SCP-789-JP

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SCP-789-JP - (2020/11/24 (火) 17:23:22) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2017/12/28 (木) 22:10:00
更新日:2024/04/07 Sun 20:18:43
所要時間:約 8 分で読めます 




SCP-789-JPは、シェアード・ワールド「SCP Foundation」に登場するオブジェクト (SCiP) のひとつである。
項目名は「メビウスの輪ゴム」、オブジェクトクラスMöbius
……そう、「クラス分類:メビウス」である。もう既にいやな予感しかしてこないが
意外や意外、コイツ自体はSCiPとしては非常に大人しい部類に入る。

SCiPの実体はサイト-8195の備品課で購入され、同サイトに勤務する倉内博士の研究室に支給された業務用輪ゴムである。
コイツの異常性とはズバリ、当SCiPについて財団基準の報告書を記述する際、オブジェクトクラス欄に"Möbius"という単語を記入してしまうことである。
無論このようなクラスは設定されていない上、異常性が別にMöbiusクラスの存在を信じ込ませるようなことも起こらないので、
財団内でも(執筆者当人も含めて)この記述を修正するべきなのでは、という指摘が出ることはあるのだが、
最終的にはクラス分類の記述も、SCiPの異常性の説明も修正されるべきではないという結論に至り、結果としてその修正は行われていない。

財団はその力を尽くして倉内博士と彼の研究室、サイト内の流通ルートや製造者である██社まで徹底した調査を行ったのだが、
最終的にこの輪ゴムからはこれ以外の異常性は全く発見されず、異常性の起源も明らかになっていない。
報告書の記述に対する情報災害以外ではただの輪ゴムなので、現在は低脅威度物品ロッカーの中にしまい込んでおくことになっている。


















冷静に紐解いて考えてみればわかる事なのだが、このSCiP、深刻な矛盾を内包している。
異常性を持つ対象を確保し、収容し、保護する財団の行動は、当然ながらまず異常性を持つ対象の発見から始まる。
ところが、この輪ゴムの唯一の異常性(と説明されているもの)は財団が異常性物品として収容し、報告書を執筆しない限り発現しない
財団によって報告書が作られない限り、この輪ゴムは永遠にただの輪ゴムと何ら差異が存在しないはずなのである。そして、財団は当然ながらただの輪ゴムに報告書を書いたりしない。
だがそれならば、このSCiPはただの輪ゴムとして見過ごされ、倉内博士の手により輪ゴムがSCP-789-JPとして報告書を残すことなどありえない。
では現実にはどうかと言うと、輪ゴムはSCP-789-JPとして登録され、報告書は「説明に手を出すな」との注記の上で実在している。

そう。このSCiPはかの鶏と卵のパラドックスがごとく、異常性と収容のどちらが先行しているのかの結論が出ないという大きな疑問点が存在するのである。
倉内博士から当SCiPの調査を引き継いだ坪野研究員はこれを「把握し損なった異常性、報告書の改竄、何らかの現実改変のいずれかが発生している」と判断。
SCP-789-JP報告書の破棄・大規模修正も視野に入れたうえで、再調査を行う必要があると提言を行っている。


補足

「メビウスの輪ゴム」はかつてSCP-1881-JPとして登録されていたが、低評価により削除されており、現在該当番号は別のSCiPとして登録されている。
当SCiPは「かつて低評価・未完成のため放棄されたアイディアを再構築する」リサイクルコンテスト2017を機に新規に登録されたものである。


本項目の追記・修正は全面的に許容される可能性があります。











ちなみにこのSCiP、リサイクルコンテスト2017エントリー作品として最高評価を得ている。
上記に記したものとほぼ一致する「旧SCP-1881-JP」のままならば、このようなことはあり得ないだろう。
SCP-789-JPが受け入れられたこと。それは、コンテストを機にブラッシュアップされ、新規に追加された再調査内容がカギとなる。
と言うわけで、早川研究員によって行われた再調査の結論を見てみよう。


