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十二神将(仏教)

登録日:2025/10/28 Tue 21:42:58
更新日:2026/10/15 Thu 21:12:02
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十二神将(じゅうにしんしょう)は、様々な創作物に登場する集団・カテゴリーの名称であるが、本項では、その原型となる仏教における十二神将について、信仰上の役割、成立と展開、各神将の名称や伝承を中心に解説する。


概要

十二神将とは、東方浄瑠璃世界の教主たる薬師瑠璃光如来に仕え、仏法とその信徒を守護する、十二尊の夜叉大将(神将)からなる護法神の集団である。
そのため、「十二夜叉大将」「十二薬叉大将」「十二神王」などとも呼ばれる。
仏像の分類では天部に属し、甲冑を身に着け、武器を携えた武将の姿で表されることが多い。

その名の通り、十二という数が大きな特徴である。薬師如来の十二の大願との関係に加え、東アジアでは十二支や時刻・方角などの観念とも結び付けられ、独自の信仰と図像表現が発展していった。

なお、陰陽道で用いられる『六壬神課(りくじんしんか)』に関係する「十二天将」とは、名称が似ているものの別の体系である。
十二天将は、十二支などを用いた占術上の神将であり、薬師如来の眷属である十二神将とは区別する必要がある。

【解説】

薬師如来は、病苦をはじめとする人々の苦しみを除き、心身の安寧と救済をもたらす仏として信仰されてきた。
その薬師如来の教えを守り、薬師経を受持・読誦する者などを守護するのが、十二神将の主な役割である。

十二神将は、薬師如来が人々を救済するために立てた十二の大願(誓願)と結び付けられている。
伝承上、彼らは薬師如来の大願に感銘を受け、それぞれがその一つずつを守護することを誓ったとされる。

さらに、十二神将の各々が七千の夜叉を率いるという伝承もあり、これに従えば、十二神将全員で合計八万四千もの軍を動かせることになる。
これだけでも十二神将の凄まじさが窺えるというもの。

【十二神将あれこれ】

十二神将の成立と展開を理解する上では、仏教経典における護法神としての性格と、東アジアにおいて発達した十二支との対応関係を分けて考える必要がある。

夜叉から護法神へ

↑で軽く触れたが、十二神将の正体は、古代インドの宗教文化に由来する夜叉(ヤクシャ)たちである。
夜叉はインドの神話・宗教において、自然界や財宝などと関係する超自然的な存在として描かれてきた。その性格は一様ではなく、人間に危害を加える恐ろしい鬼神として語られる一方、財宝を守護する存在や、仏法を護持する善神としても位置付けられている。

仏教は、インドの既存の神々や超自然的存在を仏法に帰依した護法神として取り込んでいった。夜叉もその一つであり、十二神将はそうした宗教的な再編成を象徴する集団といえる。
かつて畏怖の対象であった強大な鬼神が、仏の教えに従い、人々を守護する側に立つ──という形で、仏教は異なる宗教文化の神々を取り込み、再解釈していったのである。

「獅子国では仏が三度訪れて順に夜叉や龍を教化した」という伝説が残っているが、伝説の通りに現在までのスリランカは熱心な仏教国となっている。
薬師如来は信仰上の報身仏(信仰上の全能神としての如来)の中で最も夜叉(=アーリア人から蔑まれた土着の民)の立場に寄り添った如来であり、そうした歴史的な事実を踏まえて成立した存在なのかもしれない。
そして、その夜叉の中でも屈指の強者が薬師如来の守護として名乗りを挙げたと語られたのは当然の構図だったのだろう。

十二という数と十二支

十二神将は、十二という数が東アジアの暦法や方位観念と親和性を持っていたことから、十二支とも結び付けられるようになった。
中国では、十二支が年だけでなく時刻や方角などを表す体系としても用いられてきた。仏教が中国から日本へ伝わり、各地の信仰や暦法と交わるなかで、十二神将にも十二支が配当されるようになったのである。

十二神将と十二支の対応は、現在では広く知られており、神将の頭上に鼠・牛・虎などの十二支の動物を載せる造形も見られる。
しかし、この対応関係が十二神将の成立当初から固定されていたわけではない。奈良時代の仏像には、後世の十二支信仰を前提として制作されたものではない十二神将像もあり、時代が下るにつれて十二支との結び付きが図像表現に反映されていったことがわかる。

また、尊名と十二支の対応は、経典や伝承、地域、後世の信仰体系によって異なる場合がある。
したがって、十二神将の十二支対応については、特定の並びを唯一絶対のものとするのではなく、複数ある伝統の中での配当として理解すべきだろう。

密教化と本地仏

十二神将の信仰は、後世の仏教思想や図像表現の展開とも結び付いている。その一つが、本地仏との対応関係である。
本地仏とは、神仏習合や本地垂迹の思想などにおいて、ある尊格の根本的な姿として説明される仏・菩薩などを指す。
十二神将にも、弥勒菩薩・勢至菩薩・阿弥陀如来などを本地とする配当が伝えられている。ただし、こうした対応は十二神将の成立当初から一貫して定められていたものではなく、後世の教理や信仰体系の中で整理されたものである。

