SCP-2159

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SCP-2159 - (2018/07/01 (日) 21:22:16) の編集履歴(バックアップ)


登録日: 2017/05/30 Tue 12:39:01
更新日:2022/11/20 Sun 22:51:47
所要時間:約 9 分で読めます




SCP-2159は、シェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクト(SCiP)のひとつである。
オブジェクトクラスはEuclid。


概要

SCP-2159とはなんなのか?

最初にこのオブジェクトを目撃した浅草寺のお坊さんは、観音菩薩の胸像であると答えた。
次にこのオブジェクトを目撃したアニヲタは、アイザック・ネテロのスタチューだと回答した。
収容後に目視した自衛隊出身のエージェント・シロカワ・ケンスケは、
155mmカノン砲のミニチュアであり、銃口が東洋龍の顔になっていると答えた。

…みんな言ってること違うぞ?
その後も畜産農家出身で解剖学に詳しいエージェント・オイラチャ・バートルは砲骨だと言うし、
かつて1996年の『西遊記』を見ていたイチノセ・シキ研究員は額縁入りの、
女優ミミ・コングがホンコンTVシリーズで西遊記の観音菩薩を演じている際の写真とかなり具体的なイメージを回答するし、
ある博士は自分が書いたジョークオブジェクトSCP-1132-Jの報告書そのものだと報告するし*1
Dクラスはそれぞれ民族楽器とナイトパーティーの自身の十八番が聞こえると主張した。


このオブジェクトを研究していたフジモリ・カルロス博士は、最終的にこう結論付ける。
「これは事前の認識に基いて、その人ごとに見た目が変わる不定形の物質である」と。
フジモリ・カルロス博士自身には、これはグランド・キャニオンの写真集に見えていた。
自身がかつてグランド・キャニオンに近いサイトで勤務していた経験があったからだろう。

このオブジェクトは重量と体積は一定しており、それぞれ約800.3gと228.0cm3であることがわかっている。
よってこれで表現できないような大きさのものはミニチュアとして表現される。
例によってSCiPなのでサンプルを抽出なんてできなかった。

SCP-2159はもともと代々木公園で、「姿を変える物体」として話題になっていたところを発見されたのだが、
それを回収に行った人には「化学兵器」に見えたらしい。さぞかしビビっただろう…。

このオブジェクトは正に帯電していることがわかっている。
上述のエージェント・シロカワおよびエージェント・オイラチャが調べた結果、
最初に発見された地点には雷の落ちた跡があることが判明した。
周囲の草は焦げて炭化し、土壌に雷が落ちたときにできるフルグライトができていたのだ。
そしてその地点から動かした際には10cmの長方形の窪みが見られたという。

見え方の変化


さて、フジモリ博士はこのオブジェクトを研究しているとき、あることに気付いた。

「あれ?グランド・キャニオンの写真集じゃなくなってるぞ」

フジモリ博士がその時見ていたのは、
「2159」という数字が様々なフォントで書かれた2159枚の写真のアルバムだった。
なんか頭がおかしくなりそうなアルバムだなあ…。

で、フジモリ博士と同様に、「2159」に言及した変化が見られるという報告は数例挙がっていたらしい。
たとえば上記でミミ・コングの写真と答えたイチノセ・シキ研究員だったが、
当初はその表面にカタカナのミミ・コングという名前のサインが入っていると回答していたが、
後にそのサインは「2159」になっていると答えていたのだ。

これについてフジモリ博士はひとつの仮説をたてる。

もともとこのオブジェクトは、ひろしくんがたとえばりんごに見えていて、たかしくんがみかんに見えているとすると、
ひろしくんとたかしくんはあくまで「りんご」と「みかん」としてしか見なかった。
だがSCP-2159というナンバーを与えたことで、ひろしくんの認知は「りんご」ではなく、
「SCP-2159がりんごに見えている」であり、やはりたかしくんも「SCP-2159がみかんに見えている」と
脳の中での認知は変化してしまうわけである。
それまでであれば、「これはりんごだ」「お前の目は節穴か?これはみかんだよ」と喧嘩していたはずなのに。

すると「事前の認識に基いて変化する」オブジェクトであるSCP-2159は、
「SCP-2159」というナンバーに影響されてしまうようになる。
その結果、特にSCP-2159の研究担当であるフジモリ博士に対する影響は大きくなり、
グランド・キャニオンのイメージなんてものから、2159についてのイメージが優先されてしまったのだ。

フジモリ博士は、このオブジェクトを研究する上でナンバーを与えるという、
財団のお約束的手続きがマイナスになったとして、自分以外のメンバーを配置転換してくれと上に頼んだ。
そして、「SCP-2159」というナンバーを知らない2つのチーム・アルファとチーム・ブラボーが組織された。
アルファには「アイテム」とだけ知らせ、ブラボーには「オブジェクト」とだけ知らせたのである。

だがこれも結局はうまく行かなかった。

なんとその後アルファからは「アイテム」という言葉への自己言及的な例ばかり、
ブラボーからは「オブジェクト」という言葉への自己言及的な例ばかりが報告されたのである。
前提条件があるとことごとく駄目なのだろうか…?

