ROCA(漫画)

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ROCA(漫画) - (2025/07/23 (水) 09:24:41) のソース

&font(#6495ED){登録日}:2025/07/09 (水曜日) 13:11:27
&font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red)
&font(#6495ED){所要時間}:約 11 分で読めます

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#center(){これは、ポルトガルの国民歌謡『ファド』の歌手を目指すどうでもよい女の子が}
#center(){どうでもよからざる才能を見出されて花開く、というだけの都合のよいお話です。}

#center(){単行本『ROCA コンプリート』前書きより}



『&bold(){ROCA}』とは、いしいひさいちによる漫画である。


*本作の成り立ち
この物語が最初に発表されたのは、いしいが朝日新聞に連載中の[[4コマ漫画]]『ののちゃん』の中。
『ののちゃん』の主役である「山田家」の人々が住む街の、「山田家の知り合いの知り合い」くらいの関係な女子高生達の青春を綴った「連載内連載」…いわばサイドストーリーとして物語は始まった。
…だがぶっちゃけ「平成の[[サザエさん]]」「朝日版[[コボちゃん]]」として一般には認知されているだろう『ののちゃん』内での&bold(){主役組が滅多に出ない女子高生シリーズのウケは悪かったようで}、作者としては中途半端な所で新聞媒体での展開は終了(一応『ののちゃん』部分だけでもエンドと後日談はある)。

その後、作者の公式サイト『(有)いしい商店』での自費出版シリーズ『ドーナツブックス』で新エピソードが描かれ、『ののちゃん』発表分のリファイン編や書下ろしも合わせたネット通販・同人誌即売会用の自費出版本『&bold(){ROCA 吉川ロカ ストーリーライブ}』として2022年に単行本が登場。
翌2023年には『ストーリーライブ』の補完説明となるエピソード群を集めた書下ろし自費出版本『&bold(){花の雨が降る ROCAエピソード集}』も発売され、
2025年6月には、[[スタジオジブリ]](『ののちゃん』の前身『となりのやまだ君』をアニメ化)の月刊小冊子『熱風』に連載された、「歌の風景」を綴った通常漫画群を収録した『&bold(){金色に光る海 ROCA短編集}』と、
単行本3巻を合本した商業書籍『&bold(){ROCA コンプリート}』が徳間書店のスタジオジブリコミックス((アニメ化の縁で『となりのやまだ君』『ののちゃん』の全集シリーズを展開。実は『金色に光る雨』収録作品にも『ののちゃん』単行本のオマケ作品のリメイク版が存在する。))から発売された。

*概要
本作は端的に言うなら冒頭で引用した前口上のように、「&bold(){歌手を目指す女の子が、その才能を見出され紆余曲折を経てプロデビューする}」という成長物語である。
ただそれだけではなく、主人公を支えるもう一人の主人公と言える「&bold(){偶々同じ学校で同じ悲劇のせいで家族を亡くした年上の同級生}」の心模様や、二人の周辺の人間模様、主人公のファンになった人々の様子と言った脇の部分も並行して描かれている。
題材となる音楽は、ポルトガルに伝わるギター伴奏で歌われる大衆歌謡「&bold(){ファド}」((この単語自体はポルトガル語で「運命」「宿命」を指すという。))(本作を始めた時偶々担当記者にファドファンがいた縁でハマったそうな)。
但し考証自体は緻密には行なっていないようで、一部曲の名前や主人公の声等には作者の推しユニット[[GARNET CROW]]の要素も引用されている。

*用語

・たまのの市
本作の主な舞台となる港町。モデルは作者の故郷である[[岡山県]]玉野市((ちなみに『ののちゃん』では最初港町設定や街の名前は無かったのだが、連載途中からいつのまにか玉野市モチーフに代わっていたそうな。))。
シャッター商店街がある等寂れた面もあるようだが、別な街へのフェリーが定期便として運行されており、他にも電車の駅や競輪場が存在している。

