&font(#6495ED){登録日}:2019/07/03 Wed 00:23:38 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 16 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- #center(){「まだまだ捨てたものではありませんわ。」} *今昔百鬼拾遺 鬼/河童/天狗 『こんじゃくひゃっきしゅうい』は[[京極夏彦]]の連作小説作品。 [[妖怪シリーズ>妖怪シリーズ(小説)]]の一つで、[[榎木津礼二郎]]を主人公とする『[[百器徒然袋>百器徒然袋 雨(小説)]]』や多々良勝五郎と沼上蓮次が迷いまくる『[[今昔続百鬼>今昔続百鬼 雲(小説)]]』と同じく外伝的なシリーズとなっている。 妖怪(百鬼夜行)シリーズ全体としても暫くぶりの完全新作ということでも注目を集めたが、何と令和元年を迎えた記念の世の2019年4月から3ヶ月連続で別々の出版社((講談社タイガ文庫、角川文庫、新潮社文庫))から&b(){『鬼』『河童』『天狗』}の三冊の単行本が書き下ろされたというのも驚きを呼んだ。 書籍の他には電子版も存在する。 一方で、これ迄のシリーズがオムニバスの中編集となっており、タイトル自体には妖怪名が付いていなかったのに対し、夫々のタイトルが&font(l){いつもよりは短いなれど}長編として描き出された本作では一冊毎に妖怪名が冠されている。 三冊総てでメインを張るのはレギュラーの一人である中禅寺敦子と『[[絡新婦の理>絡新婦の理(小説)]]』以来の登場となった呉美由紀である。((『絡新婦の理』の初版以来、再登場が望まれていたキャラクターであり、メタ的には約20年越しに実現することとなった。)) 本シリーズでは、物語自体も敦子か美由紀の視点のみを通して語られているのも特徴である。 また、今回はシリーズ中でも特に主要となるキャラクターは話題には挙がるが当人達は一人も出て来ない。 どうやら、本シリーズと全く同じ時系列の表で、[[榎木津>榎木津礼二郎]]や[[京極堂>中禅寺秋彦(京極堂)]]や[[関口>関口巽]]や[[木場>木場修太郎]]は&b(){本筋となる大事件}の方に巻き込まれているようである、期待しよう。 この他、カバーがこれ迄の妖怪繪や荒井良による人形ではなく、仮面を被った制服の少女のポートレートになっている。 三冊共に、演じているのは女優の今田美桜である。 2020年、この三つのエピソードにいつもの如く加筆修正を加えた上で一冊に纏めた&b(){『今昔百鬼拾遺 月』}が発売された。 発売は今までのシリーズ同様に講談社からとなっている。 &color(red){※以降の記述には若干のネタバレを含みます。} *【各本の概説】 **今昔百鬼拾遺 鬼 ●鬼 #center(){「迚も恐い――と云っていました」} 昭和二十九年の年明けから間も無く……。 京極堂やら榎木津やらが栃木の旅先で相も変わらずの奇妙な事件に巻き込まれているのとは全く関係のない所で事件は起きていた。 義姉の千鶴子より、兄や探偵の不在中に昭和の連続辻斬り事件……の相談を受けた中禅寺敦子は、その相談を持ち込んできた本人である、噂に聞いていた聖ベルナール学院で起きた異変に端を発する、凄惨な事件の関係者である呉美由紀との知己を得た。 美由紀より辻斬り事件のあらましを聞く中で、最後の犠牲者となった片倉ハル子……美由紀が善くして貰っていた一級上の女子が、[[鬼>鬼(妖怪)]]の因縁で片倉家に連なる女達が斬り殺されてきたということを話していたということを知る。 美由紀の主張の通りに事件がちぐはぐであることを己でも認識した敦子は、事件を担当していた玉川署を訪れ、矢張りちぐはぐな想いを抱いていた刑事の賀川と出会い、賀川までに大きく持ち上げられる中で急速に事件にのめり込んでいく。 ……果たして、ハル子の家……人を殺す道具を扱う刀剣屋に伝わる“鬼”の刀の因縁とは? ***【刀剣に祟られた人々と翻弄される刑事】 -片倉ハル子 東京へやって来た美由紀が最初に友人となった先輩で、美由紀とは別の意味で可愛いらしい女子。 高等部一年だった。 いつも自宅に戻る外出届けを出した夜に、恋人と噂される宇野に斬り殺され、母の勢子に通報される。 -片倉勢子 ハル子の母で、嫁いでハル子を生んでから間も無くに強盗によって義妹の静子が斬り殺され、それによって優しかった夫も義父母も心や身体を病み付き数年で失い、その後はハル子と共に忌まわしい刀剣片倉に取り残されていた。 宇野がハル子を殺したことは認めているものの、何処かしら腑に落ちない証言を残している。 #openclose(show=以下、本編の一部ネタバレにつき注意){ 実は片倉家にはかつて大垣の先祖と因果が出来、片倉家の先祖の女性「涼」が最終的に入手した、「鬼」こと新選組副長土方歳三の佩刀とされる無銘刀が保管されていた。 涼は生前過去のトラウマから「刀に斬られて死にたい」という執着を抱いており、そのために土方に二代和泉守兼定を捧げついていくも叶わず(これは作者の別作品『ヒトごろし』の話)、彼の死の時感じた様々な無念からか、没後何とか彼の使っていた刀を&bold(){自分の家族がその刀で殺された事を切っ掛けに}大垣家から引き取り天寿を全うした。 だが後にその刀は静子殺害時の凶器にもなってしまい(事件自体は涼の家族の死とは関係ない単なる偶然)、刀の背負う業と「&bold(){片倉家の女性は『鬼の刀』に殺される}」という「呪い」を背負わされてしまった勢子とハル子は… なお、終盤で「刀の業が重いならなぜ手遅れになる前に処分しなかった」という疑問が出た際、勢子は「厳重にしまわれていたせいで戦時下の金属徴収令時にも気づかれなかった」「(法律がゆるい時代に家に置かれた)お墨付きもない刀だったため、迂闊に手放そうとするとまず所有許可を得るため一旦『自分の持ち物』にしなければならず、それ自体が(「持ち主」になった自分が呪いを背負いそうで)怖かった(意訳)」と苦悩を明かしている。それでも一旦はある程度物理的に遠ざける事はしたのだが… ちなみに『ヒトごろし』でも『鬼の刀』らしき刀が描かれているが、その時は単に「&bold(){身近にあって部下への報酬にしても惜しくなかった刀その一}」くらいの軽い扱いであり、 ある意味では「歴史と偶然と発見者達の執着によって片倉家限定の呪物と化してしまった」不幸な刀だったのかも知れない…。 } -宇野憲一 ハル子を斬り殺した罪で捕らえられた十九歳の大柄な青年。 新聞では旋盤工として報道されていたが、美由紀は刀剣片倉に居るのを見ており、それ以前に旋盤工は馘になっていた。 更に以前は浮浪児であり、研師の大垣に拾われて育てられていた。 ハル子の恋人だと目されている。 -大垣喜一郎 刀剣片倉とも付き合いのあった研師の親父で宇野の養父。 “鬼”の刀を探し求める敦子達の訪問を受けて、人を斬り殺す道具である“刀”の恐ろしさを語る。 -賀川太一 警視庁玉川署捜査一課の刑事で、小柄で頭が大きく目が大きいことから子供の様な印象を与える一方で、まだ二十九歳なのに敦子からは三十代と目算された老け顔の持ち主。 辻斬り事件の担当だが、新聞報道通りに収めたい上層部に対して釈然としない印象を持っており、敦子の訪問から賀川もまた真実に向かうことになる。 シリーズのレギュラーである青木とは同期であったらしく、感情の振り幅が大きく表情豊かで青木に負けず劣らずの優秀な刑事のようだが軍隊では体格もあってか馬鹿にされていたという。 以降の事件では早速、敦子から情報提供者として重宝されており、美由紀からは“子供刑事”と失礼な渾名を居ないところで付けられていた。 **今昔百鬼拾遺 河童 ●河童 #center(){「何て品のないお話なの――」} 昭和二十九年の夏……。 