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「チェンニーナ事件」(2025/03/09 (日) 20:23:23) の最新版変更点
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&font(#6495ED){登録日}:2016/12/28 (火) 01:08:00
&font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red)
&font(#6495ED){所要時間}:約 13 分で読めます
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チェンニーナ事件とは、1954年11月1日にイタリアで起きた異星人目撃事件である。
それも、本事件は&bold(){[[異星人>宇宙人]]による強盗事件}である。
異星人はやはり我々地球人に危害を加えるためにやってくるのだろうか。なんとも恐ろしい話である。
……と行きたいところだが、本事件は&bold(){[[UFO>未確認飛行物体(UFO)]]・異星人目撃史上屈指のツッコミどころ満載事件}であり、
一部のマニアの間ではカルト的な人気を博している。
ではただの与太話かというと、&bold(){物証や多くの目撃者がいるため、そうとも言い切れない}という何とも不可解な事件である。
なお、本件のような、「ただの誤認・勘違いとも言いにくく、かといって異星人の仕業と仮定しても疑問が残る」という、テンプレから外れた目撃事件は
「ハイ・ストレンジネス事例」などと呼ばれ、一部では重要視される一方で一般のオカルト本などでは無視されることが多い。
この事件以外ではジル神父事件や[[イーグルリバー事件]]が代表格。
#openclose(show=▽目次){
#contents()
}
*概要
事件が起きたのはイタリア中部のトスカーナ州アレッツォ県チェンニーナ。
発生したのは11月1日の午前6時半頃である。
当時はまだ現場一帯には電気も無く、相当薄暗かったようだ。
異星人と遭遇したのは、近所に住む農夫のローザ・ロッティ・ネイ・ダイネリさん(以下慣例に乗っ取りロッティ夫人と呼ぶ)。
当時は11月1日はカトリックでは万聖節という祝日とされており(現在は諸聖人の日とされる)、ロッティ夫人も新品の服を着て、
足を汚さないように靴とストッキングは手に持って裸足になり((現在の感覚だと理解に苦しむが、当時の報道でもこの点についてツッコまれていないことから、当時の[[田舎]]では普通のことだったようである))、もう片方の手には備えるためのカーネーションを持っていた。
ちなみにロッティ夫人は滅多に町に行くことも無く、オカルトやUFOについての知識も皆無に近く(この点には後述するように疑問もある)、特にカメラ嫌いだったという。
さて、ロッティ夫人が「それ」を見たのは、家のごく近所にある「アンブラの小山」と呼ばれる丘の頂上付近だった。
糸杉の10メートルほど先に、&bold(){今まで見たことも無い奇妙な物体}が見えたのだ。
それは紡錘形(要するに[[ミサイル]]やロケットみたいな形)で、高さは1.7から2メートルほど、最大直径は1.2メートルほどで、表面は磨いた革のような感じだったという。
そして胴体にはハッチや開口部があった。
なんだか我々の想像するUFOとは随分違ったタイプのようである((ちなみに窓があったという資料もあるが不詳))。
だが、驚くのはまだ早い。
彼女が奇妙な物体に気を取られている時、&bold(){突然茂みの中から奇妙な2体の生物が現れた}のだ。
ロッティ夫人の証言によると、その生物の特徴は……
&bold(){身長1メートル以下の壮年風の[[イケメン]]で、[[ウサギ]]のような歯をしており、第一次世界大戦風の軍服っぽい服の上から[[マント]]を羽織っていて、中国語っぽい言葉を話していた。}
……いや、&bold(){この時点でどうしようもないマヌケ感が漂っている}のは否定できないが、まあもう少し付き合ってほしい。
&font(l){というかウサギのような歯をした壮年の男をイケメンと評するとは、ロッティ夫人の男性の好みはかなり変わっていたのかもしれない。}
さて、こいつらは終始ニヤニヤと笑みを浮かべながら、中国語っぽい言語でロッティ夫人に話しかけてきたという。
