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SCP-001/Tuftoの提言 - (2018/12/25 (火) 13:45:38) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2018/12/25 Tue 10:45:59
更新日:2023/06/15 Thu 03:51:02
所要時間:約 15 分で読めます






それは、過去に取り残された神秘の咆哮。


Tuftoの提言とは、SCP Foundationに登場するオブジェクトの1つであり、SCP-001に関する提言枠。
メタタイトルは、「緋色の王」。

概要

SCP-001は、「緋色の王」と呼ばれる実体。断っておくが、SCP-444-JPとは関わりない。
オブジェクトクラスはKeterであったが、これの他にSCP-231SCP-2317を担当し、例の処置110-モントークを提唱したロバート・モントーク博士の研究を受けてSafeに改訂されている。
プロトコルも、「現在は機能的な自己収容状態であり、財団が干渉するとそれを妨げる」ということで、新たな001絡みの事案に関与するな、と定められている。

で、コイツが何なのかと言えば……テキストに埋め込まれているリンクが示しているが、231の身ごもっている子である。
また、レベル4職員にはあの元祖アポリオンこと2317こそが「緋色の王」だというカバーストーリーが適用済み。ただ、「緋色の王」は多面的な性質を持つため、2317が実は「緋色の王」の一側面でした、という可能性は否定されていない。

現在コイツは各次元に跨って存在しており、300年以下の周期で財団の基底現実への侵入を試みている。
有する属性は未知でありながら、財団には未知であるにもかかわらず、基底現実の人間やイベントに強い影響を与え続けている。
で、もし侵入してしまえば、タシュケント-クラス“異花受粉”シナリオを引き起こす。これは、オブジェクト同士の相互作用により、世界が滅亡するK-クラスシナリオである。なので、「緋色の王」の出現は正常性の不可逆な破壊をもたらす。
のだが、財団は「収容はそれでも不要」とし、さらに分類やオブジェクトクラスの再定義を求める行為はO5からの解任につながるという。

正直、不可解ではある。顕現した時の危険性の割に、Safeに分類する根拠があっさりしすぎており、「機能的な自己収容状態」とは何なのかまるでわからない。その割には、それへの異論はO5ですら解任されてしまうという厳重ぶりである。

芸術や口伝における「緋色の王」の痕跡は、概ね「巨大な赤いクリーチャー」として表現される。また、その名は「赤を意味する単語」と「王位を意味する単語」で構成されており、これらをひっくるめた便宜上の総称が「緋色の王」である。

発見経緯については謎が多く、1889年に財団で起きた「スナーリング・クープ」(クーデターらしい)における、財団の起源に関するデータの消失により、その詳細は謎となっている。さらに現在までに、いくつもの要注意団体が「緋色の王」を顕現させようと力を尽くしている。最新のものは“緋色の王の子ら”を名乗る集団で、これは財団と世界オカルト連合の共同作戦により殲滅され、リーダーのディペシュ氏は要注意人物として拘留されている。



さて、この提言の本番は補遺にある。
Safeへの再定義は彼の研究結果を受けてのことである。それに伴い、元O5-13によって、博士の研究ログが整頓され、アーカイブされた。
のだが、ここでモントーク博士がディペシュとのインタビューを重ねる中でさまざまな事実が明らかになって来た。
引用すると長すぎるので事実だけを箇条書きする。
ちなみにそれぞれ、フェーズ1「」、フェーズ2「凝土」、フェーズ3「咆哮」に分けられている。

フェーズ1「血」

  • 処置110-モントークには“緋色の王の子ら”ですら引いている
  • “子ら”の目的は「緋色の王」の召喚により世界を救う事
  • “子ら”は蛇の手とのかかわりを持つ。蛇の手は“子ら”を嫌っていたが、その存在の意味を理解していたがために滅ぼそうとはしなかった。
  • 蛇の手の中心である図書館はずっと昔からあったが、蛇の手という組織は財団と同じ頃に発足した
  • 「緋色の王」については、それ自身に関わる「血の法」、他の誰かに関わる「凝土の法」、それらを理解した上でわかる「咆哮の法」がある

