最後の挨拶(小説)

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最後の挨拶(小説) - (2025/05/17 (土) 08:51:31) のソース

&font(#6495ED){登録日}:2025/04/17 Thu 20:25:40
&font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red)
&font(#6495ED){所要時間}:約 10 分で読めます

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#center(){&bold(){&big(){&I(){How still and peaceful it all seems. }}}}
#center(){&font(b,#696969){何もかもが平穏に見えるものだな。}}
#center(){&bold(){&big(){&I(){There may be other lights within the week, and the English coast a less tranquil place! }}}}
#center(){&font(b,#696969){だが一週間もすれば違う「灯り」がきらめき、英国の海岸はより平和でなくなるだろう!}}

#right(){アーサー・コナン・ドイル著『His Last Bow』より。}


&size(20){『最後の挨拶/His Last Bow』}はアーサー・C・ドイルの執筆した小説シャーロック・ホームズの一篇である。
英国の雑誌ストランドマガジンで1917年9月に発表された。
初期の版では『シャーロック・ホームズの軍役』『シャーロック・ホームズ最終章』などと付けられたりしたが外された。%%ネタバレになるし%%
そしてこの話を収録された単行本のタイトルも''まったく同名の''『His Last Bow』でありこの巻に限っては『シャーロックホームズの〇〇』とは付いていない。(和訳は付けることが多い)
この記事で触れるのは単独の小説についてである。
ホームズシリーズの実質的な''最終回''であり、作中時系列では最後の時期のホームズを描いている。
同様の最終回として描かれた作品には『最後の事件』があったが、結果的にタイトル詐欺になってしまったあちらとは違い、時系列上のホームズ最後の事件である事は覆る事はなかった。
作者のドイルはここから数年ほど休んだ後にホームズ作品を何作か執筆しているが、この作品がタイトル通りの最終話とみなしていたと考えてもよいだろう。
そして短編集『事件簿』の前書きで「俺は今度こそホームズやめるかんな!(意訳)」と宣言してやっと本当に完結した

*はじめに
本作の舞台は1914年8月2日のイギリスの片田舎((記事冒頭のセリフはエセックス州の港町ハリッジの明かりを見ながらのつぶやきなのでその近郊と思われる。))、堕落した世界に神の呪いが立ち込めていた…などと作中で書かれたりしている。
シャーロック・ホームズの生年は明記されていないものの、他の作品での描写を鑑みればこの時期は60歳を越えており、
当時の平均寿命はすでに超過、どう考えても自ら火事場に首を突っ込む歳ではなく
&s(){後付けで}7年前に『ライオンのたてがみ』で不本意ながら謎を解いたりはしたが実際は悠々自適の隠居生活を送っていた。

ドイツの若い貴族フォン・ボルクはイギリスの片田舎を拠点に
表向きは酒好きスポーツ好きの無鉄砲な若者として地元民に愛されながら、実態は皇帝のためにイギリスの重要秘密を探るスパイだった。
ドイツ在外公館の書記官バロン・フォン・ハーリングはボルクの働きぶりを評価し、
”最後の獲物”である「英国海軍の暗号」を手に入れれば''これからの戦い''で英国を圧倒できると考えていた。
そしてボルクの配下の密偵オルタモントからの電報でその獲物がまもなく届くという…。

*登場人物
◆フォン・ボルク
本作のメインキャラクター。
前述の通りドイツから来た気風のいい兄ちゃんと思わせながらその正体はドイツ皇帝直属の諜報員、そしてその中でも屈指のエージェントで
4年間の活動期間のうちに「これから英国が被る災厄のうち半分は彼が原因」と呼ばれるほどの辣腕をふるった。
今夜オルタモントから海軍の暗号を手に入れることができればそれを手土産に[[悠々とドイツへ凱旋する予定であった。>死亡フラグ]]
ただし英国が盟友国を見捨てるだろうと言われると「それでは英国の誇りはどうなる?」と敵国の名誉を心配しており
卑劣なスパイではあるのだがそれはそれとして「表の戦争」では騎士のような高潔さを見せている。
そのためか終盤のホームズからは妙に紳士的に取り扱われていた。((ドイルの他の作風を見る限り、ホームズを苦しめる強敵については悪辣で狡猾であっても「誇り高き悪の騎士」のような描写を好んでいるようだ。))

◆バロン・フォン・ハーリング
ロンドン内のドイツ大使館に籍を置く外交書記官。
ボルクの得たスパイ情報を元に今後のドイツの戦略を考える立場であり、ボルクが海軍暗号を手に入れることを信じている。
大使館の書記官長(chief secretary)というのは当時実在した官職だが、さすがに史実の人物とは別名である。

