが光る。
初対面での七海とのやり取りでもそのスキルは発揮され、薫との関係を薄々葎子と察しながらもそっとしておく……つもりだったのだが&bold(){委員長が気配りを台無しにした。}
2年生への進級ではトリオの中で彼女だけ文系クラスを選択したためにクラスが分かれてしまい、以降は出番がほぼなくなってしまう憂き目に。むいちゃんは[[犠牲になったのだ]]……
**その他周辺人物
***大海直
#center(){わー見てみて真白&br()&bold(){青春の可視化}}
薫と七海が(女装用の服を探しに)通っている服屋に務める店員で、カオリのコーディネートは基本彼女のプロデュースによるもの。
「女装に使える服」というオーダーに対し&bold(){非常にノリノリで}応じており、作中の誰よりも薫の女装ライフを楽しんでいる人物。相方の真白曰く&bold(){過激派}。
時折趣味全開のファッションをカオリにさせては&bold(){逢坂母娘を揃って悩殺}してみせることも……。
コーディネートの提案を抜きにしても薫と七海の関係は好奇心を大いにくすぐられているようで、2人を微笑ましく見守っ……&bold(){いや、あの目線はおじさんのそれだわ。}
***佐久間真白
#center(){&bold(){直ちゃんは自分の仕事を可視化してね}}
直と同じ服屋の店員。
&s(){ぶっちゃけかなり「やべーやつ」な相方とは違い}至って常識人であり、薫の悩みにも真摯に答えている。
&s(){そして職権乱用しておじさんムーブを繰り返す相方に辛辣なツッコミを入れつつ仕事を振る日々を送っている。}
実は2人の店は「女装のための服」も多く取り扱っており、2人は「体格や性別を気にせず好きな服を選んでほしい」という想いをもって仕事に取り組んでいるとのこと。
それゆえ、彼女もまた薫たちのことは心から応援し見守っている。
***天河みるく
#center(){&color(#000000,#d3d3d3){…丁度いいわけあるか …………腑抜け……}}
黒髪のショートカットに灰色の目、ボーイッシュな口調が特徴。
薫と同じ学校に通っており、龍二とは同じテニス部の先輩部員でダブルスペアの相方にあたる。
実は龍二に密かな恋心を抱いているのだが、本人が奥手な上に肝心の龍二が「その手の気配」に疎いため気づいてもらえる気配もない、と先は長そうである……。がんばれみるくちゃん。
#center(){&color(#000000,#ff69b4){こんにちは!&br()みるきー☆うぇい でーすっ}}
薫と七海が出会ったきっかけの[[ゲーム]]である「ブラメア」では2人とギルメン同士でもあり、特に七海とリアルで交流を持った際には「ブラメアについて語れる希少な女友達」ができたと喜んでいた。
その後七海とは個別にチャットを交換しており、彼女からの薫にはできない相談事にもよく応じている。
コスプレイヤー「&bold(){みるきー☆うぇい}」としても活動しているほか、本人が直接登場していなくても薫たちが遊んでいるゲームの背景に同じHNが登場している((「MilkyWay」「みるきーうぇい」などゲームタイトル頃に表記揺れあり。おそらくHNに使用できる文字の都合だろう))ことも。
「みるきー」として顔出ししている時は素の姿とは打って変わって語尾に「☆」がつくような明るい性格として振舞っており、コスプレ姿が基本ということもあって初見でみるくと同一人物と見抜くのはなかなかに至難である。
そして、コスプレイヤーとしての知識から&bold(){カオリが女装した姿であると一目で見抜いた}恐るべき相手。
確かにコスプレの世界で男装・女装はもはや日常ではあるが、もう一方の「自力で正体を看破した人物」でも確信を得るのにしばらくの時間がかかったことを踏まえると凄まじい目の鋭さである…。
追記・修正は初対面の異性の家に女装姿で上がり込んでからお願いします。
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- 違反コメントおよびそれに反応する内容のコメントを削除。 -- 名無しさん (2023-08-01 13:06:42)
- 立て乙です -- 名無しさん (2023-08-01 18:30:02)
- まさかこの項目が立つなんて思いもしなかった。このマンガが毎週の楽しみになってる -- 名無しさん (2023-08-01 22:32:37)
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&font(#6495ED){登録日}:2023/07/30 Sun 10:02:44
&font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red)
&font(#6495ED){所要時間}:約 25 分で読めます
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&bold(){&ruby(リアル){現実}もたまには嘘をつく}は、にいちによるWeb漫画。
単行本は既刊4巻、そのほか[[同人誌]]9巻が出版されている(2023年7月末現在)。
*概要