地球人との接触を極力避けようとするような異星人が多い中で、なかなかフレンドリーな奴らである。
と思いきや、なんとそいつらは&bold(){ロッティ夫人の手にしていたカーネーションとストッキングを突然ひったくった}。
なんという蛮行。
おそらく地球史上、初めて地球人にこのタイプの異星人からの犯罪行為が加えられた瞬間である。
&bold(){被害が異様にショボいけど}。
そのまま宇宙船らしきものに乗り込もうとする2人組。
ロッティ夫人は彼らに&bold(){素足ではみっともなくて教会に行けないからストッキングだけでも返せ}と抗議。
こんな異様な体験をしたら財布を投げ出してでも逃げ出すという人も多いだろうに、ロッティ夫人は真面目で身だしなみに気を遣う淑女だったのだろう((ちなみに異星人との遭遇事件では、異星人だけではなく遭遇した地球人までもが異様な行動を取ることが良くある))。
一応異星人どもも彼女の要求を一部理解したようで、&bold(){カーネーションのほうを5本だけ残して返した}。
こいつらにとっては&bold(){女性のストッキング>異星で採集した生物の標本}だったらしい。
変態か。
その後、異星人たちは宇宙船の中から茶色(資料によっては白)の丸い物体を取り出した。
そしてストッキングと花のお礼に、とでも思ったのか、それをロッティ夫人に渡そうとした。
ロッティ夫人は直観的にそれを写真機だと思ったという。
写真を撮られることが大嫌いだったロッティ夫人はいよいよパニック状態に陥り、異星人たちに向かって叫んだ。
&bold(){「そんなもの渡さないで!! ストッキングを返して!!」}
異星人との遭遇という前代未聞の事態にも拘わらず、&bold(){関係者全員が異様な執着を見せるストッキング}。
&bold(){こんなファーストコンタクトはやだ。}
我々が知らないだけで、女性のストッキングは宇宙的に価値があるものなのだろうか……
その後、ロッティ夫人は今度はその装置が[[爆弾]]かもしれないと思い、事ここに至ってようやく一目散に逃げだした。
ここまでお読みいただいてわかるように、数ある異星人遭遇事件の中でもツッコミどころ満載で&bold(){屈指のカオスな事件}である。
わざわざ[[地球]]までやってきて、[[どうでもいい]]ようなものをひったくっていった異星人(どうしてもストッキングと花が欲しいなら、地球人に化けて店で買うなりそれが仮に無理でもカーネーション位だったら地球人と接触せず入手する方法などいくらでもあるだろう)
もさることながら、証言者たるロッティ夫人の言動もはっきり言って支離滅裂である。
カオスっぷりでは[[モンティ・パイソン>空飛ぶモンティ・パイソン]]といい勝負かもしれない。
そのせいだろうが、本件はオカルトに肯定的な文献ではあまり詳しく触れられることは少ない。
&bold(){こんなアレな事件を掲載したら他の目撃の信憑性まで疑われる}という判断からだろう。
確かにこんなもん大真面目に忠実に引用したところで&bold(){新手のシュールギャグ小説}と間違われるのがオチである。
だが、&bold(){こんな事件に限って物証やら他の目撃者やらが出てくる}というのが、UFO・異星人事件の面白いところであり、また頭の痛いところである(上述の[[イーグルリバー事件]]もこのパターンである)。
*着陸痕
教会のある村についたロッティ夫人は、同じく教会に行く途中だった友人夫婦に会い、たった今の出来事を語った。
その後教会に駆け込み、その様子を見てただ事ではないと心配した牧師や他の参拝者に同じく事件の証言をした。
この時ロッティ夫人が酷く動揺していたことは、多くの関係者が一致して証言している。
そこで牧師たちは現場に行ってみることに。
するとすでに異星人や宇宙船の姿は無かったが、&bold(){地面に穴が空いている}のが見つかった。
それは穴は幅10㎝、深さ10~15cmで、ちょうどロッティ夫人が目撃した宇宙船の底部が地面に刺さってできたようにも見えたという((この時地面に焼けた跡があったのを見たという証言もあるが、いずれも事件後数十年経ってからのものであり、信頼性には疑問が残る))。
やがて通報を受けた憲兵隊も現場に駆け付け、ロッティ夫人への聞き取りを開始。
憲兵隊は[[嘘]]をついているなら今のうちに言わないと罰せられるぞと念を押したが、ロッティ夫人は証言を撤回せず供述書にサインをした。