・音楽事務所
詳細な名前は不明だが(一応看板は「K」で始まっている)主人公ロカが研究生としてスカウトされた、たまのの市から特急で一時間程の都会にある芸能事務所((近所に「西宮」がある事を踏まえると、想定は関西地方の事務所なのだろうか?))。
規模は大きい方ではないようだが、事務所関係者の寮用に会社近くのマンションの部屋複数をまとめて借りるくらいには所属者への管理はきちんとしており、悪い評判もない模様。


・紫雲出山丸沈没事故
本作の10年前に発生した、&bold(){犠牲者が多数出た連絡船の沈没事故}。話の中では然程触れられないが、ロカと親友の美乃は共にこのせいで両親を亡くし、実は初めての出会いは幼い頃の慰霊祭時だったというつらい過去を抱えている。
ちなみに事故名の由来は1950年代に瀬戸内海で発生した「紫雲丸事故」が有力視されている。
&font(#ff0000,u){&font(#ffffff){余談だが『ののちゃん』内でこの事故が語られ始めた時期から、Wikipediaの『ののちゃん』項目ではその少し前に起こった東北の大津波への本作なりの返答説が挙げられていた。}}

・鬼吉川
音楽の道に歩み出したロカに付いた熱烈ファンの俗称。由来は戦国武将吉川経基の異名から。

・サウダージ
ポルトガル語で「郷愁」を意味し、ファドにおいて「一言では語れない感情表現」として重要視される概念。
…ロカは『ストーリーライブ』ラストで、そんなサウダージなムードを見せるが…。


*登場人物

・吉川 露花(きっかわ ろか)/吉川ロカ
本作の主人公な「南高校」に通う女子高生。幼い頃船の沈没事故で親を亡くし、母方の叔父が後見人となり彼の住むアパートで同居している。
&bold(){結構な天然ボケ}で勉強はオールE、&bold(){よくコケる}等一見すると&bold(){ポンコツ}に見えるが、&bold(){ボーカルの才能は}&s(){関係者に声のヴォリューム等のデチューンを勧められ、時に男の声と勘違いされる程}&bold(){高く}、
最初は音楽科への進学を夢見ていたが、学校への馴染めなさからか美乃との出会い後しばらくして有志と共に街でファドのストリートライブを始め、色んな事務所に自ら売り込みをかける等デビューのためにあれやこれやと奮闘。
そんな地道な活動が&s(){本人のコケや美乃のやらかしで実らなかったものも多々ありつつ}ついにプロスカウトに認められ、叔父の許可も出たため高校を退学しライブ仲間2人とも別れ、事務所のある街に引っ越し。
プロデビュー後もファドというマイナーでコアなジャンルからか地味目な売り出しにはなったものの徐々に歌手として認められていき、ファーストアルバムの発売・故郷での凱旋ライブ・盲目のピアニストとのセッションと実績を重ねていく。
ちなみに、&bold(){歌う時は大人びた風情となり、頭身が伸びる}。
また故郷では地元の方言(恐らくモチーフは岡山弁)からよく一人称が「わし」になっており、イメージの問題ゆえかデビュー前には美乃・デビュー後にはプロデューサーから「わし」の封印を求められる羽目に…。

作者曰く、イメージモデルはファド歌手の「マリーザ」と『[[GARNET CROW]]』の「中村由利」。名前の由来はファド好きな担当記者の娘さん…引いてはポルトガルの「ロカ岬」から。
&s(){吉川で[[サウダージ>ポルノグラフィティ]]で推定瀬戸内海沿岸の街の人でも[[この県>広島県]]とは関係ない。多分}


