クサギカメムシ

登録日:2025/10/26 (日曜日) 19:29:00
更新日:2025/10/26 Sun 22:15:32NEW!
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今日はお天気もいいし、洗濯物日和ね!
よいしょ、お気に入りの服を取り込んで…あら?

モゾモゾ…

「やあ」

――キャーッッ!!?


+ 目次

クサギカメムシとは、カメムシ科クサギカメムシ属に属する昆虫である。
およそ13ミリ前後で、見た目は黒から暗褐色をしており、カメムシの仲間に漏れずとても平べったい体である。
産み付けられる卵は28個でひと塊であり、幼虫は成虫になるまでその周辺を守るようにわさわさと動き回る。すごく…気持ち悪いです…
日本中どこでも、北海道だろうが九州だろうが生息しており、特に寒くなる頃や暖かくなる頃によく見かける、ゴキブリと並ぶ忌々しいアイツである。

■ヤツらの習性


皆さんは冒頭のような出来事に遭遇したことはないだろうか?
洗濯物を取り込み、畳もうとしたとき。または畳み終わったとき。
何か黒くて平べったい塊がうごめいている光景に。

そう…奴らは建物や木に張り付くだけでなく、寒くなると冬を越そうと、温かい人間の住居に侵入してくるのだ。
もちろん、人間や物品にこっそりと張り付いて来ることもある。

涼しいからと言って開け放しにした窓からならなおさら、洗濯物の柔軟剤の匂いにつられて侵入を許してしまうと、さぁ大変。

嫌かもしれないが、どうか我慢して想像してほしい。

ふと、顔を向けたときにに網戸に…

テーブルの上の食べようとした料理の近くに奴らが堂々と居座っている姿を…

ん?何か体がむず痒いなぁ?と視線を自分の体に向けたとき、こいつらがしがみついている姿を…

1日の終わりに入浴しようとして体を洗っているときに、ふと目を壁に向けたら、張り付いている姿を…

あなたはたちまち悲鳴を上げて、ガムテープでも殺虫剤でも何でもいいから使って追い出そうとするだろう。

…しかし奴らはカメムシ。そう、ひとたび刺激を受けると匂いを出して反撃する。
その匂いは強烈の1言で、数多のカメムシの中でもっとも最悪の匂いとも言われる。
こいつらの腹側に匂いを出す器官があり、きゅうりの腐ったような匂いや、パクチーの匂いとも言われるが、もっとわかりやすく言うと、「戸棚にしまったまま忘れた子供の頃の古いクレヨンの匂い」に近いだろうか。その強烈な油臭さは油溶性で、服や物についてしまうと、洗っただけではなかなか落ちない。

そしてその匂いの成分が皮膚に付くとひどい炎症を引き起こすこともある、嫌なおまけ付き。

人様の家に無断で上がり込んでおいて、捕まえられそうになると俺たちは被害者なんだぞ!と言うが如く強烈な匂いを放つ身勝手極まりないこいつらは、立派な衛生害虫であり、良いところは一つもない。紛れもない人類の敵である。
(かつてWikipediaにも、'利益になるものはない'とはっきり書かれていたほど役に立たない、正真正銘の害虫である。)

彼らの凶行はこれだけにとどまらない。
農業を営む方々、特に果樹園などを切り盛りする方々にとっては、非常に忌々しい存在であり、苦労して丹精込めて育てた果物に我がもの顔で張り付き、口器を突き刺してチューチューと汁を吸う。
リンゴモモみかんなどの汁気の多い甘い果物がこいつらは大好物なようで、吸われた果物は中身が減り、減ったところからこいつらの体についた細菌やウイルスによって凸凹と変形したり、最悪カビたり腐ったりして売り物にならなくなってしまう。

ちなみに、口器と聞いて思い出した方々は鋭い。実は夏の風物詩のセミも、実はカメムシに近い仲間である。
ミンミンとうるさいしたまにおしっこもかけてくるし、セミファイナルをくらわせてくるが、はっきり言ってセミのほうが数百倍も可愛いしマシである。

また、こいつらは検疫をすり抜け輸出される自動車や品物に紛れ込み、新天地を目指そうとすることもある。
当然輸入先の国からは上陸されては堪ったものではないので、見つけ次第駆除されるが、中には品物自体がこいつらが付いていたと輸入を拒否されたケースもある。

■対策は?

…かように傍若無人で、我が物顔のこいつらに対して、人類がなすすべは…あるにはある。

実は地面や壁にいるこいつらには塩素スプレーが効く。
匂いを出す前にたっぷりと吹きかけてやれば、やがて息絶える。
塩素がこいつらの体を構成するコンクリート成分を溶かしてくれるのだそうだ。
甲羅がコンクリート成分なのは、先述の匂い成分で自分がやられないようにするためだとも言われている。
ただし、家のフローリングや子供やペットのいるところでは安易に使えないし、吹きかけたものによっては建材や家具などが傷んでしまうので注意。

もちろん掃除機は論外。やつらの芳しいフレグランスを部屋中に撒き散らすことになる。

そこら辺にある大きめのコンクリート片やスコップなどで叩き潰せばもちろん死ぬが、こいつらの破片や体液が飛び散るし潰れたままの死骸は見るに耐えないのでおすすめはしない。
外でやれば雨が降れば流されてはくれるが。

はたまた、素直に殺虫剤を使うか。
しかし乱用は禁物。近頃、殺虫剤を使ってもなかなか死なないしぶとい個体が増えてきた。
商品によっては、効果のないものも。効果対象をよく見よう。

連中はミントの匂いを嫌うとされ、ミントのスプレーや忌避剤を吊るしておくと効果的とされることもある。

なお、これらは見つけてしまったときのその場しのぎ対策であるが、根本的に個体数数を減らすには至っていないのだ。

こいつらの餌となるのは果物の他にも、杉やヒノキの実もある。
花粉症が多発する年には、こいつらも大発生する確率が上がる。
温暖化により生き延びる個体が増えたとも。

かと言って、杉の木をすべて伐採するわけにもいかない…

地球温暖化が進んだ弊害、とも考えられるかもしれない。


みなさまも、身近にできる対策としては、窓を開けない、洗濯物を一度乾燥機にかける、というものもある。
しかし奴らは平べったいその体をフル活用し、なんとかして人家や隙間に入り込もうとする。
たったの2ミリの隙間でも余裕で入れてしまうのだ。完全に隙間をなくそうとするのは難しいかもしれない。
窓や網戸のレールの隙間にこいつらの死骸があると取りにくいことこの上ない。乾燥するとバラバラになるし。

覚えておいてほしい。ひとたび気を緩めれば奴らは用意に入り込んでくるのだ。
どうせ寒くなったからもう虫は動けないだろう、などという甘い思い込みはやつらに一切、通用しない。
弱った心の隙間に入り込む魔物たちのように…いつ、何時でも、確実に、容赦なく忍び込んでくる。
地道に、見つけ次第駆除していくしかないのだ。



追記・修正は、やつらが洗濯物に潜んでいないか、よく確認してからお願いします。



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最終更新:2025年10月26日 22:15