いつもの怪しい連中が出先の東北で当然の如く因縁めいた事件に巻き込まれているのとは無関係に奇妙な事件は進行していた。 呉美由紀は、ひょんなことから学友達と“[[河童]]”談義に興じていた……尤も、一歩も二歩も引いてしまっている美由紀は呆れながらも東北、関東、九州で別々の名前と容姿と属性を持つ“河童”の伝承の中で自身の記憶に残る河童の思い出を辿りつつも級友達の可愛い所を見つけていたが、そもそもの発端である覗き魔事件の話は全く進展しなかった訳なのだが。 一方、敦子は益田から奇妙な依頼人についての相談を受け、しきりに脱線する益田の話ぶりに辟易しつつも、ある職人が模造宝石を作り、その模造宝石を作るように依頼したのは職人の幼馴染みで、その幼馴染みはどうやら善からぬことに手を染めていたようで、どうやらその一味の一人がある高貴なお方から盗んだ宝石を略取したようで、それを突き止めて宝石を取り戻してから高貴な方に返す……と言っていた幼馴染みは川で尻を出した姿で変死してしまい、恐くなって警察に出頭した職人は、其処で幼馴染みが単なる変死ではなく殺人事件である可能性を聞かされて驚いていた所に、更に今度はもっと上流で似たような状況で死んだオッサンの変死も知らされておっかなびっくりで探偵に相談に来た……という事情なのだと云うことを何とか理解していた。 ……偶然にも、二人が話していた団子屋の若女将で件の職人と幼馴染み…三芳と久保田を知る仲村幸江は、益田の自らの出したキーワードに反応しては脱線していくという話ぶりにイライラしていたら三芳と久保田のことが聞こえてきた……と、会話に割り込むと、七年程前に久保田こと悠ちゃん達が穢苦しい顔を突き付けて店先で待ち合わせてから何処かで悪巧みしていたらしい……ということを敦子達に知らせるのだった。 そこに集まっていたのは、あんまり姿を見なかった痩せた川何とかさんを含む五人……久保田、同じ部隊のス何とかさんと亀山さんに後から加わったカッパのヒロさんと川何とかさんの五人が記憶力の優れる団子屋の看板娘で姪の入川芽生ちゃんによって明らかとなり、どうやらそれが連続尻出し殺人事件の被害者達らしいということで益田は興奮したものの冷静な敦子に窘められて、それ以上は話が進まず、敦子も編集長から自分の担当の引き起こした面倒な事態を聞かされるのだった。 ……どういうことかというと、夏休みにまだコドモの美由紀も懐かしいと思う程に小さい頃の思い出を辿って親戚の家に泊まりに来ていた美由紀は、従姉妹の淳子に連れられて自分の記憶に残る河童の祭りの記憶の元かとも思っていたのに、そういう訳でもなかったっぽい河泊神社にて、異様に妖怪に詳しい太ったおじさんの多々良勝五郎と出逢ってしまう。 成り行きで多々良と代理の編集者で敦子の同僚の古谷の取材に付いていった美由紀達は其処で尻を出したオッサンの水死体を発見するのだった。 そして、多々良の身元保証にやって来た敦子は、この尻出し連続殺人事件の現場である複雑な川の流れる地が美由紀の親類の家のある地で、他ならぬ美由紀が泊まりに来ていたことを知ると共になし崩しに合流することになったが……。 果たして、駐在で地元の人間の池田より遅い情報を得て“その場所”に向かった敦子や美由紀達の知った真実とは。 ***【ぞろぞろ出てくる登場人物】 -橋本佳奈 美由紀の級友で九州は宮崎の出身。 お尻の話題が苦手。 九州の河童の話をする。 -市成裕美 美由紀の級友で祖母は東北は岩手出身。 お父上もお祖母さまと話すときはお訛りになるとのこと。 『遠野物語』にも出てくる話題も含めて東北の河童の話をする。 -小泉清花 美由紀の級友で東京生まれの東京育ち。 捌けているようで男女のまぐわいの話は内容に触れていないにもかかわらず恥ずかしがる。 美由紀達の馬鹿話に読書を邪魔されたことで逆に馘を突っ込んでいき、美由紀の記憶とも重なる江戸時代に並列化されて記号化した河童の姿と尻子玉と腕を斬られた河童の話をする。 -仲村幸江 敦子と益田が偶然に入り、益田に店で「尻」「尻」連呼されていた団子屋の三代目の若女将。 