未定義

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SCP-3942 - (2020/08/26 (水) 09:08:44) の編集履歴(バックアップ)



登録日:2017/10/01 (日曜日) 17:02:10
更新日:2024/04/28 Sun 22:41:09
所要時間:約 15 分で読めます





我々にはそれを知ることは出来ない。
そこに何がいて、何が育まれているのかを。



 SCP-3942とは、共同創作サイト「SCP Foundation」で生み出されたオブジェクト
項目名は「収容チャンバー#3942」。

概要

 始めに言っておくと、このオブジェクトは分からない。つまり、報告書内での言及が殆ど無いのである。
本家記事のディスカッションでも055579を突っ込んで死んだ光を当てたもの」と揶揄されている。
長らくSCPに触れているアニヲタ研究員なら、これがどれくらい分からないか分かるだろう。

 まず、アイテム番号が「未定義」
 次に、オブジェクトクラスも「未定義」
 最後にはオブジェクトの説明では「保留中」

 具体的にSCP-3942を表す何もかもが抜け落ちているのである。


特別収容プロトコル

 最初にまともな事が書かれているのはこのプロトコルから。
サイト39の収容チャンバー#3942は、常に構造的に適切な状態に保たれなければなりません。収容チャンバーの損傷は直ちに修理する必要があります。
収容チャンバー#3942は、少なくとも2つの活性化しているスクラントン現実錨の効果の範囲内に置かれなければなりません。
 まず「チャンバー」って何だ? となるだろうが、これは英語圏でいう「小部屋」という意味を持つ。
なので、ここでは「小さな部屋がサイト39にありますよ」、という解釈で良いだろう。
 この文章から、チャンバーは厳重に管理、保護され、かつスクラントン現実錨が2つ以上無いといけない、という事だろう。
レベル4以上のクリアランスを持つ少なくとも3名の職員からの事前の承認なしに、サイト職員は収容チャンバー#3942に入ることはできません。
 そして、クリアランスレベル4以上の職員3名に承認されなければ、このチャンバーに入ることはできないらしい。

 なのだが。
毎日少なくとも3回、最低でも4匹の調理されたマスが収容チャンバー#3942内に置かれなければなりません。
収容チャンバー#3942に内に入る被験者または職員は、可能であれば、マスの給餌を追加することが奨励されます。
 鱒。あの魚の鱒である。ついでに「給餌」という単語から、チャンバー内には何らかの生物がいる、と分かる。
そして極め付きがこれ。
D-24390は優先度の高い重要人物として指定されています
D-24390、およびすべての既知の仲間は、尋問のために逮捕されなければなりません。
 Dクラスが名指しで重要参考人指定。
一体どーゆー事? と読者に「?」が浮かんだ所で、

説明: 保留中

 ………という流れになっている。

起源

 その下の起源からは、
2017年6月27日にオーストラリアのビンガラにおける広範囲のパニックと大量避難の報告を受け財団のエージェントが派遣されました。
出仕したエージェントによる質問は、住民がパニックや避難を行った理由を説明する情報を提供しないため、効果がありませんでした。
 というSCP-3942の出自が分かる。
広範囲のパニック、大量避難……SCP-3942とは、それだけに危険なのか、見た目ヤバそうなのか。
ともかく、エージェントが質問しても返せなかった、という事から、055などと同じく反ミーム性をもつオブジェクトだと推察ができる。要はミーム拡散できない=他に伝えられない、という訳だ。
だから説明が保留なのだろう。説明できない、だから一旦仮置き、という意味だ。
多分同じ理由でアイテム番号、オブジェクトクラス等も未定義なのだろう。このオブジェクトは一切の直接言及を許さないのである。Di Molte Vociのような異常性だ。

 そして、エージェントは救援を要請。
援助を要請した後、出仕したエージェントは機動部隊イプシロン-6( "村のアホ")と協力しました。
状況には不適切でしたが、協力は怪我の発生を最小限に抑えることに成功しました。
MTF E-6は収容チャンバー#3942を要求し(承認)、到着した時点で収容プロトコルを考案・開始しました。
残った住人とビンガラの元住民は記憶処理が施されました。
 田舎専門のチームである機動部隊イプシロン-6( "村のアホ")が出動し、SCP-3942を鎮圧。
 SCP-3942はチャンバーに収容。サイト39に移動し、住人に記憶処理。一件落着となった。

ここまでで分かることとしては、
ビンガラの住人がパニックになって機動部隊が制圧
強力な反ミーム性をもち、直接言及が不可能
D-24390が重要人物
 といった感じだろうか。

補遺──テストログ

 さて、ここからがSCP-3942の本番である。こういったオブジェクトの例に漏れず、補遺が長い。
そして、SCP-3942に対する言及がなされないため、一見すると非常に分かり辛い文章となっている。