なおドイツ人の姓に付く「[[フォン>フォン(前置詞)]]」とは貴族の姓につく前置詞であるため、
彼らの氏名を正確に書くと(名前不明)・ボルク氏とバロン・ハーリング氏である。((ただの前置詞なのでよほど特殊な人物でない限り小文字で「von Bork」とすべきところを原文では大文字の「Von Bork」などで統一されている。最初を大文字にするのは敬意表現なのだがここでは「偉そうにしているドイツ人」を皮肉的に示している。))
さらにいうと「バロン」も男爵の爵位かもしれないし、(ドイツ人には少ないが)''バロンという名前''かもしれないのだが断定できない。
…物語的にどうでもいいのでこの記事ではボルクとハーリングで統一する。

◆オルタモント
ボルクが使っている密偵の中でトップの男で、他の密偵も直接的にはオルタモントが指揮をしているらしい。
クッソ汚い英語を使う60代のアメリカ人で報酬と身の安全についてこだわる男だが、
ボルクが「金をふんだくるが払えば払った分の働きをする男」と評価している人物。
#openclose(show=「どうしたの?」「あの人…名前がオルタモントだって…?妙だな」){
当時はオルタモントというと''イングランドの上流階級に多い名前''で、
例えばこの小説の作者の実父は「チャールズ・オルタモント・ドイル」である。
つまりイングランドを嫌うアイルランド系アメリカ人の裏社会の人物が名乗るには本名だろうと偽名だろうと似合わない名前なのだ。
当時の読者からすればここでオルタモントという名前を見た時点で察したことだろう。
}

◆マーサ
ボルクがイギリスで暮らす屋敷で働いている使用人のおばあちゃん。
ボルクは海軍暗号を手に入れたらドイツへ帰るため、他の使用人を辞めさせておりマーサだけがギリギリまで残されていた。

◆[[シャーロック・ホームズ]]
◆ジョン・H・ワトスン
ご存じ世界的に有名な名探偵とその相棒。
冒頭の解説の通りこの時点では60代の老人で現役を退いているため''本作には登場しない。''
&font(i,#808080){あれれーー?おっかしいぞーーー?ねえねえこれってホームズシリーズの最終回だよねー?ホームズが出ないってことあるのー?}

*あらすじ
1914年8月2日、蒸し暑い空気が支配するイギリスの片田舎の海岸の屋敷で二人の男が密談をしていた。
そのうちの一人であるボルクはこの屋敷を拠点に活動するスパイで、4年間のうちに英国の重要情報をほとんど手に入れていた。
ドイツ大使館の書記官長ハーリングはボルクの集めた情報を活用して祖国ドイツのために暗躍しており、
当時イギリス内で発生していた「アイルランドの独立を求めての内紛」や「女性の参政権を求める活動が暴力を用いた過激なものに転化((一例として、1913年には女性参政権運動者のエミリー・デイヴィソンがイギリスダービーのコースに侵入してレースを妨害しようとして馬に激突、4日後に死亡した。幸いなことに落馬した騎手・馬共に無事で、回復して2週間後にはレース後にも復帰できた))」などは
ハーリングが裏で手をまわした結果で、これで少しでも英国の国力を削ぎつつ国外への対応を判断する目を誤らせようとするものだった。

それによりドイツが500万マルクの特別戦時税を決定したにも関わらず、英国はそれが戦争の準備とは気づかずに慢心し、
戦争がはじまってベルギーやフランスが攻撃を受けても英国は見捨てるだろうと踏んでいた。

それらの判断の根拠となる「ボルクが収集した英国の国家機密」の書類の前でボルクとハーリングは会話を続ける。
後は「英国海軍の暗号」さえ手に入れば二人の野望は完璧なものとなり、今夜それも手に入る手はずになっていた。
明日にはボルクは「ハーリングの個人随行員」として登録されるためその身分を使ってドイツへ帰るのである。

ハーリングは「ドイツ大使館の外交官」であるため身分はドイツ政府そのものに等しい。
つまりイギリスにとってどんなに都合が悪い行為をしていても追い出すことはできるが''逮捕などの害する行為は許されない。''
ボルクやその部下の密偵たちはイギリスに住んでいる外国の民間人であるためそうはいかないのだが
これによりボルクも大使館員として安全に帰れるのだ。

