カムイ(アイヌ伝承)

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カムイ(アイヌ伝承) - (2024/05/24 (金) 18:44:59) のソース

&font(#6495ED){登録日}:2018/08/22 Wed 14:23:08
&font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red)
&font(#6495ED){所要時間}:約 14 分で読めます

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#center(){
&sizex(3){“&color(silver){Shirokanipe} ranran pishkan, &color(gold){konkanipe}	ranran pishkan.”}
&italic(){&sizex(5){“&color(silver){銀の滴}降る降るまわりに、 &color(gold){金の滴}降る降るまわりに”}}



&sizex(3){arian rekpo chiki kane	petesoro sapash aine,}
&italic(){&sizex(4){という歌を私は歌いながら流れに沿って下り、}}

&sizex(3){ainukotan enkashike	chikush kor shichorpokun inkarash ko}
&italic(){&sizex(4){人間の村の上を通りながら下を眺めると}}

&sizex(3){teeta wenkur tane nishpa ne, }
&italic(){&sizex(4){昔の&ruby(ウェンクル){貧乏人}が今&ruby(ニシパ){お金持ち}になっていて、}}

&sizex(3){teeta nishpatane wenkur ne kotom shiran.}
&italic(){&sizex(4){昔のお金持ちが今の貧乏人になっている様です。}}
}


#right(){― &ruby(カムイチカプ){梟神}が自らのことを&ruby(うた){謡}った&ruby(カムイユカラ){神謡}&br()知里幸惠編訳「アイヌ神謡集」より}





&bold(){カムイとは、アイヌ文化において『[[神]]』を指す言葉である。}
しかし文化的な差異から[[日本語]]の「神」とは若干ニュアンスが違い、太陽や雷など高次の存在から野山の獣に人が使う道具まで様々なカムイが存在する。

#openclose(show=▽目次){
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}

*【概要】
カムイとはアイヌ語で「神」を意味する。
ラテン語では「kamuy」と表記され、日本語では「神威」「神居」などの字が当てられる。
日本語の「カミ」と同根の言葉であるという説もあり、だいたい同じ意味だと思って差し支えはない。
ただ文化的な差異から「神」の概念自体に差があるので、「神」と「カムイ」の意味するところも若干変わってくる。

なおこの項目でのアイヌ語の表記の読み方は以下の通り。

>-&italic(){小文字のサ行・パ行・マ行・ラ行→それぞれs・p・m・rの子音。}
>-&italic(){「ト゚」→「トゥ」}

またアイヌ語・伝承は地域による差が大きく、この記事の内容はその一部だけをとりあげたものであることを了承されたし。

**○&bold(){「カムイ」とされるもの}
アイヌ文化は&ruby(アニミズム){汎霊説}的な宗教観を持っている。
なので自然現象や動植物はもちろん、人工物にさえ「カムイ」は宿るとされる。
その中でも「カムイ」とされるものは、&bold(){「力あるもの」}であることが多い。
人間にはできない能力を持つもの・・・
人より強いもの、速いもの、高く飛ぶもの。
それに肉や毛皮といった人への富・恵みを生みだすもの、
逆に多くの人々をたやすく害するものが「カムイ」とされた。

**○&bold(){「カムイ」の姿、役割など}
カムイは人の姿をしており、&bold(){カムイモシリ}と呼ばれる神の国に住んでいる
カムイモシリの中ではカムイたちに序列があり、より多くの富を得ているものが上位とされる。
彼らは富を得るために、&bold(){「衣服」}を来て&ruby(アイヌモシリ){人間の国}を訪れるのだ。
この「衣服」とは&bold(){現世でのカムイの姿}であり、&ruby(キムンカムイ){熊神}であれば熊の肉体、&ruby(ケマコシネカムイ){狐神}であれば狐の肉体となる。
当然その肉体は毛皮や肉をまとっており、彼らはこれを&bold(){人間たちへの贈り物}として携えていくのである。

そして人間たちはその「衣服」をカムイから受け取ると、それへの礼として神事を催す。
&bold(){神の国へ帰るカムイにおみやげとして供え物を持たせ、盛大に送り返すのだ。}
その供え物こそが彼らの富となり、これを多く持ち帰るほど神の国での序列が上がるのである。
こうして丁重に送り返されたカムイたちはより偉大な神となり、ふたたび人々のもとに贈り物を持ってやってくるようになるのだという。
逆に人に害をもたらしたカムイは&bold(){ウェンカムイ(悪いカムイ、貧しいカムイ)}とののしられさげすまれ、
その「衣服」をズタボロにされたあげく、すかんぴんのまま神の国へと叩き返されてしまう。
こうしてアイヌの人々は自然がもたらす恵みに感謝しつつそれを押しいただきながら、時にはそれがもたらす災いと戦い続けてきたのであろう。