本作を端的に表現するなら、&bold(){「ゲームで知り合った友達が実は女の子で、成り行きで[[女装]]して交流を重ねてゆくことになったお話」}。
「オンラインゲームがきっかけの出逢い」という導入は今でこそありふれたものではあるが、そこに「女装」を組み合わせるというアイデアが受け、SNS上で大きな反響となった。
基本的にはメインキャラクターである薫と七海の何気ない(?)青春を描く日常ラブコメで、会話のテンポが小気味よくサラッと読める作風。
しかしこの2人を初めとして&color(purple){主要人物の多くが心にどこか「影」を抱えている}ことが会話の節々から読み取れるようになっており、その温かくも「良くも悪くも人間らしい」キャラクター性も特徴のひとつ。
各キャラクターの魅力を描きつつもそれぞれが足を踏み出し切れずにいる事情を少しずつ解き明かしてゆき、丁寧に張り巡らされた多くの伏線を回収しつつ彼らの人間関係を一歩一歩前に進めてゆく……そんな少しずつ読者を引き込んでゆくようなストーリー構成になっている。
また、メイン2人の関係が進展してゆくと共に周囲の人間関係も少しずつ変化してゆく様子がさりげなく描かれており、こうしたサブキャラクター同士の関係性も世界観を深く掘り下げるキーである。
総じて「軽く読めて、少しずつ引き込まれる。でも重すぎたり、くどくなったりはしない」という絶妙な匙加減が本作の特徴でもあり、物語が終盤に向かいつつある単行本第4巻時点でもこのリズム感は保たれている。
ちなみに、にいち先生が既に展開している他シリーズとのリンクもこっそりなされており、過去作の登場人物が端役として顔を出していることも。
特にとある老夫婦の会話には感慨深いものがある。
元々本作はSNS上にて連載していたもので、「&bold(){ゲーム好きの友達と色々する話}」のタイトルでも投稿されていた。
当初の予定では[[同人誌]]一冊分程度の物語にする予定だったとのことだが、連載が予想外の好評を受けた結果長編となり、商業化にも至った旨が作者インタビューにて語られている。
単行本発売以降も一般誌ではなく[[pixiv]]やニコニコ静画などにて投稿を継続しており、23年7月末現在も毎週最新話を公開中。既に単行本に収録されているエピソードも引き続き無料公開されている。
[[同人誌]]から始まり、人気に伴って商業化に移行した形ではあるが、「既に[[同人誌]]版を購入してくれたファンへの配慮」として原則として[[同人誌]]に掲載したエピソードは単行本には載せず、登場人物の紹介等必要最低限の引用に留める形としている。
以降の[[同人誌]]も「番外編」として位置付けられており、連載版および単行本で描かれた物語の間を補完する内容として書き下ろされている。
単行本と各[[同人誌]]の時系列としては、
単行本①巻(同人誌①巻)
|
|同人誌②巻
|同人誌④巻
|
単行本②巻(同人誌⑤巻)
|
単行本③巻/同人誌③・⑥巻
|
単行本④巻/同人誌⑦巻
|
|同人誌⑨巻
|同人誌⑧巻
:
の順で対応していることが作者より明かされている。
ただし、&bold(){同人誌①巻・⑤巻に関しては新キャラの紹介など物語の進行上外せないエピソードが収録されている関係でほぼ全ページが単行本にも収録済}。
[[同人誌]]は現在⑦巻まで電子書籍化されているため気軽に入手可能だが、購入にあたっては上記の件注意するよう作者よりアナウンスされている。
*あらすじ
#center(){オンラインゲームで出会った女の子と趣味の話で盛り上がり、&br()彼女の自宅に遊びに行くことになったものの、&br()&color(#ffffff,#000000){どうやら彼女はこちらを女子だと思っている}らしい。&br()しかも彼女の家には&color(#ffffff,#000000){「娘に近づく男絶対なぎ倒すマン」}な、&br()お父様までいるという。すべての問題を解決するために&br()残された道はひとつ。それは……&br()&color(#ffffff,#000000){性別を偽ること……!}}
#right(){(単行本第1巻・巻末あらすじより引用)}
*主要人物
**メインキャラクター
***&color(#000000,#87cefa){寺崎 薫}
#center(){&font(#000000,#f08080){そこは一日の長を活かしてよ&br()何のためのネカマよ}&br()&font(#000000,#87cefa,b){初対面の女の子の家で両親と&br()ライアーゲームやるためではねぇよ}}
主人公。中学3年(初登場時)→高校1年(単行本2〜4巻)→高校2年(同人8巻〜)
ネットゲームが趣味の、ごく普通の少年。誕生日は6/7。
[[ゲーム]]では女性のアバターを用いる所謂ネカマだが、単に「装備品など見た目でおしゃれできて楽しいから」というだけの理由で深い意味はない。
……なのだが、ロールプレイにはこだわる性格なのか「かなり込み入った話」にもその場で調べるなどして合わせてしまいがちで、それゆえリアルで女性のプレイヤーにも本気で女性と勘違いされてしまい&ruby(ひきぎわ){COする機会}を自ら失ってしまうことも多々。なんならこの物語のきっかけもそんな性格のせいでもある。
