登録日:2019/07/14 17:09:48
更新日:2023/10/30 Mon 14:27:54
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『悪魔のサンタクロース 惨殺の斧(Silent Night,Deadly Night)』とは、1984年に公開されたアメリカのスラッシャー映画。
監督:チャールズ・E・セリアー/脚本:マイケル・ヒッキー/製作:アイラ・リチャード・バーマック
上映時間は85分。
サンタクロースの格好をした
殺人鬼に若者達が次々に殺される単純明快なB級スラッシャー映画であり、クリスマスイブの夜に
リア充どもが虐殺される様子を見てスカッとするお前らのために作られた映画である。
…そうだったら良かったのにね…
本当の概要
本作は確かに、「クリスマスイブに若者が殺人鬼に虐殺される映画」である。
しかし、「主人公を含む若者グループが殺人鬼に襲撃される様子を描いた映画」ではない。
本作は「元は純真無垢な普通の少年だった主人公が、様々な不幸の果てに発狂し、殺人鬼に変貌した挙げ句、悲惨な末路を遂げる様子を描いた映画」である。
つまり、1980年代のスラッシャー映画のなかでも、ストーリーが重いのである。
そのため、いつもの爽快な殺戮劇をみても、素直に喜べないかもしれない。
【あらすじ】
1971年。クリスマスイブ、五歳だったビリーはサンタクロースの格好をした強盗に両親を殺された。
月日は流れ、18歳になったビリーは、トラウマを抱えながらもおもちゃ屋で働き始める。
真面目な勤務態度を評価され、クリスマスイブには怪我をしたスタッフの代わりにサンタ役を任されるが、サンタクロースの扮装をした瞬間、まるで別人となったビリーは、町を血の海に染めていく…
【登場人物】
ビリー(Billy)
演者:Robert Brian Wilson(18歳のビリー)/Danny Wagner(8歳のビリー)/Jonathan Best(5歳のビリー)
元は純粋にサンタクロースを信じる普通の子供であったが、五歳の時のクリスマスイブに痴呆症の祖父から「
サンタクロースは悪い子にお仕置きする」と吹き込まれ、更にサンタクロースの扮装をした強盗に両親を殺され、一生のトラウマを背負うことになる。
その後、孤児院に引き取られるが、そこではスペリア院長から「セックスは悪」という歪んだ思想を植え付けられた上、心のケアを全く考慮せずに無理やりクリスマスのイベントに参加させられたり、日常的な虐待を受け、これがビリーのもう1つのトラウマとなる。
しかし、唯一親身になってくれた修道女マーガレットのおかげか奇跡的に好青年に成長を遂げた。
しかもイケメンでマッチョで仕事熱心で陽気という高スペックであり、おもちゃ屋に無事就職することになる。
真面目且つ陽気なビリーは直ぐに職場の人間とも打ち解け、自分の居場所を見出だしつつあった。
しかし、クリスマスが近付くと二つのトラウマによって精神が不安定になっていき、同僚との仲も険悪になってしまう。
そして、クリスマスイブの日。サンタクロース役のスタッフが怪我で欠員してしまい、ビリーはサンタ役に抜擢される。サンタクロースに対してトラウマを抱えていたビリーにとっては死んでもやりたくない仕事であったはずだが、店長の期待に応えたかったビリーは、その仕事を引き受ける。
なんとか終業時間までサンタクロース役をこなすビリーだったが、その後の打ち上げの際、初めて酒を飲み、更に同僚がセックスしようとしている場面を目撃してしまい、二つのトラウマと「セックスは悪」、「サンタクロースは悪い子にお仕置きする」という思想が歪に結び付き発狂。悪魔のサンタクロースと化し、衝動的に二人の同僚を殺してしまう。
更に店長と副店長を殺すと、憎き院長に復讐をするため、孤児院を目指す。
道中でセックスしようとしていた若いカップル、雪山でソリを強奪して遊ぶDQN、誤射でサンタクロースの格好をした罪の無い神父を誤射した警官、雪だるま君に「お仕置き」をし、
遂に辿り着いた孤児院で院長に斧を振り上げるが、同時にマーガレットが連れてきた警官に射殺される。
「もう大丈夫、サンタクロースは死んだ」と言い遺すと、マーガレットに看取られ絶命した。
元々は
マイケル・マイヤーズなどのサイコパスと違って普通の子供だったビリーが、様々な
外的要因で狂って行く様子は、見ていて鬱になるかもしれない。
しかも彼は、人生で初めて
幸せを掴みかけていたのにも関わらず、である。
更に最期も
復讐を成し遂げられず死ぬという後味の悪いものであり、マーガレットに看取られたのが唯一の救いである。
因みに、凄ェ怪力であり、マッチョな男を片手で持ち上げるほどである。また、耐久力もあり、金的を食らっても大してダメージを受けていなかった。アーチェリーも扱えるなど、器用な面もある。
使用した凶器は両刃の伐採斧、クリスマスツリーの電飾、ネイルハンマー、アーチェリー、鹿の頭の剥製、素手。
余談だが、セックスに対してトラウマがあるため、当然ながら童貞である。
リッキー(Ricky)
演者:Alex Burton(14歳のリッキー)/Max Broadhead(4歳のリッキー)/Melissa Best(赤ん坊のリッキー)
ビリーの弟。兄を慕っている。
サンタクロースの強盗に見逃され、ビリーと共に孤児院に引き取られる。
次回作で兄以上にはっちゃける。
ついでに、兄と同じくらいマッチョなイケメンと化す上に彼女持ちのリア充である。
そのくせリア充も非リア充も殺すため質が悪い。
でも最後は院長を……でかした!