・柴島 美乃(くにじま みの)
本作のもう一人の主人公であり、偶々(同じカ行だったので)出席番号が近くで同じ事故で家族を亡くした縁とかがあった事からロカの親友になったオレっ娘。港の&s(){ロカも噂で良くない話を知るくらい限りなく裏稼業に近い}「柴島商会」の支配人の孫でもある。
一応高校生だがなぜか大分長い事[[留年]]しており、少なくとも商会で煙草を吸い、事故から10年後の慰霊祭時には(制服で来たロカと違って)スーツを着用するくらいの年ではある模様((ちなみにロカのデビュー後は一貫して商会で働いている姿で登場したが(衣装も作業服に)、退学したのか偶々仕事風景のみ書かれたのかは不明。))。
&bold(){口より先に手と足が出るタイプ}だが&s(){そりゃ不良として留年するわ}(ちょいちょいまずバカな弟が被害に遭う)悪い人ではなく、&s(){はたから見ると子分のようについてくる}ロカの夢への想いを知った後、実家の力をも借りて彼女の支援者兼用心棒として奮闘。
ロカがデビューのため旅立った後も、度々彼女の不安をスマホでの会話・メールで聞いていたが…

・柴島 宗勝(くにじま むねかつ)
美乃の弟であり、&bold(){超のつくおバカでチャラい不良}。一応『ののちゃん』側では「中学校に通う野球部員」とされているそうな。
最初祖父は彼を商会の跡取りにしようとしていたが、いらん事を良く言う等あまりにもアレ過ぎたのと美乃が「商会によるロカの支援」を交換条件に自ら商会の跡継ぎを志願したためそっちを採用した(一応ぶらぶらさせるのもアレなので彼も商会で働いてはいるが)。

イラストモデルは[[元木大介]]。

・吉田先生
南高校で声楽を担当する中年女性教師。
ロカの「とにかく音楽科に」という進路構想に苦言を呈しつつ、才能のある彼女にレッスンを施し、彼女の地力を伸ばす手助けをした。

・ロカの叔父
ロカの母の弟で、家族を亡くした姪の保護者でもある美術館職員兼画廊主宰。苗字は「宍戸」で既婚者。
ロカをスカウトに来た飯田プロデューサーとの会話の際、相手のロカを評する「10年に1人」という言葉に「自分もよく若手アーティストに言ってるなあ…(意訳)」と複雑な気分になりつつ、亡き姉も&bold(){無国籍音楽アマチュアバンドのボンゴ弾きボーカルだった}事を語り、姪の夢を認め送り出す事を選んだ。

・キクチ食堂のおばば
偶々ロカのライブを評価した縁から彼女と接点が出来た街の食堂のばあさん。『ののちゃん』の山田のの子の同級生「キクチくん」の祖母でもある。
子に当たる店主夫婦の反対を押し切ってロカのライブ会場として定休日の店を提供し、場所代代わりに彼女を出前バイトとして雇ったが、結局赤字だったためロカが旅立つ際「出世払いの請求書」をプレゼント(幸い発破と思ってもらった)。
後にデビューしたロカが仕事で街に帰った際、有料インストアライブを開催させていた。

・支配人
美乃・宗勝姉弟の祖父で、家族を喪った二人の親代わりでもある「柴島商会」のトップな老人。
商会の跡を継ぐ条件に「ロカの夢の支援」を申し出た美乃に最初大人として「歌手の道を目指す困難さ」を説教するも、彼女の熱意に何かを感じたかそれを呑んだ。
&font(#ff0000,u){&font(#ffffff){『花の雨が降る』・『金色に光る海』終盤では美乃にある忠告を行い、それが物語を終わりへと導く事になる。}}

ちなみにモデルは作者の祖父(石炭ブローカー)で、岡山県関連作品を集めた単行本『たまのののののちゃん』にて彼の歴史を綴った短編『伝・大森孫左衛門』が収録されている。

