復讐

登録日:2016/08/07 Sun 23:50:10
更新日:2025/05/01 Thu 07:29:00
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「復讐」とは自分の運命への決着をつけるためにあるッ! いじめるアイツが悪いのか、いじめられた僕が悪いのか? アヴェンジャー カラフルな項目 クエンティン・タランティーノ コメント欄ログ化項目 リベンジ リンチ 不可逆廃棄孔イド 人を呪わば穴二つ 仇討ち 仕返し 制裁 創作 加害者にして被害者 勧善懲悪 単語 原動力 善悪の屑 報復 復習←ではない 復讐 復讐するは我にあり 復讐は蜜より甘い 復讐者 復讐者に憐れみを 復讐鬼 必要悪 必要悪? 怒り 怨み 怨みます 恨み 恨みます 悪意は感染するということだ。 憎しみ 憎しみの連鎖 憎む情熱はいつだって正しい。憎悪の快楽に身を浸せ 憎悪 憤怒 所要時間30分以上の項目 撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ 敵討ち 歴史は繰り返す 殺意 無限ループ 無限ループって怖くね? 環境が生んだバケモノ 生き方 目には目を歯には歯を 私刑 私的制裁 絶対殺すマン 考え方 自力救済 親の仇 言葉 負の連鎖 賛否両論 逆恨み 鬱展開 鬱展開の嵐 鬱燃展開




サスケ…復讐なんてやめとけ


俺はそんな与太話を聞きにきたんじゃねえ! 俺は、お前を、ぶっ殺しにきたんだ!


【復讐というもの】

「復讐」とは恨みを持つ者への仕返し、仇討ちのこと。
それを成そうとする生き様そのものを指すこともある。

辞書的には
復讐[名]
(スル)かたきうちをする。仕返しをする。報復。
―― デジタル大辞泉

復讐という言葉は現実の世界で耳にすることもある。
現代の法律(法治国家)では、復讐は認められていない、というより、「復讐は犯罪を正当化しない」といった方が正しいだろうか。
つまり、結婚・婚約もしていない人物をNTR(もちろん脅迫やレ○プは犯罪なのでNG)したり、転売屋にあの手この手でドラゴンの迷路やらトリスタンやらを買うように誘導して大損させたりすることは、犯罪ではないので合法的な復讐手段になる。
ただし、現代の日本は自力救済を原則として禁止しており、逆に相手に損害を与えたとして民事訴訟に発展し得るケースや、復讐者の行動が違法行為に該当する場合もあるので注意が必要である*1

歴史上の法律ではバビロニアのハンムラビ法典が有名か。
ただ、著名な「目には目を、歯には歯を」の文言は、「やられたらやりかえせ」といった物かと勘違いされがち。
本来の意味は
「倍返しのような過剰な報復や"報復の報復"を禁じ、同等の懲罰にとどめて報復合戦の拡大を防ぐ」こと
すなわち、犯罪に対応する刑罰の限界を定めることがこの法律の目的であり、復讐の連鎖を止める予防線のような物であった。
ちなみにハンムラビ法典は被害者が自由人・平民・奴隷のケースで処分が違っており、「目には目を」の適用は自由人同士だけであった。
身分違いだったりすると解決方法は銀の支払である。

他に馴染みのあるところでは、江戸時代の日本に存在した「仇討ち(敵討ち)」制度がある。
もちろん江戸時代においても殺人は犯罪であり、公権力による処罰の対象であったが、加害者が消息を断った場合などに、主に被害者の親族が一定の手続きを取ることで仇討ちが許可されることになっていた。
こちらも法で定められた制度であり、一定の条件をクリアすれば復讐を遂げることが公的に認められていた例のひとつと言える。
仇討ちを果たすまで家督相続できなかったり俸禄が出ない状態になったりして一旦お家取り潰しにされたりして、復讐心以外にも何年でもかけて果たさねばならない事情があったりすることもある。互いに親族の力を借りて多対多の抗争になったりもした。
もちろん"仇討ちの仇討ち"は禁止されていたほか、許可を得ていない仇討ちに関しては調査の上で明確に「仇討ちである」と証明できない限り普通の殺人として罰せられた。
そして衝撃的な事実として、成功率は良くて1〜2%、親が子の仇を討つことはできないと言う制約もある。

仇討ちのもっとも有名な事件の一つに、主君の浅野に代わり家臣が吉良を討った赤穂事件、いわゆる「忠臣蔵」がある。
しかし、赤穂浪士たちは上記の許可を得ていたわけではない。そもそも浅野に切腹を命じたのは江戸幕府である。
現に仇討とはみなされずその咎で切腹となっており(それでも斬首刑でないだけまだマシだったわけだが)、本事件を「仇討ち」とみなすかどうかは意見の分かれるところである。
当時の人間の中には「如何見ても浅野の恨みに直接関係が無く非戦闘員の茶坊主見習の子供まで殺しているので、極めて悪質な殺人犯として極刑に処すべし」と言う意見を出した者も居た。

歴史上、復讐は認められていたこともあれば否定されたこともあり、有名どころでは魏の文帝などが、復讐禁止令を発している。当人の振舞いは大分陰湿なのだが
復讐は、復讐の連鎖を招き、大集団による軍事衝突にまで発展することさえある。
「復讐を名目として犯罪を正当化する」ということもしばしばある。「これは復讐なんだ」と噓をつく者どころか、被害妄想で本当に復讐だと信じ込むケースさえある。
復讐者の憎しみが単なる冤罪だということもある。
そのため、復讐の許容は社会の治安や個人の人権を脅かす危険性が高い。
中世ヨーロッパの復讐に関するルール「フェーデ」などは、実際に強盗に悪用されていたと言われている。

しかし、国家の治安維持態勢や法制度が十分整っていない国家では、犯罪者への対応を国家が全て引き受けるような余裕はなく、国家のみの処罰では犯罪者を取り逃がし、それはそれで治安を脅かすリスクが高すぎる。
そのため、個人の復讐心を使って治安を守るということも、必要だったのである。
国家的な統制がされた、110番通報すればパトカーですぐに駆け付けてくれる警察が津々浦々に整備されている現代日本の感覚で考えてはいけない。


生物学的な観点で言うと、復讐心と言うのは人間が有する最大の武器の一つと言っても過言では無い。
たとえ、相手を殺したとしても、血縁者や仲間が集団で波状攻撃をかけてくると言う習性は捕食者にとっては不気味極まりないし、個体としての戦闘力が勝っていたとしても集団で手段を選ばず攻撃をかけ続けてくれば身の危険を感じてしまう。
紀元前300年代の動物学者アリストテレスの著作『動物誌』では「真っ当なライオン中途半端な攻撃で逆上させない限り、人間を殺さずにテリトリーから追い払うに留める」と著述している。
ライオンと人間では十数倍のパワーの差が有り、尚且つライオンの方が格闘戦に適した身体構造をしているので、走るのが遅い人間はライオンの絶好の獲物になりそうなのだが、『人間を殺すと仲間が集団で波状攻撃をかけてくる』ので紀元前の時代でも獲物にするにはハイリスクと認識しているのだ。
更に言うと、人間同士の復讐合戦に歯止めをかける為に刑法や裁判官と言うものも生み出されたので、人間の社会を発展させる大きな鍵となった。

復讐心は人間以外の高度な社会性を有する動物も種によっては有していると思われ、ゾウが仲間を殺した人間を覚えていて襲い掛かったり、人間がシャチに材木をぶつけて怪我を負わせたら、群れの仲間が仕返しの為に帰路で待ち伏せていたりといった逸話が存在する。
因みに、ライオン自身もヒョウに赤ん坊が食われたりすると、縄張のパトロール担当の夫の尻を叩いてヒョウ退治に向かわせたり、群の仲間を総動員して嬲り殺しにかかる例も観察されており、復讐心を備えていると考えられる。自分達と思考が近いからこそ、人間の復讐心を厄介視しているのかもしれない。

