&font(#6495ED){登録日}:2011/12/31 Sat 15:21:10 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:『4分33秒』の演奏時間内に読み切れる文量です。曲と共にお楽しみ下さい。 ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- #center(){#blockquote{ Ⅰ TACET Ⅱ TACET Ⅲ TACET }} 『&font(b){4分33秒}』(4′33″)とは、アメリカの作曲家ジョン・ケージが1952年に発表した楽曲。 *【概要】 正式名は『沈黙の祈り手』(Silent Prayer)。((prayerをplayerとする誤記が長いこと[[Wikipedia]]などでもそのままであったため、「沈黙の奏者」が正式名称だという誤解が割と広まっている。)) 全三楽章で構成されており、通称の『4分33秒』はピアノでの初演の際、各楽章がそれぞれ33秒、2分40秒、1分20秒の計4分33秒で演奏されたことに由来する。((初演を尊重すれば一楽章ごとに間を置いて演奏するので、厳密には弾き始めから弾き終わりまでの総時間は4分33秒より少し長い。)) この曲は地球上のあらゆる楽器で演奏する事が可能。 初演時と同じくピアノで演奏される事が多いが、[[オーケストラ]]で演奏されたこともある。 変わった物だと、[[デスメタル>デスメタル Death metal]]バンドによるカバーも存在する。 さて、この曲は音楽に関してずぶの素人でも演奏することができる。 なぜか? 最初に書いたこの曲の楽譜を見ていただきたい。 そう、この曲は三編を通して全楽章の休止を指示する“&ruby(タセット){TACET}”としか書かれていないからである。((ちなみに本来は、オーケストラなどで特定の楽器があるパートで丸々演奏がないケースなどで用いられる表記である。)) つまり楽器を鳴らす必要がない。((全く何もしない訳でもなく、ピアノの場合は楽章の始めに鍵盤の蓋を閉め、終わった時に開ける、という動作を行うことがある。)) ケージは「無音」を感じようとして無響室に入ったとき、それでもなおある種の音が聞こえたことから、「此の世に遍く音は、決して消えることはない」という発想からこの曲を思いついたとされる。 彼の提唱する『偶然性の音楽』(管理されない東洋的で偶然的ギミックを含む音楽)の極致である。 具体的には、客席からの咳やざわめき、外の風の音などすべての音が音楽なのである。 つまりこの曲は無音なのではなく、常に自分を取り巻く、流れる水のように変化する音を感じ取るための曲といえよう。 ただ、この曲が初めて演奏(?)された際、&font(#F00){観客からはブーイングの嵐だった}ことが伝えられている。 結局のところ、演奏者の思惑と観客の思惑は相容れなかったということか。 ただし解釈次第では&bold(){ブーイングも曲の一部}と捉えることもできる。これに限らず、演奏のたびに観客の反応や周りで生じる音は異なっており、全く同じ演奏は一つたりとも繰り返されない。それを意識できれば『偶然性の音楽』の奥深さに気付けるかもしれない。 なお、TACETの指示があるため演奏者は楽器の演奏をしてはいけないが、一方でそれ以外の音に直結しない行動は可能であり、初演のときはピアノ奏者が楽章ごとに別のペダルを踏んでいた事例がある。 誤解されがちだが、演奏者は全く暇という訳ではなく、曲の始まりと終わり(さらには楽章の間)を区切る役目もあるので、演奏中という意識は持っておく必要がある。((もっとも極端にいえば、演奏者が途中で居眠りをし始めても、それさえ曲の一部と捉えられなくもないが…。)) そのため、ずぶの素人でも演奏できるとは前述したものの、&bold(){曲の趣旨をしっかり踏まえて、意味のあるパフォーマンスとして成り立たせるにはそれなりの準備や熟練も要する。} 一見とても簡単そうに見えても、極めていくには精神力や表現力も試されるという、非常に奥深い曲ともいえる。 *【余談】 この曲を収録したCDも複数発売されており、Apple MusicやSpotifyなどのサブスクリプションサービスでも配信されている。 完全に無音の物もあれば、楽章の進行を示すための音が混ぜられた物もある。 「音源だったらどれも毎回同じ無音じゃないか!」と思われるかもしれないが、それは音源だけに着目した時の話。 前述の通り、自分を取り巻くあらゆる音が曲の一部になっているので、このトラックを再生している間、是非とも周りの音に意識を傾けてみてほしい。 かつて[[トリビアの泉>トリビアの泉 ~素晴らしきムダ知識~]]において、ギネス認定もされている世界で最も長い曲『[[ヴェクサシオン]]』((エリック・サティ作曲。