SCP-2316

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SCP-2316 - (2022/03/07 (月) 23:07:53) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2016/12/12 (月) 20:39:46
更新日:2024/04/20 Sat 11:39:35
所要時間:約 10 分で読めます






75年の秋から、僕らは君の帰りを待っている。




監督評議会命令


以下のファイルの記述にはKeterクラス認識災害が含まれており、レベル4/2316機密に指定されています。無許可でのアクセスは禁じられています。



レベル4/2316機密指定

アイテム番号:SCP-2316 オブジェクトクラス:Keter



♒♒ COGNITOHAZARD WARNING ♒♒

彼らは長い間待っていたんだよ。
以下のファイルは異常な認識災害的影響のキャリアである画像やテキストを含みます。あなたは水中の死体に見覚えがありません。このため、このファイルにアクセスする全ての職員は14.5以上の認知抵抗値(Cognitive Resistance Value:CRV)を有すると認定されることが不可欠です。あなたが自動化されたCRVの検証に失敗した場合、落ち着いて動かないようにしてください。サイトの医療スタッフのメンバーが間もなく到着します。


お使いの端末のマイクにゆっくり、はっきりと、次のフレーズを繰り返してください。

私は水中の死体に見覚えがありません。










SCP-2316はシェアード・ワールド「SCP Foundation」に登場するオブジェクトの一つ。
項目名は「Field Trip (校外学習)」。
オブジェクトクラスは堂々の「Keter」。


解説

まず、これはどんなオブジェクトなのか? その前に特別収容プロトコルから述べる。
コイツに対する収容プロトコルは非常に厳重であり、いついかなるケースに置いても直接的な接触は禁じられる。
監視は映像および音声の記録装置を備えた遠隔操作のダミー探査機でのみ実施される、という念の入りようである。
さらにSCP-2316の映像および音声の見直しを実施できるのは、認識災害への曝露に対する適切な処置を取った職員のみと徹底されている。

このオブジェクトが存在する湖は、隔離された状態で周囲にフェンスを構築してあり、コイツに曝露した経験が無く特性についての事前知識も持っていない人物が定期的にパトロールを行うことになっている。あなたは水中の死体に見覚えがありません。この試行済みの隔離措置を突破しようと試みる人物は捕縛し、完全な認知影響スクリーニング検査のためにサイト-33へ連行される。
かてて加えて、SCP-2316が収容されている湖の50m以内に接近した人物は既に死亡した者と見做すというとんでもない手の込みようになっている。


では、次はコイツがどんなオブジェクトなのかを説明していこう。
端的に言うと、コイツはとある湖の水面と水中に出現するティーンエイジャーたちの死体の群れである。
確かに怖いが、死体より怖いものがゴロゴロいるのが財団世界である。
本部が確認しただけでも不死身のクソトカゲとか見たら死ぬシャイガイとか陛下のもっとも高貴なる王冠とか復活したら世界が終わる巨大な怪物とかあなたは水中の死体に見覚えがありません死を運ぶ別世界とか死そのものとかポケモンじゃない方のKeterグマとか。
日本支部でも、認識即破滅の鳥さんとか作家殺しのライオンとか存在を消す報告書とか過去を通じて今も消すブラックホールとかあなたは水中の死体に見覚えがありません過去の戦争に干渉するマシンとか日本そのものとか。


そういうのに比べれば、財団世界ではむしろ怖くない。日本支部にも死体が出現するだけのSCPがある。
が、同じ死体のSCPでもコイツはケタが文字通りに違う。
冒頭のセキュリティとプロトコルを確認すればわかるだろうが、このオブジェクトは総じて面倒な事態を引き起こす財団の頭痛のタネ、認識災害を引き起こすのだ。しかもその強制力と感染力が尋常ではない。


お使いの端末のマイクにゆっくり、はっきりと、次のフレーズを繰り返してください。

私は水中の死体に見覚えがありません。



出現するときは、水面に小さく固まった人間の死体の群れ、という形で出てくる。
身元は一応わかっているが、DNA鑑定が確実ではないため確かなことは言えない状態である。
さらに、複数の実体の群れに見えるが、実際には集合意識で活動する単一の実体ではないか、という意見もある。
俺は彼らが誰だか知ってるよ。彼らの名を知ってる。一人一人、全員の名前を。君だってそうだろう?
ちなみに現在のところ、財団では各実例を個別にわけることはできておらず、あなたは水中の死体に見覚えがありません。
ジェレミア・ファインマン、アーサー・スコット、デニス・クラーク、ハー[認識災害につき除去]

で、コイツらはどんな異常特性を持っているのか?
先ほども述べたが、強力な認識災害である。それも陛下のもっとも高貴なる王冠よりもさらに強く、さらに広範囲に作用するのだ。……ここでいう「広範囲」については諸兄の考えるそれとは意味が異なるが。