【類似語など】

「やり返す/仕返しをする」という意味では『報復』という表現もある。
ただ、報復は“されたことをそっくりそのまま返す”という意味合いが強く、復讐とは若干ニュアンスが異なる。
復讐の場合はよりネガティブな印象が強い他、されたこと以上に仕返しする場合もままある。

より前向きなイメージが強い場合、『雪辱』と呼ぶこともある。
(はずかし)めを(そそ)ぐ」で「雪辱」。
例えば「過去の試合で負けた相手に再試合で勝利する」といった場面で「雪辱を果たす」「雪辱戦」などと表現される。
(余談だが、「雪辱を晴らす」は誤用なため注意)

『逆襲』にもやり返しの要素は多々あるが、こちらは「今まで攻められていた側が、一転攻勢に転じて反撃する」というニュアンスが強い。

皮肉を交えた言い回しならば『お礼参り』などと言われることも。
元来は、神仏に祈った内容が成就した際に、文字通り「お礼のために参拝する」ことであった。
だが、いつしか諧謔的に「後でたっぷりお礼してやるぜぇ… ニヤニヤ」なことも「お礼参り」と呼ぶようになった。

英語の表現では revenge(リベンジ)avenge(アヴェンジ) が耳馴染みがあるだろうか。
両者の違いは、“revenge”は「(個人的な動機による)復讐」の意味合いがあり、日本語の「復讐」により近いニュアンスである。
一方、“avenge”は「不正や悪事に対する報復・敵討ち」というニュアンスの違いがある。
なので、「地球への一方的な侵略者に対するチームであり、大切な人を殺された復讐のためのチーム」は「アベンジャーズ」で合っている。
なお、“revenge”は名詞・動詞のいずれでも使用可能だが、“avenge”は動詞の用法しかない。

なお、日本で「リベンジ」というと「再挑戦」「雪辱」のような前向きな意味合いが強いが、上述したように英語の“revenge(リベンジ)”にはポジティブな意味合いは無いため注意。

その他、retaliation(リタリエーション)という語も存在する。
これは上記の物に比べて、より中立的な意味合いが強く、軍事的・外交的な「報復行動」のようなケースで使用されることが多い。

イタリア語のvendetta(ヴェンデッタ)も「復讐」の意味を持つ単語。
英語にも輸入されているのだが、その際に「血で血を洗う抗争」「長期にわたる確執」のような血生臭いニュアンスが付与されてしまっている。


【創作において】

さて、復讐と言うと取り沙汰されやすいのはやはりフィクションの世界であろう。
アニオタ諸君らも日本の作品で一度は復讐というものに触れたことがあるはずだ。

日本の作品における復讐の最大の特徴の一つは、「正義」や「ヒーロー」などのように作品によって捉えられ方が異なること。その解釈は大きく分けて

「復讐は何も生まない、してはいけないこと」
そして、「復讐を成さぬ生き方は選べない、絶対に遂げるべきこと」

ざっくり言うとこの2つ。
いずれも悲劇的な決意のもとその判断を下している場合が多い。

前者は少年誌、後者は青年誌で見る機会が多い…かも。
その結果は復讐を成し遂げたり、結果的には復讐であってもあくまで「一人のヒーロー」として戦ったりとさまざまだが、基本的には復讐されるような悪にはしかるべき罰が降りかかる事が多いだろう。もちろん主役サイドの人物が復讐されるケースもあるが。

とはいえ、違法行為による復讐も、必ずしも全てが取り返しの付かないような、命のやりとりがある事前提の行為に走るものばかりではない。

例えばジャンルとしては「コン・ゲーム」(詐欺もの)と呼ばれる作品だが「百万ドルを取り返せ!」がある。*2

本作は原題 "Not a Penny More, Not a Penny Less"(1ペニーも多くなく、1ペニーも少なくなく)の名の通り、
幽霊会社などを用いて自分達の金を奪った男から、主人公らが気づかれる事なく金を奪い返そうとする物語である。

ニセの画商として偽物の絵を売りつけたり、身分偽装を行ったりとバレれば確実にお縄になる行為はしている。
しかし取り返す側の4人はそれ以外の行為をしていないし、過剰に奪ってもいない。
あくまでやられた分をやり返すに留めている。

こういった類の物語であれば後味も爽やかに、またはコミカルに終わる事もある。(上記定義では報復の類だが)


【少年誌など子供向けでの例】

ドラえもんによく見られる。
いじめられているのび太が報復のため道具を出して貰い、調子に乗る→乗りすぎて自滅orジャイアンたちに逆襲される
は黄金パターン。

また、ドラえもんたちはそのような時に作中ではっきり「ふくしゅう」と言う単語を使っている。
「ほうふく」との違いを説明するのが困難だとかいろいろあるのだろうが。
スネ夫の場合は無敵砲台が有名な例の一つだろう。こちらも「やり返す」としている。


逆に劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲は子供向け作品で英語タイトルでも「strike back」だが明確な復讐もの。

日本語WordNet(英和)での「strike back」の意味

動詞
1
反撃する、そして、特に悪に悪を報いるように、相手と同じ手段で報いる

このため語の意味上は報復にかなり近いニュアンスとも取れるのだが、ミュウツーは自身を生み出したロケット団という集団のみならず
人類全体を憎み、彼らに対する攻撃のため主人公サトシなど無関係な人間も巻き込んでいる。


【復讐を否定し続ける者、反対する者、思い留まったケース】



こちらの考え方は主に「たとえ復讐を遂げても、自分の愛した人は戻らない」「復讐すれば今度は自分が復讐されて、復讐の連鎖が始まってしまう」といった思いに起因する。

パッと思い浮かぶのは鋼の錬金術師NARUTO‐ナルト‐と言ったところか。
特にハガレンは戦争、陰謀により多くの命が失われ様々な人の思いが渦巻いており、復讐にその人生を捧げようと決意したキャラクターも存在していた。だが登場人物の多くは「許さないという思いを忘れず、しかし耐えねばならない」という決断を下した。これらの要素はNARUTOにも共通する部分は多い。

特殊なパターンとしては、

【復讐する気満々だったが、相手の背景・真意・人柄を知って思い入れが出来てしまう】



【奪われた大切なモノを取り戻せば復讐など不用】



【死した後に願いと祈りが生者に届き復讐を思い止まらせる】


【復讐すべき対象がすでに何らかの理由でいなくなっていた】



【自分の力では復讐できないと悟ってしまい、諦める】



【巡り巡って命を狙う理由が、自分の復讐のルーツと関係なくなる】


逞しく前を向こうという生き方。実際復讐には見返りなどなく、深い悲しみに囚われ続けるくらいならば自分の中で折り合いをつけて生きていく方が有意義なのかもしれない。顔を上げて生きていけば新たな幸せを見つけやすいだろう。
前を向くどころか後ろ向きな理由で復讐をやめてるのと、明らかにおかしいのがある?なんのことかな?


【自分に任せろ】


後述の「復讐の代行者」と若干通じるものがあるが、復讐を実行しようとする被害者を「代わりに自分が戦う」と約束する事で、思いとどまらせるというもの。
復讐のために危険を冒したり、犯罪に手を染めたり、自分の家族や仲間を復讐者に育て上げようとする事を阻止する行為である。
大きな力を持たない被害者の説得に使われる事が多いが、場合によっては「そいつはどのみち自分の標的だから下がっててくれ」というような、あっさりした例もある。
ドラマ等で一般的なのは「後の事は我々警察に任せて下さい」というものだろう。
ただし、これによって被害者を思いとどまらせても、結局、加害者を罰する事に失敗した場合、被害者は失望からさらに復讐心を増大させてしまう恐れがある(法や警察が加害者を罰しなかった事から復讐者になった例はかなり多い)ため、この例の使用には、加害者を必ず罰するという強い覚悟と責任が伴う事を忘れてはならない。