[[ゲーム]]上でNanamiこと七海と意気投合するも、彼女が自分のことを「女友達」と思っての誘いだと知りながら断れずにリアルで会う約束をしてしまい、集合前には罪悪感に潰れかかっていた。
さらには七海の事情で「七海とゲームで知り合った女友達・&bold(){カオリ}」として女装する羽目にまでなってしまい、&bold(){性別を偽って初対面の女の子の部屋に上がり込む}という中々に際どい経験をする事態に。
しかしリアルの七海が見せる人となりを目にしたことや彼女の両親の言葉を聞いたこともあって、以降も定期的に七海と遊びに行くようになるのだった。……もちろん(?)女装して。
そんなわけで物語中では女装した姿の「カオリ」として登場することが多いのだが、元々中性的な顔立ちで、かつまだ成長期の途上だったこともあってかその女装姿は「似合う」「可愛い」&bold(){「向こう3年は大丈夫」}ともっぱらの評判で、作中でも性別を疑われたことはほとんどない。
彼に女装をさせた張本人である七海からも、&font(#000000,#f08080,b){「…何かに目覚めそう」}との評。
薫&font(#000000,#87cefa,b){「眠ってて」}
それほどのクオリティゆえに「薫」を知っている人々に「カオリ」の姿を見られてもまず見破られず、正体・性別がバレたのはこれまで3例しかない。
しかもうち1件は薫の自爆、1件は相手がコスプレイヤーだったためにウィッグや「姿の偽り方」に詳しかったことが要因であり、ノーヒントで女装に気づいたのは現状1人だけということになる。
しかし「カオリ」が実は男であることを知っている面々ですらも&bold(){「あの子本当に男の子なの?」と逆に性別を疑われることすらある}ほどにその女装は様になっており、おかげでpixivでは&bold(){「性別:薫」}というタグが完全に定着している。
なんなら&color(red){水着姿での女装すら自然にこなす。}&s(){違和感?奴さん死んだよ}
&font(#000000,#f08080){…あんたマジで女装似合うわね……&br()その格好で生きた方が幸せになれるまであるわよ}
&font(#000000,#87cefa,b){無いよ}
そして2024年夏の同人誌にて(ifという形だが)&bold(){ついに女体化させられた。}&s(){正に公式が最大手}
相方の七海とは対照的に高い対人スキルの持ち主で、どんな人にも同じように接することができる。
また気遣い上手でもあり、七海に対してはもちろん周囲の友人や家族に対しても何かと気を回している様子が常々うかがえる。
が、&bold(){案外言動に容赦がない}一面があり、率直に思ったことをそのまま口に出してしまうことも多い。
どうも&bold(){気を許した相手ほど失言癖が酷くなる}傾向があるようで、度々七海の「失礼オブザイヤー」を更新している。
親が多忙で家では基本的に一人、かつその親もあまり料理しないという環境もあって料理もかなり得意で一通りの家事スキルは習得済……と&bold(){女装を抜きにしても女子力はかなり高い。}
しかし人間関係を作ることに対しやや冷めている所があり、「友達」は作れてもその先には踏み込もうとせず、むしろ「それ以上の存在」と認識することを避けている節すらある。
#openclose(show=その理由は……(ネタバレ注意)){実は幼い頃に実の母である透花を病で喪っており、その経験から&bold(){「大切な人を作ること」に対し強いトラウマを抱いていた}。
その心の傷もあってか登場当初はぶっきらぼうな言動が目立ち、七海に対するリアクションを筆頭にわりと辛辣なコメントも度々発している。
七海との関係についても、「ただの友達」と言うにはあまりに仲良くなりすぎてしまっていることを薄々自覚しながらも、それをはっきりと認めることを恐れていたことが本人の口から明かされている。
だが、林間学習で体調を崩した七海が目の前で倒れてしまい、その光景にかつてのトラウマを刺激され激しく動揺。
皮肉にもそれがきっかけとなり彼女が自分にとってどうしようもないほど「大切な存在」であることを実感し、ついに七海からの告白を受け止めたのだった。
そして、同じく母の死に無念を抱いていた父からも「自分と同じ後悔だけはしないように」と背中を押されたことで、彼女との関係を前に進めていく決意を固めることになる。}
***&font(#000000,#f08080){&ruby(おうさか){逢坂} 七海}
#center(){&font(#000000,#87cefa){…僕 女の子のファッションなんて&br()全然分かんないんだけど…}&br()&font(14px,#000000,#f08080){私だって分かんないわよ 服なんて}&br()&font(#000000,#87cefa,b){いや君は分かっててくれよ}}
[[メインヒロイン]]。誕生日は10/2。
ダークブラウンのロングヘア、右目の下にある[[泣きぼくろ]]が特徴。ややものぐさでぶっきらぼうな性格の持ち主。
[[ゲーム]]では男性アバターを使用する所謂ネナベ。
ただし中身が女性であることは[[ゲーム]]中でも特に隠していないらしく、薫もリアルの七海と初対面した際には特に驚く様子はなかった。