【メンバー】

各神将の本地仏、種字、持物、身色などは、典拠や伝承によって異同がある。
以下では、日本国内で広く知られている配当を中心に紹介するが、個々の記載があらゆる宗派・時代・仏像に共通するわけではない。

■宮毘羅(くびら)大将

本地仏:弥勒菩薩/種字:ヨー/十二支:亥/方角:北北西/時刻:午後十時/月:十月(神無月)
梵名:Kumbhīraなど

神将として集った十二の夜叉大将の筆頭格。
梵名のクンビーラは、インドの宗教伝承において水や河川と結び付けられる存在として知られる。また、ガンジス川の女神ガンガーに関係する神格として説明されることもあり、ワニとの結び付きも伝えられている。

宮毘羅の名は、他にも宮毘羅、金毘羅、金比羅、禁毘羅とも表記される。
……そう、日本の漁業の盛んな沿岸地域にて篤く信仰されている金毘羅さん(金毘羅大権現)の大元の姿である。
こんぴらふねふね、おいてにほかけてシュラシュシュシュ♪

■跋折羅(ばさら)大将

本地仏:勢至菩薩/種字:サク/十二支:戌/方角:西北西/時刻:午後八時/九月(長月)
梵名:Vajra

跋折羅は、サンスクリット語のヴァジュラ(vajra)に由来する音写である。ヴァジュラは「金剛杵」と訳される武器・祭具を意味し、仏教では煩悩を打ち破る智慧や、堅固で破壊されないものの象徴として用いられる。
また、ヴァジュラを持つ神格として知られるのがヴァジュラパーニである。ガンダーラの仏教美術では、ヴァジュラパーニが逞しい肉体を備えた姿で表されることがあり、その図像にはギリシャ・ローマ世界のヘラクレス像との類似が認められる。
このため、ヴァジュラパーニの図像形成には、ヘレニズム文化の影響が関係しているとする説も存在する。

日本の寺院でよく知られる金剛力士像、いわゆる仁王像にも、インドから中国を経て日本へ至る仏教美術の長い展開が反映されている。筋骨隆々とした肉体や力強い姿勢には、東西の造形文化が交差した歴史を読み取ることができる。
「つまり……仁王様はヘラクレスだったんだよ!」「な、なんだってー!!」

なお、室町時代の文化を語る際に登場する「婆娑羅(ばさら)」という語も、発音が共通するため連想されやすい。
しかし、その殆どは「婆裟羅」の方に由来したと思しいもので、婆娑羅という語の用法と十二神将の跋折羅大将は、別の文脈として区別する必要がある。

■迷企羅(めきら)大将

本地仏:阿弥陀如来/種字:キリーク/十二支:酉/方角:西/時刻:午後六時/月:八月(葉月)
梵名:Mihira、Mekhilaなど

迷企羅はサンスクリット語の尊名を音写したものとされる。

■安底羅(あんてら)大将

本地仏:観音菩薩/種字:サ/十二支:申/方角:西南西/時刻:午後四時/月:七月(文月)
梵名:Aṇḍira、Antiraなど

安底羅はサンスクリット語の尊名を音写したものとされ、「あんちら」と読む場合もある。
観音様で猿(申)とか面白エピソードを作れそうなのだが特に作られていない。

■頞儞羅(あにら)(末儞羅(まにら))大将

本地仏:如意輪観音/種字:キリーク/十二支:羊/方角:南南西/時刻:午後二時/月:六月(水無月)
梵名:Anila、Majiraなど

頞儞羅はアニラ、末儞羅はマジラなどの音写とされる。名称に違いがあるものの、後世の伝承では同じ神将に関係する異表記として扱われる場合がある。
アニラという語は、インドの宗教文化において風と関係する語・名称としても知られる。このことから、バラモン教の風神ヴァーユとの関連を想定する説がある。

■珊底羅(さんてら)大将

本地仏:虚空蔵菩薩/種字:タラク/十二支:午/方角:南/時刻:正午/月:五月(皐月)
梵名:Śaṇḍira、Saṃthilaなど

珊底羅はサンスクリット語の尊名を音写したものとされ、「さんちら」と読む場合もある。

■因陀羅(いんだら)大将

本地仏:地蔵菩薩/種字:カ/十二支:巳/方角:南南東/時刻:午前十時/月:四月(卯月)
梵名:Indra、Indālaなど

因陀羅はインドラ、インダーラなどの音写とされる名称である。
インドラといえば、古代インド宗教における主要な神格であり、雷や戦いなどと結び付けられる神として知られる。仏教では帝釈天として取り入れられ、天部の重要な尊格となった。
……が、特に関連するような説話どころか説明も見つかっていない。

