登録日:2025/06/21 (土) 20:00:27
更新日:2025/06/21 Sat 22:41:18NEW!
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i<´ }\ , - 、
ヽ.._\./ .ンく r-兮、 __
∠`ヽ.! / ヾニEヲぐ ,ゝ-> さすがゴッグだ。
/_`シ'K-───‐-、l∠ イ 『機動戦士ガンダム』の25年前でもなんとも無いぜ。
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〉ト:トハj`! i. / トー┤lルj,リ
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なお、
そっちのゴッグは、ラフスケッチや台本では「ゴック」となっているので本作と同名となったのは偶然である。
『
ゴッグ(GOG)』は、1954年に製作された
SF映画。世界で初めて本格的にコンピューターの反乱を描いた作品の一つとされる。
監督はハーバート・ストロック、製作はイヴァン・トロス。
50年代に量産された十代向けのSF作品とは異なり、大人向けのリアル志向の科学描写を重視した作品である。
概要
舞台はニューメキシコの砂漠の地下に建設された広大な宇宙ステーション研究所。
ここでは宇宙ステーション建設のための研究が行われており、施設の全ての装備はコンピューターによって制御されている。
そのノヴァックの手足となって働くのが、ゴッグ(GOG)とマゴッグ(MAGOG)という2台の
ロボットであった。
しかし、ある日原因不明の死亡事故が次々と発生。事態を調査するため、主人公が送り込まれる。調査を進めるうちに、これらの事件が敵国の陰謀によるものだと判明する。
コンピューターの反乱といえば「自我を持ち始めた機械」を連想しがちだが、本作では機械が独自の意思で暴走するのではなく、敵国がコンピューターを乗っ取り、研究所の科学者を殺そうとするという現実的な陰謀が描かれている。
当時としては画期的なテーマである「コンピュータ社会への不安」を描いた本作は、SF映画にありがちな奇抜なデザインよりも、当時の最先端の科学技術を忠実に映し出すことに重点を置いている。
この作品はリアル志向の科学的描写にこだわっており、フィクション部分よりも当時の最先端の技術が多く登場する。
例えば、真空管式コンピューターやロボットハンドの映像は、史料的価値があるとされる。さらに、巨大な
鏡を用いた太陽光兵器や宇宙服訓練など、科学的考証に基づいた描写も特徴的である。
あらすじ
ニューメキシコの砂漠の地下に建設された広大な宇宙ステーション研究所では、宇宙ステーション建設のための研究が進められていた。この施設の全ての装備は「ノヴァック(NOVAC:Nuclear Operated Variable Automatic Computer)」と呼ばれる原子力変数自動計算機によって制御されており、ゴッグ(GOG)とマゴッグ(MAGOG)の2台のロボットが運用されていた。
ある日、宇宙空間での人体保存実験を担当していた2人の科学者が極寒の環境下で凍死する事件が発生。
謎の力により実験装置が制御不能になったことが原因だった。科学調査局「Office of Scientific Investigation (OSI)」のデヴィッド・シェパード博士(Richard Egan)は、施設の所長であるヴァン・ネス博士(Herbert Marshall)と面会し、彼から最新の宇宙探査計画の説明を受ける。
計画では、ロケットのパイロットを冷凍保存し、ロボットが航行を制御。目的地到着後、パイロットはレーダー波で解凍されるというものだった。
しかし、ヴァン・ネス博士は施設内に潜む破壊工作員の存在を疑っていた。
その後、助手のジョアンナ・メリット(Constance Dowling)がデヴィッドに2つの小型レーダービーコンを発見したことを報告。
これらは原子爆弾を搭載したロケットを研究所に向けて発射するほどの強力な信号を発していた。
ジョアンナはデヴィッドの元恋人でもあり、彼女は施設の5つのレベルにまたがる科学研究を案内する。
施設内では、太陽エネルギー収集用の巨大な鏡を開発するエルゼヴィア博士夫妻(Philip Van Zandt & Valerie Vernon)、コンピューター「NOVAC」を設計したツァイトマン博士(John Wengraf)、そしてゴッグ&マゴッグのロボット開発者といった科学者チームが働いていた。
NOVACは全実験を統括する「巨大な頭脳機械」として機能しており、ゴッグ&マゴッグはパンチカードでプログラムされたロボットだった。
しかし、シェパードとジョアンナは調査を進めるうちに頻繁にふざけ合い、軽くイチャつく場面がある。
その一方で、モニター機器の異常な音響現象、放射性同位体による殺人事件など、研究員たちの命が次々と奪われる。