ボルクの部下の密偵オルタモントから「&font(i){今夜持っていく}」という電報を受け取っていたので
ハーリングも海軍暗号の到着を待ちたかったのだが、なにせ''世界的な大イベント''を控えた外交官の長であるため職場を抜け出せる猶予は少ない。
ボルクが暗号を''持ち帰れば''前述のルートで安全に帰国した上で国家の英雄として処遇することを約束してハーリングは屋敷を後にしようとする。

そこでハーリングはボルクの屋敷の中で一人の老婆を見つけた。
ボルクいわく屋敷に残した唯一の使用人マーサなのだが、暖炉の前で編み物と猫を撫でつつも居眠りをする彼女を見てハーリングは笑う。

>&font(i){彼女が今の英国の象徴だな。惰眠をむさぼり自分の状況に気づいていない。}

そういって帰庁するハーリングと入れ違いでオルタモントがやってくる。

オルタモントは確かにボルクが要望する海軍の暗号を手に入れてきたのだが、同時に凶報も伝える。
ボルクの密偵が''オルタモントを除いてみな逮捕されてしまったというのだ。''
ミスやヘマをした密偵もいたのだが、ボルクの視点からみてもバレているとは思えないような人間までも、である。

この報告を聞いたボルクは驚愕するが、さらにオルタモントは追い打ちをかける。
>&font(i){もう密偵が用済みになったからボルクがイギリス政府に密告して捕まえさせたんじゃあねぇんか?}
//
>&font(i){ボルクは大使館の庇護を受けて安全だが、イギリス政府は俺っちがアメリカ人だと言っても手心なんか加えねぇで絞首台なんだぞ}
ボルクは密偵を切り捨てるつもりなどなく(自分の安全を捨ててまで助ける気もないが)
オルタモントの主張に反論するが、オルタモントが要求しているのは自分の安全と金であり、
すぐに国外へ逃げる必要があるため((近くにあるハリッジはオランダへの航路があるため、警察に睨まれるまでに急げばオランダまでは逃げられる。))今ここで報酬の500ポンドの小切手を切らなければ暗号を渡さないという。

ボルクはこの口論で気分を害したが、オルタモントの要求通り500ポンドの小切手を渡した後でオルタモントの出した書簡を確認する。
そこに書かれていたのは……








#center(){&sizex(5){&font(b,#ff0000){◇ 作品の終盤のネタバレ注意 ◇}}}












#center(){&sizex(5){&font(b,#FFD700){実用養蜂便覧}}}











>#center(){&font(i){「ワトスンくん、グラスを出してくれないか」((この台詞の前に既にホームズとワトスンで一杯飲んだ後におかわり(another glass)を勧めたのかもしれないし、「オルタモントとボルク」の分のグラスしかなかったのでここでワトスン用のグラス(another glass)を出させて最初の乾杯をさせているのかは不明。))}}

*終盤のあらすじ
''シャーロック・ホームズがボルクを縛り上げて、秘蔵のトーケイワインでワトスンと乾杯する。''
読者の想像の通りにオルタモントはホームズの変装で、暗号を渡すふりをしつつ引退後の養蜂生活で一から書き上げた著書「&font(b,#FFD700){実用養蜂便覧、女王蜂の分封に対する観察付き((「分封または分蜂」とは女王蜂が新たな女王候補を他の場所に行かせて新たな巣を作らせること。「皇帝の勅命で動いているボルク」に「女王ではなく首相の頼みで動いたホームズ」が「国家の行動、特に汚れ仕事は王室に関与させない方がいいんじゃないの?」という皮肉を込めているそうな。))}」を渡して困惑したボルクの隙をつき、クロロホルムをかがせたのだった。
さらにホームズはワトスンに数年ぶりに連絡し、自動車の運転手として手伝ってもらった。((この頃の自動車は最新テクノロジーで運転もかなり難しいため、若者ならまだしも60代のワトスンが運転手としてスパイを手伝えるほど運転を習熟するのはかなりすごい。))

ボルクのスパイとしての技量は本物であり、英国政府がまったく手も足も出なかったため
とっくに引退したホームズのもとに外務大臣のみならず首相も日参せざるを得なかった。
ホームズも手掛けてみたものの一筋縄でいく相手ではないことに気づき、
わざわざアメリカの裏社会に潜入して何年もかけてアメリカ人の荒くれとしてのし上がった上で
ボルクの密偵オルタモントの座におさまったのであった。