この穴であるが、多くの野次馬が殺到したため翌日にはもはや明瞭ではなくなり、写真も残っていないという。
それでも多くの人が目撃・確認しているのは間違いないようだ。
とはいえ、これが動かぬ証拠になるかと言われると、流石に首を傾げざるを得ない。
幅10㎝、深さ10~15cm程度の穴など、[[動物]]の活動など他の原因で出来ることも十分考えられるだろう。
貴重な証言ではあるが、写真もない以上、今となっては確かめようがないと言えよう。
*ロッティ夫人以外の目撃者
この事件、証言者の数が非常に多いのも特徴である。
これもこの事件を荒唐無稽として切り捨てられない理由となっている。
ただし、大部分は飛行しているUFOらしきものを見たというものであり、着陸した宇宙船及び異星人を見たという証言は極めて少ない。
その極めて少ない例が、9歳と6歳のトルジーニ兄弟の目撃である。
&bold(){2人はロッティ夫人が異星人と会話するところを目撃していた}という。
事実であれば極めて重要な証言と言える。
ただし、現在ではこの証言は疑問視されている。
当初から兄弟の証言は曖昧な点が多く、事件の報道に触発されて創作した話ではないかという疑いが濃厚だったのだ。
そして1997年になって、すでに成人していた兄弟のうち一人が&bold(){「自分たちは何も見ていない。事件はロッティ夫人のでっち上げだ」}とぶっちゃけている。
(もう一人のほうは全否定まではしていないが、すでに記憶は非常に曖昧で忘れかけていたという)
一方、事件の前後に現場付近でUFOを見たという証言は極めて多い。
証言者の身元がはっきりしている主なものだけでも以下のようになる。
・ロッティ夫人の遭遇の30分ほど前、同じアレッツォ県でトラックの運転手親子が赤い紡錘形の飛行物体を目撃
・現場から1キロほど離れた村に住む男性が、ロッティ夫人の遭遇とほぼ同時刻の6時半に、何らかの飛行物体が丘に降下するのを目撃
・上記した、ロッティ夫人から最初に目撃報告を聞いた夫妻の夫が直後に現場に行き、そこで空中に飛び立つ飛行物体を目撃((この人物の証言内容は資料によってかなり違うため、信頼性には注意が必要だと思われる))
・ロッティ夫人の証言を聞いて現場に行ったベラルティ牧師も、その日の午後7時半頃にUFOを目撃している。それも、複数の参列者と同時にである。ただし、流石にロッティ夫人の証言とは時間差がありすぎるようにも思われる。
・やはり関連性は疑問ながら、同日の午後11時45分頃には現場の北東にある街で男性がUFOを目撃している
ここまで揃うと、こんな一見しょーもない事件にも俄然信憑性が感じられてくる。
ただし、すべての証言者が見たものが同一の物体かどうかはわからないこと、ほとんどの証言はこの事件が話題になった後で報告されたものである点には注意すべきだろう。
この事件に限らず、報道された後に雨後の竹の子の如く「そういえば私も見た」という証言者が大量発生するのはよくある話である。
UFOの目撃報告の9割以上は既知の物体(飛行機、流星など)の見間違いであることが判明しており、おまけに1950年代は「第一次UFOブーム」と呼ばれた時代である。
目撃当初は「鳥かなんかだろ」くらいに思っていた物体を、事件のニュースを聞いたことで「そういえば、もしかして……」と証言するケースもあっただろう。
これらと同時に、「実は自分の悪戯でした~テヘペロ」と告白する人物も何人か現れたが、いずれも裏付けが取れず、悪乗りもしくは売名行為だろうとされている。
*まとめ
どうにもこうにもツッコミどころ満載の事件でありながら、すっきりとした解決ができないのがこの事件である。
上述のようにロッティ夫人は写真に写るのが大の苦手であり、事件のことを聞きつけて取材にやってきたマスコミ関係者に動揺し、辟易していたという。
また、村に到着した際の彼女の様子がひどく動揺し、恐怖していたことは多くの人物が証言している。
となると、売名を狙った作り話という可能性は低いのではないだろうか。
白昼夢だったという説も有力視されているが、他の目撃者の存在が(全員が信頼できるわけでは無いにしても)ネックとなる。
なお、本当に彼女のストッキングと花が無くなっていたのかという点については、残念ながら検証されていないようである。
ロッティ夫人はオカルトや異星人などの知識はほとんどなく、本などで得た知識からこんな話を作れる道理はないという主張もある。