このフェーズでは、“子ら”の離反者の一人であり、現実改変の応用により過去の人物の体験をそっくりそのまま追体験できるハーストという男の手記がある。
ハーストは「緋色の王」の兵士となり、“骨壺の子ら(SCP-3838-4?)”というグループと戦っていた。
ここではSCP-231の前身と思しき「七人の花嫁」の言及があるが、どうやらSCP-3838に登場する様々な部族から奪われた娘たちらしい。

そして最後に、各要注意団体による「王」の顕現の試みがある。ここから読み取るべきは2点。
  • どの儀式でも、「現代性の象徴」といえる物品が汚され、「前近代の象徴」が丁重に扱われている。
  • 蛇の手や世界オカルト連合ですら「王」を顕現させようとしている。


フェーズ2「凝土」

ここでディペシュが語ったのは次の通り。

  • 「血の掟」とは「王」が支配するためのルール
  • ハーストの記述はやや盛られており、彼は完全には「王」を理解していないが、完全な理解にかなり近い所まで来ていた。

また、1891年、エージェント・デ・ボーヴォワールの残した覚書が、モントーク博士により不明な手段で回収されている。彼はどうやら"スナーリング・クープ"により散逸した財団の歴史的資料を回復しようとしていたようだ。
噛み砕くと、「自分は財団はSCP-001=緋色の王に対抗して作られたと学んでいたが、集めた資料によるとSCP-173の収容違反が最初の動機ということになっている。1854年の、まだ解決されていない173の収容違反が記録改変を起こしたのでは?」ということである。ちなみにボーヴォワールはその後O5評議会に処刑されてしまうが、理由は不明である。

さらに、財団がその後、評議会で何らかの議決を行うと、「緋色の王」に関連する事象がいくつも起きている。
顕著なのは2018/3/31の2317のクラス改訂に関する決議で、起きたイベントがこちら。
収容エリア-179の外にて数個の次元の割れ目が発生。これらの割れ目はカッパ-エリケシュ宇宙と不明な次元への開口に交互に切り替わった。この不明な次元は内部からの多量の赤い煙と不明な数の人間の叫び声の発生が特色である。

このフェーズの最後には、“子ら”のメンバーの一人による「凝土(コンクリート)の法」への言及がある。
その内容を噛み砕くとこんな感じ。
世界は今や、西洋化の一途をたどり、それが正しいとみんな思ってやがる。歴史家どもが、連中の言う近代化とやらに飛びついて執着してるだけだ。俺達は日々仕事へと、自らのシステムを維持することだけを目的として駆り立てられる。
だがそれだけが生きる道じゃない。「血の法」を掲げるために、「凝土の法」を取り下げるんだ。「緋色の王」の忠実なる奴隷となるのだ。
理はたった一つだ。混沌だ! 混沌の理だ! 人類のために、命のために、緋色の王のために!


フェーズ3「咆哮」

ここでのディペシュの情報は以下。

  • 「緋色の王」は思想、一種のミームである
  • SCP-2317は「王」とは厳密には別の存在。しかし、「王」は十分な信仰を与えられることで2317にもなりうる

その後、ベンガル語の作品である「ラーラ・ラーヤ」という文書をモントーク博士は発見した。この内容は先の子らのメンバーの言及と似ていて、英国に植民地化され、近代化されていくベンガル人たちの違和感が語られている。そして現代と前現代の相克する緊張の中に「彼」が出現すること、近代化の抑圧への反抗を「咆哮の法」と言うらしいということが示唆されている。