エリー(Ellie)
演者:Tara Buckman
ビリーとリッキーの母。サンタクロースの扮装をした強盗に襲われ、強姦されかけるが、抵抗したため喉を切り裂かれ死亡。
ジム(Jim)
演者:Jeff Hansen
ビリーとリッキーの父親。サンタクロースの扮装をした強盗に射殺される。
ビリーの祖父(Grandp)
演者:Will Hare
痴呆症のビリーの祖父。五歳のビリーに「サンタクロースは悪い子にお仕置きする」と吹き込む。
本作の元凶その1。
レビット氏(Mr.Levitt)
演者:Eric Hart
スーパーの店員。1971年のクリスマスイブにサンタクロースの扮装をした強盗に射殺された。
サンタクロースの扮装をした強盗(Killer Santa)
演者:Charles Dierkop
サンタクロースのコスチュームを着た中年男性の強盗。スーパーの店員レビット氏を射殺して31ドルを奪い、更にビリー一家にも襲いかかった。ビリーの父親を射殺し、母親を強姦未遂の末にナイフで殺害した。
この悪夢のような光景を見てしまったビリーは、一生のトラウマを背負うことになる。
本作の元凶その2。特に報いを受けていないのも、本作のストーリーの鬱度に拍車をかけている。
スペリア院長(Mother Superior)
演者:Lilyan Chauvin
ビリーとリッキーを引き取った孤児院「聖メアリー孤児院(Saint Mary's Home For Orphaned Children)」の院長。クリスマスが近付くと精神が不安定になるビリーの心のケアを一切考慮せず、厳しい教育や体罰を日常的に行い、さらに「セックスは悪」という歪んだ思想を植え付けた。その上クリスマスのイベントに無理やりビリーを参加させたり、サンタクロースに扮装したオブライエン神父の膝に座らせようとしてビリーのトラウマを散々に抉った。
本作の元凶その3。ビリーにとって孤児院での日々は地獄であった。
胸糞悪いことに、最期まで生き延びる。
…しかし、次回作では…リッキーGJ!