ただしこれには疑問もある。
上述したようにこの時代は空前のUFOブームの最中であり、一部の情報では彼女は&bold(){前日の晩に家族ととあるUFO目撃談について話をしていた}という。
全てが彼女の脳内で作られた出来事という可能性もまた、全面的に否定はできないようである。
&font(l){まあ正直異星人が第一次世界大戦風の軍服なんか着ている時点でおかしいとは思うけど。}
なお、事件の前日はハロウィンである。
ということは、コスプレして夜通し騒いでいた連中が、度を越した悪ふざけをしたという可能性も捨てきれない。
だが、この頃のイタリアではハロウィン文化はそこまで浸透していなかったようである。
このように&bold(){「まともに扱うのもバカバカしいが、全否定するのも根拠が弱い」}事件であるため、肯定派・否定派双方からあまり触れられない事件である。
上述のように肯定派は[[真面目>まじめ(真面目)]]に扱おうとせず、かといって否定派や懐疑派も、せいぜい歯切れの悪い説明しか提示できない。
結果、この事件は肯定本や否定本よりも、中立的にUFOの研究史を記述した本やギャグ本などで詳しく語られている。
彼女が異星人から渡そうとされたという物体を、素直に受け取って持ち帰っていれば……と思うと非常に残念である。
それにしても、UFOと言えば円盤型、異星人と言えばグレイ型でやることは地球人をさらっての人体実験、と相場の決まってしまった現在から見ると、大変味のある目撃談である。
1950年代という時代にはこんなすっとぼけた連中も地球に来ていたことは記憶しておきたい。
追記・修正は宇宙のどっかの星に保管されているかもしれないロッティ夫人のストッキングを取り返してからお願いいたします。
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- 最近のオカルト記事いいぞ -- 名無しさん (2016-12-28 09:30:43)
- 再現VTRに浦沢義雄作品って書かれたら信じる自信がある -- 名無しさん (2016-12-28 09:36:48)
- こんなに奇妙すぎるのは聞いた事ないわ・・・ -- 名無しさん (2016-12-28 13:31:05)
- どんだけストッキング欲しいんだよw -- 名無しさん (2016-12-28 14:45:11)
- 立ってるおばちゃんからどうやってストッキングを盗ったのか。考えると夜も・・・・以前にあまり考えたくない(主におばちゃんの絵面を) -- 名無しさん (2016-12-28 14:58:36)
- ↑安心しなさい、「靴とストッキングは手に持って」、裸足で歩いていたって書いてある 日本人からすると夫人のその行動こそわけわからんがな -- 名無しさん (2016-12-28 17:49:20)
- 『関係者全員が異様な執着を見せるストッキング』 この一文が面白すぎる -- 名無しさん (2016-12-28 18:01:07)
- コミカルなんだけど真偽がはっきりしないのは不気味だな… -- 名無しさん (2016-12-28 20:53:44)
- 今は亡きケイブンシャの『未確認物体大百科』をあたってみたらしっかり載ってたわ 子供向けのオカルト本は賛否どちらかに傾かず中立的に事件の概要を紹介するタイプが多いからこういう微妙な事件も扱いやすいのかも -- 名無しさん (2016-12-28 22:31:35)
- ↑ だね・・・ -- 名無しさん (2016-12-29 10:28:37)
- さすがのウルトラマンも困惑を隠せない地球初の侵略事件である -- 名無しさん (2016-12-29 12:39:36)
- 新手の宇宙服だと思ったのかも -- 名無しさん (2017-01-05 15:24:55)
- 人間の事を脱皮する動物だと思ったのかもな。ガキの頃、蛇の脱け殻とか見付けたら暫くヒーローだったし。 -- 名無しさん (2018-02-06 21:22:11)
- ↑ 金運のお守り扱いされるストッキング… -- 名無しさん (2018-03-22 15:03:04)
- 2↑それあるかも -- 名無しさん (2018-12-30 23:13:29)
- かつてあったチョコベーダーという食玩+ゲームのメディアミックス作品では、「ニヤケ面のそっくりな顔した人間タイプの二人組」という描かれ方してたな ゲームでは同種の宇宙人が各地に潜伏して店を開いてるという設定なので、いわゆるアイテム屋ポジだった -- 名無しさん (2024-03-07 15:27:07)