しかし、博士はこのタイミングでどうやら「咆哮の掟」を理解してしまったらしく、こんなメモを残している。

SCP-001は現代と前現代の境界で創出された概念存在である。

緋色の王は血と骨と腱の存在である。彼の支配は正しく、闇の正義である。

SCP-001は 生物、皇帝概念存在として顕現するよう意図された物理存在である。

彼は恐怖と、憤怒と炎を滴らせる剣とともに現れる

SCP-001は古代のトルクメニスタン起源である。元来は古代スキタイの神格であり

彼らは弓を背にし、屠るたび笑い、蹄を轟かせ進軍する

SCP-001は科学的現象である。それは分類されるだろう。それは収容描写されるだろう。それは異常な実体として理解されるだろう。他のすべての

しかし彼は割れ目に、断層線に存在する。彼は描写を養分とする。科学を、客観性を、そしてその質を養分とする。七つの鎖!七人の花嫁!七つの封印!緋色の王のた

私はロバート・モントーク、レベル4研究員、SCP-001プロジェクト主任。私は研究者。私は厳格で、合理的な意思を課してきた。私はコントロールできている。私には力がある。私には力がある。

私は暗く曇った空を見上げ、全能の神を恐れて震えるもの。私は自由だ。私は鎖に繋がれ私は博士

……明らかにヤバくなっている。

その後

2018/5/22、ディペシュの収容室に時空の亀裂が走った。
ここで、モントーク博士は彼から「王」の存在意義について知らされた。ここは、彼の発言の重要な部分を引用する。

(モントーク処置は意味があったのかについて)誕生を防ぐためには、それは何か恐ろしいもの、何か苦痛と激怒と憤怒の中で表現された邪悪なものでなくてはならなかった。だから有効だった。それは決して科学的な手続を規定するための真摯な努力ではなかった。君の役職らしくもない。それは客観性に見せかけた純粋な、全くの憎悪だった。
君は王が君から弟を奪ったと思い、王を害そうと思ったのだ。だが勿論、そうはならなかった。
そして君が毎日、あの哀れな少女にしていることは、ただの残虐行為と殆ど変わらない。だが効果的な残酷さだ。詳細は重要ではない。問題は意図だ。それが全てにとって重要だ。

なぜ緋色の王が存在すると思う? SCP財団が存在するからだ。
現代性は彼が形作られる助けとなり、彼の怒りの輪郭を規定する。だが彼が具現化するのは現代性が彼の王国に干渉し始めたときだ。現代性は君の存在にある。君の肉体がまずあった。君は、君の啓蒙された理性の哲学に沿わない全てを、閉じ込め、隠し、分類し、解明するために生まれた。
全ては理解され、説明され、妖精や神から、シンプルで理解しやすい論理と事象の塊へと変形されなくてはならなかった。忌まわしい。そしてそんなことは永遠に続かない。何かが生まれなくてはならなかった。何かが反対側に立ち上がらねばならなかった。

彼は渦を巻くアノマリーたちの創造物だ。世界中のとてもたくさんの、異なった時代からのな。
彼は失われた世界の、前現代の記憶だ。現代性、新しいもの、人間中心主義、そして我々の日々の存在を示すあざ笑う冷たさへの憎しみという形で顕現するように作られている。調和しないアノマリーと壊れゆく我らが精神の完璧なバランスから鍛造されている。
彼はこの圧倒的な、避けられない緊張から作られた実体だ。冷たく、灰色で、目的なき新しいものに出会ったときの古い世界の咆哮のものだ。
彼は我々の堕ちた過去の復讐だ。
彼は捨て去りながらも偏愛する世界の中の、古きものの概念だ。

「緋色の王」の正体は、現代と前現代との間、時代の狭間にある緊張の顕現。論理と事象、即ち理解の対極にある「わからないモノ」の化身である。その目的は、否、存在する理由はただ一つ。否定し、破壊すること。それだけなのだ。

そして、ただ世界全体が現代化されるのみならず、「わからないモノ」を科学的に解析しようとする財団こそが、王の顕現を最大限に後押ししていたのだ。

博士は私怨のためにモントーク処置を実施したが、それが全くの残虐行為だったからこそ、財団の科学的側面を和らげ、王の出現を阻止できていたのだ。

3つの法をまとめるとこうなる。
  • 「血の法」は緋色の王=原始的な社会の支配下で自然や神々を畏れ生きる弱々しい人間の生き方。
  • 「凝土の法」はコンクリートに覆われた近代社会で、自然法則を科学的に理解して生きること。
  • 「咆哮の法」は現代社会に違和感を感じた者たちが、原始社会に回帰しようとすること。