シスター・マーガレット(Sister Margaret)
演者:Glimer McCormick
唯一ビリーに親身になった修道女。しかし、ビリーの就職先をクリスマスイベントを避けられない「おもちゃ屋」に決めるという大ポカをやらかした本作の元凶その4。
最後はビリーを看取った。
シスター・エレン(Sister Ellen)
演者:A.Madeline
孤児院の修道女。院長に従順。空気。
オブライエン神父(Santa at Orphanage)
演者:Spencer Ashby
サンタクロースの扮装をした神父。難聴。1974年のクリスマスには8歳のビリーに訳もわからない内に殴られた。
1984年のクリスマスに子供達にサプライズしようとしたが、ビリーと誤認されバーンズ巡査に射殺された。
シムズ氏(Mr.Sims)
演者:Britt Leach
おもちゃ屋の店主である小太りの中年男性。
就職してきたビリーを信頼し、良好な関係を築いていたが、マーガレットがビリーのトラウマを説明しないという大ポカをやらかしたせいで、ビリーにサンタクロースの扮装をさせる。
最後はクリスマスイブの終業後の打ち上げの際、発狂したビリーにネイルハンマーで殺された。
ランドール婦人(Mrs.Randall)
演者:Nancy Borgenicht
おもちゃ屋の副店長。
同じくビリーと良好な関係だったが、クリスマスイブの打ち上げの際、発狂したビリーにアーチェリーで殺された。
サンタクロースの扮装をしたおもちゃ屋のスタッフ(Santa in Store)
演者:J.Paul Broadhead
怪我で欠員したため、ビリーが代役を担当することになった。
パメラ(Pamela)
演者:Toni Nero
ホッケーマスクの殺人鬼の母ちゃんとは無関係。
おもちゃ屋の店員の一人。ビリーが密かに想いを寄せていたが、同僚のアンディと恋仲。
クリスマスイブの打ち上げの際、アンディに無理やり迫られていたが、その光景が母親の最期と重なったことでビリーの精神はとどめの一撃をくらい、発狂することになる。
カッターナイフで切り裂かれ死亡した。
本作の元凶その5。
アンディ(Andy)
演者:Randy Stumpf
ビリーの同僚のマッチョな男。パメラと恋仲。
ビリーとは当初は良好な関係だったが、クリスマスが近付き精神が不安定になったビリーが反抗することが多くなったため、険悪な関係になってしまった。
最後はクリスマスイブの打ち上げの際、パメラに迫って無理やりセックスに及ぼうとした結果、発狂したビリーに電飾を首に巻き付けられ、片手で吊り下げられて窒息死した。
デニース(Denise)
演者:Linnea Quigley
恋人トミーを家に連れ込みセックスしようとしたが、突然ビリーに襲撃され、鹿の頭の剥製に串刺しにされ死亡した。
完全にとばっちりである。
トミー(Tommy)
演者:Leo Geter
デニースの恋人。デニースが殺され怒り心頭でビリーと対峙する。
割りと善戦したが、最後はパワー負けし、ビリーに放り投げられ、二階の窓ガラスを突き破って地面に落下し、死亡。
完全にとばっちりである。
シンディ(Cindy)
演者:Amy Stuyvesant
デニースの妹。かつてのビリーと同様に、純粋にサンタクロースを信じる少女。
ビリーから「良い子」だったか聞かれ、「良い子だった」と答えた結果、血まみれのカッターナイフをプレゼントされた。トラウマ必至である。
しかも、直後に「姉の惨殺遺体」を発見してしまうことを思うと、上記のリア充虐殺もただただ鬱展開である。
ナードコンビ
クリスマスイブの夜に野郎二人でソリで遊ぼうとする、アウトドア派なお前ら。
DQNコンビにソリを強奪されたが、おかげで助かる。
DQNコンビ
ナードコンビからソリを強奪して遊ぶが、一人はビリーに斧で斬首された。
自業自得すぎる。
リチャーズ警部(Captain Richards)
演者:H.E.D.Redford
マーガレットと共にビリーを捜索する警部。
ビリーに引導を渡す。
バーンズ巡査(Officer Barnes)
演者:Max Robinson
ビリーを捜索する警官の一人。オブライエン神父をビリーと誤認して射殺してしまうが、後に因果応報とでも言わんばかりにビリーに斧で惨殺される。
雪だるま(Snow man)
ビリーに斧で惨殺された(雪だるま君迫真の演技!)。
余談だが、本作はその内容から公開当時は批判が殺到し、次々と上映禁止となった。
しかし、それが逆に話題となり、続編はリメイクを含め7作製作された。
また、本作の出来自体は1980年代の他のスラッシャー映画とくらべても見劣りしない…どころか人間ドラマがしっかりしている上に惨殺シーンも完成度が高く、普通に良作である。
追記・修正は、一年間良い子だった人だけがしてください
- あっちの国じゃ、サンタを神聖な者として見る意識が日本より強い。『34丁目の奇跡』なんて映画もあるくらいだから、非難されたのも仕方がない。 -- 名無しさん (2019-07-14 20:45:33)
- 「悪い子にお仕置きをするサンタ」ってのは実際に存在する伝承だから、それを教えたこと自体は別に問題ではないだろう。それがほかのもろもろとつながってしまったことが悲劇のきっかけなだけで -- 名無しさん (2019-07-14 21:18:51)
- ニコニコで有名な「カルピスDAY」は2作目でのリッキーのセリフの空耳である。 -- 名無しさん (2019-07-14 23:23:53)
- キリスト教世界では「セックスは悪」という思想を強いられて歪む子供は多かっただろうな。殺人鬼のフィッシュとかも幼少時にお尻を叩く罰を受け続けているうちに、異常性癖に目覚めたとも聞いたことがあるし -- 名無しさん (2019-07-15 12:37:39)