男性アバターを使っている理由は、&font(#000000,#f08080){「女キャラなんて使ったら出会い目的の変な人たちが引っかかるじゃない!!」}とのこと。
薫&font(#000000,#87cefa){(君も引っかかった内の一人だけどね!?)}
Kaoriこと薫とは「推しが同じ」という共通点もあってか[[ゲーム]]中でも「息の合う相手」として仲良くなっていった様子で、2人の推しキャラである「ペテンちゃん」に女性ファンが少ないということもあってかより親近感を感じて急接近、七海の方から誘う形でリアルで会うことになったのだった。
その「推し愛」は本物で、自室は無数のペテンちゃんコレクションが所狭しと並べられているほか、ゲーセンでペテンちゃんのフィギュアが景品になっていることを知れば慣れないUFOキャッチャーにも取れるまで張り付く。成り行きで薫がペテンちゃんのコスプレをさせられることになった際には、その完成度の高さもあって&bold(){本人の目の前で限界化}していた。
女同士だと思っていたKaoriが実は男だったという事実には当初激しく動揺したものの、元々&s(){コミュ障特有の距離感バグ}「七海に近づく男絶対なぎ倒すマン」な父のいる家に呼ぶ約束だったため既に引くに引けない状況であったところ、薫がやや中性的な容姿だったことに目をつけ咄嗟の手段で彼に女装を提案。かくして、2人のいびつな交流関係が幕を開けるのだった。
そんな彼女だが、リアルでの姿はハッキリ言って&bold(){ポンコツ}の一言で、出来ないことが多すぎて出来ることを数えた方が圧倒的に早いほどに全方位弱点の塊。それゆえ、特に家の外での生活は薫のサポートが欠かせない。
-極度の人見知りで、特に男が苦手。人酔いしやすいのももちろん、「リア充オーラ」の漂うような場所も苦手。
-ものぐさ気味な性格なことも相まって「女子力」というものにはとんと縁がなく、身の回りのことはほとんど母親任せ。
--料理をしようと包丁を握れば&bold(){一太刀目で流れるように指を切る}、髪のお手入れについて薫から聞かれても&bold(){トリートメントやコンディショナーという単語自体に聞き馴染みがない}と相当にひどい((髪質そのものは至って良好らしく、薫からも「そのくらいのケアで今の様子なら、きちんとお手入れすればすっごく綺麗になるかも」とコメントされている))。
-根っからのインドア派な上に後述の理由でろくに運動をしてこなかったため、運動神経というものにはまるで縁がなくスタミナも皆無。加えて三半規管もかなり弱いようで種類問わず乗り物に乗るとだいたい酔う。
-「得意」とハッキリ断言できるものはゲームの腕前くらいのものだが、薫と対等な条件で対戦すると&bold(){基本的に圧勝する}。しかしかなりの負けず嫌いに加えてメンタルが揺れやすいようで、動揺すると一気に凡ミスが増えるほか不測の事態を前にするとパニックを起こして絶叫することも。
--また廃ゲーマーライフが完全に板についてしまっており、徹夜常習犯で昼間に「電池切れ」になってしまうことも多々。ベッドがひとつしかないと言われて「私が徹夜すれば解決」とサラッと言い出して実行してしまう人物である。&s(){おかげで「お決まりのイベント」がなかなか起きない。}
…とざっと上げただけでも相当数の弱点の塊で、それにもかかわらず&bold(){変なところで見栄っ張り}なため作中ではあらゆることに不慣れだったり不器用に対応しようとして結局上手くいかずに薫の手を借りている姿が見られる。日常の何気ない物事に四苦八苦する七海の、どこか小動物的なリアクションも本作の魅力のひとつである。
薫に出会う直前までずっと引きこもっていたことが七海の両親から明かされており、物語開始以降も暫くは学校に通っていなかった。上記の「弱点」の数々も、そのうちの多くがこの経緯に原因が集中している。
どうも友達との付き合い方に対し「周囲とのズレ」を感じる日々だったようで、そこに異性とのトラブルが加わったことが不登校の決定的なきっかけとなったらしく、七海の人見知り…特に男子と上手く話せないのはこの[[トラウマ]]を今も引きずっているため。
しかし薫と出会い、彼を振り回しながらも交流を重ねてゆく中で少しずつ外の世界にも慣れていく。
やがて、自分の都合で趣味でもない女装までさせて振り回しているのに、薫は文句ひとつ言わずに「友達同士」で居続けてくれることや、出来ないことだらけで薫に頼ってばかりな自分の不甲斐なさから、少しは自分も役に立ちたい、自立したいという想いが時を追うごとに強くなっていった。
それと同時に、徐々に「友達として」以上の興味を薫に抱き始めていることも自覚し始めるようになり、少しずつ自分磨きを始めてゆく。
そこにふとしたきっかけから引きこもりになった境遇を薫に明かしたところ、「じゃあ、僕のいる学校にいっしょに通おう」と誘われたことで復学を決意するのだった。
このように、苦手なことや未体験の物事が多く何かと薫を頼りがちな彼女ではあるが、実は&bold(){物語が大きく動く選択はいつも七海の方から踏み出しており}、本当は責任感と行動力を兼ね備えた人物であることがうかがえる。
実は年齢も薫のひとつ上で、初登場時で高校1年。しかし出席日数の問題で留年が確定していたため、薫と同じ高校に転入する形で復学して以降は薫と同級生である。
