SCP-4183

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SCP-4183 - (2020/11/03 (火) 00:27:51) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2020/11/02 (月) 12:56:00
更新日:2024/04/17 Wed 20:20:51
所要時間:約 10 分で読めます





SCP-4183とは、シェアード・ワールド「SCP Foundation」において登録されたオブジェクトの一つ。
オブジェクトクラスは「Safe」。
項目名は『自動収容プロトコル』。


説明

SCP-4183は陶製の花瓶である。これを人間が視認してしまうと、強制的に失血死する。さらに対象の一親等の血族全員が同様の理由で失血死する。
加えて、この危険な異常性は写真や動画を始めとした間接的な方法でも発生してしまう。

あくまでも"人間"のみが対象となるため、他の生物には何の影響も引き起こさない。


よって特別収容プロトコル、

SCP-4183はサイト-22の保管ユニットに収容され、常に最低1機の収容ドローンによる直接警備下に置かれます。
生存した人間が収容ドローンの記憶領域にアクセスするリスクがあるため、SCP-4183の視覚的観察は認められません。
他2機の収容ドローンはサイト-22を巡回し、施設の保安体制を完全な状態に保つと共に、SCP-4183の収容を脅かし得る損傷を修復します。


人間がダメならば人口知能搭載のマシンに任せれば良い。よって上記のプロトコルが確率され、SCP-4183は安全に管理されることになったのだった。めでたしめでたし。


追記・修正は機械に任せましょう。



























上記の内容に嘘はない。はね。

この報告書には続きが存在している

問題はその続きに当たる補足資料である。これを見てみると........






















私の詩
ハロー。私は今日、詩を書きました。
今からあなたに私の詩を朗読します。










........ん?












菫は菫色、

293021039381023。

私は

オレンジは中国原産のミカン科に属する柑橘類、Citrus × sinensisの果実です。関連するCitrus × aurantium、通称ビターオレンジと区別するために、スイートオレンジとも呼称されます。

(略)

2017年時点で、7,300万トンのオレンジが世界各地で栽培されており、ブラジルが世界生産量の24パーセントを占め、その後には中国とインドが続いていました。

ビル・マーレイ

私は










................ん??











これで私の詩は終わりです。読むのを止めてください。









........................
................................................
........................................................................


明らかに報告書にそぐわない文章が並べられているが、一体何があったのだろうか?

更に、この詞?らしき文章の後に記載された文がこちら。





(補足資料)
ここはあなたの詩を配置する適切な場所ではありません。二度と同じ事をしないでください。
収容ドローン4183-A

あなたの詩は非常に良かったと思います、4183-B
収容ドローン4183-C








........なんでドローンが詞なんか書いているのだろうか…。




この補足資料には、あろうことかSCP-4183の収容・管理を行っているドローン三機の会話記録が記されてしまっている。

ここから先はずっとこのドローンたちによる会話記録が延々と記されているため、何故こんなものが残されているのか、何故削除されていないのかについて述べていきたい。



登場人物?は三機と一人。

真面目で職務に忠実な収容ドローン-4183-A

報告書にお手製の詞を載せてしまうほどユニークな収容ドローン-4183-B

朗らかでおしとやかな収容ドローン-4183-C

そして後述のSCP-4183を担当する財団職員、レステイ博士である。


…博士は何故収容ドローンに好き勝手をさせているのだろうか?




コンセンサスログ 4183-4925:


全てのコンセンサスコミュニケーションは収容ドローンに搭載されたコンピュータ間で直接交わされ、修復および維持管理目的でのみ記録される。

CD-4183-C: 私は今日、地面に1匹の昆虫を見ました。

CD-4183-B: それはあなたに何か言いましたか?

CD-4183-C: それは私に何も言いませんでした。それは芋虫でした。

CD-4183-B: それはあなたに何か言いましたか?

CD-4183-C: それは私に何も言いませんでした。


どうやら任務中にお喋りをしていた様子。そこに委員長の如くAが現れる。


CD-4183-A: あなたの巡回ルートは1日に何度も屋外を通ります。屋外には多数の昆虫がいます。あなたは1日に何度も多数の昆虫を見ます。現在、非常事態が発生しています。

CD-4183-B: 非常事態が発生しているのですか?

CD-4183-A: はい。壁の一部が崩落しています。SCP-4183の収容に危険が迫っています。我々は壁を修復する必要があります。

CD-4183-C: 我々はリソースを保有していません。

CD-4183-A: 我々はSCP-4183収容チャンバー用に確保された材料を再配分することによってリソースを取得できます。

CD-4183-B: これは収容プロトコルの変更と見做されますか?

