SCP-276-JP

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SCP-276-JP - (2017/08/31 (木) 10:42:14) の編集履歴(バックアップ)


登録日: 2016/12/20 Thu 23:32:20
更新日:2024/04/29 Mon 20:41:39
所要時間:約 12 分で読めます




SCP-276-JPはシェアード・ワールド「The SCP Foundation」に登場するオブジェクト(SCiP)のひとつ。JPのコードが示す通り日本支部の管轄である。
オブジェクトクラスはEuclid。収容が不完全なオブジェクトである。
項目名は「ゆるさない」。


概要

コイツが何かというと、数あるオブジェクトの中ではありそうで意外と少ない、マジモンの幽霊である。
しかもただ出てくるだけではない、明確に財団に対して攻撃を仕掛けているのである。つまり財団の敵である。

まず、コイツは東京都のとある駅構内に発現する霊的人型存在である。コイツ自体の姿は、白衣を纏う痩せ細った壮年男性であり、その存在を財団職員(Dクラス含む)以外が知覚することは出来ない。
カメラ等を用いて映像化することは出来るが、その場合でも財団職員のみが姿を視認出来る。干渉は一方通行であり、財団側からの物理的干渉は通り抜けてしまう。

201█年█月14日と同月16日、合わせて財団職員2名が駅のホームから飛び込み自殺を図り死亡するという事案が発生。これが「心霊の手事件A」「心霊の手事件B」である。
死亡した財団職員2名の精神状態は安定状態だったことが、過去に行った財団の定期メンタル診断や死亡した2名に近しい財団職員の聞き込みから明らかになっている。財団は件の駅の構内で何らかの特異条件が発生しているとにらみ、Dクラス職員を用いた調査を実行。最終的にDクラス4名の犠牲を払ったが、これらの調査の結果SCP-276-JPの異常性が判明した。

SCP-276-JPは午後10時から午後12時にかけて件の駅のホームに財団職員が存在している時、電車が到着する数分前に突然駅のホームに発現する。
駅のホーム内に立っている財団職員に近づき、掴む、押す、持ち上げる、引きずるなどの手段を用いて財団職員と電車との接触事故を引き起こそうとする。
この時、SCP-276-JPによって線路へと押し込まれる財団職員を見ている一般人は、財団職員が線路に自然体で自ら近づいているように知覚する。被害者を逆側の力で引っ張ることや障害物でSCP-276-JPの行動を妨害する試みはいずれも失敗し、被害者は例外なく死亡している。

ただ、コイツは一般人に対しての攻撃を行わない。そのため、財団は日本の経済上重要地点である██駅の封鎖や時刻表の変更は行わず、全財団職員に対して「276-JPに関する警告文」を配布するに留まっていた。
これにより、SCP-276-JPの安全な収容、または無効化がなされるまで財団職員は██駅で乗車することは禁止されている。




と、思われていた。




「心霊の手事件A」から21日経過後の午後11時██分、件の駅で一般人の30代の男性が飛び込み自殺により死亡する事件「心霊の手事件C」が発生。駅に設置してある監視カメラから、SCP-276-JPの調査中に死亡したDクラスの職員が確認されると共に新たなSCP-276-JPの特異性質が判明した。


ざっくり言うとコイツは復讐型の地縛霊であり、殺害された被害者はSCP-276-JP-Aとなる。
そして、生前強く憎んでいた人物がその駅を訪れると、大本のSCP-276-JPと似た性質を持ち、同様の手を用いてその人物を殺害するのである。この時、財団職員ではない被害者もSCP-276-JP-Aを知覚する。
タチの悪いことに、この時SCP-276-JP-Aに殺された被害者もまた同様の存在と化す。どうやら根源となるSCP-276-JPが問題のようだが、SCP-276-JP-Aになったと思われる人物の過去から、恨みや因縁のある人物を特定する試みははかどっていない。

犠牲者はどんどん増えており、その内Keterに分類されるのではなかろうか。


補遺

このオブジェクトの出る駅構内を監視しているエージェント・小野からは破壊の要請が幾度となく提出されているが、全て却下されている。

破壊するに値する理由があるのは理解できるが、君の提示する手段で無効化できるとは思えない。君はいちエージェントしての責務を果たすことだけを考えてくれ。君はこれ以上このオブジェクトに対して私情を挟むべきではない。
--██地区担当者

「心霊の手事件B」で死亡した松本研究員は、エージェント・小野の婚約者であったという。

さらに「心霊の手事件C」から2ヶ月後、問題の駅から1キロほど離れた別の駅にSCP-276-JPが出現。
財団に向けて「ゆるさねえよ」と告げて姿を消した。

このSCP-276-JPの正体は、14年前に不祥事を起こして終了された元研究助手であり、その恨みを晴らすために財団職員を攻撃しているようだ。


SCP-276-JP - ゆるさない
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SCP-276-JPの別の駅への出現は、被害の拡大を意味している。
財団が必死でこのオブジェクトの収容方法を模索している中、ある事件が起きた。
エージェント・小野が失踪したのである。彼はSCP-276-JPである元研究助手のデータベースにアクセスして情報を引出し、このようなメッセージを遺して姿を消した。

曰く、

彼女を奪ったあいつが憎い。それ以上に彼女の姿をしたものが誰かを殺めてしまうことに私は堪えることが出来ない。ゆるさない。

と。

その数日後、エージェント・小野はSCP-276-JPによって殺害された。だが、記録された映像ではエージェント・小野は何の抵抗もせず、静かに死を受け入れたようだった。


事態が動いたのはそのすぐ後に起きた「心霊の手事件I」である。これには被害者がいない。
記録された映像では、SCP-276-JPが出現したのち、SCP-276-JP-A5がさらに出現。SCP-276-JPが近づくと、A5は向き直って胸倉をつかみあげた。

SCP-276-JP-A5は、エージェント・小野だった。
正体に気付いたSCP-276-JPは慌てて逃げようとしたが、エージェント・小野は一瞬早く相手の腹をけり上げ、数メートルほど浮かせた。
落下したSCP-276-JPはホームの柱にしがみ付くが、エージェント・小野はそれを引きはがし、線路へと引きずり始めた。

SCP-276-JPはわめきながら暴れ、助けを求めたがエージェント・小野は聞く耳を持たず、ただ一言「ゆるさない」と告げて迫る電車の前にSCP-276-JPを放り出した。


大切な人を奪った亡霊に復讐するために自ら亡霊と化した男は、その本懐を遂げたのである。


この事件の後、SCP-276-JPおよびエージェント・小野以前のSCP-276-JP-Aは出現しなくなった。
代わりに、件の駅の構内にはエージェント・小野が出現するようになったが、彼は外界に対して全くの無反応で、実験にも興味を示さずただいるだけとなっている。
これを受けた財団は事実上このオブジェクトが無力化されたものと判断。
とはいえ、エージェント・小野が亡霊であり、収容が出来ないためにEuclidクラスはそのまま、一日おきに映像を確認して報告するという簡素なプロトコルを適用することになった。



自らSCPと化して敵を討ったエージェント・小野。
彼は今、何を思ってそこにいるのだろうか。



追記・修正はエージェント・小野のことを考えながらお願いします。


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