両親のことは「ママ」「パパ」呼び。
しかし薫の前では格好つけたいのか「母さん」と呼ぼうとしており、徹底できずに&bold(){「マ…母さん」}となることも。
**2人の親族
***&color(#000000,#9acd32){七海の母}
#center(){&color(#000000,#9acd32){(七海 あなた……甘やかされてる…!?)}}
本名は「祥子」。
七海と同じ髪色のロングヘアを1つ結びにして右肩にかけている。
あらあらうふふなおっとり系で、並大抵のことには動じず静かに七海達を見守る、そんな理想の母親を体現したような人柄である。
しかしのんびりしているようで非常に鋭い視点の持ち主でもあり、時折本質をお見通しであるかのような発言をしたかと思えばからかうかのようにあしらったりもする、そんな掴みどころのない底知れなさを見せる女性である。
また何かと気難しい夫のことも&bold(){手綱の引き方含め}よく扱いを心得ており、あの夫でさえ彼女には頭が上がらない。
#center(){&font(15px,#000000,#9acd32){……ねぇ あなた&br()心配もいいですが&br()あんまり過ぎるようだと&br()&bold(){…七海に嫌われますよ♡}}}
&s(){娘に近づく男絶対なぎ倒すマンを止められる祥子さん、ひょっとしなくても逢坂家最強なのでは……?}
七海の[[ゲーム]]趣味にも理解があり、時折一緒に遊んでもいる様子。
それゆえに腕前も相当なもののようで、気まぐれにカオリに対戦を持ちかけて勝ってみせた際にはさすがの彼女&s(){(?)}も呆然としていた。
娘に対しても容赦はなく、ババ抜きでは&bold(){七海が心理戦に弱いことを突いて、率先して揺さぶりをかけて負かす}という大人気ない一面も。ある意味この娘にしてこの母あり。
#openclose(show=──あら 母娘だと意外とできるものね …声真似♡(*本作の核心に纏わるネタバレにつき閲覧注意*)){
&bold(){実は「カオリ」が男であることをかなり早い段階で察していた。&br()薫の項にて述べた、「ノーヒントでカオリの正体に気付いた唯一の人物」こそ彼女である。 }
ついでに、カオリの本名が「薫」であることも娘の失言から知っていた。
#center(){&font(#000000,#87cefa){じゃ…じゃあ&br()なんで僕のこと信用してくれたんですか?&br()&br()だって僕&br()&font(15px,#000000,#87cefa,b){自分を女子って嘘ついて&br()娘さんの部屋に上がり込んだり&br()お出かけに連れ出したり&br()自分の家に娘さんを&br()とっ…泊めた男ですよ!?}}&br()&color(#000000,#9acd32){全部事実なのがすごいわよね…}}
その理由は至極シンプル、「&bold(){七海が信じたから}」。
ただでさえ&bold(){「それまで対人関係を怖がって引きこもっていた娘が、ある日突然『ネットで知り合った友達と会いに行く』と言って出かけていった」という状況}ゆえ、内心では心配が絶えなかったと、後に薫に打ち明けている。&s(){まぁこの状況で心配しない方が親としておかしいので当然ではある。}
しかし初めてカオリと会った日の七海がそれまで長らく見せなかった笑顔をしていたこと、その後もカオリと会う度に良い方向へと変化し続けてゆく娘の姿から、カオリこと薫は信頼できる子だと判断。
彼が男の子だと薄々察してもとやかくは言わず、むしろ「正体」を知ったら黙ってはいないだろう夫を引き留めつつ2人の味方としてそっと見守ることを決めていたのだった。
……それにしても、薫に真相を明かした時点でその「正体」に祥子が気付いてから一年あまりが経っている。
それだけの期間、2人を信じて陰ながら支え続けていた彼女の忍耐と包容力には脱帽するほかない。間違いなく、本作のMVPの一人と言えよう。
とはいえ「娘が同年代の男の子と2人っきり」という状況は流石に母として思うところもある様子で、不可抗力とはいえ七海が薫の家に泊まることになった際には内心かなりハラハラしていたことがうかがえる。
2人が付き合うことになってからも「親としてそこは…」と最低限の一線だけは引いている。
祥子&color(#000000,#9acd32){「薫さん家でのお泊まりだけは無しね…?」}
七海&font(#000000,#f08080){「しっしないわよそんなこと!」}
祥子&font(#000000,#9acd32,b){「したから言ってるのよ」}
}
紅茶には並々ならぬこだわりがあり、茶葉選びをしている時だけは易々と話しかけられないオーラを放つ。
高校時代からかなりの紅茶好きだったようで、初恋のきっかけも紅茶である。
七海から初キスがいつかを問われた際は、その時の七海よりは上だったはずとはぐらかしていたが、本当は&bold(){初キス16歳と1か月}、&bold(){結婚20歳}である。早い。