さらに研究所の上空には謎の航空機が旋回しており、敵対勢力による工作活動の可能性が浮上するが、航空防衛司令部が対応する前に事態は深刻化していく…。
やがて、研究所の中央制御コンピューター「ノヴァック (NOVAC)」が何者かによって乗っ取られ、施設内の設備が暴走していることが判明する。
さらに、NOVACの指示によってゴッグ (Gog) とマゴッグ (Magog) の2体のロボット が科学者を襲い始める。
調査を進めるうちに、NOVACにはスイスでの製造時に密かに強力な送信機と受信機が組み込まれていたことが明らかとなる。
敵国がこの通信装置を使い、施設上空を飛行するステルス無人機 からの電波を使ってNOVACのすべての機能を遠隔操作していたのだ。
最終的に、NOVACの指示によりマゴッグが原子炉の安全制御棒を引き抜こうとするが、シェパード博士が間一髪で阻止。彼は
火炎放射器を使いロボットを無力化する。
しかし、次にゴッグが原子炉へ向かってくる。シェパードの火炎放射器が燃料切れを起こし、彼は必死にノズルを使ってロボットの電子部品を破壊しようと試みる。
そこへヴァン・ネス博士 (Herbert Marshall) がもう一台の火炎放射器を持って現れるが、バルブが詰まってしまう。
シェパードが最後の力を振り絞ってゴッグを攻撃し続けると、ロボットは制御を失い、腕を激しく振り回した後に完全に停止。
その直後、アメリカ空軍のF-86とF-94戦闘機 が敵国の無人機を撃墜し、NOVACの暴走も終わりを迎える。
登場人物
- デヴィッド・シェパード(リチャード・イーガン)
- 研究施設の調査を担当する科学者。
- ジョアン・キルズビー(コンスタンス・ドウリング)
- 研究所の科学者。シェパードと共に事件の謎に迫る。
- ノヴァック(NOVAC:Nuclear Operated Variable Automatic Computer)
- 研究所の原子力変数自動計算機コンピューターシステム。敵国の陰謀により暴走し、研究員を攻撃する。
- ゴッグ & マゴッグ
- ニューメキシコの地下にある宇宙ステーション研究所内に設置された、原子炉内作業用ロボット。ノヴァックのコントロール下にあり、研究施設の運用をサポートしている。
- 車輪による移動が可能で、4本のマニュピレータを装備し、火炎放射器を搭載。コンピューターの指示で科学者を襲う。
- 「ゴッグ (GOG)」と「マゴッグ (MAGOG)」という名称は、歴史や宗教的な背景を持つ可能性が高い。特に、以下の2つの伝承に由来している可能性がある。
- ゴグとマゴグ
- 旧約聖書の『エゼキエル書』や『ヨハネの黙示録』、そしてクルアーンにも登場する終末的な存在である。
- エゼキエル書(38~39章)では、ゴッグはマゴッグの地の支配者であり、神の軍勢と戦う敵対勢力とされる。
- ヨハネの黙示録(20:7-8)では、ゴッグとマゴッグは悪の象徴として神に対して戦いを挑む存在として描かれる。
- クルアーン(18:94, 21:96)では、"ヤジュージュとマジュージュ" という名で記され、人類に混乱と破壊をもたらす勢力として語られる。
- この伝承に基づくと、映画『GOG』のゴッグとマゴッグもまた、人間のコントロールを離れ、科学者を攻撃する脅威的な存在として描かれている点で共通している。特に、コンピューター「NOVAC」が敵国の陰謀により乗っ取られ、ロボットが暴走する展開は、"Gog and Magog" の終末的な役割と似ている。この名前が選ばれた理由としては、終末的な恐怖を喚起する象徴的な意味を持たせるため、または敵対勢力の破壊的な力を強調するためと考えられる。
- イギリス伝承のゴグマゴグ
- イギリスの伝説では、ゴグマゴグは巨大な戦士の名前として登場する。
- ブリテン島の創世神話では、ブリテン島の先住民であった巨人「ゴグマゴグ」がトロイアの王子アエネーアースの子孫ブルートゥスによって倒されるという物語がある。
- ロンドンの守護者像として、「ゴグとマゴグ」の巨人像がロンドン市庁舎に飾られていた。
本作のロボットは、人工知能によって制御された機械であり、暴走することで科学者を襲う存在となる。
彼らはもともと宇宙ステーション建設のための作業用として設計されたが、敵国の陰謀によりコンピューターが乗っ取られたことで、人間に対する脅威となる。
この設定は、ゴグマゴグの伝説と興味深い類似点を持つ。特に、無秩序な破壊者としての側面や文明を脅かす存在という点で共通性がある。
最新技術の象徴として登場するロボットが制御不能になることで、人間に牙をむく。
この構造は、原始的な力を持つゴグマゴグが文明を脅かした伝説と類似しており、「人類の発展が生み出した脅威」というテーマが共通している。
映画の製作者であるイヴァン・トロスがこの名称を意図的に選んだ可能性も考えられる。
当時のSF作品では、宗教的・神話的なモチーフが頻繁に引用されており、ゴグとマゴグの名前がロボットの破壊的な性質を強調するために採用された可能性がある。