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チェンニーナ事件とは、1954年11月1日にイタリアで起きた異星人目撃事件である。
それも、本事件は&bold(){[[異星人>宇宙人]]による強盗事件}である。
異星人はやはり我々地球人に危害を加えるためにやってくるのだろうか。なんとも恐ろしい話である。
……と行きたいところだが、本事件は&bold(){[[UFO>未確認飛行物体(UFO)]]・異星人目撃史上屈指のツッコミどころ満載事件}であり、
一部のマニアの間ではカルト的な人気を博している。
ではただの与太話かというと、&bold(){物証や多くの目撃者がいるため、そうとも言い切れない}という何とも不可解な事件である。
なお、本件のような、「ただの誤認・勘違いとも言いにくく、かといって異星人の仕業と仮定しても疑問が残る」という、テンプレから外れた目撃事件は
「ハイ・ストレンジネス事例」などと呼ばれ、一部では重要視される一方で一般のオカルト本などでは無視されることが多い。
この事件以外ではジル神父事件や[[イーグルリバー事件]]が代表格。
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事件が起きたのはイタリア中部のトスカーナ州アレッツォ県チェンニーナ。
発生したのは11月1日の午前6時半頃である。
当時はまだ現場一帯には電気も無く、相当薄暗かったようだ。
異星人と遭遇したのは、近所に住む農夫のローザ・ロッティ・ネイ・ダイネリさん(以下慣例に乗っ取りロッティ夫人と呼ぶ)。
当時は11月1日はカトリックでは万聖節という祝日とされており(現在は諸聖人の日とされる)、ロッティ夫人も新品の服を着て、
足を汚さないように靴とストッキングは手に持って裸足になり((現在の感覚だと理解に苦しむが、当時の報道でもこの点についてツッコまれていないことから、当時の[[田舎]]では普通のことだったようである))、もう片方の手には備えるためのカーネーションを持っていた。
ちなみにロッティ夫人は滅多に町に行くことも無く、オカルトやUFOについての知識も皆無に近く(この点には後述するように疑問もある)、特にカメラ嫌いだったという。
さて、ロッティ夫人が「それ」を見たのは、家のごく近所にある「アンブラの小山」と呼ばれる丘の頂上付近だった。
糸杉の10メートルほど先に、&bold(){今まで見たことも無い奇妙な物体}が見えたのだ。
それは紡錘形(要するに[[ミサイル]]やロケットみたいな形)で、高さは1.7から2メートルほど、最大直径は1.2メートルほどで、表面は磨いた革のような感じだったという。
そして胴体にはハッチや開口部があった。
なんだか我々の想像するUFOとは随分違ったタイプのようである((ちなみに窓があったという資料もあるが不詳))。
だが、驚くのはまだ早い。
彼女が奇妙な物体に気を取られている時、&bold(){突然茂みの中から奇妙な2体の生物が現れた}のだ。
ロッティ夫人の証言によると、その生物の特徴は……
&bold(){身長1メートル以下の壮年風の[[イケメン]]で、[[ウサギ]]のような歯をしており、第一次世界大戦風の軍服っぽい服の上から[[マント]]を羽織っていて、中国語っぽい言葉を話していた。}
……いや、&bold(){この時点でどうしようもないマヌケ感が漂っている}のは否定できないが、まあもう少し付き合ってほしい。
&font(l){というかウサギのような歯をした壮年の男をイケメンと評するとは、ロッティ夫人の男性の好みはかなり変わっていたのかもしれない。}
さて、こいつらは終始ニヤニヤと笑みを浮かべながら、中国語っぽい言語でロッティ夫人に話しかけてきたという。
地球人との接触を極力避けようとするような異星人が多い中で、なかなかフレンドリーな奴らである。
と思いきや、なんとそいつらは&bold(){ロッティ夫人の手にしていたカーネーションとストッキングを突然ひったくった}。
なんという蛮行。
おそらく地球史上、初めて地球人にこのタイプの異星人からの犯罪行為が加えられた瞬間である。
&bold(){被害が異様にショボいけど}。
そのまま宇宙船らしきものに乗り込もうとする2人組。