***&color(#ffffff,#000000){七海の父}
#center(){&color(#ffffff,#000000){し しかしだな…&br()最近は誰かと電話してることも増えたし…&br()以前は興味も持たなかった&br()服のカタログも見るようになったし…&br()&br()&font(15px,b){七海に一体何が…?}&br()&color(#000000,#9acd32){どこからどうみても&br()一人娘の健全な成長ですよ}}}
「七海に近づく男絶対なぎ倒すマン」こと七海の父親。本名は「俊雄」。
大柄で筋肉質の肉体にスキンヘッド、おまけに頬には大きな傷痕が残る強面と&bold(){威圧感が人の形をしている}とでも言うべき威容を誇る。
その巨体に違わず柔道三段・剣道二段の有段者にして勤め先も警備会社と、実績面でもまず正面から挑んではいけないであろう実力の持ち主であることをうかがわせる。
……が、その中身は冒頭のセリフの通り、娘を心から心配する等身大の父親である。
と、いうよりも娘に対する愛情はもはや&bold(){溺愛}と言っていいレベルのもので、七海が初めて弁当を作って渡してくれた日には「なんとかこの弁当を永久保存できないか」と&bold(){真顔で}会社の同僚に相談するほど。
またその全身から溢れ出るオーラとは裏腹に気さくで優しい性格の持ち主であり、カオリとの初対面時にも笑顔で出迎えているほか、すっかりカオリと顔なじみとなってからはなにかと彼女&s(){(男だけど)}のことも気にかけており、「実質一人暮らし」という境遇も心配している。&s(){笑うと迫力が増して&bold(){余計怖い}のは内緒。少なくとも当人に悪気はないのだ…}
……が、七海の周囲に男の影がある時だけはは話は別。
実際に手を上げたことこそ現状一度もないものの、娘に近づこうとする男の気配を察知すると持ち前の威圧感を存分に発揮し、相当な気迫で七海との関係を問いただしに来る。
……「七海が目当てではない」と答えようものなら&font(#ffffff,#000000,b){「貴様…七海より他の女がいいと…?」}と余計気配が険しくなるという鉄板確キルコンボ付きである。「なぎ倒すマン」の異名は伊達ではないのだ……。
……それはそれとして、家の中ではともかく&bold(){外でも「&color(#ffffff,#000000){愛娘}」Tシャツ}はどうかと思うよお父様。
&bold(){本作における「最大の障壁」といえる存在}であり、薫が女装をしなければならない理由のうち最も大きなものがこの父親の存在である。
現状こそカオリの「正体」に気付く気配は一向にないものの、「親の目の前で性別を偽って娘に会い続けている」という状況は控えめに言ってもリスク以外の何物でもない。
そのため、薫と七海の関係が進展してゆくにつれて「どうやって『薫として』嘘偽りなく接することができるようにするのか」が物語の大きなカギとなってゆく。
#openclose(show=しかし、ことはそう簡単な話でもないようで……(*本作最大級のネタバレのため閲覧注意*)){実は、彼本人が男を嫌っているわけではない。
彼がここまで男を毛嫌いするようになったのには、七海の過去が深く関係している。
七海の項にもある通り、かつて彼女は人間関係で失敗してしまい他人を恐れるようになってしまったのだが、その決定的なきっかけが「男友達とのトラブル」だったようだ。
そのため七海は特に男性に対して激しい恐怖心を抱くようになってしまい、ついには学校にも通えなくなってしまうほどだった。
そんな様子を、父親であるがゆえにずっと傍で見ていた。
ゆえに、守ろうとしたのだ。
もうこれ以上、七海が傷ついて怖い思いをしなくて済むように。
少しでも娘の苦しみを和らげてあげられたらと、彼女が特に恐れていた対象である男子を、その周りから遠ざけた。
全ては、七海のためだったのだ。
やがて時は過ぎ、薫との日々を送る中で七海は少しずつ男子への苦手意識を克服していき、学校にもまた通えるようになった。
しかし、父にとっては、七海の姿はまだ「あの頃」のまま。
今でこそ前より笑うようになったが、もしかしたらまた傷ついて一年前に逆戻りしてしまうかもしれない。
加えて、七海がその「苦手意識」を克服できたのは薫との日々の積み重ねがあったから。
だが、俊雄にとってカオリは今も「七海の女友達」のままで、「薫」との時間はゼロのまま。
そんな境遇の中、いきなり「娘の友達だと思っていた相手が実は彼氏が性別を偽った姿で、いつの間にか娘は彼氏を持てるまでに男嫌いを克服していた」という事実を突きつけられて、受け入れろという方が酷な話であろう。
……父親は今も守り続けている。
娘が自ら扉を開き出ていった、空っぽの部屋を。
その部屋がもう娘には必要ないと父が悟るには、まだもう少し時間が必要なのだ。
}
妻が紅茶派なら、こちらは[[コーヒー]]派。
こちらもこちらで並々ならぬこだわりがあるようで、豆を選んでいる間の後ろ姿は&s(){いつも以上に}近寄り難い存在感を放っている。
だが、娘が初めて淹れた&bold(){フィルターを使わず粉に直接湯を注いで淹れたコーヒー}には静かにツッコみつつも&color(#ffffff,#000000){「これはこれで飲んでおきたい」}と感慨深く味わっていたのだった。
一方で意外にも甘党でもあり、[[コーヒー]]に合う洋菓子探しも趣味のひとつ。
&s(){……結構お洒落な趣味をお持ちのお父様である。}
