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宇宙マイクロ波背景放射 - (2023/08/08 (火) 11:22:21) の1つ前との変更点
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&font(#6495ED){登録日}:2011/04/25(月) 15:41:24
&font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red)
&font(#6495ED){所要時間}:約 5 分で読めます
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&link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧
&tags()
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空を眺めて「中心はどこだろう」と思ったことはないだろうか。
たとえば、[[太陽系>太陽系(天体)]]の中心だと[[太陽>太陽(天体)]]だし、太陽系が存在する天の川[[銀河]]の中心だと、太陽の数百万倍の[[射手座a*(スター)>ブラックホール]]だ。
では、&bold(){宇宙そのもの}は?
宇宙に興味がある人なら知っていると思うが、137億年前にビッグバンが起こって宇宙の膨張は始まりだした。
…………という事は、ビッグバンがどこで起こったかを調べれば膨張の中心、つまり宇宙の中心がわかるのではないだろうか。
そんなビッグバンがどこでどのように起こったかを知るために必要なのが、&bold(){『宇宙マイクロ波背景放射』}だ
*正体不明の電波
1960年代、[[アメリカ>アメリカ合衆国]]の物理学者が天文観測用に電波アンテナを設置したところ、原因不明のノイズが常に入っていた。
天の川銀河の電波よりも強いので、地上の電波だろうと&font(#ff0000){鳩のフンの除去}などあらゆる手をつくしたがノイズは消えなかった。
この謎な電波を「&font(#ff0000){&ruby(Cosmic){宇宙}&ruby(Microwave){マイクロ波}&ruby(Background){背景}&ruby(Radiation){放射}}」と呼ぶ。
しかし、温度に直すと-270度になる電波は一体なんだろうか。
ここでペットボトルを用意してみよう。
内側を濡らし蓋をしっかりする。
そしてそのまま強く押し潰す。
しばらく押し潰したら一気に放してみる。
するとペットボトルの中に霧のようなものができた。
圧力を下げると温度が下がる気体の性質で、空気中の水分が凝結し、ペットボトルの中に雲が発生したのだ。
これと同じように&ruby(実験直前){ビッグバンの時}には&ruby(気体){超高温}だった&ruby(水分){宇宙}はどんどん冷えていて、理論的な現在の&bold(){宇宙の温度は2.7K}。
謎の電波の正体は&font(#ff0000){ビッグバンが生んだ光}だったのだ。
**ウィーンの変位則
人間の体温では赤外線、太陽なら可視光を放出しているわけだが、物質には温度に対応した[[電磁波>光]]を中心に放出する性質があって、物質の温度をT(K:絶対温度)、一番多く放出する光の波長をλ(m)とすると、ウィーンの変位則で
λ≒0.003/T
という関係が表される。
温度が低い程波長が長くなり、温度が上がるごとに電波、赤外線、可視光、紫外線、X線、γ線と波長が短くなるというわけだ。
え、わからないって?
ためしにバーベキューや練炭で使う炭火を思い出してほしい。
最初黒かった炭に火がつくと&color(#F54738){赤く}光りだし、空気を送り温度を上げると色が白に近くなったと思う。
本項からはちょっとそれるが、星間ダストなら赤外線や電波など、要は&bold(){観たい対象に合わせて観測する波長域を変えることが重要なのだ。}
*宇宙マイクロ波背景放射の特徴
このマイナーだがとても重要な宇宙マイクロ波背景放射(以下CMB)が、我々の観測できる最古の光である。
これを正確に観測すれば[[ダークマター>暗黒物質]]やダークエネルギーの存在比、物質の配置などの初期状態がわかるのだ。
なお、この最古の光は温度が下がって霧が晴れたように透明になった頃(宇宙の晴れ上がり)のものなので、現状の科学知識では[[光]]が直進できないプラズマが満たしていた頃の宇宙は見えない。
そんなCMBには次の特徴がある。
1.アンテナを空のどこへ向けても観測できる
2.多少のムラはあるがほぼ一様の温度である
つまり、&ruby(この広大な宇宙){真っ暗でめちゃくちゃ広い部屋}に&ruby(ビッグバン){電球一個}あったとして、
&ruby(CMBを観測する){電球の光を見る}には電球の方向を向けばいい。
しかし&ruby(CMB){電球の光}は&font(#ff0000){どの方向でも}観測できる。
さて、なにか違和感はないだろうか。
ここから考えられるのは、宇宙には&font(#ff0000){中心がない}。