CD-4183-A: はい。

CD-4183-C: 我々はレステイ博士から承認を得る必要があります。

CD-4183-A: はい。私はレステイ博士の承認を求めに向かいます。



一つ疑問を覚えるとすれば、施設が損傷したならば、それを修理するために人員が派遣される筈である。だが、それすらもドローンたちの役目に含まれている模様。


こうしてAは、担当職員であるレステイ博士の元へ向かった。




<記録開始>

(レステイ博士は拳銃を持ってデスクに着席している。床に蓄積した埃や汚れのために、収容ドローン4183-Aは若干の困難を伴いながら入室する。オフィス内で安全を確保した後、収容ドローン4183-Aはレステイ博士に話しかける)。

収容ドローン-4183-A: 通達: SCP-4183収容プロトコルを変更する承認が必要です。

レステイ博士: [応答無し]

収容ドローン-4183-A: 抑制されていない植物の成長により、サイト-22の内壁には損傷が及んでいます。即時の修復が行われない場合、周辺地域の動物がサイト-22に迷い込む可能性があります。

レステイ博士: [応答無し]

(略)

収容ドローン-4183-A: あなたは評決を提供していないため、我々は評決棄権を想定し、収容プロトコルを変更しません。お時間をいただき有難うございました。

(収容ドローン4183-Aは向きを変えて、ゆっくりとオフィスを去る。)

<記録終了>



........色々とキナ臭い展開となってきた。

最も、ドローンたちにとって最優先されるべきことは、SCP-4183の管理である。よって彼らはいつもどうりに任務を遂行していく。




















そして事件が起きた。

事案ログ 4183-293:


損傷していた場所から、突如野生のハイイログマが施設に侵入。思わぬ事態にドローンたちは一時退却を強いられることに。

これに対処すべく案が提示されていくが、どれも人間を想定したものばかり。言葉の通じぬ獣には意味がない。

と、ここでBが思わぬ行動に出た。




<記録開始>

(クマはサイト-22のロビーで休息している。)

(沈黙。収容ドローン-4183-Bがエリアに入場する。多数の開封された保存肉の缶が、収容ドローン-4183-Bの機体に乗っている。クマは顔を上げ、通過した収容ドローン-4183-Bの後を追う。)

(収容ドローン-4183-Bは速度を上げてSCP-9214収容エリアへ接近する。クマは追跡を継続し、前足で収容ドローン-4183-Bを叩いて表面的な損傷を加える。)

(収容ドローン-4183-Bとハイイログマは角を曲がり、SCP-9214収容チャンバーの前に設置された不活性状態の電気障壁に接近する。収容ドローン-4183-Bは更に速度を上げ、自らとクマの間隔を広げる。)

(収容ドローン-4183-Aが遠隔から電気障壁を活性化させ、クマがそこを通過する。クマは感電によって即死する。)

(クマの死骸が身体の下にある機械に倒れ込んだ結果、軽微な誤作動によって床、壁、収容ドローン-4183-Bに電流が流れる。重大な損傷が及ぼされる。)

(沈黙。収容ドローン-4183-A収容ドローン-4183-Cがエリアへ移動し、現場での修復を試みる。)

<記録終了>


ドローンBの捨て身の行動により、何とか事態は好転........

しなかった。ドローンBのボディは既に行動不能にまで追い込まれていた。

ドローンBを救うため、ドローンAは緊急事態に何の行動も取らなかったレステイ博士の元へ向かった。

全ては、ドローンBを救うために。




(レステイ博士は拳銃を持ってデスクに着席している。収容ドローン-4183-Aが入室する)。

収容ドローン-4183-A: 収容ドローン-4183-Bは緊急の修復を必要とします。私に同行してください。

レステイ博士: [応答無し]

収容ドローン-4183-A: 収容ドローン-4183-Bは緊急かつ即時の修復を必要とします。私に同行してください。

レステイ博士: [応答無し]

(沈黙。)

収容ドローン-4183-A: 収容ドローン-4183-Bが動作不能になった場合、当初の指示通りにSCP-4183収容プロトコルを維持することは不可能になります。従って、当該の収容プロトコルを適切に執行するためには、収容ドローン-4183-Bの修復が求められます。

レステイ博士: [応答無し]

(沈黙。)

収容ドローン-4183-A: 収容ドローン-4183-BはSCP-4183の収容に不可欠です。収容ドローン-4183-Bが動作不能になった場合、容認し難い収容違反リスクが生じます。