 補遺は「テストログ」という形式で、以下のようにまとめられている。
テストログ 1
被験者: D-24390
手順:D-24390は、収容チャンバー#3942に入り、30分間内部に留まるよう指示されます。
結果: D-24390は収容チャンバー#3942に入ります。被験者が部屋から出ることを要求します(拒否)。被験者は30分間ずっと動かず、その後急いで収容チャンバー#3942を離れます。
 早速例のD-24390が出てきた。まずはかの住人らと同じように恐怖におののき動けず、すぐに退出した。

テストログ 2
被験者: D-24390
手順: D-24390は、収容チャンバー#3942の中身を説明するよう指示されます。
結果: D-24390は動揺し暴力的になります。被験者は鎮静されました。
 説明を求められるも動揺。やはり言及は許されないようだ。

テストログ 3
被験者: D-24390
手順: D-24390は、調理されたマス1匹を所持して収容チャンバー#3942に入り、30分間内部に留まるように指示されます。
結果: D-24390は収容チャンバー#3942に入ることを拒否します。強引に実行させます。
   被験者は調理されたマスを投げて、部屋から出ることを要求します(拒否)。被験者は17分間動かず、その時、話し始めます。
   被験者は残りの13分間断続的に発言し、その後、収容チャンバー#3942を離れます。
 鱒登場。トラウマになっているのか、チャンバーに入ることを拒否したり、すぐ退出を求めたりしていた。
しかし、しばらくすると細々と発言。後にこの発言内容を聞くもログ2と同様に動揺し拒否した。

 これではよく分からないかもしれないが、
テストログ 5
被験者: D-24390
手順: D-24390は、調理されたマス1匹を所持して収容チャンバー#3942に入り、30分間中に留まるよう指示されます。
結果: D-24390は収容チャンバー#3942に入り、調理済みのマスを捨てます。被験者は時折休止を挟みつつ、30分の間ずっと話をし続けます。その後、被験者は収容チャンバー#3942から離れます。
 お分かりだろうか。D-24390は明らかに何かと会話している。ここで会話できる相手は必然的にSCP-3942となるので、ここからSCP-3942が知能があり、コミュニケーションの成立する生物という事も分かる。
恐らく「マスを捨てる」という表現も、相手が相手なのでそう言っているだけで、本当はSCP-3942が食事をしている、ととれる。

 ここでログが編集され、一気に10へと飛ぶ。
テストログ 10
被験者: D-24390
手順: D-24390は、調理されたマス1匹、巻尺およびインクマーカー1本を所持して収容チャンバー#3942に入るように指示されます。
   被験者は、室内で巻尺を使用するように指示され、結果を記録するためにマーカーを使用します。
結果: D-24390は収容チャンバー#3942に入り、調理済みのマスを捨てます。被験者は巻尺を4回使用し、それぞれの結果をマークします。
   被験者は、次の測定値を残して収容チャンバー#3942から離れます。:
  • 60cm(調理したマスの長さ)
  • 175 cm(被験者の高さ)
  • 525 cm(収容チャンバー#3942の縦横の長さ)
  • 310 cm(収容チャンバー#3942の高さ)
 会話が成立している以上、少なくともSCP-3942を目視する限りにおいては問題なく認識可能らしい。
そこでSCP-3942自身を直接計測することでデータを残せるのではないか、と財団は考えたのだろう。
ところがご覧の通り、計測結果にはSCP-3942の計測結果が無い。D-24390はよりによって一番重要なオブジェクトの計測をし忘れたのである。
財団はもちろんこれに気が付き、D-24390にもう一度計測させるようにしたのだが………

テストログ 11
被験者: D-24390
手順: D-24390は、巻尺とインクマーカー1本を所持して収容チャンバー#3942に入るように指示されます。
   被験者は、テスト [ログ] 10で測定された以外のものに室内で巻尺を使用するよう指示され、結果を記録するためにマーカーを使用します。
結果: D-24390は収容チャンバー#3942に入ります。被験者は巻尺を1回使用してから、
   収容チャンバー#3942から離れます。巻尺にマークはありません。被験者は叱咤されます。
 今度は恐らく計測こそ成功したものの、それを記録することに失敗。叱られるD-24390が哀れである。
こうした扱いがD-24390の財団に対する反感を強め、次の行動に繋がったのかもしれない。