また、これらが示す通り、カムイとは動物などそのものを指す言葉ではない。
それらを指す言葉はアイヌ言語の中に別にあるのが普通。
現象そのものではなく、&bold(){それらが持つ優れた能力や恵みを指して「カムイ」と呼ぶのだろう。}


*【カムイのつく言葉】
あらゆるものに「カムイ」が宿るアイヌ文化においては、人々はカムイに密着した生活を送っている。
自然から恵みを得たり猛威を振るわれたりするたびに、人々はカムイに感謝をささげたり戦いを挑んだりしていくのだ。
なのでカムイに対する作法やそれに用いる道具などは多岐にわたり、多くの行事や道具にカムイの名が冠せられている。

***●&bold(){カムイモシ&sizex(3){リ}}
>&font(B,I){kamuy-mosir}
>&italic(){kamuy=神 mo=静か sir=大地}
>「神の大地」「神の国」

天上にあるとされる、カムイが住まい返っていく場所。

***●&bold(){カムイコタン}
>&font(B,I){kamuy-kotan}
>&italic(){kamuy=神 kotan=集落・村、国}
>「神の村」「神の里」

これも天上にあるとされる神の住みか。
また現世での神の居場所や神の国への入り口を指す言葉でもある。
多くは人を寄せ付けないような峻厳な地形を指してこう呼ぶ。

***●&bold(){カムイユカ&sizex(3){ラ}}
>&font(B,I){kamuy-yukar}
>&italic(){kamuy=神 yukar=叙事詩}
>「神の詩」「神の謡」

カムイの視点で語られる叙事詩。

***●&bold(){カムイノミ}
>&font(B,I){kamuy-nomi}
>&italic(){kamuy=神 nomi=祈る、祀る}
>「神の祭」「神への祈り」

神事、祭祀。 祈ること、祈りの言葉なども指す。

***●&bold(){カムイチェ&sizex(3){プ}}
>&font(B,I){kamuy-cep}
>&italic(){kamuy=神 cep=魚(c=我ら ep=食べ物)}
>「神の魚」「神から贈られた私たちの食べ物」
&bold(){&ruby(シャケ){[[鮭>鮭]]}}のこと。
シペ(sipe)、すなわち「真の魚」「ほんとうの食べ物」という呼び名もある((シペ(sipe)=si:真 ipe:魚・食事))。
アイヌ民族の主食と言っても差し支えない存在だった。

***●&bold(){ト゚レンカムイ}
>&font(B,I){turen-kamuy}
>&italic(){turen=憑く kamuy=神}
>「憑き神」

アイヌ語での憑き物(ト゚レンペ)の中でも善良で力あるものを指し、&bold(){「守護霊」}といった意味合いが強い。
アイヌ伝承ではすべての人間が生まれつきなんらかの憑き物・憑き神をもっているとされる。
しかし強い&ruby(ト゚レンカムイ){憑神}を得たい場合に&ruby(ト゚スクル){[[巫女>巫女(属性)]]}の祈祷によって憑ける場合もある。

*【主なカムイ】
先述した通り、アイヌ民族の思想ではありとあらゆるものにカムイが宿る。
それこそ草一本茶碗ひとつにもカムイはいる。
ここではその中でも「○○カムイ」としてよく語られる存在をピックアップする。

**&bold(){○英雄神・文化神}
着ること・住むことなど人々の生活に関わるものに宿るカムイ。
もしくは、それら自体を人にもたらしたカムイ。
または実在(したであろう)人物をカムイとしてあがめたもの。

***●&bold(){コタンカ&sizex(3){ラ}カムイ}
>&font(B,I){kotan-kar-kamuy-cep}
>&italic(){kotan=国 kar=作る kamuy=神}
>「国づくりの神」「創造神」

大地やそこに住む人間、動物たちを造りあげた神。

***●&bold(){オキク&sizex(3){ル}ミカムイ}
>&font(B,I){okikurmi-kamuy}
>&italic(){okikurmi=オキク&sizex(2){ル}ミ(個人名) kamuy=神}
>「オキク&sizex(2){ル}ミ神」

