SCP-964-JP

登録日:2016/12/05 (月) 00:14:24
更新日:2024/02/03 Sat 07:03:00
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SCP-964-JPはシェアード・ワールド「SCP Foundation」に登場するオブジェクト (SCiP) の一つである。
項目名は『セカイ系ハンター』、オブジェクトクラスは「Keter」。
JPのコードが示す通り、日本支部の管轄である。


◆概要&特別収容プロトコル

このオブジェクトが何なのかというと、一言で言うなら「作家専門の殺し屋」である。
人語を理解し操る一頭のオスライオンであり、ライオンの映像・絵、またはライオンについて書かれた文章を認識すると、中間に障害物がなければそこにジャンプすることが出来る。

ジャンプするとSCP-964-JPの実体は消え、行き先が映像・画像ならば二次元の面を自在に移動でき、文書ならば内容を改変できるようになる。
この「二次元の面」は必ずしも平面である必要はない。たとえば絵にジャンプした場合、テーブルに出てから足を伝い、床から壁を通ってドアの隙間から外へ、ということができる(ライオンの絵が壁や床を滑っているのを想像していただきたい)。

実体がどれほど損傷し、ダメージを受けてもジャンプすれば健康に戻るため、回復のために使用されることもある。
二次元転移した後は自在に姿を変えられるが、実体に戻るには、ライオンの姿になっていること、文章ならばライオンの姿だと記されていることが必要。

さて、コイツは何をするのか? keter分類されたSCiPは、例外こそあれど基本的に「危険の化身」である。
コイツの場合、文字通りに殺すのである。ただし無差別ではなく、ターゲットが明確に定められている。

一つ目はフィクション作家。主に有名・著名な人物を狙って移動するが、途中で活動中のアマチュアに遭遇した場合行きがかりに惨殺することも多い。
ターゲットが無防備になるまで二次元に目立たない姿で潜み続け、実体化して殺す。

二つ目はフィクションの登場人物。
転移した後にアニメやマンガ、映画やラノベなどのワンシーンに入り込むと、そのまま本編に介入。
キャラクターのどれよりも攻撃能力の高い生物に変貌し、全ての登場キャラクターを抹殺するのだ。
殺戮を終えてSCP-964-JPが実体に戻ると、作品の内容が全て登場人物の死体の描写になってしまう。これはひどい。

三つ目はSCPオブジェクト。
オブジェクトのうち、フィクションに介入する、あるいは創造しうるオブジェクトを敵視し攻撃する。
また、仮想空間を作成するオブジェクトにも敵意を示す。

ここから類推されるSCP-964-JPの目標は、人類の文化の深刻な破壊である。
それを達成するため、SCP-964-JPは積極的に収容違反を行おうとしている。現在は特別収容プロトコルとして、実体化した状態で鎖や口枷でガッチガチに拘束されている。
また、担当職員をそそのかして脱走しようとするため、室内は無音に保たれ、音声は遮断されている。

回復などに使うという転移の能力の高度な応用は、財団による収容以後、収容違反を実現するために習得したものと考えられている。
その能力から、収容違反への対処が困難であること、著名な作家が連続で殺害された場合の情報の隠蔽が困難である+できたとしてもコストがかかりすぎる。
というわけでKeterに分類されましたとさ。
とはいえ、創作活動を行っていない財団職員にはそんなに攻撃的ではない。


■補遺

現状収容状態にあるSCP-964-JPだが、一度コイツに対するインタビューが試みられたことがある。
ところが、インタビューが録音されていることに気付いたこのライオンは、

おい、これ、記録してるのか、止めろ! 今すぐ記録を止めろ!