また極めて特殊なケースだが、【心情的な復讐を行わずとも、当然の流れ、あるいは復讐者の「真っ当な職務」により対象を死に追いやれる】ケースだって存在する。
「つかまえたー!」「イエーイ!姉さん手伝いますよー!!」
当然この場合は「復讐心」などあろうはずもない。だって何もしなくても普段通りしてれば死に追いやれるのであるし、そういった職務は往々にして…特に創作物では…私情を挟まないのが望ましい。
…これを「結果的に復讐を遂げるからで「やる」選択として行った」と解釈するか、「踏みとどまったうえで合理的な手段を取った」と解釈するかは、視聴者に委ねられるだろう。


「ただいまー」

「お? どうだった? 復讐は」

「しんだ」

「なー。復讐は何も生まねーよなー?」


とはいえ、復讐対象が理不尽な悪であり、しかも加害者に更生も報いも無いという例の場合、
「復讐もできずに泣き寝入りさせられた被害者(被害者が亡くなっている場合は遺族もしくは友人や恋人といった親しい人物)の心が歪み、加害者以上の悪に変貌するという、
最悪の結果を招く場合もあるため、そのような例での復讐を止めるならば、できれば被害者の代わりに加害者を罰する方法を用意する事
(例:加害者の悪事を暴いて法的処罰や社会的制裁を受けるように仕向ける)が望ましいと言える。


また「死んだ本人は復讐を望んでいないのでは」という思いから復讐を否定する例もあるが、これは個人の性格や状況により異なり、
後で調べたら本人は復讐を望んでいた事が判明した」という例もあるため、本人が復讐を望んでいない事が明確にされない限り、あまり説得力のある復讐否定とは見なされない。というより、大抵の場合は「復讐を望んでいるが、その為に誰かが不幸になるのは望まない」というのがほとんど。
ただし瀕死の状態で「復讐はやめておけ」と遺言されている場合もあったりする。忍たま乱太郎の土井先生とか。(元ネタは浄土宗の開祖法然上人)


ちなみに、復讐心故に殺人鬼になったキャラ等に見られる「加害者と同じ種族や職業の者全てを復讐対象にする」(例:戦争で家族を敵国の人間に殺された事で、敵国の人間全てに復讐しようとする)や、
怪奇系作品の悪霊等に見られる「加害者の血を引く者まで復讐対象にする」といった、「加害者と共通点を持つ存在全てを復讐対象にする」ものは、
復讐の範囲が広すぎる上に、罪も無いのに加害者と共通点があるという理由だけで狙われる人が出るのは理不尽でしかないため、全面的に否定される。
これらの例の中には、後述する、復讐達成後に何をして良いのか分からなくなった結果、復讐の範囲を広げてさらに復讐を続けるようになった者や、復讐を続けるうちにそれが一種の快楽となり、手段と目的が入れ替わって、復讐の名目で人を狙うようになった者も存在する。
ただし、加害者が悪の組織の一員である等、組織ぐるみで悪事を行っている場合は、組織自体を止めなければ同じような被害者が増える恐れがあるため、この限りではない。


【復讐を肯定できる者、賛成する者、実行したケース】


こちらは「愛する者を殺したものが生きているなど許せない」「復讐こそが自分の生きる意味である」というキャラが多い。最近はこちらの作品観を持ったものが多いかもしれない。復讐鬼などと呼ばれることも。

復讐は悪とされるパターンは多いが、ガン×ソード GUN SWORDニンジャスレイヤーウロボロスなど復讐劇そのものを描いた作品もある。
古い所で言えば、忠臣蔵もある種の復讐劇である。
そういった作品の復讐者は、傾向として苛烈な人生を送り、周りと関わりを必要以上に持とうとしない、そしてブレないといったことが挙げられる。

中国の故事成語に言う「臥薪嘗胆」もそうだが、時代が違う場合には戦争レベルの報復が否とはされない事がある。
臥薪嘗胆は復讐の連鎖の実例でもあるが。(臥薪=薪の痛みで屈辱を思い出していた人間の攻撃でやられた者が嘗胆=胆の苦みで屈辱を忘れず打ち破った)
なお勝った方の越王勾践は、讒言(ウソの悪口、つまりまともな官僚が横領やらかしてるとか)を信じ込むようになり国を衰退させた。

「ば~~~~~~~~~っかじゃねえの!?」で有名なハルパゴスの場合、このシーンは「息子の肉を調理して食わせた王のいる国を滅ぼした」時のシーン。
続く行動は「息子の肉がうまいかって……?」と泣き、ヘドを捕縛された王に吐きかけている。
つまりお前が喰わせた肉は今返してやったよ、みたいな。ババ汁食わされた爺さんが狸にやってもおかしくないレベルのやつ。
リアルでは「奴隷に堕ちたな、どう思う?」と聞いたらしい。王はキレ散らかしたそうな。ちなみに王の死因は牢屋での餓死という皮肉というか嫌がらせ指数の高さがすごい感じ。

ちなみに史実でのハルパゴスはペルシアの将として大活躍、特にひでえ死にざまを晒したという記録はない。復讐も復讐後の人生も成功者の部類。



たとえ周りがどうであろうと自分に従うという生き方。自分のアイデンティティを奪われて平気な人など存在しない。何にもならない、また悲しみが生まれる、そんな客観的な物言いで自分の信念を曲げることは少なくとも彼らにはできないのだ。


またこれは主にヒーロー作品に多い例であるが、復讐対象そのものが「滅ぼすべき悪」である場合、復讐=「悪を滅ぼして人々を守る」に繋がるため、肯定されやすい。
ただし、これには「仲間や人々を守る事を最優先とし、復讐は二の次にする」「自分のような犠牲者/被害者をこれ以上増やさない」といった強靭な意志が要求される。
たとえ目の前に復讐対象がいたとしても、誰かを守るために「『今は』お前の相手をしている暇はない」と言えるようになれば合格と言える。
第3勢力やライバルキャラに多い「復讐のために無関係な人々を巻き込む事を省みない」という例は、復讐そのものは肯定されたとしても、その手段が否定される。

ちなみにギャグだがこんな言葉もある
「これで分かったろう…、復讐はめちゃくちゃスッキリするが、憎しみしか生まないんだ!(グッ」
…まぁ身も蓋もないがある意味真理を突いてなくもない。

【復讐方法がプレイヤーの手に委ねられる】

何かしらの理由で復讐することがテーマのゲームがあるとして、そのゲームの主人公は敵に対して並々ならぬ憎悪を抱いている。
…抱いているのだが、その方法はプレイヤーの手に委ねられるというケースがある。
例えば、Dishonoredというゲームでは、相手を派手にぶっ殺すことは可能であるのだが、相手の社会的信頼を失墜させる、国外に身柄を売り払う、決して許しはしないが、あえて見逃すといった形で復讐を成就させることができる。
師父-SIFU-というゲームでは、相手を殺すのとは別に、「舐めプをかまして相手の心をへし折る」という形で相手を社会的に殺すことが可能になっている。
絶体絶命都市2では、選択肢次第でいじめっ子を助ける事も復讐する事も……


【復讐心はこじれるもの】

悲しみを耐える生き方。復讐を果たす生き方。そのどちらも自分で考えぬき出した結論ならば(法的問題は置いといて)正しいのだろう。
そしていずれの場合にも心に傷は残り続ける。新しい愛すべきものを見つけても、復讐を完全達成できたとしても傷すべてが癒える事はない
そして、行き着く果てはもしかしたら…


















































「誰しもが一度や二度…誰かに復讐を誓ったことがあるものです…。
しかし逆に――復讐される側になると、これはもうたまりません!
なぜなら――相手があきらめるか復讐を完了するかしないと…こっちの都合では終わらないからです!!
大変ですよ!!」





【復讐と冤罪】


復讐に走るにはそれだけの根拠があるものだが、実はその根拠は「復讐者が考えている真実」でしかない場合も多い。「本当に復讐すべき存在」が別にいるならばどうなるか…?
そうでない場合も結果として、誤解から筋違いな復讐心が生まれ、無関係、あるいは関係はあっても何も悪くない人物が復讐の対象とされる例もある。所謂「逆恨み」である。