・ノザキさん
柴島商会の番頭役ないがぐり頭の壮年男性。
前科者で「滝打流」なる剣呑な武術を柴島姉弟に教えるくらいには物騒な人だが、基本は真面目な大人である。

・中村さん
柴島商会の従業員の一人(強制代執行人)。ロカを商会で支援する際の用心棒役の一人として美乃に駆り出された。
イラストモデルは元野球選手の中村紀洋。

・飯田プロデューサー
噂でロカのライブ話を知り、実際に彼女の歌声を聴いた事から、「ファドは売れない」という現実を自覚しつつも事務所の社長・専務を説得しスカウトへと動いた眼鏡男性。
&s(){ちなみにその前に「児玉」という芸能関係者からの名刺を見ていたせいでロカとの初顔合わせ時児玉さんだと勘違いされたり、事務所では彼の「10年に1人」という形容詞がある意味文字通りの意味で扱われていたりするのは別の話。}
半ばマネージャーに近い役もやっており、ロカのうっかりによるミスのフォローや世間知らずで学力0な彼女への指導等も担当している。

・熊谷さん
事務所で飯田からロカの「身辺担当」を任された関西弁の女性。
彼女を支える人員かつ同姓の先輩なためか、時に&bold(){彼女の調子を度外視してアーティストとしての最高の風景を夢見る}飯田のストッパーになる事も…。

・本山くん
ロカと同じ事務所で働き、ライブではポルトガル人ギタリスト「ルイス・ゲレイロ」((由来は実在する同名ギタリストから。))等と共にギターを担当する帽子青年。飯田・熊谷と合わせ実質的にロカのマネージャー役をも務めている。

・河合吉備子
ロカと同時期に事務所でデビューした女子大生シンガーソングライター。
初対面時には&bold(){互いに見えない所で相手の才能に圧倒されてしまう}が、その後はロカのアルバムで編曲を担当するようになった。

・山田のの子
・山田まつ子
『ののちゃん』本編の主人公とその母。
近所のキクチ食堂で働きながら歌っていたロカが旅立った後、しばらく姿を見ないロカがどうなったのかとふと思うが…(その後里帰りした彼女と再会している)。

・山田のぼる
のの子の兄で、『ののちゃん』本編では宗勝と野球部で知り合いな中学生。
宗勝とノザキさんが一緒にいる様子を見た目撃者の一人として一回だけ登場した。

・山野しげ
のの子の祖母。ロカの里帰り食堂ライブの際、おばばの仕切りに苦言を呈していた。
&font(#ff0000,u){&font(#ffffff){『ストーリーライブ』エンディングではどこか彼女とのの子が年を重ねたように見える女性2人が登場したが、他人の空似かも知れない。}}

・村上先生
柴島商会御用達の弁護士。名前自体は『花の雨が降る』で語られたが、本人の登場は『金色に光る海』収録の書下ろし掌編『幕間』のみ。
ちなみにモデルは2024年に他界した漫画評論家の村上知彦氏。

・アフメド
事務所の近くで働く外国人の弁当配達バイト。ロカの歌を聴き文字通り信者と化した。
&font(#ff0000,u){&font(#ffffff){『金色に光る海』ラストではロカ一行が初海外ツアーのフィナーレとして彼の故郷でコンサートを敢行。その顛末は…}}

*余談
#region(ネタバレに付き注意!)
『ストーリーライブ』のエンドカットのモチーフは、1969年の映画『サテリコン』から。

『花の雨が降る』エンドカットでは絵の一部分のみモノクロの世界に色があるのだが、自費出版時一時予算削減のため家族一同の手作業で色塗りしようとするも結局断念したそうな。
#endregion

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- いしいひさいちの漫画にこんなのがあったの知らんかったぞ…  -- 名無しさん  (2025-07-09 14:19:18)
- 朝日新聞でののちゃん見てるけどぶっちゃけ自分もロカはあんま興味ない側だったな…他で続いて軌道に乗ったのなら何より。  -- 名無しさん  (2025-07-09 15:09:55)
- ある部分だけカラーになるんだがそれが衝撃的すぎるんだよ…一応示唆されてた最後とはいえ…  -- 名無しさん  (2025-07-10 08:16:57)
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