と我を忘れて狂乱。記録するな、と暴れ始めたために鎮静剤と自白剤が投与された。
その後SCP-964-JPは、「ほとんどの物語はな、てめえらが立ってるのと同じような、宇宙の中にある、星の上で起きてんだよ」と前置きしたうえでこう語った。

最初に、物語が終わって、俺は俺だけが止まってないことに気づいた。俺は冒険してきた道を逆に走った、出発したところも突っ切って、ずっと走った。そうしたら町があった、登場した事のない町だ。
そこには登場した事のない人々が住み、図書館には物語に書かれた事のない世界の歴史と、星や宇宙の成り立ちについての学者の考えがあった。でも、その町も、何もかも止まっていた。

次に、俺は外に出て、外から物語を変えられる事に気づいた。俺は1ページ目からその町に居座って、冒険に出ない事にした。だが、俺がいなくても冒険は進められたみたいだった。
俺が前に冒険した時くらいの時間が過ぎると、その町はまた全てが止まった。道を歩いているやつも、商いのやり取りも、子どもの遊びも、みんな、みんな、途中で、メアリー・セレスト号の伝説みたいに、いや、あっちの方がずっとましだ、俺はみんなが、宇宙が止まるのを見ちまったんだ!

どこの物語もそうだったよ!無数の物語の中に、どこにも語られていない世界があって、そこでも時間が進んで、でも、最後にはみんな止まった、止まっちまうんだよ!
二人がキスをして未来へ歩いていこうとしても、ナレーションが戦いは始まったばかりだって言っても、次の瞬間には、みんな止まっちまう! いくつもの宇宙が止まっちまう、いくつも印刷されて、世界中の画面に映されて、いくつも、いくつも、ああ!

とのことだった。
要するにこのライオン自身何らかの物語のキャラクターだったのだが、物語の世界で「THE END」が訪れたにも関わらず自分だけがそのまま動いていることに気付いたのだ。
(「ライオンが仲間キャラクターとして登場する冒険物語」というとまず有名なものが一つ思い当たるが、果たして。)

物語の世界は、背景にどんな設定があろうとも「はじまり」から「おわり」までの時間しか存在しない。
さらに物語の世界は単なる空想ではなく、どこかの宇宙にある星の上で実際に起きており、しかし物語が終わると同時に宇宙全体がストップするのだと。

全てのフィクションがそうだと気付いたこのライオンは、そんなことを繰り返させまいとフィクションと、フィクションを産み出す人々を消し去ろうと暴れていたのだった。

一通りの意見を聞いたところでインタビューは終わったが、記録終了を察知したこのライオンは今度は「記録を止めるな」と暴れ出した。
で、このインタビュー録音を報告書に起こしたところ、末尾から余白の部分がこうなっていた。


いいや、てめえらはどうせ止めるんだ、分かってんだぞ、止める、ああ、止まる、もう止まる、俺が記録されて、俺の記録が、止まる、俺のキャラクターができて、止まる俺の物語ができて、止まる事を知ってる俺が、出られない俺が、ああ、止まる、止まる、今にてめえらが止める、ほら、そら、もうすぐ止まる、宇宙が、ほら、今にも止まる、ほら、そろそろ、ほら、ほら、ほら、



ほ ら 。



THE END



SCP-964-JPは実体であるが、元がフィクション世界の存在であるため、「記録」されるとそちらに存在がコピーされてしまうのだ。本物ではないため、ジャンプのできないコピーとなる。
報告書の最後で暴れていたのと、余白に書き足したのは収容されている実体ではなく「文書に起こされたコピー」の方である。つまり、報告書という「物語」が終わってしまうとコピーのSCP-964-JPも「止まる」から焦っていたのだ。
登場キャラクターにとって「止まる」ことは死に同義。
元記事のインタビュー部分をコピー&ペースト(もしくはページのソースを見るなど)すると、発言の合間合間にこのライオンの切なる叫びが聞こえてくる。




アニヲタ諸兄の中には、「小説家になろう」や「ハーメルン」、あるいはpixivなどで創作小説を投稿した経験のある方もいるだろう。

物語を完結させるのはよいことだ。

だが、果たしてそれは、その世界に生きる者たちにとって本当に幸せなことなのだろうか?

少なくとも、





生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。
生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。
生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。
生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。
生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。
生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。





このライオンにとっては、そうではなかったのだろう。








電子プロトコル964-1: 終了命令文の挿入に成功しました。





CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-964-JP - セカイ系ハンター
by soilence
http://ja.scp-wiki.net/scp-964-jp

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最終更新:2024年02月03日 07:03