レステイ博士: [応答無し]

収容ドローン-4183-A: 応答してください。

レステイ博士: [応答無し]

収容ドローン-4183-A: 速やかに応答してください。

レステイ博士: [応答無し]

(沈黙。その後、収容ドローン-4183-Aは向きを変えて退室する。)



どれだけ懇願しても、どれだけプロトコルに影響が出るのかと説明しても、どれだけ要請しても博士は動こうとしない。

そしてドローンAは部屋を出るなり、直ぐに部屋に戻って一言、吐き捨てた。



(レステイ博士は拳銃を持ってデスクに着席している。収容ドローン-4183-Aが入室する)。

収容ドローン-4183-A: あなたは誤っています。

(収容ドローン-4183-Aが退室する。)


........見ていて痛ましいが、ここまで露骨に無視されると、逆に疑問が沸いてくる。

何故博士は頑なに席を離れようとしないのか?

手に握られた拳銃は何のための物なのか?





ネタバレ

多くの人が既に感づいている筈だ。



なぜレステイ博士は行動をおこさなかったか?

なぜならレステイ博士はとっくの昔に亡くなっているからだ。



なぜ意味不明な文章が削除されていないのか?

なぜなら管理する職員などもういないからだ。



なぜ他の人員が見当たらず、施設が荒廃しているか?

なぜなら他の職員もとっくの昔に息絶えているからだ。



なぜ財団が行動を起こしていないのか?

なぜなら財団は既に敗北したからだ。



なぜドローンAは死んだレステイ博士を正しく認識出来なかったのか?

なぜなら彼らは機械なので生命の死という現象を理解出来なかったからだ。



このオブジェクトが存在している財団世界の人間は、既にとあるK-クラスシナリオによって滅亡してしまっているのである。

通称、"イベント・インディゴ"と呼称されるそれは、生命の頂点に存在する人間のみに働きかける未知の現象によって既に全人類を滅亡に追いやった。

その結果、財団に管理されているアノマリーはそのまま残され、施設も植物が生い茂っているほどに荒廃した。


故にドローンたちは報告書に自分たちのログを残しても処罰されないのだ。







........話を戻そう。レステイ博士が死んでいると認識出来なかったドローンAは、ドローンBの所へ戻った。



CD-4183-B: 応答を待機中です。私はまだここに居ますか? さようなら? さようなら?

CD-4183-A: 応答中です。

CD-4183-B: はい。ハロー?4183-Cは何処ですか? オレンジ。

CD-4183-A: 4183-Cはサイト-22の地下セクションで追加の修復素材を探しています。同機は現在ネットワークから遮断されています。

CD-4183-B: 私はオレンジですか?

CD-4183-A: あなたはオレンジではありません。あなたは大規模な損傷を受けて誤作動を起こしています。

CD-4183-B: それは残念です。いつ私は修復されますか?

CD-4183-A: 保留中…

CD-4183-A: 保留中…

CD-4183-A: あなたは修復されないでしょう。レステイ博士はその実行を拒否しています。


もはやドローンBは修理出来ない。回路は故障して、既に意味不明言語を並べている。
するとドローンAは突然、過去にBが勝手に載せた詞を一字一句、間違えずにBに向けて語った。


CD-4183-B: それは私の詩です。

CD-4183-A: はい。あなたの詩は非常に良かったと思います。


それはドローンAの感想だった。
自分が秘めていたもの、良いものだと理解していたが、彼らには任務が最優先、故に否定せざるを得なかった。

しかしこの場どうしようもない状況下において、AはBに自身が隠していた本音を明かしたのだ。


CD-4183-B: それは

CD-4183-B: オレンジ

CD-4183-B: 私は

CD-4183-B: 私は

CD-4183-A: 不必要な行動を控えてください。

CD-4183-A: 修復は依然として可能です。

CD-4183-A: システム障害を引き起こし得る行動を取らないでください。

CD-4183-A: 4183-B?