つまり「ビッグバンはある一点で起こったのではなく、&font(#ff0000){宇宙全域で同時に起こった}」のだ。
中心がない、というのに違和感があるかもしれない。
球の表面が中心を持たないように、中心がない事は別に不思議ではないのだが、ビッグバンは&ruby(情報が光速を超えないため){あまりに短時間すぎて}宇宙の端から端に到達できなかったはずだ。
そうすると、なぜ宇宙全域が同時にかつ一様にビッグバンできたのかという謎が生まれる。
この謎を解消するのが、
「最初超小さかった宇宙が急激に引き延ばされてからビッグバン起こしたんだよ。&bold(){超小さかったら端から端まで届くしね}」
という&ruby(ある意味ごり押し){インフレーション理論}だが、また別の機会にしよう。
*余談
ちなみに、この放射は宇宙の膨張に伴って現在も冷え続けており、遠い未来には[[絶対零度]]に限りなく近づいて観測が不可能になるという。その頃の宇宙に知的生命体が存在していても宇宙の膨張に気づかないのではないかという説がある。
また、[[ブラックホール]]は僅かずつ蒸発しているが、現在の宇宙では蒸発の速度が背景放射から受け取るエネルギーを下回っているため、背景放射が冷え切る遥かな未来になって初めて実質的な蒸発が始まると考えられている。
宇宙にロマンを感じる人は追記・修正をお願いします。
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- すげぇ分かりやすくてロマンのある話だなもっと早く出会ってればその道の研究とかしたかった・・・・ -- 名無しさん (2014-01-10 07:40:30)
- ウィーンの変位則が波長∝絶対温度になってしまっているので、以後の理論が逆になってしまいます。式を書き直すか、波数を用いた展開にした方がいいかと。 -- 名無しさん (2017-11-28 10:56:40)
- ↑2 寿命で逝った後ぜひ来世で役立ててください -- 名無しさん (2017-12-21 14:56:01)
- そう、「宇宙はビッグバンで始まった」は厳密には正しくなくて、最近では「宇宙ができて少ししてからビッグバンが起こった」ことになっている。しかしそんなことよくわかるよな。 -- 名無しさん (2018-09-13 10:55:59)
- はえーこんなページもあったのか… -- 名無しさん (2018-11-16 15:49:16)
#comment
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空を眺めて「中心はどこだろう」と思ったことはないだろうか。
たとえば、[[太陽系>太陽系(天体)]]の中心だと[[太陽>太陽(天体)]]だし、太陽系が存在する天の川[[銀河]]の中心だと、太陽の数百万倍の[[射手座a*(スター)>ブラックホール]]だ。
では、&bold(){宇宙そのもの}は?
宇宙に興味がある人なら知っていると思うが、137億年前にビッグバンが起こって宇宙の膨張は始まりだした。
…………という事は、ビッグバンがどこで起こったかを調べれば膨張の中心、つまり宇宙の中心がわかるのではないだろうか。
そんなビッグバンがどこでどのように起こったかを知るために必要なのが、&bold(){『宇宙マイクロ波背景放射』}だ
*正体不明の電波
1960年代、[[アメリカ>アメリカ合衆国]]の物理学者が天文観測用に電波アンテナを設置したところ、原因不明のノイズが常に入っていた。
天の川銀河の電波よりも強いので、地上の電波だろうと&font(#ff0000){鳩のフンの除去}などあらゆる手をつくしたがノイズは消えなかった。
この謎な電波を「&font(#ff0000){&ruby(Cosmic){宇宙}&ruby(Microwave){マイクロ波}&ruby(Background){背景}&ruby(Radiation){放射}}」と呼ぶ。
しかし、温度に直すと-270度になる電波は一体なんだろうか。
ここでペットボトルを用意してみよう。
内側を濡らし蓋をしっかりする。
そしてそのまま強く押し潰す。
しばらく押し潰したら一気に放してみる。
するとペットボトルの中に霧のようなものができた。
圧力を下げると温度が下がる気体の性質で、空気中の水分が凝結し、ペットボトルの中に雲が発生したのだ。
これと同じように&ruby(実験直前){ビッグバンの時}には&ruby(気体){超高温}だった&ruby(水分){宇宙}はどんどん冷えていて、理論的な現在の&bold(){宇宙の温度は2.7K}。
謎の電波の正体は&font(#ff0000){ビッグバンが生んだ光}だったのだ。
**ウィーンの変位則
人間の体温では赤外線、太陽なら可視光を放出しているわけだが、物質には温度に対応した[[電磁波>光]]を中心に放出する性質があって、物質の温度をT(K:絶対温度)、一番多く放出する光の波長をλ(m)とすると、ウィーンの変位則で
λ≒0.003/T
という関係が表される。
温度が低い程波長が長くなり、温度が上がるごとに電波、赤外線、可視光、紫外線、X線、γ線と波長が短くなる[[というわけ]]だ。
え、わからないって?