&bold(){アイヌ民族に文化をもたらしたとされる英雄神。}
&bold(){アイヌラック&sizex(3){ル}}(人のような神((アイヌラックル:aynu-rak-kur  aynu=人 rak=味(がする) kur=人、男 「人間のような男」)))とも呼ばれる。
天の龍神&bold(){カンナカムイ}と地にあったハルニレの女神&bold(){チキサニカムイ}の子であり、
天から舞い降りたカンナカムイを迎え炎に包まれたチキサニカムイの中から生まれ出でたという。
幼いころは地上の人々と家族のように暮らす中で[[弓矢>弓]]や網などの道具を授け、
長じてからは父の力が宿る雷の剣を手に大鹿や邪悪な[[魔女]]と戦った。
しかし次第に堕落していく人々を見切り、天へと帰っていったのだとされる。

***●&bold(){チセコ&sizex(3){ロ}カムイ}
>&font(B,I){cise-kor-kamuy}
>&italic(){cise=家(ci=我ら+set=寝床) kor=持つ kamuy=神}
>「家の神」

アイヌ民族の代表的な住宅、「チセ」のカムイ。
アペフチカムイの夫でもある。

***●&bold(){アペフチカムイ}
>&font(B,I){ape-huci-kamuy}
>&italic(){ape=火 huci=祖母 kamuy=神}
>「火のおばあちゃんの神」

&bold(){[[火]]の神}、それも囲炉裏の炎・・・ &bold(){「生活の中にある炎」}をつかさどるカムイである。
[[ギリシャ神話]]の[[ヘスティア]]に極めて近い。
なおフチとは「[[おばあちゃん>老婆(属性)]]」といった意味で、親しみをこめた呼び方である。
オキク&sizex(2){ル}ミカムイを産んで炎に包まれ燃えつきたチキサニカムイの残り火を囲炉裏に移したことから生まれたカムイだとされている。

また「パケト゚ナ&sizex(2){シ}カムイ」、「口の早い神=告げ口をする神」という異名を持つ。
狩りに行く場所を囲炉裏の前で口にしたりすると、山の神に告げ口をして獣たちを逃がしてしまうのだという。
アイヌの人々はこう言い伝えることで、火の前でおしゃべりをし気を散らすことをいましめたのだろう。

***●&bold(){シラッキカムイ}
>&font(B,I){siratki-kamuy}
>&italic(){siratki=番をする、占う kamuy=神}
>「家の中の神」「占いの神」

&bold(){「家の中の神」}。家の中に置く&bold(){魔除け・装飾品に宿るカムイ}のこと。
狐の頭骨のことは「キムンシラッキ」(山の&ruby(シラッキ){家神})、アホウドリの頭骨なら「レプンシラッキ」(海の&ruby(シラッキ){家神})と呼ばれる。
またこの頭骨は占いにも用いられた。
シラッキを用いた占いはト゚スクル(巫術士)でなくても誰にでもできるものだとされる。

***●&bold(){パウチカムイ}
>&font(B,I){pawci-kamuy}
>&italic(){pawci=淫乱 kamuy=神}
>「淫らな神」

アイヌに伝わる[[&font(b,#ff00ff){淫魔}>サキュバス]]のような存在。&br()コタンカ&sizex(2){ラ}カムイがドロノキの木屑に息を吹きかけた時に、疫病の神パヨカカムイとともに生じたとされる。
常に[[全裸>裸]]で踊り舞っており男女をみだらな気持ちにさせて、自分と同じように踊り狂わせたり浮気をさせたりする。
しかし柳の葉を河に流しシシャモに変えて人に与えたり工芸の技術をさずけたりした&bold(){文化神}でもあり、
船に乗ってやってきた夜盗の前で全裸で舞い踊り、彼らを遭難させて土地を守ったという伝承もある。
一説には文化神として美を探求した結果、''全裸こそ最も美しい''との結論に至ってしまい淫神へ変貌したとか。

***●&bold(){ホンカンカムイ}
かなり特殊なカムイで、名の意味は&bold(){「&ruby(ほうがん){判官}+カムイ」}。
すなわち&bold(){九郎判官義経を神格化したカムイ}である。

源義経についてまことしやかにささやかれる伝説として、
討たれたとされる奥州から実はひそかに脱出しており[[蝦夷地>北海道]]へ渡ったというものがある。
この伝承の真偽はさだかでないが、少なくとも北海道の一部地域においてホンカンカムイを祀る風習があったことは確かなようである。
ホンカンカムイはアイヌ民族の父であるオキク&sizex(2){ル}ミカムイとも同一視されており、それを知り感銘を受けた幕史により木製の義経像が送られた。
その木像はいまなおその地域に&bold(){実在}しており、その地に建てられた神社の中で参拝する人々を集めている。