ところが、ある日、アルファとブラボーがそれぞれ別々にSCP-2159について報告した際に、
『神様の言葉:objetem』と書いてあるダイヤモンドのタブレットという外見になったと主張した。
混ざってる混ざってる。ちなみに日本語の記事だとわかりづらいが、この「神様の言葉」という部分は
本家記事でもそのまま「神様の言葉」と書いてあるので日本語で表記されていたのだろう。
objetemはオブジェクトとアイテムのかばん語だろうと考えられている。

このあと、フジモリ博士および二人の何も知らないDクラスがやはりこの外見になったと主張して、
第0号解釈として現在研究されているらしい。

このオブジェクトは何を言いたいのか?


ここまで読んできて、はっきりいって「うん、外見が不確定で認識に依存するんだね、それで?」と思ったと思われる。
つーか書いてる初版作成者も読んでてなんなんだよこれって思った。

…ので、本家ディスカッションの著者の説明を見てみよう。

このオブジェクトの作者はMrWrong氏。ああ、イチノセ・シキ研究員ってそういうことか。

このオブジェクトの最初の様々な外見は、一応「観音菩薩」に多くが由来するが
(ネテロにしろ西遊記にしろDクラスの十八番が「Graduation」ってタイトルだったりとか)
そこはそれに揃えただけでMrWrong氏の意図ではないという。

問題はここからで、当初は多くの人の見方はバラバラなのだが、
やがて研究中に、何かしらの概念に大して自己言及的になるようになっている。
最後は第0号解釈というものに収束してしまっている。

このオブジェクトは、実はオブジェクト名を見ると、なにをテーマにしているかわかる。



SCP-2159 - Head-"Kannon"(ヘッド-"カンノン")



頭がトマトまみれの観音菩薩が頭に思い浮かびました

SCP記事を読んでいる人ならば、ヘッドカノンと言う言葉はよく聞くだろう。
公式設定(カノン)ではないが、自分の脳内で基本になっている設定をヘッドカノンという。つまり脳内設定。

実はこれに対するMrWrong氏流の皮肉なのだ。

もともと多くの人の見方はバラバラであり、ヘッドカノンも基本的には最初はバラバラである。
…が、多くの記事やSCPコミュニティの他の人の解釈に触れるに連れて、このヘッドカノンはだんだん他人のそれと一緒になっていく。

こんな経験はないだろうか?
SCP-8900-EXの解釈を『昔は色がなかったのが色がついた』と考えていたが、
いまでは『色のスペクトルが変わって別の色が見えている』という解釈に染まっている」とか。
SCP-161-JPSCP-522-JPは『そんなものはないのに、読者に、そんなものがあると思い込ませるオブジェクト』と読んできたが、
いまでは『財団世界には存在する概念について、メタ視点で困惑させるオブジェクトである』と捉えている」とか。

本当はどちらの解釈も「あり」なはずなのだが、多くの人が支持する方向性にヘッドカノンが寄っていってしまう、
そういう「公式設定じゃないのに、多くのファンが当たり前のようにひとつの非公式設定を前提に話す」ようなもの。

某雷巡がクレイジーサイコレズだったり、某巫女が貧乏って扱いだったりってのと一緒やな、原作にそんな設定ないし…*2

第0号解釈は簡単に言えば密教法具の「バジュラ/金剛杵」。
インドラ(帝釈天)がヴリトラを討伐するときに使った武器で、雷を操るという。
仏教ではその後煩悩を打ち破る法具として信仰されているが、
このwikiの読者ならマクロスとかデュエマのバジュラが先に出てくるだろうか。いまやマナロックのが怖い
だからダイヤモンド製なのであり(金剛は「金剛石/ダイヤモンド」のこと)、雷とともに落ちてきたのだという。

で、MrWrong氏いわく、この第0号解釈は「神が知覚のポイントを作りたい」ということらしい。
ある物語を書くにしたがい、ある設定を強引に押し通すような感じだろうか。
実際、あたかも正体であるかのように出てきているが、あくまで「解釈にすぎない」ことに留意すべきである。

このオブジェクトを機に、「ヘッドカノン」の世界であるSCPを今一度見つめ直してみると、
また面白い発見が生まれるかもしれない。

どうでもいいが、カノンの由来は「キリスト教の『正典』」のこと。
だからカノンと観音の掛詞は聖☆おにいさん状態である。
また、SCP-1132-Jは『Head-Cannons(ヘッド・カノン)』という、頭にキャノン砲がついてしまう現象系ジョークオブジェクト。
つまりこっちもヘッドカノンについてのトマト飛ばしタイトルだったりする。


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