ためしにバーベキューや練炭で使う炭火を思い出してほしい。
最初黒かった炭に火がつくと&color(#F54738){赤く}光りだし、空気を送り温度を上げると色が白に近くなったと思う。
本項からはちょっとそれるが、星間ダストなら赤外線や電波など、要は&bold(){観たい対象に合わせて観測する波長域を変えることが重要なのだ。}
*宇宙マイクロ波背景放射の特徴
このマイナーだがとても重要な宇宙マイクロ波背景放射(以下CMB)が、我々の観測できる最古の光である。
これを正確に観測すれば[[ダークマター>暗黒物質]]やダークエネルギーの存在比、物質の配置などの初期状態がわかるのだ。
なお、この最古の光は温度が下がって霧が晴れたように透明になった頃(宇宙の晴れ上がり)のものなので、現状の科学知識では[[光]]が直進できないプラズマが満たしていた頃の宇宙は見えない。
そんなCMBには次の特徴がある。
1.アンテナを空のどこへ向けても観測できる
2.多少のムラはあるがほぼ一様の温度である
つまり、&ruby(この広大な宇宙){真っ暗でめちゃくちゃ広い部屋}に&ruby(ビッグバン){電球一個}あったとして、
&ruby(CMBを観測する){電球の光を見る}には電球の方向を向けばいい。
しかし&ruby(CMB){電球の光}は&font(#ff0000){どの方向でも}観測できる。
さて、なにか違和感はないだろうか。
ここから考えられるのは、宇宙には&font(#ff0000){中心がない}。
つまり「ビッグバンはある一点で起こったのではなく、&font(#ff0000){宇宙全域で同時に起こった}」のだ。
中心がない、というのに違和感があるかもしれない。
球の表面が中心を持たないように、中心がない事は別に不思議ではないのだが、ビッグバンは&ruby(情報が光速を超えないため){あまりに短時間すぎて}宇宙の端から端に到達できなかったはずだ。
そうすると、なぜ宇宙全域が同時にかつ一様にビッグバンできたのかという謎が生まれる。
この謎を解消するのが、
「最初超小さかった宇宙が急激に引き延ばされてからビッグバン起こしたんだよ。&bold(){超小さかったら端から端まで届くしね}」
という&ruby(ある意味ごり押し){インフレーション理論}だが、また別の機会にしよう。
*余談
ちなみに、この放射は宇宙の膨張に伴って現在も冷え続けており、遠い未来には[[絶対零度]]に限りなく近づいて観測が不可能になるという。その頃の宇宙に知的生命体が存在していても宇宙の膨張に気づかないのではないかという説がある。
また、[[ブラックホール]]は僅かずつ蒸発しているが、現在の宇宙では蒸発の速度が背景放射から受け取るエネルギーを下回っているため、背景放射が冷え切る遥かな未来になって初めて実質的な蒸発が始まると考えられている。
宇宙に[[ロマン]]を感じる人は追記・修正をお願いします。
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- すげぇ分かりやすくてロマンのある話だなもっと早く出会ってればその道の研究とかしたかった・・・・ -- 名無しさん (2014-01-10 07:40:30)
- ウィーンの変位則が波長∝絶対温度になってしまっているので、以後の理論が逆になってしまいます。式を書き直すか、波数を用いた展開にした方がいいかと。 -- 名無しさん (2017-11-28 10:56:40)
- ↑2 寿命で逝った後ぜひ来世で役立ててください -- 名無しさん (2017-12-21 14:56:01)
- そう、「宇宙はビッグバンで始まった」は厳密には正しくなくて、最近では「宇宙ができて少ししてからビッグバンが起こった」ことになっている。しかしそんなことよくわかるよな。 -- 名無しさん (2018-09-13 10:55:59)
- はえーこんなページもあったのか… -- 名無しさん (2018-11-16 15:49:16)
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