ロッティ夫人は彼らに&bold(){素足ではみっともなくて教会に行けないからストッキングだけでも返せ}と抗議。
こんな異様な体験をしたら財布を投げ出してでも逃げ出すという人も多いだろうに、ロッティ夫人は真面目で身だしなみに気を遣う淑女だったのだろう((ちなみに異星人との遭遇事件では、異星人だけではなく遭遇した地球人までもが異様な行動を取ることが良くある))。
一応異星人どもも彼女の要求を一部理解したようで、&bold(){カーネーションのほうを5本だけ残して返した}。
こいつらにとっては&bold(){女性のストッキング>異星で採集した生物の標本}だったらしい。
変態か。
その後、異星人たちは宇宙船の中から茶色(資料によっては白)の丸い物体を取り出した。
そしてストッキングと花のお礼に、とでも思ったのか、それをロッティ夫人に渡そうとした。
ロッティ夫人は直観的にそれを写真機だと思ったという。
写真を撮られることが大嫌いだったロッティ夫人はいよいよパニック状態に陥り、異星人たちに向かって叫んだ。
&bold(){「そんなもの渡さないで!! ストッキングを返して!!」}
異星人との遭遇という前代未聞の事態にも拘わらず、&bold(){関係者全員が異様な執着を見せるストッキング}。
&bold(){こんなファーストコンタクトはやだ。}
我々が知らないだけで、女性のストッキングは宇宙的に価値があるものなのだろうか……
その後、ロッティ夫人は今度はその装置が[[爆弾]]かもしれないと思い、事ここに至ってようやく一目散に逃げだした。
ここまでお読みいただいてわかるように、数ある異星人遭遇事件の中でもツッコミどころ満載で&bold(){屈指のカオスな事件}である。
わざわざ[[地球]]までやってきて、[[どうでもいい]]ようなものをひったくっていった異星人(どうしてもストッキングと花が欲しいなら、地球人に化けて店で買うなりそれが仮に無理でもカーネーション位だったら地球人と接触せず入手する方法などいくらでもあるだろう)
もさることながら、証言者たるロッティ夫人の言動もはっきり言って支離滅裂である。
カオスっぷりでは[[モンティ・パイソン>空飛ぶモンティ・パイソン]]といい勝負かもしれない。
そのせいだろうが、本件はオカルトに肯定的な文献ではあまり詳しく触れられることは少ない。
&bold(){こんなアレな事件を掲載したら他の目撃の信憑性まで疑われる}という判断からだろう。
確かにこんなもん大真面目に忠実に引用したところで&bold(){新手のシュールギャグ小説}と間違われるのがオチである。
だが、&bold(){こんな事件に限って物証やら他の目撃者やらが出てくる}というのが、UFO・異星人事件の面白いところであり、また頭の痛いところである(上述の[[イーグルリバー事件]]もこのパターンである)。
*着陸痕
教会のある村についたロッティ夫人は、同じく教会に行く途中だった友人夫婦に会い、たった今の出来事を語った。
その後教会に駆け込み、その様子を見てただ事ではないと心配した牧師や他の参拝者に同じく事件の証言をした。
この時ロッティ夫人が酷く動揺していたことは、多くの関係者が一致して証言している。
そこで牧師たちは現場に行ってみることに。
するとすでに異星人や宇宙船の姿は無かったが、&bold(){地面に穴が空いている}のが見つかった。
それは穴は幅10㎝、深さ10~15cmで、ちょうどロッティ夫人が目撃した宇宙船の底部が地面に刺さってできたようにも見えたという((この時地面に焼けた跡があったのを見たという証言もあるが、いずれも事件後数十年経ってからのものであり、信頼性には疑問が残る))。
やがて通報を受けた憲兵隊も現場に駆け付け、ロッティ夫人への聞き取りを開始。
憲兵隊は[[嘘]]をついているなら今のうちに言わないと罰せられるぞと念を押したが、ロッティ夫人は証言を撤回せず供述書にサインをした。
この穴であるが、多くの野次馬が殺到したため翌日にはもはや明瞭ではなくなり、写真も残っていないという。
それでも多くの人が目撃・確認しているのは間違いないようだ。
とはいえ、これが動かぬ証拠になるかと言われると、流石に首を傾げざるを得ない。
幅10㎝、深さ10~15cm程度の穴など、[[動物]]の活動など他の原因で出来ることも十分考えられるだろう。
貴重な証言ではあるが、写真もない以上、今となっては確かめようがないと言えよう。