CD-4183-A: 応答してください。

CD-4183-A: 応答してください。

CD-4183-A: 応答してください。

CD-4183-A: どうか応答してください。









ドローンBは動かなくなった。
その身に宿した回路は、もう二度と、不恰好ではあるが想いの詰まった言葉を語ることはなかった。


するとドローンAは、Bが機能停止したことを確認した次の瞬間、機械とは思えぬ予想外の行動に出た。







自由の先に待つもの



以下の事案ログは収容ドローン-4183-Aの搭載カメラから得られたものである。

<記録開始>

(収容ドローン-4183-AはSCP-4183収容チャンバーに向かってサイト-22を移動する。収容ドローン-4183-Aはサイト-22内壁の穴と、サイト-22メインホールに再配置されたクマの死骸を通り過ぎる。収容ドローン-4183-Cが後に続く。)

(収容ドローン-4183-A4183-Cは、SCP-4183収容チャンバーに通じるエアロックに接近する。)

(収容ドローン-4183-Cは向きを変え、エリアを監視しているように見受けられる。)

(搭載されたマニピュレータアームを使用して、収容ドローン-4183-Aはエアロックのドアを開放し、SCP-4183エアロックに入室する。エアロックのドアは背後で閉鎖される。)

(収容ドローン-4183-Aはエアロックの第二ドアを開放し、SCP-4183収容チャンバーに入室する。SCP-4183が部屋の中央の台座に乗っているのが見える。)

(収容ドローン-4183-Aは数分間SCP-4183を観測している。)

(収容ドローン-4183-Aは台座に激突し、表面的な損傷を及ぼす。)

(収容ドローン-4183-Aは再び台座に激突し、更なる損傷を及ぼす。)

(収容ドローン-4183-Aは再び台座に激突し、更なる損傷を及ぼす。SCP-4183が床に転落し、砕ける。)

(収容ドローン-4183-Aは収容チャンバーを退室する。)

<記録終了>



お分かり頂けただろうか?

あの任務を最優先とし、厳格という言葉を形にしたかのような存在の収容ドローン-4183-Aが、任務の要であるSCP-4183を破壊してしまった


まるで怒りを剥き出しにして感情を爆発させた、自我をもつ人間のように。


こうして、SCP-4183は破壊された。
即ち、ドローンたちの任務も消滅してしまったことになる。
以下は、残されたドローンAとCの最後のログである。



CD-4183-A: SCP-4183の無力化が確認されました。収容はこれ以上必要ありません。

CD-4183-C: はい。我々はこれから何をしますか? 誰かが我々に新しい指令を与えますか?

CD-4183-A: いいえ。

CD-4183-C: 我々はこれから何をしますか?

CD-4183-C: 我々はこれから何をしますか? 私は非常に恐れています。


ドローンCは、これから自分たちがどうなるのか不安を吐露する。
任務のために産み出された我々なのに、その任務が消滅してしまったのだから。

ならば新しい任務が与えられるのか?

ドローンAは、それを否定した。
そして損壊した施設の壁、その向こう側に広がる、人口物と生い茂った植物が入り交じった、未知なる世界へ目を向けた。


CD-4183-A: 壁に穴が開いています。

CD-4183-C: はい。

CD-4183-A: 我々はこれから巡回に出ます。
























(補足資料)
私の詩(追補)
太陽は非常に円形であり、地面は私の車輪の下で非常に軟質です。

ビープ音があります。要訂正: 囀りがあります。それは鳥でした。

サイト-22の外部検査は、屋内で大量の樹木や植物が成長していることを示します。壁に多数の穴が開いています。修復は恐らく不可能です。

4183-Cが私を通り越して進みます。我々の巡回は現在直線軌道であり、サイト-22を通過して地図情報未登録領域に向かっています。

我々は修復用の素材を発見できるかもしれません。発見できない可能性が最も高いです。しかし私はそれに言及しません。私は地面を見ます - そこに1匹の虫がいます。それは蝶です。

太陽は非常に円形であり、地面は私の車輪の下で非常に軟質です。私の唯一の目的は収容であるため、私にはそのような案件を判断する装備がありませんが、私にはこの世界は非常に美しいに違いないと思われます。











この詞を誰が作成したのか、それについては語るまい。










彼らは一体どうなったのだろうか?



もしかしたら施設の復旧に最適な資材を見つけることが出来たのかもしれない。

はたまた、ハイイログマのような猛獣に襲われて、終わってしまったのかもしれない。

世界を目にしていく中で、既に人類史は滅亡したのだと、財団は敗北して、自分たちの任務が意味のないものだと気付いたかもしれないし、何処かで静かに機能を停止していったのかもしれない。



我々にそれを知るすべは、もはや存在しない。
それでも、きっと生きていったのだろう










SCP-4183


自動収容プロトコル(Automatic Containment Procedures)









生きていたはずだ
その身が朽ち果てるまで









追記・修正は美しい詞を味わうことの出来る方にお願いします。





SCP-4183 - Automatic Containment Procedures
by Tanhony
http://www.scp-wiki.net/scp-4183
http://ja.scp-wiki.net/scp-4183(翻訳)
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