オルタモントを介して得た英国の情報は本物そっくりだが巧妙に変更されており、
これをもとに立てた戦略でドイツが活動するとまるっきり何も知らなかった時より苦戦することになるだろう。
前述の通りハーリングは「イギリスがフランスやベルギーを見捨てるように仕向けた」と言っているが史実のイギリスは即座に救援に動いている((なんだったら、本作の3年後に発表されたアガサ・クリスティのデビュー作『スタイルズ荘の怪事件』がまさに「WW1時に英国に避難したベルギー人」ポアロを主役にした作品である。))。
おそらくこの世界でもそうなるだろう。

ハーリングが侮蔑していた家政婦マーサもホームズの部下であり、ボルクの活動をすべて記録していた上に
ハーリングが屋敷を去って残ったのがボルクだけになったことをホームズに連絡していた。

「&font(i){この屈辱は忘れんぞオルタモント!一生かかってでもお前に復讐してやる!}」というボルクの面罵を
「&font(i){聞きなれた小唄だ。故モリアーティ教授やセバスチャン・モラン大佐もよく唄っていたが、僕は今もサウスダウンズで養蜂をやっている}」といなす。
「その男」がかつてボヘミア王とアイリーン・アドラーを引き裂いたり、ボルクの親族のグラフェンステム伯爵((グラフェンステムは伯爵という意味なのでこ人物の正式名を直訳すると「ハクシャク領を所有するハクシャク伯爵」である。ホームズ(ドイル)はドイツを馬鹿にしすぎだろ。))を助けたという過去を語る。
ボルクはシカゴのオルタモントだと思っていた男がロンドンの名探偵シャーロック・ホームズだったと知り絶望するのだった。

>&font(i){ワトスンも昔のように僕の仕事を手伝ってくれる気になったようだしロンドンまで付き合ってくれるだろうが、その前に立ち話でもしないか?}
ホームズとワトスンはボルクを護送する前に屋敷のテラスで語らいをする。
二人の年齢や状況を考えるにこういった会話をするのはこれが最後であってもおかしくない。

>&font(i){東風が吹いてきたな、ワトスン}
//
>&font(i){そうかなホームズ、とても暖かい風だぞ((日本では東風(こち)を台風にもつながりやすいが春を告げる暖かい風、とみなしがちだがイギリスのeast windはあまりポジティブなイメージはない。))}
//
>&font(i){どんなに時代が変わっても君は昔のままのワトスンだなあ。いつもイギリスには東風が吹いていたが、こんな強い風が吹いたことはない。}
>&font(i){この冷たく厳しい東風で多くの良き人々が倒れていくかもしれない。((作者のドイルがこの作品を発表した少し後に「東風」で実弟と実の息子を失っている。))}
>&font(i){でもこの東風は神が与えた試練だ。この嵐が去った後、より清らかで優れて強い国が太陽の光を浴びるだろうさ。}

そういってホームズはワトスンの車に乗り、&font(#808080){ボルクの500ポンドの小切手と}それ以上の獲物を載せて飲酒運転でロンドンへ帰るのだった。((ツッコむまでもないが当時は飲酒運転の規制がないどころか現実の2020年代のイギリスでも飲酒運転の規制は緩いのでワイン2杯なら法的にはギリギリセーフになる可能性がある。))