■波夷羅(はいら)大将

本地仏:文殊菩薩/種字:マン/十二支:辰/方角/東南東/時刻:午前八時/月:三月(弥生)
梵名:Pajra、Pāyilaなど

波夷羅はパジュラ、パーイラなどの音写として伝えられる名称である。

■摩虎羅(まごら)大将

本地仏:大威徳明王/種字:キリーク/十二支:卯/方角:東/時刻:午前六時/月:二月(如月)
梵名:Makura、Mahālaなど

摩虎羅はマクラ、マハーラなどの音写として伝えられる名称で、「まこら」と読む場合もある。

■真達羅(しんだら)大将

本地仏:普賢菩薩/種字:アン/十二支:寅/方角:東北東/時刻:午前四時/月:一月(睦月)
梵名:Sindūra、Cindālaなど

真達羅はシンドゥーラ、チンダーラなどの音写として伝えられる名称である。

■招住羅(しょうずら)(招杜羅(しょうとら))大将

本地仏:大日如来/種字:バン/十二支:丑/方角:北北東/時刻:午前二時/月:十二月(師走)
梵名:Catura、Caundhulaなど

招住羅(招杜羅)はチャトゥラ、チャゥンドゥラなどの音写として伝えられる名称で、日本では「招杜羅」の表記の方が広く知られている。

■毘羯羅(びがら)大将

本地仏:釈迦如来/種字:バク/十二支:子/方角:北/時刻:零時/月:十一月(霜月)
梵名:Vikarāla、Vikālaなど

毘羯羅はヴィカラーラ、ヴィカーラなどの音写として伝えられる名称で、「びから」と読む場合もある。

【十六善神】

『大般若経』を受持・読誦する者などを守護する十六の護法神を十六善神という。「般若十六善神」とも呼ばれ、寺院では大般若会などに関連して信仰されてきた。
十六善神は、四天王を含む十六の護法神からなる集団として説明されることがあり、一般的な説明では四天王と十二神将を合わせたものとされる場合もある。

【二次創作】

※本wikiには他にも“十二神将”の名前を引用した作品は存在するのだが、明確に「仏教の十二神将」と関連したもの。

「十二神将(デーヴァ)」と呼ばれる組織が存在。
十二支との紐づけは本項とは異なっており、クンビラモン(宮比羅)が「子」担当になるパターン。
詳細は当該項目を参照。

魔神アタバク(大元帥明王)に率いられて、主人公の行く手を阻むためにゲブラー砦を占拠する。
十二体全部が出るが、数が数だけにか一体一体は余り強くない上に、戦闘前後の台詞・首から下のグラフィックが全員使い回し、独自のカテゴリーである“神将”とあってか仲魔にできない(アタバクはできる)……など、色々とモヤる立ち位置。挙句、大半が最初から不在なんてバグが起きたりもする(フラグまで使い回したせい)。
まずもって一つのダンジョンに中ボスとして12体全員+アタバクまで配置するという無茶な配置をしたせいだろう。
設定的には原典を意識しており、アタバクは薬師如来からわざわざ「借りてきた」らしい。

特殊な力と役目を代々受け継ぐ12人のキャラクターとして登場。作中設定については作品項目を参照。
「薬師の座」という人物が創設したなど、ベースは仏教の十二神将なのだが、その薬師が十三仏の一人だったり、拠点が神社だったりと神仏習合的な設定になっている。また、十二支の要素も多分に含まれている。
復刻サイクルなどが限定されている特別なキャラとして扱われており、何よりサービス開始の翌年にあたる2014年末に実装された羊の神将「アニラ」に始まり年末に毎年1人ずつ干支にちなんだ新キャラが登場するという仕様が特徴。
つまり、全員が実装されるまでリアルタイムで干支が一回りする12年かかるという、生存競争が激しいソシャゲの世界において正気を疑うほど気の長い仕様である。
そして2025年末で最後の午の神将「サンチラ」が実装。12年かけての全十二神将の実装を達成した。

最終章「外魔瑠派(ゲマルハ)教団編」で十二神将の名を冠する敵が登場。
数十年後の地球を支配するカルト宗教団体の兵士で、その名の通り各神将の像を模した強化服を纏っている。
その正体は巨大培養された昆虫。バッタの神将はまんま仮面ライダーだった。
未来の空総(梁師範の息子)によって本編登場前に7体が倒され、本編に登場したのは宮毘羅(ハエ)、真達羅(バッタ)、伐折羅(カブトムシ)、末爾羅(クモ)、招杜羅(???)の5体のみ。

八雲 藍の使用するスペルカードに「式神『十二神将の宴』」が存在する。
文字通り、12個の魔法陣から弾幕が放たれるスペル。
藍は「アルティメットブディスト」のような仏教をモチーフにしたスペルを持つため、恐らくこちらも仏教の十二神将と思われる。
ただ、道教由来のスペルも多いため、十二天将の方か、もしくはダブルミーニングの可能性もある。



追記修正は十二の願いを守ってからお願い致します。

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最終更新:2026年10月15日 21:12