肉親を殺した奴が許せないと思って復讐を計画しやり遂げたが、実際はただの事故だった。実は真犯人は別にいた。自殺だった。
肉親こそ復讐者を害そうとしており、復讐者を守ろうとしてやむを得ず肉親を殺害していた。
悪事に走った肉親に殺されそうになったために正当防衛で殺害した。肉親が有害な存在と化した際には殺害するようにと肉親自身に頼まれていた。
肉親のための行為を台無しにした奴に復讐したら、実は犯人は罪を後悔して親族に償おうとしていた。(知っていたらやらなかった)
なんて辺りが王道パターンである。
例えば最初のヒュンケルに関しては『(育ての)親の仇だと思い込んでいた人物は親を殺しておらず、親は別人によって殺されていた』という典型例である。*4

特に推理物では、しばしば復讐が達成されてから真実が明らかになり、復讐者は自分の復讐心の誤りに気付かされる。
こうなると、復讐者はよほど性根が腐っているか、凝り固まった信念を抱いているのでない限り、激しい後悔に襲われることになる。
特に殺人事件ともなれば取り返しがつかず、間違った復讐心を抱かされたことに同情されることはあっても、勝手な思い込みで他者を害した罪が許されることはまずない。
復讐者はただの凶悪犯罪者となり、復讐対象にされた何の罪もない人物が被害者になる。時には本当に復讐すべき人物だけが野放しにされることもある。
そうなれば、後味の悪さは最悪である。
また「正当防衛」「本人に頼まれていた」「殺した事を償おうとしていた」といったパターンの場合、復讐者が「肉親を殺した事には変わりない」と主張して復讐を止めようとしない「逆恨み」になる例も見られる。

殺人のように取り返しがつかない犯罪でなければ、事件をきっかけに誤解が解け、めでたしめでたしで終わるケースや、
事件をきっかけに警察が動き出し、真の悪は司法によって断罪されると言うそれなりに救いのある事件もある。
その場合、最初から警察に任せた方が全然よかったことが多いわけだが、時に警察の担当者が無能だったり証拠不十分などで法的に警察が対応できず、
復讐に関連するいざこざの中でやっと警察が動けるようになる事件というのも確かにあるのだ。



【復讐の代行者】


必殺シリーズゴルゴ13CITY HUNTERの業務の一部、怨み屋地獄少女、曽祢まさこの『呪いのシリーズ』など。
彼らは(一部例外な面はあるが)基本的に第三者の依頼を許にビジネスとしての復讐(報復に近い部分もある)を請け負っている。

警察でもなく、被害者でもないが違法行為によって(地獄少女はそもそも人間の法とか以前)加害者への復讐を行う存在。
そうした「裏世界のプロ」を描く作品もまた存在している。

それぞれの違いを挙げると

  • 地獄少女
人を呪わば穴二つ。復讐対象は生きたまま地獄へと流されるが、依頼者も死後は地獄に落とされる

  • 怨み屋
項目上部の社会的抹殺にあるように、絶対殺す的なものでもない。基本インガオホーな。
悪事が過ぎたりメンバーに関係がある組織だと感情的に強く出る場面はなくもない。

恨み屋と似たような形だが、こちらは代行する本人もまた謂れのない悪意によって踏み躙られ復讐の道に堕ちた過去があるため「凄惨な拷問で被害者と同じ絶望を体験させてから殺す」拷問殺人を基本としている。
状況によっては加害者をあえて殺さずに生かしておく場合もあるが、その場合は「生き地獄」に追い込んでいたり「自暴自棄で死を望んでいる」など生かしておいたほうが苦しむ場合に限る。
また、同作に登場する「朝食会(ブレックファストクラブ)」という組織は、対象の捕獲・道具の準備・アリバイ工作などで「復讐のお膳立て」をするのみで復讐自体はあくまで本人に行わせるという特殊なタイプの復讐屋。

  • 拷問ソムリエ
なんの落ち度もないにもかかわらず家族、恋人、親友といった大切な人を惨たらしく殺され、なおかつ犯人が裁きを受けないことに絶望した人々の依頼を受けて復讐を代行する。
上記の二つと似ているが、社会的抹殺や生かして地獄を見せることがある前者と違って拷問ソムリエの場合は殺害一択。
それも残虐な方法で地獄の苦しみを味あわせながら殺すことをポリシーとする。(曰く「楽な死など許さない」)
また、前者二つの場合は標的が海外に逃げた場合どうなるかは前例がないため不明なのだが、拷問ソムリエの場合は海外の同業者と協力してどこまでも標的を追いかけていき、捕縛する。(曰く「どこにいようと逃さない」「空が繋がっている限り見つけ出す」)
怨み屋が数百万~数千万の現金、鴨ノ目武が「○○三ヶ月分」*5を依頼料として貰うのに対し、拷問ソムリエの場合は依頼料の言及がないためどうなっているのか不明。
お金を持っていなさそうなホームレスの依頼を受けたこともあるので依頼料を取らない可能性もあるが、その場合は資金調達をどうしているのか気になるところである。

また同シリーズにて登場する「ナツメ金融」では悪人に騙されたり利用されたりした依頼者が借金をしにきた場合、「被害者が外道に金を貸している」と看做して「被害者から債権を買い取り、代理で取り立てる」という復讐代行に似たやり方を行っている。
この場合、利子が十日で2割(トニ)というナツメ金融での設定上外道から取り立てる金は法外な金額となるのに加えて「貸した金は鬼になってでも取り立てる」という鉄の掟から「死なない程度に臓器を抜いた後に、生命保険や海難保険を掛けて事故死させる」といった熾烈な手段で金を強引に回収するため、ターゲットとなった外道は文字通りの地獄を見ることとなる。
ただし法外な借金を全額返済したり、足りない分を被害者の要求を呑むことによって埋め合わせることもあるため必ずしも命までとるという訳ではない。*6


  • 必殺シリーズ
基本的に依頼者は弱者で、その依頼者が強者によって理不尽な死を遂げた事への怒りから
依頼料を中村主水など主人公が自腹で支払ってメンバーを動かし加害者を攻撃するなどのケースが複数見られる。
つまり義憤的要素や生前の依頼者の意思はあれど、ビジネスとしては依頼者との契約成立が絶対条件ではない。

逆に依頼者がうさんくさいと思ったら裏を取り、復讐者側に問題があることなどが発覚するケースがある。
ちなみに、対象を必ず殺害するわけではない。(少数だが、社会的抹殺などを行う例も実はある)


  • ゴルゴ、冴羽
基本的に「銃などを用いた非合法な武力の提供者」というだけなので、余りメインではない。
護衛依頼などの過程で返り討ちにするケースもあるので、積極的に対象殺害を行うケースはたまにあるくらい。

ただし無感情にビジネスライクな処理だけをしてはいかず、時には依頼料に対する採算などを無視した行動を起こす描写もある。
性質上、依頼者の生存率は(ゴルゴでも必殺や地獄少女よりは比較的)高い。特にシティーハンターでは生存率も高いしハッピーエンドになっている事も珍しくはない。

  • 呪いのシリーズ
依頼を受ければ逆恨みでも引き受け標的を呪殺するが、代償として依頼人は寿命を10年分失う。
そのため依頼が叶った後寿命切れで他界したケースや、寿命不足で断られたケースもある。


シティーハンターは主に立場の弱い美女が依頼に絡む少年漫画なので、復讐対象は場合によると殺さないと次に依頼者らに害を及ぼす可能性がある。
(ヒロインの香自身も、兄が死んで主人公リョウの元に身を寄せた理由は「兄が犯罪組織によって殺害された」ため)
そうした点もあって「復讐の依頼により復讐者も不幸になる、凄惨な死や自殺を遂げる」といったことは余りない。むしろプラスになり、爽やかに終わったり。

一方で地獄少女や必殺シリーズ(主に後期)では、依頼者の死亡率・不幸率は半端ではない。
が、地獄少女が「人を呪わば…」であるのに対して主水らは依頼成立前の時点で依頼者が惨殺され、
「ゆるせねえ あいつらゆるせねえ!」的な視聴者、そして自身らの抱いた感情に応じる形で依頼者の死後に人を殺す事も多い。
このため必ずしも復讐心=悪とはなっておらず、むしろ理不尽な権力や暴力を振るう加害者こそ罰せられて当然、因果応報であるという印象が強くなっている。