 ここでまたログが編集。
テストログ 15
被験者: D-24390
手順: D-24390は、調理されたマス1匹と装填された拳銃(ゴム弾)を所持して収容チャンバー#3942に入るように指示されます。
   被験者は、銃を使用してマスが消えるのを防ぐよう指示されています。
結果: D-24390は収容チャンバー#3942に入り、調理済みのマスを捨てます。被験者は3分間話し、その際に拳銃の使い方を発砲せずに説明し、拳銃を捨てます。
   被験者は収容チャンバー#3942から強制的に外に出されます。セキュリティ担当者が拳銃を再び取得する前に、拳銃のすべての弾丸が消費されます。
   すべての消費された弾丸は収容チャンバー#3942から除去されます。セキュリティ担当者は軽傷で収容チャンバー#3942から離れます。被験者は激しく叱咤され、再割り当てされます。
 説明。そう、SCP-3942に拳銃の使い方を説明し、担当者を撃たせたのである。幸いにして軽傷で済んだものの、D-24390はSCP-028*1へと再割り当てされた。

 その後は他のDクラスが担当するも………、
結果: D-24391は収容チャンバー#3942に入ります。被験者は激しく苦しみだし、すぐに助けを求めます。援助が提供される前に被験者が死亡します。被験者の死体とカメラの回収は不可能です。

結果: D-24392は収容チャンバー#3942に入ります。被験者が死亡します。 被験者の死体とテープレコーダーの回収は不可能です。
 あえなく死亡。その後SCP-3942にインタビューしたDクラスがいたのだが、

テストログ 23
被験者: D-24393
手順: D-24393は、メモとペンを所持して収容チャンバー#3942に入るよう指示されます。
   被験者は部屋の中で「あなたは何を望みますか?」という質問をし、返答を全てメモに記録するよう指示されます。
結果: D-24393は収容チャンバー#3942に入ります。被験者は質問をし、メモに回答を記録します。被験者が死亡します。 被験者の死体の回収は不可能です。
   セキュリティ担当者がメモの回収に成功しました。メモには、被験者の筆跡で「彼女を連れて帰る」という言葉が書かれています。
 こちらも死亡。ここでいう「彼女」とは、まさしくD-24390の事である。理由は後述。
恐らく、SCP-3942はD-24390を求めているのだろう。この事から、SCP-3942がD-24390に明確な好意があると分かる。
ここで財団もD-24390が重要な意味を持つ存在であることに気が付いたのだと思われる。
そこで、

テストログ 26
被験者: D-24390
手順:D-24390は、調理されたマス1匹を所持して収容チャンバー#3942に入り、5分間内部に留まるよう指示されます。
結果: D-24390は収容チャンバー#3942に入り、調理されたマスを捨てます。被験者は5分の間全体的に話をし、断続的に休止します。
   被験者はセキュリティ担当者が軽傷から重傷を負いながら収容チャンバー#3942から強制的に退室させられます。
   1人の担当者が被験者を退室させる際に死亡します。分析をする為セキュリティメンバーの死体を取り出します。
   死亡原因を"傷害による死亡"とする剖検は確定的ではありません。被験者は叱咤されます。
 D-24390がカムバック。最初はあれほど嫌がっていたD-24390が、逆にSCP-3942から引き離されることを拒否しているのが分かるだろうか。
ついでに財団職員が犠牲になっているが、SCP-3942によって殺された事実のみならず、その死因すら反ミーム効果の対象になっているあたり、何とも徹底している。

 さて、ここでまたまたログが飛ぶので少し休憩。
 今までのテストログや説明によって、D-24390とSCP-3942は互いに好意を持っている事、またD-24390が女性な事が分かる。
 人間に恐れられ続けた末に財団によって収容されたSCP-3942と、同じく財団によって人非人の如く扱われてきたであろうD-24390。
 そんな両者の間に通じ合う何かがあったのかもしれない。

 そして、報告書も終盤になる。ここで誰もが予想だにしなかった出来事が起こる。
テストログ 34
被験者: D-24390
手順: D-24390は、巻尺、インクマーカー1本と調理されたマス1匹を所持して収容チャンバー#3942に入るように指示されます。
   被験者は、以前に測定していないものを室内で巻尺で測定するように指示され、結果を記録するためにマーカーを使用します。
結果: D-24390は収容チャンバー#3942に入ります。被験者は動揺し、マーカーと巻尺を捨てます。
   被験者は医療援助を求めます(承認)。医療担当者は収容チャンバー#3924に入ります。被験者から医療担当者の支援をするとの申し出があります(承認)。
   被験者は医療担当者によって鎮静されます。授精後、被験者は巨視的な体細胞分裂または減数分裂を経て、バイオマスの損失を結果として生じます。

   医療担当者と被験者(鎮静済み)は収容チャンバー#3942から離れます。
 医療援助、鎮静、分裂、バイオマス………何か尋常ならざる事態が発生したことは想像に難くない。
ここでピンと来た人は冴えてるが、「体細胞分裂または減数分裂」そして「バイオマスの損失」に注目する。
 まずバイオマスとは、訳語に生物量とあるように、「ある領域での生物の量」である。それの損失、という事は何か別のものに質量やエネルギーを消費した、という事である。
そして減数分裂。これは中学校などで学ぶ通り、ある一定条件でのみ発生する特殊な細胞分裂である。