*ロッティ夫人以外の目撃者
この事件、証言者の数が非常に多いのも特徴である。
これもこの事件を荒唐無稽として切り捨てられない理由となっている。
ただし、大部分は飛行しているUFOらしきものを見たというものであり、着陸した宇宙船及び異星人を見たという証言は極めて少ない。
その極めて少ない例が、9歳と6歳のトルジーニ兄弟の目撃である。
&bold(){2人はロッティ夫人が異星人と会話するところを目撃していた}という。
事実であれば極めて重要な証言と言える。
ただし、現在ではこの証言は疑問視されている。
当初から兄弟の証言は曖昧な点が多く、事件の報道に触発されて創作した話ではないかという疑いが濃厚だったのだ。
そして1997年になって、すでに成人していた兄弟のうち一人が&bold(){「自分たちは何も見ていない。事件はロッティ夫人のでっち上げだ」}とぶっちゃけている。
(もう一人のほうは全否定まではしていないが、すでに記憶は非常に曖昧で忘れかけていたという)
一方、事件の前後に現場付近でUFOを見たという証言は極めて多い。
証言者の身元がはっきりしている主なものだけでも以下のようになる。
・ロッティ夫人の遭遇の30分ほど前、同じアレッツォ県でトラックの運転手親子が赤い紡錘形の飛行物体を目撃
・現場から1キロほど離れた村に住む男性が、ロッティ夫人の遭遇とほぼ同時刻の6時半に、何らかの飛行物体が丘に降下するのを目撃
・上記した、ロッティ夫人から最初に目撃報告を聞いた夫妻の夫が直後に現場に行き、そこで空中に飛び立つ飛行物体を目撃((この人物の証言内容は資料によってかなり違うため、信頼性には注意が必要だと思われる))
・ロッティ夫人の証言を聞いて現場に行ったベラルティ牧師も、その日の午後7時半頃にUFOを目撃している。それも、複数の参列者と同時にである。ただし、流石にロッティ夫人の証言とは時間差がありすぎるようにも思われる。
・やはり関連性は疑問ながら、同日の午後11時45分頃には現場の北東にある街で男性がUFOを目撃している
ここまで揃うと、こんな一見しょーもない事件にも俄然信憑性が感じられてくる。
ただし、すべての証言者が見たものが同一の物体かどうかはわからないこと、ほとんどの証言はこの事件が話題になった後で報告されたものである点には注意すべきだろう。
この事件に限らず、報道された後に雨後の竹の子の如く「そういえば私も見た」という証言者が大量発生するのはよくある話である。
UFOの目撃報告の9割以上は既知の物体(飛行機、流星など)の見間違いであることが判明しており、おまけに1950年代は「第一次UFOブーム」と呼ばれた時代である。
目撃当初は「鳥かなんかだろ」くらいに思っていた物体を、事件のニュースを聞いたことで「そういえば、もしかして……」と証言するケースもあっただろう。
これらと同時に、「実は自分の悪戯でした~テヘペロ」と告白する人物も何人か現れたが、いずれも裏付けが取れず、悪乗りもしくは売名行為だろうとされている。
*まとめ
どうにもこうにもツッコミどころ満載の事件でありながら、すっきりとした解決ができないのがこの事件である。
上述のようにロッティ夫人は写真に写るのが大の苦手であり、事件のことを聞きつけて取材にやってきたマスコミ関係者に動揺し、辟易していたという。
また、村に到着した際の彼女の様子がひどく動揺し、恐怖していたことは多くの人物が証言している。
となると、売名を狙った作り話という可能性は低いのではないだろうか。
白昼夢だったという説も有力視されているが、他の目撃者の存在が(全員が信頼できるわけでは無いにしても)ネックとなる。
なお、本当に彼女のストッキングと花が無くなっていたのかという点については、残念ながら検証されていないようである。
ロッティ夫人はオカルトや異星人などの知識はほとんどなく、本などで得た知識からこんな話を作れる道理はないという主張もある。
ただしこれには疑問もある。
上述したようにこの時代は空前のUFOブームの最中であり、一部の情報では彼女は&bold(){前日の晩に家族ととあるUFO目撃談について話をしていた}という。
全てが彼女の脳内で作られた出来事という可能性もまた、全面的に否定はできないようである。
&font(l){まあ正直異星人が第一次世界大戦風の軍服なんか着ている時点でおかしいとは思うけど。}
なお、事件の前日はハロウィンである。