約18時間超。))の後に、「4分33秒間 何もしない曲がある」としてこの曲がトリビアとして紹介されたことがある。 このときは演奏者がピアノの鍵盤の蓋を開閉することで3つの楽章の進行を表した。 尚、4分33秒は273秒であり、[[絶対零度]]を表しているという説があるが、ケージ自身はこれについて言及したことがない。 「[[伊集院光]]深夜の馬鹿力」の嘘トリビアコーナーの投稿ネタが発祥とも言われているが、出所は不明。 JASRACに「4分33秒黙ったらこの曲を使用した扱いになって著作権料は発生するのか」と問い合わせたところ、発生しないと回答されている。 ただし、営利目的のコンサートなどで「4分33秒」を演目とすると著作権料が発生するとのこと。 もっとも、2024年現在「4分33秒」の著作権は切れていない((ジョン・ケージの没年は1992年。日本では今後法改正がない限り、2062年12月31日まで著作権が有効。))ので当たり前のことではあるのだが。 ケージは演奏時間が実質無限という「Organ²/ASLSP((As slow as possible.「できる限り遅く」の意。))」という曲も作曲している。 数十分ほどで演奏することも可能であるが、ドイツにあるハルバーシュタット大聖堂にて&font(#000,#FF0,b){639年}かけて演奏を行うという試みが行われている。 2001年から演奏を開始し、2024年7月現在も演奏中である(2640年9月5日終了予定)。 BUCK-TICKは本作のパロディといえる「13秒」を発表したことがある。 作曲者の今井寿によると「4分33秒のパクリ」との事で、アルバム「十三階は月光」に収録されている。 [[ブーン系小説]]においてはこの曲をネタにした「( ^ω^)演奏中はお静かに。のようです」という作品がある。 [[オーケストラ]]編成でこの曲が演奏される中、音を出せない演奏者たちが各自観察、考察、妄想を広げる様子を描いたコメディである。 少々汚い[[下ネタ]]もあるのでその点は注意。 [[モンスターハンター]]シリーズにおいて戦闘時にBGMが流れないモンスター、[[フルフル>フルフル(モンスターハンター)]]の専用[[BGM]]として冗談めいて紹介されることが多々ある。 追記・修正はキーを押さずにお願いします。 #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\……/ #vote3(time=600,15) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - 川原泉先生はこれを逆手に取り「小人達が騒ぐので」という漫画で「3分44秒」という白いコマ割りだけの漫画を描いたWWWWWWW! -- 名無しさん (2013-12-05 10:59:12) - 長い曲の方はオルガンの音が途切れるまで鳴らすんだよな、近年二音目に到達したらしい -- 名無しさん (2013-12-05 13:39:53) - ニーチェ先生でも出てきたな。 -- 名無しさん (2014-11-02 21:17:59) - ハーメルのゲームブックでも使う選択肢があった -- 名無しさん (2014-11-02 22:48:25) - 3 3 - 4 -- 名無しさん (2016-08-23 17:18:46) - ↑なんでや!阪神関係ないやろ! -- 名無しさん (2016-09-07 23:08:05) - 遂に鼻歌にすらJASRACの使用料が課せられるようになって、それならばと黙っていたら、4分33秒後にJASRACから請求が来たという小噺もあるな。 -- 名無しさん (2017-08-28 09:59:24) - 川原泉さんのそれ読んだけど超爆笑したw -- 名無しさん (2018-08-14 13:16:34) - トリビアのヴェクサシオンと続けて2曲は、よく企画を通したなと思ったな… -- 名無しさん (2019-01-12 18:34:14) - 広島の犠牲者に捧げる哀歌の方がこれより強烈だろ7 -- 名無しさん (2020-08-12 17:07:16) - そういや8時間5分に渡って定点カメラでエンパイアステートビルを映しただけの映画とかもあったな -- 名無しさん (2023-04-01 19:46:31) - 4分33秒とは直接関係ないがケージ氏はかなりのへそ曲がりで、「京都賞」の授賞式に礼服なんか着ねえTシャツジーンズで出ると駄々をこね、スタッフが機転を利かせて羽織袴を着せたら受け入れた、という話好き。 -- 名無しさん (2025-03-12 18:50:56) #comment #areaedit(end) }