 もうお分かりだろう。

 D-24390はSCP-3942の子を産んだのである。

 子供の描写がない=子供もSCP-3942の影響下にある、となる。
しかし相手が相手なだけあり、妊娠から出産に至るまで一体何があったのかはさっぱり分からない。
 そしてD-24390と医療担当者のみ脱出……即ち、出産した赤ん坊はそのまま、となる。

 そして最後の「テストログ35」。ここは長いので細かく見ていく。
結果:D-24390は収容チャンバー#3942に入り、調理済みのマスを中に捨てました。
   被験者は5分間幸福を表した後、懸念を表します。セキュリティチームは、被験者を強制的に回収する準備をします。被験者は静かな声で話します。
   収容チャンバー#3942に入ってから11分後に、 前の任務から得られた知識を利用して手の中に初歩的なキネトグリフ(Kinetoglyph)を生成し、セキュリティ担当者が収容チャンバー#3942に入るのを阻止します。
   セキュリティ担当者は、収容違反が進行中であると報告します。
 D-24390はチャンバーに入り、幸福と懸念、つまりは「子供のいる喜び」「閉じ込められたままへの懸念」を表した。
この時点で財団は話の雲行きが怪しいと感じたのか、D-24390を収容チャンバーから強制的に退去させようとしている。
ところがD-24390はSCP-028で得た知識を元にキネトグリフを生成、チャンバーを封鎖してしまった。この時点で収容違反発生と判断された。

 キネトグリフとは何ぞや? となるが、ざっくり言えば「何がしかの異常現象を引き起こす特定の動作・ジェスチャー」のことである。要はダンスとか体操とかボディランゲージとか、そういうヤツだ。
ここでは「手の中に生成」しているので、ハンドサイン(よりそれっぽく言うなら「印を結ぶ」)タイプのキネトグリフを用いたらしい。
そして、
被験者は、精巧なキネトグリフ(Kinetoglyph)の構成要素を構築する手法を手によって実演します。セキュリティ担当者は、最初の障壁を物理的に破壊し始めます。
被験者は精巧なキネトグリフ(Kinetoglyph)が構築されている間、それを維持するように注意を集中させます。
完成すると、第2のキネトグリフ(Kinetoglyph)は、未知の場所に繋がる一時的な時空間マニホルドを生成します。
被験者は、収容違反を発生させるためマニホルドを利用します。
 D-24390がキネトグリフの使い方を説明。もちろんその相手はSCP-3942以外に考えられない。どうやらSCP-3942も、少なくとも人間と同様か、それに近い形の両手を持っているらしい。
察するに、一方がチャンバーの封鎖を維持し、もう一方が別のキネトグリフによって脱出口を作ろうとしたか、あるいは二人が協力することで効果が発動ないし強化されるタイプのキネトグリフを用いたのだと思われる。
財団職員はなんとか封鎖を突破しようとするも間に合わず、脱出口となるワープゲートが作られてしまった。
最早このまま指をくわえて見ているしかないかに思われたが、

携帯用スクラントン現実錨を装備したセキュリティ担当者が到着し、即座に活性化させます。
影響領域内のすべてのキネトグリフ(Kinetoglyph)は、その生成された異常な効果とともに、即座に消散します。
 慌てて駆け付けた職員が携帯型SRAを起動。収容違反は間一髪で阻止されたのである。

テストログ 36
被験者: D-24407
手順: 調理されたマス4匹を所持して収容チャンバー#3942に入り、1時間内側に留まるよう指示されます。
結果: D-24407は収容チャンバー#3942に入り、調理されたすべてのマスを即座に捨てます。被験者から部屋からの退出要求があります(拒否)。
   被験者は、45分の間は動かず、その後、被験者は慎重に部屋中を移動します。被験者は、1時間後収容チャンバー#3942から離れます。
 我々が確認できる最後のログ。今まで一匹だったマスが四匹に増えており、被験者=給餌係はD-24407に変わっている(例によって怯えている)。
増えたマスが誰のためのものなのかは、最早説明するまでもないだろう。

 まさしく"家族"が形成されているのである。

 残念ながら安住の場所へ向かうことは失敗したが、チャンバー#3942に恒久的に住むことを良しとしたのであろう。
知能がありながら反ミームという異常性によって孤独だったであろうSCP-3942と、その孤独を癒したD-24390。
この家族の先行きは果たしてどうなるのだろうか。

 追記・修正はSCiPを愛することを選んでからお願いします。

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