これらの理解を得て、博士はSCP-001の収容プロトコルの改正を求めたが、O5評議会はこれを却下。具体的に博士がどのようなことを求めたのかは語られていないが、却下したO5の声明文、そしてその結果として改定された冒頭のプロトコルから以下のことが示唆される。
  • 博士は、異常を科学的に解析しようとする財団のポリシーこそが害悪であり、変更すべきだと求めたが、財団の根幹に関わるポリシー自体は変更できないと却下された。
  • 一方、緋色の王の収容自体は「無干渉が一番である」と提案し、受け入れられ反映されている。

この段までの内容を理解した読者ならば、この結論がおかしいことに気づくはずだ。1つ目が受け入れられなかったならば致命的であり、緋色の王の復活は避けられない。にもかかわらず、その破滅を念押しするかのように、何の根拠もない2つ目が受け入れられている。
つまり博士は、半分本当で半分ウソの情報をO5評議会に伝えたのだ。「財団が科学的態度を取ることは緋色の王の復活を後押しする」、これは真実だ。しかしO5は受け入れなかった。ならばと、すでに「咆哮の法」に同調していた博士はいっそ破滅を確実なものとするために、それ以外の対策を一切封じる2つ目の嘘情報を教えたのだ。これが、「Safeである理由はいまいちはっきりしないが、異論を挟むと解任される」ちぐはぐな報告書の理由だ。





最後に、この報告書はこのようなメモで締めくくられる。

彼らのブルドーザーが来るのを、隠れて見ていた。最良の土地は木々にはもったいない、と彼らは言った。彼らは木々を裂き、根を切り、テーブル、椅子、その他の単調な物品を作るために取り去った。そして何週間も、何ヶ月もかけ、彼らは土地を平らにした。彼らは土台にコンクリートを流し込んだ。それは秩序だった流儀で均され形を整えられ、正確な四角形へと切断され、正確に並べられた。

コンクリートの大いなる壁がいくつも立てられた。大きさが正確に揃えられた窓が付けられた。他の部分は規格化された煉瓦で埋められた。建設に従事する者たちも、他の労働者たちも、効率的で正確に長く働き、細部を、調度品を、正確で抽象的な模様の壁紙を、そしてその他の全てを満たし、施設を作り上げた。

ついに、それは完成した。一本の新しい木が、中央の中庭のそのまた中心に植えられた。気まぐれや娯楽の意識から発想されたのではなく、むしろそれらを、灰色の中心にある現実に添えた少しの自然感覚の中で与えるために。

私は見て、そして彼ら — 我々 — が成したことについて考えた。彼らが望んだ世界について考えた。彼らの強さの欠如について考えた。私には何が善で、何が悪かはわかっていた。そしてどちらにも、それを見出すことはできなかった。私は藁で作られ、濃いペーストで互いに継ぎ合わされ、何百も、何千もが同じ方法で、何千もの同様の店で売られる人々の虚ろさについて考えた。我々が失ったものについて考えた。そして私は咆哮した。

サイトが完全に稼働する前日の夜に、私は木々の種を掘り起こして取り替えた。私が作った種に。サイト-231の上には血と骨と腱のものが立ち上がるだろう。歩きまわり、欲望の目でものを見、そして自らの腹を満たす木。それは奇妙な炎を滴らせるだろう、そしてその炎は燃やし、同等に温めもするだろう。そして彼らはそれを見上げ、取り返しがつくうちに、声を聴くべきだったと悔やむだろう。

この途が間違っていることはわかっている。だが少なくともそれは途なのだ。

思索と祈りとともに
ロバート・モントーク、緋色の王の子

―――その時は、近い。




追記・修正はわからないモノをわかるモノにできる人にお願いします。

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