**&bold(){○土地神、動物・植物神}
山や川などの地形、そしてそこに住む獣や鳥、樹木などをつかさどるカムイ。
人々に恵みを与えてくれるカムイとして大いにあがめられた。

***●&bold(){ワッカウ&sizex(3){シ}カムイ}
>&font(B,I){wakka-us-kamuy}
>&italic(){wakka=水 us=いる kamuy=神}
>「水にいる神」

&bold(){河のカムイ}。 人々に水と魚を授けるカムイとして信仰された。

***●&bold(){シランパカムイ}
>&font(B,I){sir-anpa-kamuy}
>&italic(){sir=大地 anpa=持つ kamuy=神}
>「大地を支える神」

&bold(){樹木のカムイ}。 多くあるすべての種類の木々のカムイの総称であり、
木々の生える場所・・・&bold(){森のカムイ、山のカムイ}でもある。
繊維を取ったり発火材として使われたハルニレをはじめとした、人々にとって有用な材木ほど位の高いカムイとされ
ドロノキのように軟弱な木は悪いカムイとして扱われた((このドロノキの木くずから産まれたのが前述のパウチカムイだという。))。

***●&bold(){チキサニカムイ}
>&font(B,I){cikisani-kamuy}
>&italic(){scikisani=ハルニレ(ci=我ら kisa=(火をつけるため)こする、穿つ ni=木) kamuy=神}
>「ハルニレの神」「火をともす神」

&bold(){&ruby(ハルニレ){春楡}のカムイ}。美しい女性の姿をしており、&bold(){炎の神}でもある。
&ruby(カンナカムイ){雷神}に打たれることで炎を現世にもたらした&bold(){「自然界の炎の神」}なのだ。
ハルニレは火付き・火持ちがよく良質の薪になったほか、穴を開けて棒をこすりつけて火をおこす発火材としても利用された。
またその木を繊維にしたものは切れやすいものの美しい赤い糸となり刺繍用として使われた。
そのため樹木だけでなくすべてのカムイの中で最も高位のもののひとりとされ、
&ruby(カンナカムイ){雷神}との間にアイヌ文化の父&bold(){オキク&sizex(2){ル}ミカムイ}を産んだとされる。

&ruby(チキサニカムイ){春楡神}は天から舞い降りた&ruby(カンナカムイ){雷神}を迎えて炎に包まれた。
そして燃えさかるわが身の中からオキク&sizex(2){ル}ミカムイを産んだ。
その後彼女は六日間燃え続けて焼け落ち消え去ってしまう。
その残り火を囲炉裏に移したことで生まれたのが&ruby(アペフチカムイ){火神}であるとされる。

***●&bold(){キムンカムイ}
>&font(B,I){kim-un-kamuy}
>&italic(){kim=山(の方) un=住む kamuy=神}
>「山に住む神」

&bold(){ヒグマのカムイ}。ヌプリコ&sizex(3){ロ}カムイ(&bold(){山の神})とも呼ばれる((「山の恵みの神」で、山そのもののカムイは別にいる))。
アイヌの集落は山の近くにあることが多く、ヒグマは[[大きな災い>三毛別羆事件]]と富を同時にもたらす存在だった。
そのためか&bold(){単に「カムイ」と言う場合にはこの&ruby(キムンカムイ){羆神}を指すことが多い。}

***●&bold(){ホ&size(3){ロ}ケウカムイ}
>&font(B,I){Horkeu-kamuy}
>&italic(){Horkeu=オオカミ kamuy=神}
>「[[オオカミ]]の神」
&bold(){エゾオオカミのカムイ}。ウォセカムイ(吼える神)とも呼ばれる。
アイヌの人々から敬われ、時にはキムンカムイと同じくイオマンテの対象となることがあった。

***●&bold(){コタンコ&size(3){ロ}カムイ}
>&font(B,I){kotan-kor-kamuy}
>&italic(){kotan=村、集落 kor=持つ kamuy=神}
>「村をあずかる神」

&bold(){シマフクロウのカムイ}。カムイチカ&sizex(2){プ}(神の鳥)とも呼ばれる。
&bold(){「村の神」「神の鳥」}の名が示す通り集落の守護神として見なされた神であり、
捕らえられたときは盛大な神事でもって神の国へと送られた。