*補足
あらためて述べるが本作の日時は1914年&u(){8月2日}。
ホームズたちが活躍していた頃とは少し離れているのになぜこの時期を舞台にしたのかというと、
お気づきの方も多いだろうが''第一次世界大戦''のイギリスにとっての参戦日の2日前だからである。
そして冒頭に書いた通り本作を発表したのは1917年9月、戦争でイギリスの兵士ががっつり犠牲になっておりまだ終わりが見えていない時期なのだ。
アーサー・C・ドイルは戦禍に苦しむ人々の励ましになる作品を執筆し続けており前作の『恐怖の谷』の完結から2年後に
久しぶりの、そして最後のホームズ作品として手掛けたのが本作である。
実際にはそれから数年後にまたホームズを書いているが、時系列がこれより前の全盛期のころのホームズとワトスンであるので
「最後の挨拶」の名の通り、ドイルの執筆作品としてのホームズの姿を見れるのはこれが最後となる。
しかしホームズとワトスンは世界中の読者の心の中でこれからも壮健に活躍し続けるのだろう。
なお、年齢上と状況からこういった会話をするのはこれが最後でもおかしくないと言ったが、これが発表されたという事は1917年時点でワトスンは無事にロンドンに戻ってきているし、時系列上本作の12年後の1926年にホームズはいつものようにワトソンの文章を批判しまくったら「じゃあお前が書け」と怒られてしまい、『白面の兵士』と『ライオンのたてがみ』を自ら執筆・発表するというトホホなオチも付く。
なんなら『恐怖の谷』の連載開始が1914年&u(){9月}なので、ワトスンは『最後の挨拶』の後に『恐怖の谷』の連載を翌年5月まで行った事になる。
Wikipedia日本語版記事でワトスンがここから軍医に復帰を考えているような記述があるが、そう推定できる描写は特にない。
いくら戦争になったとはいえ60代の老人が軍医になると言っても60歳までずっと診療経験を積み続けてる頑健な男ならともかくワトスンのキャリアでは英国軍が丁重にお断りすると思われる。
あえて言うならばホームズシリーズも雑誌初回発表時と単行本で内容を修正することがあるのだが、ホームズがワトスンに会話を誘う場面の初回発表時は
&color(,#ffffe0){「ワトスンも昔の''お役目に付く''(joining ''up'')気になったようだし、その前にロンドンへ行ったりここで話すのを付き合う暇はあるんじゃないのか?」}と書かれていた。
「join up」は''軍に入隊する、厳しいことに志願する''という意味であり、これを見て「軍に戻るのか?」と考察した者がいたのだった。
後の版では&color(,#ffffe0){「ワトスンも昔のように僕の仕事に''付き合ってくれる''(joining ''us'')ようだし…」}というように「join us」(何かに付き合う、加入する)というフランクな意味の表現に修正されている。


実はホームズの部下であったマーサについてはホームズの部下以上の情報がないのだが、その正体はおなじみ&b(){ハドスン夫人}とするのが有力。ハドスン夫人ももう結構いい歳なのでは?
ハドスン夫人の本名を「マーサ・ハドスン」とする説もここからきている。
どちらにせよハーリングは「イギリス人はボンクラに見えるがある一線を越えると牙を剥く」と作中で警告し、
しかも自分で「イギリス国内の女性参政権運動を自国のために利用した」と言っているのだが、
そのハーリングが過去に利用した「英国の女性」に、一度痛い目にあった上で今回も計画を潰されるという''痛烈な皮肉''を受けたことになる。
この話はよく見てみるとあちこちにイングリッシュ・ヒニクが散りばめられている
他にも上記の通り&b(){モリアーティ教授やモラン大佐}の名前が出てきたり&s(){まだ生きてるらしいけどモラン大佐も(ry}、
&b(){[[ボヘミア王とアイリーン・アドラー>ボヘミアの醜聞(小説)]]}の話題も出てきたりと
構成上の最終話という事だけあってこれまでの登場人物達の名前も多く出てくる。レストレード警部はいないが。

構成上ワトスンは後半になってからようやく登場するのと、彼の一人称だと話が進められないので、本作はホームズシリーズとしては珍しい、&b(){最初から最後までワトスンの1人称が入らない作品}となっている。((他に同様の形式で話が進む作品に『マザリンの宝石』がある。))
これについては後に『ソア橋』の冒頭で「自分は現場にいなかったか、小さい役割しか果たせなかったので第三者の立場としてしか語れない」とワトスン自身が綴っている。



追記・修正はトーケイワインを飲んでからお願いします。

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- フォンはユンカーくらいの土豪でもつく。ユンカーは時勢から首が締まって保守派に傾倒してたのでスパイやるのもそう不思議でもない なんて考察もできたり  -- 名無しさん  (2025-04-17 20:34:36)
- ちなみに記事中のトーケイワインとはハンガリー北東部のトカイ地方とその周辺地域で生産されているトカイワインの事。世界三大貴腐ワインの一つで作品中では「インペリアル・トカイ」と銘柄が明言されている  -- 名無しさん  (2025-04-17 23:36:20)
- 地味に軍医を辞めてホームズに出会ったワトスンが、完結作で軍医に戻ってホームズと別れると言う構図にもなってるんだなあ  -- 名無しさん  (2025-04-18 13:14:33)
- 今回の事件でイギリスがベルギー助けた事でホームズと並ぶ有名な探偵のポワロがイギリスに移住してくる事になる  -- 名無しさん  (2025-04-18 23:41:53)
- 自分が読んだ中では少なくとも借成社の「シャーロック・ホームズ全集」とちくま文庫の「詳注版シャーロック・ホームズ全集」は「ワトスンが軍医に戻る」という解釈だったはず。詳注版に至っては注釈でホームズも引き続きスパイをやっているという解釈をしていたw  -- 名無しさん  (2025-04-19 09:13:21)
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