気っ風のいい江戸っ子で、偶然にも三芳と久保田の名前を聞いたことから彼等の人となりと、六年前に久保田が怪しげな連中と店先で団子も食わずに何事かを示し合わせていたことを話す。 「尻」のことは気にしてなかったが益田の態度には大いに肚を立てた模様。 昔の渾名はサチ坊。 婿養子の宿六は腕のいい職人で団子作らせたら東京一だ。 -入川芽生 幸江の姪でメイちゃんで発音は違うけど調子のいい益田は一々と合わせてる内に惑わされた。 迚も記憶力が善く、七年前の久保田、他の男達の名前をかなり正確に思い出し、連続尻出し殺人事件の被害者のオッサン達がどうやらその中に居るらしいことを敦子と益田は知る。 -南雲淳子 美由紀の母方の従姉妹で幼い頃に遊んで貰っていたお姉さん。 木更津に越していった美由紀の一家とは違い、今も総元に住んでいて成人した今では役場に勤めており眼鏡をかけるようになっていた。 美由紀の話を聞き、河泊神社を見に連れていった其処で多々良センセイと出合ってしまう。 -古谷祐由 『稀譚月報』の編集者で敦子の同僚。 本来の担当の敦子の替わりに多々良センセイのお守り役を引き受けて河童探しに来ていた所で、美由紀と共に新たなる尻出し連続殺人の遺体の発見に遭遇することに。 -磯部 千葉県警捜査一課の刑事で若くて大柄で横柄で、ややモラルが低い。 拳銃と写真機いじりが好きな模様。 一年少し前に[[勝浦で起きた事件>絡新婦の理(小説)]]にて兄の方に逢っているらしく、敦子の名字を聞いて厭な顔をした。 -小山田 千葉県警捜査一課の刑事で磯部の上役。 磯部と違って横柄ではなく、多々良のあしらいかたも直ぐに覚え、ある程度は話にも乗れるという優秀な刑事。 ……が、池田の判り難い話ぶりには流石にツッコミを入れたくなった模様。 -池田 総元の駐在で総元の“禁足地”である遠内の出身で“川なんとかさん”こと川瀬が遠内出身の川瀬敏男であることを明かし、更に息子の川瀬香奈男が居たこと、七年前から香奈男の姿が見えなくなっていたことを判り難いながらも伝え、遠内に向かう一同を導く。 -稲場麻佑 多々良センセイ達が話を聞きに行こうと思っていた前の校長先生の外孫で、夏風邪を拗らせて臥せっていた祖父を看病に来ていた所で敦子や美由紀を含む変な集団の襲来を受けた。 淳子より少し年齢上くらいで、川瀬香奈男とは同級生だった。 -久保田悠介 悪巧みしていた一人で尻出しの一人目。 幼馴染みの三芳に模造宝石作りを依頼した。 片腕を失っていたことから、傷痿軍人だったと思い込んでいた益田に幸江は異を唱えた。 第五福竜丸の件で魚介類への偏見が厳しくなり失業するまでは漁師の真似事をしていたらしい。 -川瀬敏男 悪巧みしていた一人で香奈男の父。 厄祓いの猿回し=河童の子孫で行商をしていた。 七年程前に儲け話があると言っていた後に行方知れずに。 -川瀬香奈男 敏男の息子で、父親が消えた後は養鶏場で下働きをしていたらしいとか、最近まで漁師の真似をしていたらしいという話が又聞きとして麻佑から明かされる。 麻佑は祖父の言いつけもあって香奈男と親しくし、遠内まで行ったが、猿回しの家への差別((…ちなみにこの「猿回し芸人達への差別」は史実でも存在したもので、現実では本作の時代の後法律上の路上芸への取締強化等も合わさり、山口県で芸能団体として再興活動が始まるまで約20年弱にも及ぶ猿回し文化の断絶期間が訪れる事になる。))を無くそうとする祖父に対して、旧弊的な祖母には激怒され、それからは遠内に足を向けられなくなったという。 どうやら、第五福竜丸の件で馘になるまで久保田と一緒に働いていたらしいが……? **今昔百鬼拾遺 天狗 ●天狗 #center(){「高慢だとお思いになったでしょう」} 昭和二十九年秋……。 最早、事件に呼ばれているとしか思えない怪しいオッサン達が富士山だか河口湖で足止めされてるのとは全く関係のない所で事件は起きていた。 