【物の怪による超法規的措置~人間の法なぞ己には何の関係もない!~】


「人間ではないものの復讐行動」に関して、人間の法や倫理規範が云々という話が通じるかと言うと微妙なところである。

地獄少女の"業務"に対して、人間が「逮捕」や「裁判」が出来るだろうか?「呪い」といった超常現象を認定するか否かは、実は法的にも問題になる。
(現実的な推理モノで表面上呪殺しているパターンでは、トリックを暴き殺傷行為であると明示するまで裁きようがないという話が見受けられる)


妖怪を描いた漫画うしおととらでは、妖怪・鎌鼬三兄妹の一人が人間たちを惨殺しながら「人間は勝手に自分たちの住処を奪っていく」と
山野を住宅地にしていく人間に対して怒りを露わにしている。
これに対して幼い頃に大人の都合で好きなものを失った主人公も「つらかったろうなあ」と感情そのものには共感している。
人を殺す事に対して共感も肯定もしていないが、罪を償え滅びろという強硬な態度ではない。「きっと別天地があるだろう」と、同情的に殺害を止めようとしている。

もし人間同士であれば土地所有権は法律や契約によって定義されるが、それは人が勝手にやっていることである。
そもそも人間の法体系の外で生きる妖怪の居住権は…


細野不二彦の霊能モノ「ジャッジ」では、人間の有害物質不法投棄により死んだ魚などの動物霊が人間を怨み、
その怨念を晴らすために主人公が”指定されていない自然のある場所”へ投棄している違法業者への攻撃を行う。

しかし、ダイオキシン等が出るような物質を用いて便利な生活をしているのは人間なのだと業者の社長側が批判しており、事実として社会システムの末端に過ぎない廃棄物処理業者というのは復讐相手として正しいか否か?といった問題も示されている。
とはいえ業者自体は不法に安く処理するために社員に犯罪を強いたりしていたので、社長は処されたが。


ちなみに同作において上記のように動物霊が登場するのは稀なケースで、通常は主人公が怨みを聞き届けるのは人間の霊。
ずさんな工事によって死んだ子供や、効果的な薬剤が利権のため握り潰されたせいで苦しみ死んだ患者などが、
地縛霊となってしまっているのを成仏させるため加害(上の場合は工事業者や利権の為に動いた医者)者を攻撃している。

「死んだ人間は全力で復讐を望んでいるんだよなぁ…。」

そしてそれが果たされれば依頼者は綺麗に成仏でき、そうでなければ地上に苦しんで死んだ時の姿で縛られ、泣き暮らすという死体蹴りというか追い打ち状態。そのため悪人を慈悲心で見逃す霊はいない。*7
ただし、自分が成仏できない理由は復讐心だと思っていたが、復讐を果たしても成仏できないなどの理由で自分の復讐以外の本当の願いに気付くといったケースはある。

上位的な物の怪が復讐心を抱いた人間を焚き付けて、コンビを組むケースもある。ただ、その物の怪は大抵が人間の相棒を上から目線、
最悪自分の本来の目的の為の駒程度にしか見てないケースが多い。反面、人間側の思想があまりにも陰性・陰険・陰湿で行動・言動がえげつない場合、
「人間って聞いていたより深すぎる…」等と感性の段違いさにドン引きしつつも、それとなく疑問を呈したり遠回しに諭したりする人間側の良心役を担う存在もいる。
ただその善意すら裏目に出て人間に振り回され、最悪物の怪が音を上げるケースも少なくない。

中には自身の記憶が半壊状態なせいで本来恨むべき加害者の事がどっか行ってしまい、少女人形に死者の復讐に助力し続けることが復讐だと薦められ実行した男もいる。

果ては人間が人間をやめて、別種族に転生してやりたい放題なんてこともある。

このように心理的構造・認識・法的立場などがハナから現生人類と無関係な存在の「復讐」は、創作上でも人類間の復讐エピソードとは違った色彩を持っている。

【人間以外に復讐する場合】


これとは逆に、人間「が」妖怪「に」復讐するなどの場合、こちらもまた法的・倫理的問題にはならない可能性がある。
うしおととらの紅煉は元人間であった存在が心底からの邪悪さをもって魂を削っていった結果妖怪となり、人を殺し喰らい楽しむ存在となった。
彼に対する復讐が遂げられた時、復讐を遂げた人物はめちゃくちゃスッキリして妻子の元へと旅立っていった。

「あくまをころしてへいきなの?(クッソ悪い悪魔)」
「うん(バァン)」

これやったら人としてどうなの?と思う人はどれだけいるだろうか?
上記は人間の変化・転生体に近いが、一切人間と関係ない異界から来た悪魔を討っても人界を守ったと評されるだけでお咎めなしどころか表彰される……そんな展開だってありうるだろう。

鬼滅の刃における鬼殺隊の面々の中には、元は人間であった鬼に親や仲間を殺されたという理由で鬼への復讐心を抱いている隊員も存在する。
そして鬼になった時点で鬼は数少ない例外を除いて人を食い殺すことを何とも思わなくなる……
という理由もあって鬼に対する復讐心自体を咎められる描写はない。
流石に復讐を優先させるあまりに周囲の被害を鑑みない、とまでなると咎められていたが。

「歴史改竄術式の暴走により、人類は新宿区を残し絶滅した。君も、家族も、人類史にその痕跡すら無く、消滅したのだ。君は、それを赦せるか」をキャッチコピーとするPBW『チェインパラドクス』の敵である異種族クロノヴェーダはほぼ全てが真正の鬼畜外道揃いであり、新宿区以外の大地を歴史ごと奪い都合のいい歴史であるディヴィジョンと呼ばれる世界で人間を虐げている
当作品におけるPC(主人公)であるディアボロスは現代の時間軸にいた者は新宿区にいた事で消滅から逃れるも、新宿区以外の大地と人類が抹消された事で新宿区にいなかった大切な人と日常を奪われている。
ディヴィジョンにてクロノヴェーダに反抗した者に至ってはほぼ全員がクロノヴェーダに惨敗し、殺害されて新宿区で蘇るという凄絶な過去を有している。
そんな彼ら/彼女らは『失われた世界を取り戻せる唯一の希望』として新宿区にいた事で歴史改竄による人類絶滅から生き残った人々から大々的に支援を受ける程である。

リアルに言うなら熊に家族を食い殺されたので猟師となり、熊を合法的に射殺したらそれは悪い事なのか?
家族を食った人食い熊だけを殺すなどする分において違法でも何でもない上に報復など別に他の熊は考えないかも知れない。
(動物でもゾウあたりは家族の死を認識して怒る可能性があるらしいが)

サメ映画の人食いザメなども最後には殺されるケースがあるが、殺した主人公側が手を取り合って喜んでも法的・倫理的に対人の復讐に比べれば問題ははるかに少ない。
人間以外「に」対する復讐は、やりようによっては純粋なエンターテインメントで済む可能性もあったりはする。

ましてや愛する者を人外の手によって奪われた人外がその人外に対して復讐を行う場合、そこに人の法が介在する余地は存在しないだろう。

【復讐の代償と復讐の連鎖】


さて、ここまで復讐について散々説明してきたが、こういうケースを見たことはないだろうか。

復讐者「ついに見つけたぞ、父の敵め…覚悟しろ!」
仇の子供「やめてーーっ!お、お父さんを殺さないで!
仇「子供がいたとは知らなんだ…罪はいつか必ず償う、だが私の子が一人前になるまで見逃してくれ!頼む…!」

親の仇ではあるが、何も知らない子供にとっては良き親でもあった場合。
誰だって見知らぬ人が突然「親の仇」と叫んで親に襲いかかったら当然止めようとするだろう。
「身勝手なことを言いやがって!」とここで手を下せばその子供が自分と同じ悲しみを背負い、
「…怖がらせてすまない」と見逃せば子供も悲しまずに済むだろうが、過去の自分が受けた悲しみは晴れない。また、無垢な子供がいるといってももちろん罪が許される理由にはならない。
「罪だけは償ってもらう」と司法に突き出しても良いが、それでも結局子供は親を失い、自分と同じ…否、下手をすれば無辜の被害者より辛い孤独や苦しみを味わうかもしれない。
「ならばお前の子供も仇だ!」と子供を手に掛けようものなら、間違いなくその自分はただの鬼であり、傍から見れば何も罪を犯していない子供を手にかけた血も涙もない悪魔にも映ってしまう。
「親を失った復讐心を晴らせる」と「親を失うかもしれない子供を救える」の板挟み…ここで即見逃せる聖人などほんの一握りかもしれないが、仇と同じことをして果たして自分の気は本当に晴れるのだろうか……?
結局、自分もまた誰かに仇と恨まれ、世間からも憎まれるだろう「鬼」や「悪魔」でしかないのだろうか……?