***●&bold(){レプンカムイ}
>&font(B,I){rep-un-kamuy}
>&italic(){rep=沖 un=住む kamuy=神}
>「沖に住む神」

&bold(){[[シャチ>シャチ(鯱)]]のカムイ}。
[[大きな鯨>マッコウクジラ]]をも追いまわし陸地へと追い立て人々に与える神として崇拝された。

***●&bold(){ケマコ&sizex(3){シ}ネカムイ}
>&font(B,I){kema-kosne-kamuy}
>&italic(){kema=脚 kosne=軽い kamuy=神}
>「足の軽い神」

&bold(){狐のカムイ}。
その俊足を生かして神々に&ruby(カムイノミ){神事}の開催を報せる伝令であり、重要なカムイの一柱とされた。

**&bold(){○自然神}
風や雨などの自然現象に関わるカムイ。
人に直接的な恵みをもたらすわけではないためあまり盛大には祀られず、
むしろ荒ぶる神・祟り神として恐れられたものが多い。

***●&bold(){カンナカムイ}
>&font(B,I){kanna-kamuy}
>&italic(){kanna=上 kamuy=神}
>「天上の神」

&bold(){[[雷>雷(自然現象)]]のカムイ}。蛇の姿をしている、いわゆる&bold(){「龍神」}だとされる。
人から恐れられる荒ぶる神で、その息子も悪しき大蛇となって人を襲うこともある。
しかしアイヌ民族の父神&bold(){オキク&sizex(2){ル}ミカムイの父}でもある。


***●&bold(){パヨカカムイ}
>&font(B,I){payoka-kamuy}
>&italic(){payoka=歩く kamuy=神}
>「歩き回る神」

&bold(){[[疱瘡、疫病>毒属性/病気属性]]のカムイ。}渡り鳥の姿で名の通りほうぼうを歩き回り病をまき散らす神である。
&ruby(コタンカラカムイ){創造神}によって&ruby(パウチカムイ){淫神}とともに生まれた、禍々しくも貴い神。
そのためか人々の捧げ物や&ruby(ユカラ){謡}に感じ入り、立ち去っていったり贈り物を返したりといった伝承もある。

***●&bold(){ホヤウカムイ}
>&font(B,I){hoyaw-kamuy}
>&italic(){hoyaw=大マムシ kamuy=神}
>「大マムシの神」

&bold(){[[毒気、瘴気>毒属性/病気属性]]のカムイ}。鋭いくちばしと翼をもった巨大な蛇の姿をしている。
沼沢地を棲み処とし、全身から悪臭をともなう毒気をはなつ邪悪で危険なカムイ。
この毒気に触れると全身がただれ腐り落ちてしまうため、
人々は沼のほとりに降りるときはホヤウカムイがいないかどうか確かめてから行ったという。

しかし&bold(){洞爺湖の主}である&ruby(ホヤウカムイ){毒神}はひときわ強い力を持ち人々に大きな災いをもたらすものの、
他の悪い神を追い払う&bold(){祟り神}としての側面もあり、有珠山の神とともに大いに祀られた。
里が&ruby(パコロカムイ){疫神}の猛威にさらされた時ふところで人々を守り疫神を追い払ったり、
&ruby(ト゚スクル){巫女}によって&ruby(ト゚レンカムイ){憑神}となり病の治療法を語ったり活力を与え病気を治したといった伝承が残る。

なお「蛇神」「蝮神」と訳されることもあるが、ホヤウカムイはあくまで「蛇の姿をした毒気の神」である。
蛇(特にアオダイショウ)のカムイは「タンネカムイ」。
マムシは「トッコニ」と呼ばれ、あまりカムイ扱いはされない。

***●&bold(){ミンツチカムイ}
アイヌ伝承における&bold(){「河童」}に相当するもの。ミンツチとは恐らく&bold(){「&ruby(みずち){蛟}」}のことであると思われる。
人を河に引きこみ溺れ死にさせる危険な神だが、反面漁師に大漁をもたらす神であったともいう。

*【創作文化におけるカムイ】
カムイと言う言葉は「神」に近しいものとして、多くの日本人に認識されている。
日本語とはあきらかに違う言葉でありながらもうっすらとしたつながりを感じさせ、
かつ神聖なるもの・冒すべからざるものという響きをどこかしらに秘めている。
カムイという言葉はその不可思議にも美しい響きもあいまって、主たるテーマとなったりその言葉のみを用いられたりと、多くの創作で取り上げられてきたのである。