呉美由紀は、東京国立美術館のルーブル美術館展を見るのを余りの人だかりの多さから挫折して勝手に敗北感を味わっていたリベンジとして、兼ねてから予告だけはしていた挨拶の為に訪れた薔薇十字探偵社にて彼女……益田を散々にやり込めていた超お嬢様の篠村美弥子と出会った。 話ぶりと、此方も益田への冷たい態度から甚く気に入られた美由紀はパーラーに誘われ、美弥子の友人のワンちゃん……是枝美智栄が高尾山で行方不明となり、更に何故か美智栄の服を着た別の女性の自殺死体が別の山で見つかったことを聞かされるのだった。 いつもの路地裏の駄菓子屋にて、歳上の友人である中禅寺敦子に相談してみた美由紀は、最初は自慢話にするつもりであった美弥子との邂逅を己だけの思ゐ出とすることを決める。 敦子の調べにより、美智栄が高尾山へと登った日に同じく行方不明となっていた同年代の若い女性達の失踪。 [[天狗>天狗(妖怪)]]の伝承の残る高尾山に調査にやって来た美由紀と美弥子は……どうやら軽く遭難した果てに人工で手を加えられた壙に落ちてゐた。 **【天狗に攫われた若い女性達】 -是枝美智栄 美弥子の友人で、登山が趣味。 美弥子からはワンちゃんと呼ばれており、美弥子のことも何とかちゃんと呼んでいたようなのだが美由紀は聞き取れなかった。 既に、もっと大きな山にも挑める技量を持つが、初心忘れるべからず、として大きな山に挑む時でも準備の為に高尾山に登るのが慣例となっていて、その時には美弥子を誘うこともあった。 しかし、今回は美弥子は琴の合奏会があったので同高尾山には同行出来ず、一人で登った美智栄は……行方知れずとなる。 -天津敏子 侍の家系であるという、八王子で土建業を営む素封家天津家の一人娘。 道ならぬ恋に悩んでおり、旧弊的な祖父には手打ちにされそうになっていたことまでが解る。 そして、山に行くとの書き置きを残したまま高尾山に登り……自殺体として発見される。 -葛城コウ 信用金庫に勤めるBG。((ビジネスガールの略。かつて、日本で職業婦人の通称として使われていたが欧米では街娼を指す言葉だと判明したために1963年から禁止用語とされ、替わりに使われるようになったのがOL=オフィスレディである。)) 同じ華道の教室に通う中で敏子と知り合い、肉体関係も含む恋仲となったと見られている。 迦葉山にて遺体で発見されるが、身に付けていた衣服は美智栄のものであった。 -秋葉登代 柴又に住む小学校の教員。 霊場巡りが趣味で、巡礼衣装まで身に付けていた本格派。 他の女性達が姿を消したのと同じ日に高尾山に登っていたと見られ……行方知れずとなる。 *【主要登場人物】 -中禅寺敦子 今回の主人公の一人で『稀譚月報』の記者としての知識と人脈、冷静な情報分析に裏付けられた可能性を推論する能力で事件の調査に挑む。 せっかくのメインだが『[[塗仏の宴>塗仏の宴 宴の支度(小説)]]』同様にネガティブな自己分析も展開されており、周りの男共が落胆するかもしれない本音も。 一方、敦子自身も友人と認めるようになった美由紀や『天狗』の件で美弥子とも親交を得ることに。 -呉美由紀 かつての聖ベルナール学院の生徒で、今また自身が望んだ訳でもないのに東京の全寮制お嬢様学校に通わせられてる背の高い女学生。 今回の主人公の一人で、エモいの担当。 さばさばとした性格や喋り方は同年代のお嬢様擬きからは浮きまくりだが敦子や美弥子からは好ましいと思われたらしく交遊関係を結び、何やかんやと自分からも事件に頚を突っ込んでいくことに。 汚い路地裏の駄菓子屋で蜜柑水と酢烏賊を食べるのが日常で、敦子との面会はおろか美弥子まで運転手付きの黒塗りの自動車で乗り付ける始末に。 -篠村美弥子 篠村代議士の一人娘で信念を貫くお嬢様。 かつての『鳴釜』事件にて探偵と果心居士(古本屋)に馬鹿男との結婚式を潰された経験から、親友のワンちゃんの失踪事件の解決をして貰うべく探偵社にやって来た所で美由紀と出会うことに。 