それでも仇を討つ選択を選び、復讐を達成した場合もその後穏やかに暮らせるとは限らない。
寧ろその一件が顕にされて自分も犯罪者となって追われる身になってしまうか、復讐相手にその子供の様な家族がいた場合はその家族の恨みを買わないわけがなく
復讐相手の家族によってさらに復讐されて殺されてしまうというケースすらある。

とりわけ後者はガンダムシリーズで度々復讐の連鎖というテーマとして取り上げられている。
また、復讐を果たした本人にその結果を受け止める覚悟があったとしても(忠臣蔵の赤穂浪士が「自分たちの行い=重罪」と理解し自首した等)、家族や恩人など、関係者にまで大きな迷惑がかかることもある。

ナルトの雷影は「ワシ達はサスケを始末する、その後お前が踏み止まれ!!」は一つの解決策と言えなくないが、その雷影も白眼の件で「かつてアナタが日向の白眼を狙いやった事は木ノ葉では何も解決していない戦争の火種をつくった雲側に対し木ノ葉は血の涙をのんで戦争を回避した尊い犠牲の上にアナタ方は存在している事を忘れないでもらいたい」と指摘されている。

復讐という目的を達成できたから後は穏やかに暮らせる?いや甘い。

直接復讐したい相手が既にこの世の者ではなくなっていたことが判明した場合*8は、話が穏やかに終わるケースが多い*9
復讐は果たしたが仲間・地位・財産を失ってしまうケースすら、まだ生温い。
酷くなれば上で挙げたケースのように相手の命を奪う復讐をしてしまったが為に投獄されたり自らも命を奪われてしまう等悲惨な末路を
迎えてしまう事もあり、仇を討つ等で復讐を成功させたからといってメデタシメデタシ、となるとは限らない。
そして当然だが、因果というものは相手だけでなく自分にも返ってくるものであり、復讐するという事は復讐者やその家族・友人等の無念を晴らせるかもしれないが
それは同時に復讐された加害者やその家族等の恨みや怨念を死ぬまで背負う事も意味しており、相手を苦しめた分が自分に返ってきてもおかしくなく、下手をすれば復讐者が大切にしている者が狙われることだってあり得るのだ。
だがそれも承知の上で復讐を実行せずにはいられない者もいる…それが復讐なのだから…

復讐をテーマにした作品ではそうした現実を描く例もあり、やられたからやり返し、やったからやり返され、
殺されたから殺し返し、殺したから殺し返されるという負の連鎖(俗に言う無限ループか)を描く事で視聴者へ復讐する事の虚しさを伝えるものもある。

一族郎党皆殺しにして復讐の連鎖を断つべきところを、ついつい仏心を出したばかりに自分や一族が殺されるなんて事例も古くは源平合戦を筆頭に歴史上結構ある。

また、創作においてたまにみられるケースだが上記のようにならないようにと
心を鬼にして幼子をも手に掛け、一族郎党皆殺しにして復讐の連鎖を断ったつもりが今度は
皆殺しにされた一族と関係の深かった別の一族の者(皆殺しにされたのは実は宗家で分家が生き残っていたパターンや皆殺しにされた一族の者に恋人がいてその仇討ちというパターンが多いか)が
仇を取らんとばかりに復讐者へ襲い掛かるというケースもある。

結局のところ誰の恨みも買わない復讐というのは意外に難しいということなのである。



【読者・視聴者から見た復讐】

読者・視聴者といった傍観者の視点で復讐を見る場合、復讐を肯定する条件として、以下の状況が揃う事が挙げられる。

  • 残忍な仕打ちに遭った被害者である
  • 加害者は後悔の念もなければ更生もしていない
  • 司法が頼りにならない
  • 加害者が制裁されて惜しむ者がいない
  • 加害者をそのままにしておくと、悪事を繰り返して被害者をさらに増やす恐れがある

ただし復讐の手段に関しては、これに「無関係な人々をむやみに巻き込まない」という条件が追加される。


復讐否定の理由としては「復讐達成後に復讐者の人生が崩壊するのではないか」という指摘もある。
復讐のために犯罪に手を出した結果、社会から犯罪者として扱われる事になったり、復讐のために全てを投げ出した結果、達成後に何もできなくなってしまう*10という可能性である。


これは復讐肯定を前提とした話であるが、最も理想的な復讐というものがあるとすれば、それは「無関係な人々を巻き込まずに、理不尽な加害者にそれ相応の罰を与え、達成後に自分の受けた被害を相殺できるほどの幸福を手に入れる」という事であろう。
ただし、合法性にこだわるのであれば罰が合法的なものに制限される等、話はいくらか変わってくるし(違法性を完全否定する事で復讐否定になり、理想的な復讐を語る前提から外れる事もある*11)、前述の通り、復讐自体は何かを生み出すものではないため*12、そのような都合の良い結果に行き着いた復讐者は少ない。

加害者、より具体的には「責任の所在」がなんなのかも重要である。
例えば子供のいじめの加害者がいるとしよう。復讐者はいじめっこをターゲットにしがちだが、子供は本来少年法に守られる未熟な存在である。
いじめを放置していた大人やいじめを産む社会システムといった外部の要因を全て無視し、いじめっこのみを復讐の対象とすることは、怒りをぶつけやすくてスッキリはするだろうが、本当に理想的な復讐と言えるのだろうか?

「死者は蘇らない」「復讐は犯罪だ」という意見に対し、「死者や法律ではなく自分が納得できるかが大事」として「復讐を肯定する」ような意見はよく見られるが、
実際には復讐肯定には上に挙げたような暗黙の前提があり、要約すると「司法で裁けない悪を私刑で排除する」というダークヒーローの正義であることが多く、
「納得するため」でも矮小な動機による無差別テロ攻撃などの 復讐全般を肯定しているわけではない のは留意する必要があるだろう。

彼らの話をよく聞いて突き詰めると「復讐肯定派」が実際に肯定しているのは「復讐」ではなく「法で裁けない悪の排除」だったりして論点がズレていたりする。
敵が社会では裁けない悪人なら復讐して正義?それは「復讐そのもの可否」とは芯がズレてる話ですね。だってそんな行為は復讐者バットマンじゃなくて義憤の人スーパーマンがやっても「正義」でしょう?
元を正せば「復讐反対派」も「死者は蘇らないし、死人が喜ばないから復讐はダメ」などと論点が妙だったりするので(犯罪だからダメ、と言えば「復讐は納得するためにやる」という反論は来ないだろう)
復讐議論は論点をどこに置くかきちんとしないと明後日の方向に行きがち。
「復讐と八つ当たりは違う」と語る者もいるが…自分が納得するために復讐する者にとって、他人に自らの行為が八つ当たりか復讐か勝手に判断されることほど納得できないことはないだろう。

「相手が復讐されるに値する極悪人で、無関係な人間に迷惑を掛けない復讐ならOK」?
その「社会正義に則った復讐のみ許容される」という理屈は「自分がスッキリするから復讐する」という理屈とは完全に真逆ですよね?