***薫の父
物語中では&s(){ラブコメのお約束で}海外に赴任中で、多忙のため1年近く家を空けることも珍しくない模様。そのため、基本的に薫は事実上一人暮らしである。
しかし仕事一辺倒の人物[[というわけ]]ではなく、薫を一人にしてしまうことには後ろめたさを感じておりどうにかして一緒に暮らせないかと考えている。
……残念ながらその願いは叶わなかったものの、物語中盤で海外での仕事が一段落し帰国、本国配属となったためたびたび薫や(話で聞いていた)七海の様子を見に帰宅している。
#openclose(show=「──あなたが その人たちをみーんな助けるの! ──立派な仕事でしょ?」(ネタバレ注意)){彼の仕事先は製薬会社で、ある薬の開発プロジェクトを取り仕切っていた。
それは、10年前に妻・透花の命を奪った難病の治療薬。
かつて透花が生きているうちに薬を完成させて治してみせることを誓っていたが、それが「果たせぬ約束」であることに2人は薄々気付いていた。
しかし「もしも間に合わなかったとしても、私以外の薬を待っている人の為にも決して投げ出さないで欲しい」という妻の「優しい呪い」に応え続け、10年経った今ようやく薬の販売に必要な承認をクリアしたのだった。
一世一代の悲願をついに叶えた形ではあるのだが、それでも妻を救えなかったことは彼の中で無念として残り続けており、「せめてあともう少し早く関係を進められていたら」と悔やんでも悔やみきれない想いを抱いている。
それゆえに薫には自分と同じ後悔を味わって欲しくないと思っており、やっと息子がトラウマから無意識に作り続けていた「心の壁」を取り払うことができたことを喜びながらもその後悔を語り、「どれだけ『好きだ』と伝えても、伝えすぎることはない」とその背中を押している。
……後日、その言葉を聞いた薫が&bold(){全力フルスロットルで気持ちを伝えに行ってしまい、顛末を聞いた父は「伝え過ぎることもあるんだなぁ」と思うことになった}のは、また別のお話。}
**クラスメイト
***佐々木龍二
薫の友達で、薫とは登場時からずっと同じクラス。
金髪セミロングの「ツンツンした」髪型が特徴の、いかにも体育会系な男子。
周囲からの…とくに女子からの人物評は「バカで鈍くて空気読めない」とかなり散々で、同じテニス部の先輩でダブルスペアのみるくからも度々「腑抜け」と言われてしまう始末。……その様子に彼が気付く様子は、今のところ、ない。
とはいえその周囲があまり気を使わなくていい明るい性格もあってか七海が薫の次に話せる男友達でもある。
そんな色恋沙汰とはまるで無縁な彼だったが、スーパーでの買い物途中に財布を落としてしまったことをきっかけに、その財布を拾ってくれた&bold(){カオリにまさかの一目惚れ}をしてしまい……!?
&s(){友達すら撃墜するカオリちゃん、恐ろしい子である……。だが奴は男だ}
***白川寧音
七海の友達トリオその1。栗色の髪を後頭部でお団子にまとめている。
薫たちのクラスの委員長で新聞部員。周囲からのあだ名も「いいんちょ」で、七海との初対面時には&bold(){なぜか本名を名乗らず「いいんちょ」で通そうとした。}
ふわふわマイペースな性格の持ち主だが、どちらかというと&bold(){自由奔放という意味での「マイペース」}で、「フリーダム委員長」という読者からの呼称が全てを物語る。
新聞部所属ということで特ダネ探しに余念がなく、特に色恋沙汰には誰より敏感で気配を感じとるや&bold(){「学級新聞のネタにしたいから」と真っ向ストレートで聞き出しに来る}。そのため、薫たち2人にとっては&color(red){学内一の危険人物}と見られている…。&s(){恋愛関係+女装趣味とか特ダネ待ったなしなのでさもありなん。}
かなり食い意地が張っており、好物はカツ丼。調査対象への聞き出しの際にも「お約束」として&bold(){初手から}カツ丼を出すのがお決まりだが、&bold(){ただし食べるのは寧音の方。}
誕生日ケーキも&bold(){1人で1ホール丸々平らげるので、誕生会では必ず2ホール以上用意されている。}
しかし伊達に委員長を務めてはおらず、転入したばかりでクラスに馴染めていない七海を自然とグループの輪に入れてあげたり彼女の「苦手」にもフォローを入れたりと、周囲との輪を取り持つ能力は流石といったところ。普段の彼女は「その方が面白いから」あえて空気を読んでいないだけなのだ。
「新聞のネタにしたいから」と学内の噂を集めて回るのももちろん「楽しい話題を集める」ことが目的なので、当人達が本気で困るようならネタにはしないと誓うなど実際にはきちんと良心も備えた人物である。&s(){でも恋バナは聞き出したがる。}
***篠原葎子
友達トリオその2。周囲からのあだ名は「りっちゃん」
金髪のロングヘアに若干男っぽい口調が特徴。
ギャルっぽい見た目なのにチャラい男が苦手で誠実な人がタイプ、そして恋愛にはビックリするほどウブでピュア……と&bold(){ギャップ萌え要素の塊}のような存在。
実家が洋菓子屋で、自身は厨房には入れないもののある程度お菓子作りなどを教わってはいるようで度々七海にチョコ作りなどを教えている。