結婚式の件にて馬鹿男の犠牲となった早苗や御釜の金ちゃんといつの間にか仲良くなり篤い親交を結んでいた。 旧態依然とした武家社会以来の体制に怒りを感じているらしく、傲慢を当たり前と思う人間を嫌う。 『天狗』のみの登場ながら、イキイキとした活躍と今後の登場が期待されることから男共より上で紹介。 -益田龍一 薔薇十字探偵社の志願下僕。 探偵社に持ち込まれる普通の探偵業務をこなしており、実際には探偵社の評判を支えているのではあろうが、どんなに善い仕事をしても当の探偵からは罵られ省みられず、調査能力は高いが故に便利屋的な扱いに留まっている。 一年ちょっと前までは歴とした刑事だったのに、丁稚根性が身に付いたのか、相手の一言にも反応し、話に乗るのはいいが十言も二十言も乗せ、自らが発した言葉にすら反応して脱線していく様は敦子や美由紀をげんなりさせ、美弥子には嫌いとまで断じられてしまった。 -鳥口守彦 馬力のあるのは取り柄だが、道を間違えるのと諺を間違えるのは難点の『赤井書房』の一人しか居ない社員。 相変わらず敦子に仕事を回して貰ってる一方で、カストリ人脈を通じて、過去の陰惨な事件の事情やら聞きたくもない風聞を調べあげてくる。 戦中は陸軍で歩兵だったことが明かされたが、本人曰く歩いて壙掘っただけで終わったらしい。 -青木文蔵 警察組織の再編と共に、元の職場である警視庁捜査一課に戻っていた優秀な小芥子刑事。 警視庁の管轄内ということで高尾山の事件の調査に乗り出し、軍隊経験もあってか、青木の推察によって壙をどんな人間が掘ったのかという目星が付けられた。 -多々良勝五郎 博学で好奇心旺盛だが、一般常識は欠落した在野の妖怪研究家。 『稀譚月報』に記事を書いており、河童取材の一環で千葉にやって来たところ美由紀と出会い、水死体の第一発見者になる。 例によって他人の名前に興味がなく、とりあえず「ぬ」と呼んでしまう。 -金ちゃん 本名は熊沢金次。 『釜鳴』事件にて知己を得た美弥子とは馬が合ったようで、美弥子は金ちゃんの経営する怪しげなバーにも出入りしては色んな価値観を持つ人々を眺めていたらしい。 美由紀と美弥子が壙に落ちて遭難した時には慌てて凸凹捜索隊に加わる。 *【余談】 -『河童』に於ける多くの登場人物はTwitter上で行われた『虚談』刊行記念クイズ正解者十五名の名前とのこと。&br()その中の一人で三芳の名前のモデルとなった人物は妖怪関係の書籍等を制作・販売しているサークルに参加しており、本作発売の夏に開催された妖怪オンリーイベント「深川お化け縁日」に出店した際、&b(){実際に模造宝石を販売して}来場した京極ファンの間で話題になっていた。 「本読んだのに追記修正しないってどういうことですか?もう誰かが項目作ってたからって貴方が本を読んで思ったことは貴方だけのものじゃないですか!自分の感動した本読んでそれを伝えるために項目立てて善くなるように弄る人間が出てくれるのは無駄じゃないですよ!それだって……貴方の好きだって知らない人へのアピールになってく筈なんです!きっときっと……それはアニヲタwikiの為になるんです!」 #right(){画像出典:今昔図画続百鬼 雨/画図百鬼夜行 陰 鳥山石燕} #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,1) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - 再登場したらロクな目に合わないとか言われてたけど美由紀ちゃんもまぁ色々あったな…。人間関係めっさ広がったが -- 名無しさん (2019-07-03 00:58:20) - 鬼でいつメンが栃木行ってて、鵼の舞台も栃木。ってことは幽谷響は東北の話になるんかな -- 名無しさん (2023-09-18 23:17:32) - これ漫画にして欲しい -- 名無しさん (2024-05-23 02:36:12) #comment #areaedit(end) }