【復讐論まとめ~「動機」の良し悪しと「行為」の良し悪しを一緒くたにしてはいけない】

なぜこんな復讐論がややこしいことになっているのかというと、
復讐が「感情」や「動機」や「行為」と混じり合っている言葉で、定義が曖昧なまま各々が「復讐」について語っているからか。
自分の仇でもないのに自ら法を破り人を恨み傷つけようとする加害者、法と仇の全てを破滅させてまで恨みを晴らそうとする被害者、人情故に厳罰も復讐の連鎖も承知で、自ら復讐劇の加害者になろうとする者……
人として誰が正しいか、どこで止めるべきか、思い留まれなかった者を否定して良いのか、誰かが感情を圧し殺し法を守るまで連鎖は止まらないのか。それすらも明確な答えは未だに出ていない。

復讐とは「恨みを持つ者へ仕返し、仇討ちをすること」だが、仕返し行為には裁判を起こすなどの合法的な報復から、違法な私刑、相手の家族を狙う、相手と同じ国の人間を殺すなど色々ある。
典型的な復讐は仇の殺害だが、殺人に関する善悪すら時代や状況によって違う。
のび太ジャイアンに反撃するのも復讐である。スポーツマンが試合で負けた相手に勝とうと努力するのも復讐だろう。
恨みを忘れて幸せに暮らすのも一種の復讐であると言えなくもない。

「復讐とはなんなのか」の共通認識がない以上、「復讐の善悪」を語れるはずもない。

"復讐そのもの"のはありきたりなモチベーションでしかなく、それだけでは否定も肯定もできず、そこから実際に何をするのかが大事なはずである。
「復讐のために何かをする」という「感情・動機」は、その「何か=行為」が褒められるかとは切り離して考えるべきではないだろうか。

また、ジャンルとしての「復讐もの」の需要としての一つには、復讐されるに値されるゲス野郎が残忍に殺されるのが見たいというものがあり、
そうすると悪人以外に被害が出たり、復讐対象が改心したり元から善人だったり、復讐者が葛藤したり被害が誤解だったり復讐を諦めるといった要素は、復讐シーンで爽快感を得るためのノイズになってしまう
そうした復讐物語に対する要請は、「復讐はどういう状況なら正しいのか」と「どういう復讐ものが見たいのか」という正義と嗜好の話をぐちゃぐちゃにして議論を混沌とさせがちである。

現代的復讐論理:企業の話

「誰の恨みも買わない復讐」や物語における復讐論などの話が上記にあるが、現実の企業について一つ見てみよう。
「内部告発」 これはつまりブラック企業の違法な賃金の実質押さえつけ(サビ残強要など)やホワイト企業でもパワハラ等の上司などの行為を内部監査組織や外部組織に訴え出るシステムである。

ここで注目すべき点が一つある。「内部告発者保護プログラム」だ。これが明示されている組織は実際あり、これはつまり

上司「誰かが俺を告発しやがった!ただ女性社員のケツを触った程度でよォ!復讐してやる!」
監査「お前はそこ(降格あるいは懲戒になった場所)でかわいてゆけ」

「てめー(上司)には告発者は教えてやらねー!くそしてねろ!」
という意思の表明に他ならない。内部告発者に不利益があってはならない、内部告発者が不利益を嫌って告発する意思を留めてはならない、ということだ。
告発者にあるのが上司への復讐心であろうが何だろうが、社会的には上司や企業の悪事の告発は”正しいこと”であり”守られるべき人”であると明確に定義されているわけだ。
逆にセクハラパワハラ上司といったものが「誰が俺を訴えた!!!!!」と発狂したところで、おしえてあげないよで終わり。上司の報復の意向、復讐心などは一切無視され「お前の復讐の道はそこで終わりだ、何もするな、口を閉ざして日銭を稼ぐ方法でも考えていろ狂人」とシステムが明確に示しているわけだ。
よって、合法的に地道に集めた違法な内容の給与明細や暴言ログをそっと警察等に出したらブラック企業やカス上司が裁かれて終わり。現実の「完全に正しき復讐」の究極系の一つがこれということになる。
上司の家のガキが「お前のせいで父さんは首に!」とナイフ持ってきたらもしもしポリス?でおk。

……おもしろいか?

「劇的」復讐や物語論的側面


上記のように地道に法理に則った純然たる復讐はまあ地味でおもろくない可能性が割とある。ロボもので言えば「人型ロボは成立しないから~」「戦車に対するアドバンテージが~」論である。戦車という実在の兵器を突き詰めて描写してもそれはそれでコアなファンがつく可能性はあっても、ロボのブンドドが売れるのも事実であるのはガンダムを見るだけで誰も否定できなくなる話である。

法で裁く作品はなくもない。例えばドラマ「半沢直樹」は銀行モノの「報復」であろうか。最高視聴率40パーを超えるという超お化け番組である。
半沢を例にとれば「経済や、それに絡む法律の話してるおっさんの群れ物語」でスタッフ自身も予想視聴率は15パーくらいだったという。その意味では倍取ってるので売れなくはない例でもある。

ただ本作は「下町ロケット」で直木賞作家になった池井戸潤原作だったりそもそものレベルが高いというのはある。
ロボットものって全部ガンダムくらい売れるんですか?って聞くやつがいたらバカか素人だと思うような話。

半沢直樹は、要するにグーで殴ったりナイフで刺したりではなく、相手の政治的隙をついて法で叩くことで勝つ物語である。
それでも大きな巻き込みがないではないかも知れないし、大きなホテルなどを巻き込んだり億単位の不正の話が出てくるスケールの大きさがある。
ちょっと100万ぬすんでみた、なんてレベルでは全くない。100万だって庶民にはでかいが。
そのスケールの大きさ、専門性のある「銀行」世界を面白おかしく描いた職業モノとしての原作からの面白さ、役者の質、その他があってこそだ。

法を以て他者を巻き込まず(できるだけ)のパターンだと、あとは純粋に法廷ものとかだろうか。
「逆転裁判」みたいな作品にも例がある可能性はある。だが逆転裁判はヒット作だが、キャッチーだったり一癖も二癖もあるキャラクターは多数いるし
裁判件数が増えたというリアリティを付けつつスピード結審というルールでダラダラした画を造らず、ゲームとしてスリリングな展開を作っている。

よって「じみーに集めた証拠をせいかくな法廷の描き方やって復讐」物語がマジで売れる?かっつうと微妙なところである。
それゆえに本項に記載される個別ページすらある復讐者たちのように記憶には残らず忘れられたりすると思われる。

つまり「人を巻き込まない復讐論」みたいなものを物語ベースで語ると「そもそも人が多く巻き込まれる派手な舞台設定がないと誰も読まない」という
「大前提」とコンフリクトするという事は考えた方がいいだろう。

そもそも警察モノでは


警察モノに出てくる復讐者などは、犯人に取り返しのつかない事をされたり更生していないのを許せないから復讐する。
逆を言えばそれ生存バイアスみたいなもんじゃね?という話である。上記の「大前提」と同様、そもそも許せるほどの人格者は復讐しないのだ。
それでは物語が始まらないから、人格者でもキレるような「実は更生したはずがフリでしたというのを見てしまいぶち切れ」とか、そういう設定になっていくわけである。
物語としての必然性、警察モノで警官が推理するための存在、としての復讐者の性質というメタ視点で見ると「どうしても派手、かつ裁かれざるを得ない人物になって当然」とも言えるか。
ひたすら殺された息子の墓を磨く老夫婦じゃ話にならないのだ、文字通り。

ざまぁ系


あとはちょっとだけ記載すると「主人公になんら非がないが報復が成立する物語」自体は実は2020年代にはけっこう多い。
ブラックな国にこき使われる魔法使いや聖女が抜けて結界が崩壊するが、魔法使いは国を辞めてたので幸せ。こういう物語はなろうに多く、書籍化されたりもしている。
半沢が自発的にハメられかけたのを叩き返す物語なら、こっちは「有能な歯車が自分から抜ける(あるいは価値を理解せず捨てる)ことで相手が自爆」という物語である。
こういう作品がヒットしているならば「完璧な(少なくとも主人公になんら過失のない)応報」物語が少ない論は、成立しないわけではないが”変種がここにある”とは言えなくはないだろうか?