七海と一緒に高校生活を送るようになる中で、&bold(){ごく自然に恋人ムーブをする薫・七海カップル}の様子を一人目撃することも多く、大抵隣には「校内で一番関係を知られてはいけない人」こと寧音がいることもあって&color(red){当人達以上にハラハラさせられる}ことも多い。
その後葎子も七海より一足先に想い人への告白を成功させ恋人関係を作るのだが、その恋愛の進展模様は七海達とどっこいである…。
***向日路郁
友達トリオその3。「&bold(){む}こうじ &bold(){い}く」であだ名は「むいちゃん」
紫色のパッツンヘアと京都弁が特徴。
女子友トリオ一の常識人。純粋すぎる葎子にはまだ早い光景からさりげなく遠ざけたり、放っておくと何しでかすかわからない寧音の手綱を引いたりと何かと気配りスキルが光る。
初対面での七海とのやり取りでもそのスキルは発揮され、薫との関係を薄々葎子と察しながらもそっとしておく……つもりだったのだが&bold(){委員長が気配りを台無しにした。}
2年生への進級ではトリオの中で彼女だけ文系クラスを選択したためにクラスが分かれてしまい、以降は出番がほぼなくなってしまう憂き目に。むいちゃんは[[犠牲になったのだ]]……
**その他周辺人物
***大海直
#center(){わー見てみて真白&br()&bold(){青春の可視化}}
薫と七海が(女装用の服を探しに)通っている服屋に務める店員で、カオリのコーディネートは基本彼女のプロデュースによるもの。
「女装に使える服」というオーダーに対し&bold(){非常にノリノリで}応じており、作中の誰よりも薫の女装ライフを楽しんでいる人物。相方の真白曰く&bold(){過激派}。
時折趣味全開のファッションをカオリにさせては&bold(){逢坂母娘を揃って悩殺}してみせることも……。
コーディネートの提案を抜きにしても薫と七海の関係は好奇心を大いにくすぐられているようで、2人を微笑ましく見守っ……&bold(){いや、あの目線はおじさんのそれだわ。}
***佐久間真白
#center(){&bold(){直ちゃんは自分の仕事を可視化してね}}
直と同じ服屋の店員。
&s(){ぶっちゃけかなり「やべーやつ」な相方とは違い}至って常識人であり、薫の悩みにも真摯に答えている。
&s(){そして職権乱用しておじさんムーブを繰り返す相方に辛辣なツッコミを入れつつ仕事を振る日々を送っている。}
実は2人の店は「女装のための服」も多く取り扱っており、2人は「体格や性別を気にせず好きな服を選んでほしい」という想いをもって仕事に取り組んでいるとのこと。
それゆえ、彼女もまた薫たちのことは心から応援し見守っている。
***天河みるく
#center(){&color(#000000,#d3d3d3){…丁度いいわけあるか …………腑抜け……}}
黒髪のショートカットに灰色の目、ボーイッシュな口調が特徴。
薫と同じ学校に通っており、龍二とは同じテニス部の先輩部員でダブルスペアの相方にあたる。
実は龍二に密かな恋心を抱いているのだが、本人が奥手な上に肝心の龍二が「その手の気配」に疎いため気づいてもらえる気配もない、と先は長そうである……。がんばれみるくちゃん。
#center(){&color(#000000,#ff69b4){こんにちは!&br()みるきー☆うぇい でーすっ}}
薫と七海が出会ったきっかけの[[ゲーム]]である「ブラメア」では2人とギルメン同士でもあり、特に七海とリアルで交流を持った際には「ブラメアについて語れる希少な女友達」ができたと喜んでいた。
その後七海とは個別にチャットを交換しており、彼女からの薫にはできない相談事にもよく応じている。
コスプレイヤー「&bold(){みるきー☆うぇい}」としても活動しているほか、本人が直接登場していなくても薫たちが遊んでいるゲームの背景に同じHNが登場している((「MilkyWay」「みるきーうぇい」などゲームタイトル頃に表記揺れあり。おそらくHNに使用できる文字の都合だろう))ことも。
「みるきー」として顔出ししている時は素の姿とは打って変わって語尾に「☆」がつくような明るい性格として振舞っており、コスプレ姿が基本ということもあって初見でみるくと同一人物と見抜くのはなかなかに至難である。
そして、コスプレイヤーとしての知識から&bold(){カオリが女装した姿であると一目で見抜いた}恐るべき相手。
確かにコスプレの世界で男装・女装はもはや日常ではあるが、もう一方の「自力で正体を看破した人物」でも確信を得るのにしばらくの時間がかかったことを踏まえると凄まじい目の鋭さである…。
追記・修正は初対面の異性の家に女装姿で上がり込んでからお願いします。
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- 違反コメントおよびそれに反応する内容のコメントを削除。 -- 名無しさん (2023-08-01 13:06:42)
- 立て乙です -- 名無しさん (2023-08-01 18:30:02)
- まさかこの項目が立つなんて思いもしなかった。このマンガが毎週の楽しみになってる -- 名無しさん (2023-08-01 22:32:37)
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