  • SCP-789-JPに登録されている輪ゴムは実在しない。それどころか製造者たる██社が実在しない。
  • 報告書の執筆者たる倉内博士は実在しない。SCP-789-JPが発見されたはずの彼の研究室も存在していない。
  • 再調査を提言した坪内研究員も実在しない。……じゃぁなんで再調査が行われたのだろう?
  • そもそもサイト-8195が存在しない。


まさかの事実関係の全否定。
まるで丸ごと削除されたかのようにきれいさっぱり存在が否定される関連事象の中で、
唯一「オブジェクトクラス欄にMöbiusと記されているSCP-789-JPの報告書」だけが実在している、この異常な実態に関して
早川研究員は3つの可能性を提示し、そのうえでこの報告書に対してとるべき措置についての検討も行っている。

パターン1:「一切の異常性は実在しない」

この場合、この報告書は何らかの存在による情報攻撃が財団に対し行われ、結果作成された偽の報告書ということになる。
財団の収容体制を大きく損ないうるこの情報攻撃に対し、財団は即急に対応しなければならない。
であるならば、その攻撃の唯一の痕跡であるこの報告書は貴重な証拠として一切の修正を行わず保護されねばならない。

パターン2:「SCP-789-JPは実在しないが、報告書には異常性が実在する」

この場合、この報告書はそれ自体が関連する矛盾そのものを異常性に含み得る異常実体ということになる。
ここで重要なのは財団の目的があくまでも「異常実体の確保・収容・保護」であること。
異常実体であるとするならばこの報告書は収容・保護対象である。であるならば、別個にこの報告書をSCiPとして登録したうえで、
当報告書自体は手を加えずに保護しなければならない。

パターン3:「何らかの現実改変が絡んでいる」

これに関しては既に類似の事例に覚えがある方もいるかもしれない。
要はかつて存在した「SCP-789-JPの報告されるべき異常性」「報告書に記載された事実」は現実改変によって消滅した可能性である。
この場合に重要なのは改変はいつ、どこで再度発生しうるか(=何を回避しなければならないか)である。
カギは坪野研究員が示唆した「報告書の大規模修正・削除」が結局行われていないこと。つまり、修正・削除自体が現実改変を引き起こす可能性があるのである。
幸い坪野研究員による補遺は残っているので早川研究員は補遺の追加なら比較的安全と期待しているが、それでも改変の危険を冒すことは極力避けねばならない。
であれば、この報告書は改変の証拠として保全しつつ修正を阻止しつつ維持されねばならない。


なお、最も危険な状態である「既存SCiPの報告書が異常な報告書により塗り替えられた」可能性は報告書と各実態の全数調査により否定されている。
SCiPを100件知るごとに碌でもないことが起きる状況で全数調査とは難儀な話である。





つまるところ、結論はどこまで行っても、いったん世界から消滅して復帰しても最初の結論に戻ってくるのである。何が起きたにしても起きていないにしても、現状この報告書に関わるものがこの報告書自体以外に何も存在しない、という事情が財団にそうさせるのだ。

あらゆる状況において、本報告書に記載されているオブジェクトクラス欄を修正すべきではありません。その異常性についての説明も同様です。
本報告書は修正せず保護すべきです。
早川研究員
きっとこの報告書は、今度こそ修正も消去もされることなく、残り続けるのだろう。



ちょっとした考察

財団世界には、この異常性を説明できる現象がもう一つある。
それ自体と、それにかかわるものへの認識を阻害する「反ミーム」である。輪ゴムが自身と、自身に何かの形でかかわった者を認識させなくする反ミーム的作用を持っていたならば、ある程度説明が付けられる。
ややこしいのは、反ミームはそれ自体がミーム的、つまり拡散する作用を持っていることがあり、コイツもそのようである。

ちなみに執筆の段階では「オブジェクトが情報災害を起こして報告書を書かせ、能動的に情報を拡散させた」という背景を想定していたらしい。


本記事の追記及び修正機能は凍結されています。*1


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-789-JP - メビウスの輪ゴム
by WagnasCousin
http://ja.scp-wiki.net/scp-789-jp

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