ということは、コスプレして夜通し騒いでいた連中が、度を越した悪ふざけをしたという可能性も捨てきれない。
だが、この頃のイタリアではハロウィン文化はそこまで浸透していなかったようである。
このように&bold(){「まともに扱うのもバカバカしいが、全否定するのも根拠が弱い」}事件であるため、肯定派・否定派双方からあまり触れられない事件である。
上述のように肯定派は[[真面目>まじめ(真面目)]]に扱おうとせず、かといって否定派や懐疑派も、せいぜい歯切れの悪い説明しか提示できない。
結果、この事件は肯定本や否定本よりも、中立的にUFOの研究史を記述した本やギャグ本などで詳しく語られている。
彼女が異星人から渡そうとされたという物体を、素直に受け取って持ち帰っていれば……と思うと非常に残念である。
それにしても、UFOと言えば円盤型、異星人と言えばグレイ型でやることは地球人をさらっての人体実験、と相場の決まってしまった現在から見ると、大変味のある目撃談である。
1950年代という時代にはこんなすっとぼけた連中も地球に来ていたことは記憶しておきたい。
追記・修正は宇宙のどっかの星に保管されているかもしれないロッティ夫人のストッキングを取り返してからお願いいたします。
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- 最近のオカルト記事いいぞ -- 名無しさん (2016-12-28 09:30:43)
- 再現VTRに浦沢義雄作品って書かれたら信じる自信がある -- 名無しさん (2016-12-28 09:36:48)
- こんなに奇妙すぎるのは聞いた事ないわ・・・ -- 名無しさん (2016-12-28 13:31:05)
- どんだけストッキング欲しいんだよw -- 名無しさん (2016-12-28 14:45:11)
- 立ってるおばちゃんからどうやってストッキングを盗ったのか。考えると夜も・・・・以前にあまり考えたくない(主におばちゃんの絵面を) -- 名無しさん (2016-12-28 14:58:36)
- ↑安心しなさい、「靴とストッキングは手に持って」、裸足で歩いていたって書いてある 日本人からすると夫人のその行動こそわけわからんがな -- 名無しさん (2016-12-28 17:49:20)
- 『関係者全員が異様な執着を見せるストッキング』 この一文が面白すぎる -- 名無しさん (2016-12-28 18:01:07)
- コミカルなんだけど真偽がはっきりしないのは不気味だな… -- 名無しさん (2016-12-28 20:53:44)
- 今は亡きケイブンシャの『未確認物体大百科』をあたってみたらしっかり載ってたわ 子供向けのオカルト本は賛否どちらかに傾かず中立的に事件の概要を紹介するタイプが多いからこういう微妙な事件も扱いやすいのかも -- 名無しさん (2016-12-28 22:31:35)
- ↑ だね・・・ -- 名無しさん (2016-12-29 10:28:37)
- さすがのウルトラマンも困惑を隠せない地球初の侵略事件である -- 名無しさん (2016-12-29 12:39:36)
- 新手の宇宙服だと思ったのかも -- 名無しさん (2017-01-05 15:24:55)
- 人間の事を脱皮する動物だと思ったのかもな。ガキの頃、蛇の脱け殻とか見付けたら暫くヒーローだったし。 -- 名無しさん (2018-02-06 21:22:11)
- ↑ 金運のお守り扱いされるストッキング… -- 名無しさん (2018-03-22 15:03:04)
- 2↑それあるかも -- 名無しさん (2018-12-30 23:13:29)
- かつてあったチョコベーダーという食玩+ゲームのメディアミックス作品では、「ニヤケ面のそっくりな顔した人間タイプの二人組」という描かれ方してたな ゲームでは同種の宇宙人が各地に潜伏して店を開いてるという設定なので、いわゆるアイテム屋ポジだった -- 名無しさん (2024-03-07 15:27:07)
- しかし事実上の初の宇宙人(この事件が事実であるならば)による侵略がまさかのストッキング泥棒とは……… -- M14砲兵軍曹 (2025-03-09 20:23:23)
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