この死体の群れを見た時、その人物が実体群のうちいずれかに覚えがある場合、またはかつて特定の団体(データは削除されている)に属していた過去がある場合、その人物は簡単に言うと、死体となっている実体群を昔からの知人・友人だと強く思い込むようになる。
彼らは嘘をついている。彼らは彼らが誰なのか本当はよく分かってる。 認識災害があるのは事実だけれど、それは彼らが助けを求めるための手段でしかない。みんなに自分たちが何者なのか、何者だったのかを知ってもらうための手段なんだ。
そして、件の湖に入る、またはSCP-2316の実例に触れる、といった形でSCP-2316実例との接触を試みた場合、そのアクションが他のSCP-2316実例の出現を引き起こす。あなたは水中の死体に見覚えがありません。追加の実例は認識災害の強化と確信のみを引き起こし、影響者に湖への入水を強制させる。しかも、このようにして湖に入った人物は消失し、今日まで回収されたことはない、という恐ろしい状態である。

つまり、感染型+増殖型のSCPオブジェクトなのだ。そら貫録のKeterである。
いったいどうして君は水中の死体に見覚えがないんだい?

財団側もこの特性上まともな調査が難しいのか、一応それを試みた痕跡として補遺が残されているが、二つあるどちらもデータ削除されている上、片方はエントリ自体が無効になっている。

このSCPオブジェクトは、果たして何のために人を呼び、引きずり込むのか? 認識災害という壁の向こうにあるその真実とは、何なのだろうか。


追記・修正は水中の死体に見覚えがない人にお願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示


この項目の内容は『 クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス 』に従います。

















彼らは君に見てほしくないのさ。でも俺は見てほしい。さあ、下へ。


















……さて。
この記事にも本家記事にも、文中に脈絡なく「あなたは水中の死体に見覚えがありません」としつこく出てきたのは既にお分かりだろう。
しかし、その意図についてはお分かりだろうか? この記事については、元記事の雰囲気を表現するためのものでしかない。しかし本家記事、つまり財団世界の報告書におけるそれは、別の意味を持つ。
つまり、SCP-2316の引き起こす認識災害へのミーム的対策のようなものだ。表向きには。

表があれば、裏がある。
このオブジェクトには何が隠されているのか? そして「校外学習」とはどういう意味なのか?

それは、補遺となっている削除されたインタビュー、そして無効となったエントリに隠されている。







お使いの端末のマイクにゆっくり、はっきりと、次のフレーズを繰り返してください。

私は水中の死体に見覚えがありません。
私は水中の死体に見覚えがあります。





  • 補遺2:無効なエントリ



簡単な解説

このオブジェクトの正体は、1975年の秋、この湖を校外学習で訪れていたバーチウッド高校のあるクラスの生徒たちのなれの果てである。
彼らはこの湖に起きていた何かの犠牲となって水死してしまったが、二人だけ生き残ることになった。
生き残った二人の片方はオブジェクト化したクラスメイトに接触した結果SCP-2316-1へと変貌。強力な認識災害を引き起こす力を手に入れ、最後の一人を探し始めた。
その過程でこの事件の真相を知ったがそれについてはもはや気にしていないらしく、最後の一人の捜索に腐心している。

この変貌した片方の生徒「俺」の力はかなり強く、財団の強固なセキュリティを易々と突破して来るレベルである。
「俺」はそれをすり抜けて真相と自身のメッセージを伝えにきている。

が、その結果この報告書自体が認識災害型のオブジェクトと化してしまい、「俺」のメッセージを読んだ者は「湖に戻って」しまい、SCP-2316に取り込まれてしまう。

無効になった補遺の一つ目では、「湖に入った人物」に対するインタビューが行われている。
恐らく財団の博士か誰かのようだが、見事に認識災害にやられている。しかし重要なのはそこではなく、「湖に戻った人物がまた帰ってきてインタビューに応じている」という部分。

これはつまり、概要の部分にある「オブジェクトに接触すると取り込まれる」というのはウソであり、認識災害のベクターとなって地上に戻り、拡散させる、ということである。
カーク・ロンウッド高校の面々がオブジェクト化したのはこの湖における異常現象の影響と、それを確かめるための財団の実験によるものだが、そもそものSCP-2316は76年ハブに属する別のオブジェクトを作り出そうとして失敗した、残滓のようなものだったと考えられる。ちなみに財団の検証実験はどうやら失敗した模様。

財団は実験が失敗したとしても、それを秘匿しない。秘匿するのは、機密であるか、情報災害・認識災害のベクターである場合である。このケースでは後者であり、インタビュー記録とSCP-2316側からのダイレクトアクセスをまとめて削除している……のだが、お察しの通り向こうから復旧させられてしまっている。

とまあ、こんな感じで曝露者を次から次へと増やし、最後の一人が曝露するまでこれを続けようとしている。当然そんなことになったらCK-クラス待ったなし、そら問答無用のKeterである。






CC BY-SA 3.0に基づく表示



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