【警察と法廷~アクション・メタ的復讐の完璧さ~】


警察と復讐といえば、殺人犯が被害者で復讐者パターンは上記に挙げたし非常に多い。だがそれが全部でもない。
ジャンルとしては企業に関してのネタと同様「証人保護プログラム」というものが存在する。
アメリカの映画などで見受けられるが、マフィアに家族を殺された生き残りが怒りに燃えて証言を決意するも当然消されかねないため証言で組織を叩き安全になるまで警察が保護するみたいなやつ。
これに関しては、途中でどれだけ被害が出ようと全部マフィアが悪い。

当たり前だが「お前が訴えようとしたからマフィアの無人乗用車特攻でうちが滅茶苦茶に!訴えるのやめろ!」みたいな周辺被害が出たとしても、それは全部マフィアの責任である。

日本のヒーローものとかでも実際あったりするが、ヒーローのせいで!は感情論としては仕方ないのだが論理としては別に正しくない。
本項ではいじめ問題もよく取沙汰されるが、いじめ加害者が訴えられて八つ当たり被害が周囲に出たから被害者は悪い、などという論理は「通ってはいけない」のである。

なぜならどうせ加害者はカスだからだ。証人保護プログラムの話に戻れば、乗用車アタックや街中銃撃やカーチェイスで周辺被害を出すような奴が存在していい義侠やいい意味での任侠なわけがないのだ。せいぜい必要悪程度でしかない。

復讐がこじれるという話に絡めるなら、証人Aが消されかける過程でBに被害が及び、BがAを脅しつけたため不起訴が成立したとしよう。ではある日、Cにマフィアの魔の手が及んだら?

C「A!お前はなぜ訴えなかった!お前が、お前が訴えていれば、あの日私は家族を・・・!」A「Bに会社を首にされかけて・・・病気の家族が」
C「・・・・・・B殺す」

余りにも悲しい被害者同士の殴り合い。無論マフィアXは痛くも痒くもない。
「周辺被害が出てもゆるせよ」はダメだが「だから悪党を訴えるな」もなんら正しくないわけだ。正しいのは「全部加害者が悪い」である。

法廷オンリー


では「完璧で正しい復讐とは?」に回答が無いかといえば、ないではない。証人ものというより逆転裁判のような弁護士・法廷ものである。
こちらは触法行為を一切しない証拠収取、判例の掘り起こし、弁舌、論戦の応酬、頭脳バトル等が見どころ。
外部の全く無関係な第三者に余計なダメージは特にいかないのである。(ブラック企業が潰れたら社員が路頭にとかは前述の「全部加害者がだめ」)
「ザ・ジャッジ」の例に近い風味なら、人死に等も出ないだろう。大好きな野山を汚された人がヤクザのフロント企業の不法投棄を訴えたが、ヤクザ企業はトラックボンバーこそ時代的に流石にやってこないものの有能悪徳弁護士に「先生おねげえしやす」して訴訟側不利示談を押し付けようとする。そこへ主人公弁護士が……。ならヤクザが負けてもヤクザのフロントが朝刊載ったぞテメー(不正発覚で)されるだけ。弁護士漫画だと「あんたの代理人」なんかはヤラレ役で”消す”ではなく悪徳弁護士とやってきて負けるタイプのヤクザがいる。
訴訟大国と呼ばれるアメリカでも弁護士ものはドラマや映画で1ジャンルを確立しているため、そういう所を探せば「加害者以外誰も傷つけない、社会が認める完全に正当な復讐」はあるだろう。

ただ「面白いか?」といえば「面白い」だろうが、それはアクション系とは「ラーメンとフレンチくらい違う」という事は忘れてはいけない部分がある。

作劇上のメタ要素


ロボットものの例えで言えば、法廷バトルはいわばプロジェクトX「人型介護ロボ~男たちのマニピュレータ開発~」みたいなもん。高度な頭脳と技術を用いた人々の、老人の肌に優しい機械の手という難題解決が今困難を乗り越え実を結ぶ・・・!的な部分に法廷ならミステリーとかがかかわる感じ。
マフィアが消しに来るのでカーチェイスや車が突っ込んできて周囲の店だろうが巻き込んでドカーン!は巨大ロボット同士のバトルの方が近い。ガンアクションあり、格闘あり、悪党をぶちのめし裁きの時までヒロイン(妻子を殺されたマフィア絶対訴えるおじさん)を守れ!みたいな。

ラーメンとフレンチくらい違うとはそういう意味である。世の中ラーメン屋に限ったところで百家争鳴と字義通り言えるレベルなのに、全然違う料理だと「違うこれじゃない」となるのは当たり前の話である。

シティハンターの新しめの映画などで「ラーメン屋に行ったらラーメンが出て来て大満足」みたいな感想があるが、ガンアクションと悪党退治を望む客は老人と介護ロボットの感動物語を望まないではなくても最も好むとはいえないだろう。作る側だって☆5評価が欲しいわけで、マーケティングというものがある。

視聴者・読者にとっての復讐問題を取り上げるなら「周辺被害が出ても派手にドンパチ」という作品の需要があるのは「復讐の完璧さ」とは関係ない別の要素の影響もあるのではないかと思われる。




「お願いだってばよ! もう見たくねーんだ! 追記されない項目を!」

「修正されなかった項目がどうなるか知っているか…? どうにもならない…どうにもならない…!」



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  • 鬱燃展開
  • 不可逆廃棄孔イド
  • 歴史は繰り返す
  • いじめるアイツが悪いのか、いじめられた僕が悪いのか?
  • 環境が生んだバケモノ
  • 鬱展開の嵐
最終更新:2025年05月01日 07:29

*1 よく挙げられる自力救済例としては「私有地に無断駐車された車を勝手に移動させる(または道を塞いで出られなくする)」「正当な手続きを得ずに金品の取り立てを行う」「家賃滞納者の家の鍵を無断で変えて閉め出す」など。

*2 古いヲタ的にはソード・ワールドTRPGの「2万ガメルを取り返せ!」のタイトル元。

*3 ドーパントとは言え、ある一般市民の生命が彼の行動にかかっている状況であった。

*4 ただし、ややこしい事に親の仇だと思い込んでた人物も「直接は殺してこそいないが、ヒュンケルの親の死の原因は紛れもなく自分」と認識していたのでヒュンケルの憎しみを真正面から受け止める覚悟を決めており、お互い真相を知らなかったので誤解していたという状況である。

*5 ○○の中には給料、年金、小遣いなど依頼人の生活様式に合ったものが入る

*6 野球賭博に逆らったことで選手生命を絶たれた野球選手の回では、元締めであるオーナーの退任+自身の復帰を条件に足りない分を埋め合わせた

*7 というかそういう霊なら成仏している可能性が高く、復讐を依頼してくる事がない

*8 大体終盤辺りが妥当か。

*9 キャラによってはフラストレーションを拗らせてしまって加害者側に回るケースも少なくないが。

*10 所謂「燃え尽きた」状態になる

*11 殺さない復讐劇の例はあるが、それらも相手を強請る・縛る・陥れる等、違法かそれに近い手段を取る事は珍しくない。反面、上の立場に成り上がるか、世間に胸を張れる立派な実績を作って見返すという前向きな動き方も少なくない。

*12 度々よく制作側の掲げる作品のメインテーマで「自分の仕事と人生の足を引っ張った他人を、自分の書くオリジナル作品・自叙伝・エッセイ漫画に対して柔らかく言えば『モデル』になってもらう・情念を込めて言えば『欠席裁判・公開処刑』の対象にする等の話のネタになってもらう」・「シリーズの新作・或いはリメイクのコンセプトが『明らかに失敗だったストーリー構成・システム上の不備』等を反省した上での旧作群に対するリターンマッチ」という旨の制作者達の発言があるが、これは「芸の肥やしにする」と表現した方がいいだろう。