そのなかで最も有名で日本の創作における「カムイ」の原点とも言えるのが白土三平氏の大作&bold(){「カムイ伝」「カムイ外伝」}だろう。
カムイの名を与えられた主人公である少年忍者と白き狼はミステリアスな雰囲気をまといながら悲しくも壮絶な戦いに身を投じ、
「カムイ」という言葉に幻想的なイメージを大いに与えていったのだ。
その後も男性的とも女性的ともつかない神秘的な響きのその名は、男女問わず多くの人物に与えられていった。
また技や物などにもその名がつけられたることがあったが、いずれも俗なものとは一線を画した神聖・高位のものであることが多い。

また言葉としてでなく個々の神々としての、キャラクターとしてのカムイも多くの[[ファンタジー]]作品で取り上げられていった。
その多くは日本の妖怪ストーリーの登場人物としてだが、妖怪的な性格を持っているとはいえことごとく「&ruby(カムイ){神}」の名を持つ彼らは
やはりただの妖怪とは一味違う強烈な個性を持った存在として描かれやすい。

*【主な登場作品】
**○&bold(){名称としてのカムイ}
//単に「カムイ」という名称で呼ばれているものはこちらへお願いします。
-&bold(){カムイ伝・カムイ外伝:}前述の通り、主人公の名称として。そして登場人物たちも感極まった時にこの言葉を口にする。
-&bold(){[[ファイアーエムブレムシリーズ]]:}[[ファイアーエムブレムif]]の主人公として王子であり王女である「[[カムイ>カムイ(FEif)]]」が登場。
--[[外伝>ファイアーエムブレム外伝]]/[[Echoes>ファイアーエムブレム Echoes もうひとりの英雄王]]にも[[同名の傭兵>カムイ(FE外伝)]]が登場する。
-&bold(){[[ゴールデンカムイ]]:}北海道~樺太を舞台とした壮大で凄絶な冒険活劇。&br()ヒロインであるアシ&sizex(3){リ}パがアイヌ文化の語り部の役割を果たしており、多くのカムイたちの由来を説明してくれる。
-&bold(){キムンカムイ:}北海道を舞台とする山中でヒグマに襲撃されるという典型的なサバイバルパニックホラー漫画。
-&bold(){カムイ(列車):}札幌と旭川を結ぶ、JR北海道の特急列車。高速バスと競合するため&bold(){表定速度は悠々96km/hを超え}、現在のJR在来線では最速クラスに位置する。&br()同区間の優等列車としては国鉄時代の準急「かむい」にまでその源流を遡ることができる。
-&bold(){[[ウエハラカムイ]]:}PSゲーム『シルバー事件』などに登場する人物。タイトルとなった事件の犯人、大量殺人者として目されていたが…
-&bold(){北乃カムイ:}北海道のご当地バーチャルアイドル。北海道の行者ニンニクを食べてすぐ寝ると、 時々もにょもにょかむいに変化する。
-&bold(){ニンジャマスターズ:}ADK製の忍者格ゲー。抜け忍である主人公サスケを追うかつての親友&bold(){カムイ}が登場。性能的にはバランス型。
-&bold(){神威:}「カムイ」の当て字のひとつ。北海道の地名に多数用いられている。&br()字面に男性的なイメージが強いためか、創作では強い男性キャラ・強力な技などの名称になることが多い。
--&bold(){[[神威(銀魂)]]:}宇宙海賊『春雨』の第七師団団長。『春雨の雷槍』の二つ名を持つ神楽の兄。
--&bold(){[[神威(烈火の炎)]]:}特殊部隊「裏麗」の一員。サイボーグの肉体を持つモヒカン頭のオカマで、少年を標的にするサイコキラー。
--&bold(){司狼神威([[X(漫画)]]):}主人公。過酷な運命に翻弄されながらも、人類を守る「天の龍」の1人として戦う少年。
--&bold(){神威がくぽ:}いわゆる[[がくっぽいど>VOCALOID一覧(国内)]]のキャラクター名。
--&bold(){神威([[モンスターストライク]]):}光属性のキャラクター。姿は普通に西洋風の戦士。
--&bold(){神威家([[銀と金]]):}「神威編」の準主役である地方財閥の一族。当主秀峰の家族方針が原因で悲劇的な抗争が起こる。
--&bold(){[[神威(NARUTO)]]:}万華鏡写輪眼を開眼した者が使える瞳術のひとつ。&br()睨んだ者を異空間である神威空間に送りこんだり、自分自身を神威空間に転移させたりできる。
--&bold(){神威の断頭台([[キン肉マン>キン肉マン(漫画)]]):}悪魔超人軍リーダーである[[悪魔将軍]]が宿敵である[[超人閻魔>ストロング・ザ・武道]]を倒すため、自身の必殺技である「地獄の断頭台」を改良した技。
--&bold(){[[神威(シューティングゲーム)]]:}同人サークル「SITER SKAIN」が制作した縦シュー。ロックオンで多数の敵を狙える「雷撃」と高威力レーザーの「雷刀」を使いこなし攻略する。
--&bold(){神威(ブレイブ ストーリー 新たなる旅人):}主人公が習得する勇技。彼の覚える勇技は旅人の剣の能力由来、漫画やアニメで見たのを模倣したもの由来があるが、その中で例外と言えるほどに異彩を放つ技である。攻撃反応型のカウンター技だが、「剣を掲げて光を放った後、敵の攻撃を消えるように躱していつの間にか接近し、一閃する」……という、全体を通してみてもどこか神懸かったような人知を超えた技となっている。ちなみにレベル上昇で自力習得する。
--&bold(){&ruby(かじりかむいかぐら){[[神咒神威神楽]]}:}PARADISE LOST、Dies iraeに続く神座万象シリーズの第三作。前作までの主人公たちが強大な化外の者として転生し、主人公たちの前に立ちはだかる。
--&bold(){神威(水上機母艦):}アメリカに発注した大日本帝国海軍給油艦。15年戦争時に水上機母艦に改装された。神威岬を名称の由来としている。電気推進機能を備える。艦これ版は[[こちらで>給油艦(艦これ)]]
--&bold(){神威(士道サンライズ):}主人公雪村谺が当初勤務していた大日本帝国海軍のこちらは軍艦(架空)。なお台風ですぐに沈没します。
-&bold(){神衣:}創作において「神のような力を持つ衣服」という意味でよく使われる当て字。
--&bold(){[[聖闘士星矢]](車田正美):}アテナの血で再生した聖衣が、すべてを超える「神衣」と化した。…と思ったら次の話で「&ruby(ゴッドクロス){神闘衣}」となっていた。
--&bold(){[[キルラキル]]:}"極制服"と呼ばれる装備の上位存在として「[[神衣鮮血]]」及び「神衣純潔」が登場。