これにより、視聴者に対して終末的な危機や制御不能の恐怖を強く印象付ける狙いがあったのかもしれない。
また、敵国によって制御されたロボットが破壊者となる点は、伝説の巨人ゴグマゴグがブリテン島の侵略者によって征服されるという物語と対比的である。
ロボットが敵国の策略によって人類に牙をむく構造は、伝説の巨人が侵略者に反抗する姿と重なるのではないだろうか。
作品について
本作は、1953年の短期間の3D映画ブームの最後期に制作された作品の一つである。
しかし、監督のハーバート・L・ストロックは片眼が見えないため、3D映像を視認できなかったという。
3D映画として制作されたが、3D効果を過度に強調することなく、没入感を重視した映像表現が特徴的である。
とはいえ、本作の3D効果は十分に活用されたとは言えず、多くのシーンで3D特有の演出が見送られた。
例えば、オープニングの針が観客に向かって突き出されるシーンは視覚的なインパクトがあるものの、
噴射が下向きに行われるなど、3D演出の機会が十分に活かされていない。
大げさな3D効果を避けた結果、当時の作品としては控えめながらも、近年の3D映画の方向性に通じるスタイルとなっている。
また、3D映像の副作用として、セットの背景の奥行きの浅さが非常に平面的に見えてしまうという問題もある。
本作は二眼式のナチュラル・ビジョン・システムで撮影されたが、3D上映はわずか5館でのみ行われ、それ以外の劇場では2D上映となった。
これは、当時多くの映画館で2台の映写機を完全に同期させて3D上映することが困難だったためである。
さらに、本作はテレビ放映時にカラー作品でありながら白黒で放映されるという扱いを受けた。
これにより、多くの視聴者が映画本来の映像表現を知らないままとなった。
DVD-R版では右眼の映像を用いてカラー版が復元されたが、オリジナルの3D版は「失われた映画」とされていた。
しかし、3D映画アーカイブ専門家のボブ・フルマネック(Bob Furmanek)の努力によって、左眼用映像の唯一の現存プリントが発見・復元された。
Blu-ray版では、画質の向上が顕著であり、特にロボットの動きに隠されたワイヤーなど細かなディテールが見えるほど鮮明な映像になっている。
しかし、一部の暗いシーンでは圧縮ノイズがわずかに発生している点も指摘されている。
本作の3D復元は驚異的であり、オリジナルのフィルム状態が極めて劣化していたにもかかわらず、視聴者が気付かないほど見事な復元が施されている。
特に左目用のフィルムの劣化が著しく、色褪せが激しかったが、Blu-ray版ではそれをほぼ補正している。
多少のゴミや汚れが見える場面はあるものの、復元技術の優秀さを考えれば奇跡的に良好な仕上がりとなっている。
彼の活動は、『The Bubble』や『3-D Rarities』などの3D作品の復元と同様に、映画史において重要な意義を持っている。
さらに、Blu-ray版には通常の2D版の視聴オプションも含まれており、3Dに慣れていない視聴者にも配慮されている。
こうした技術的な制約の中で制作された作品だが、SF映画としての歴史的意義は高く評価されている。
本作は科学的描写にこだわった作品であり、画期的なテーマを扱っているが、その恐怖やサスペンスが十分に描かれていない点が問題視されることがある。
特に、映画の前半ではエージェントが研究所で科学者の説明を聞くシーンに多くの時間が割かれ、SF映画というよりも科学技術館の講義を聞いているような雰囲気が強い。
その結果、ストーリーの展開が遅く、ようやくロボットの反乱に気付くのは映画も残り15分になってからという構成になっている。
また、製作費は25万ドルと低予算であり、映像的な豪華さは期待できない。台本や演出の問題もあり、SFの恐怖を十分に伝えきれていないため、凡作との評価もあるが、
宇宙探査が現実化しつつあった時代背景を考えると、歴史的な価値は高く、年代的な視点で楽しめる作品と言える。
Blu-ray版の復元技術を含めると、本作自体よりもその時代の作品としての重要性が面白いという評価もある。
問題点と評価点
- レトロなイラストのオープニングとエンディングは雰囲気が良く、作品の世界観を印象付ける。
- ヒロインの意外性があり、科学者の助手かと思われた女性はすぐに死亡し、次に登場したキツい顔の女性エージェントが実はヒロインだった。
- 反重力ベストのテストシーンは間抜けに見え、まるで軽業師のアクロバットのようである。
- ゴッグとマゴッグのロボットは静止画では魅力的なデザインだが、実際に動くと重量感がなく、まるでプラモデルのように見える。
- 敵国スパイの飛行機は流線型の宇宙船のようなデザインで、最後に撃墜されるシーンが印象的。
さすがゴッグだ、昔のSF映画の追記修正をお願いしてもなんともないぜ。
- ゴーバスのエスケイプが持ってたゴクとマゴクってこれが元ネタなのか? -- 名無しさん (2025-06-21 22:41:18)
最終更新:2025年06月21日 22:41