**○&bold(){&ruby(キャラクター){神々}としてのカムイ}
//個々の神々、「○○カムイ」をモチーフにしたキャラクターはこちらへお願いします。
-&bold(){[[まんが日本昔ばなし]]:}日本の津々浦々の伝承・民話を網羅したテレビシリーズ。当然ながら北海道のアイヌ伝承も取り上げている。&br()登場するカムイは『湖の怪魚』でチライ(イトウ)と格闘している屈強な狩人の姿で登場した龍神カンナカムイや『島になったおばあさん』で威厳ある山の神として登場した摩周岳の主カムイヌプリなど。
-&bold(){[[サムライスピリッツシリーズ>サムライスピリッツ]]:}登場人物であるアイヌ少女の姉妹ナコルル・リムルルの流派が「シカンナカムイ流」。技にもカムイの名を冠するものが多い。
-&bold(){[[うしおととら]]:}洞爺地方の主サンピタラカムイ、その宿敵である毒龍オヤウカムイが登場。&br()また白面の者、そして獣の槍の秘密に関わる重要な場所として「&ruby(カムイコタン){神居古潭}」が登場する。
-&bold(){[[地獄先生ぬ~べ~]]:}パウチカムイが登場。[[中島法子]]に憑りつきセクシーな衣装で登校させ、クラスメイトの男子をことごとく悩殺した。
-&bold(){女神転生シリーズ:}ソウルハッカーズより龍王として「ホヤウカムイ」が出現。
-&bold(){[[SCP-981-JP]]「うぇんかんかんほやうかむい」:}怪奇創作コミュニティ「[[SCP Foundation]]」の日本支部で管理されているSCPオブジェクト。&br()作中の古代アイヌの伝承では「鉄を憎む蛇の魔神」とされ、英雄神アイヌラックル(オキク&sizex(2){ル}ミカムイ)に退治されたと伝えられている。&br()なお「うぇんかんかん」とはアイヌ語で「悪いはらわた」という意味。
-&bold(){[[大神>大神(ゲーム)]]:}蝦夷をモチーフとした極寒の地「カムイ」及び、その地のウエペケレ((アイヌ語の「物語」を意味する「:ウウェペケ&sizex(2){レ}からきていると思われる。))に住まうオイナ族(オイナ=聖伝の)の戦士「オキクルミ」が登場。&br()なおボスキャラクターの双魔神「モシレチク・コタネチク」の名は、オキク&sizex(2){ル}ミカムイが戦った魔神の名からきている。
-&bold(){[[小林さんちのメイドラゴン]]:}登場するドラゴンの一人として「カンナカムイ」が登場。かわいい。
-&bold(){[[Z/X -Zillions of enemy X->Z/X -Zillions of enemy X-]]:}蝶ヶ崎ほのめのパートナーゼクス候補として、ミソス(神話伝承をモチーフとした人造生命体)の「囲炉裏の精霊アペフチカムイ」が登場。「愛の妖精プシュケ」「麗の妙声鳥 迦陵頻伽」とプレイヤーの投票を競った。
-&bold(){サモンズボード:}初期の神級にカンナカムイとクンネカムイが登場した他、アイヌラックル、レプンカムイ、サマユンクル、チキサニ、アミタンネカムイがガチャで、パヨカカムイがダンジョンで登場する。
-&bold(){[[咲-Saki-]]:}有珠山高校大将・獅子原爽は麻雀上の打ち筋において幼少期に出会ったカムイの力を借りて様々な効果を起こす。競技には使わないがパウチカムイで性感を高めたりもできる。
-&bold(){[[冒険家になろう!]]:}舞台は北海道。太陽神等の他の宗教神が出てくることもあるが、様々なカムイの名前が出てくる。
また、様々なアイヌ神話も出てくるので白老古潭の入り口としても適しているかもしれない。




追記・修正はカムイを神の国へと盛大に送り返してからお願いします。


#center(){
&italic(){&sizex(4){その昔この広い北海道は、私たちの先祖の自由の天地でありました。}}

&italic(){&sizex(4){天真爛漫な稚児の様に、美しい大自然に抱擁されて}}

&italic(){&sizex(4){のんびりと楽しく生活していた彼等は、真に自然の寵児、}}

&italic(){&sizex(4){なんという幸福な人だちであったでしょう。}}
}


#right(){知里幸惠編訳「アイヌ神謡集」序文より}

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#openclose(show=▷ コメント欄){
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-カムイ伝と言えばもう一人(?)の主人公、白狼カムイも忘れちゃいけませんぜ  -- 名無しさん  (2018-08-22 14:56:38)
- メイドラゴンのカンナカムイってここから来ていたのか  -- 名無しさん  (2018-08-22 20:40:27)
- 銀魂にはその名もずばり神威というキャラがいるよ  -- 名無しさん  (2018-08-22 22:41:08)
- 須田ゲー好きとしてはウエハラカムイは外せない。  -- 名無しさん  (2018-08-22 23:43:48)
- CLAMPの漫画『X』の主人公の名前が司狼神威(しろうかむい)だったり  -- 名無しさん  (2018-08-23 00:15:18)
- Z/Xでもアペフチカムイが蝶ヶ崎ほのめのパートナーZ/X候補だった。投票の結果最終的に迦陵頻伽になったけど  -- 名無しさん  (2018-08-23 02:28:59)
- 「神威」の由来はアイヌのカムイでいいのか?  -- 名無しさん  (2018-08-23 06:50:44)
- ↑恐らくは。北海道にはこの字を当てて「カムイ」と読ませる地名がいくつもあります。  -- ページ作成者  (2018-08-23 18:55:24)
- SNK!  -- 名無しさん  (2018-08-23 20:47:05)
- ADKのニンジャマスターズも忘れてはいけない。…抜け忍がサスケで追い忍がカムイなのは、逆な気がしてならないけど!  -- 名無しさん  (2018-08-26 22:08:45)
- ペルソナ4のクマの後期ペルソナも確かカムイ。後、メガテン3のとあるマガタマの名前がカムイの儀式の名前だっけ  -- 名無しさん  (2019-06-11 12:25:24)
- 層雲峡にはパウチカムイ住んでいると言う  -- 名無しさん  (2024-05-23 14:53:15)
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