登録日:2025/06/21 Sat 20:00:27
更新日:2025/07/05 Sat 12:36:06
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i<´ }\ , - 、
ヽ.._\./ .ンく r-兮、 __
∠`ヽ.! / ヾニEヲぐ ,ゝ-> さすがゴッグだ。
/_`シ'K-───‐-、l∠ イ 『機動戦士ガンダム』の25年前でもなんとも無いぜ。
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〉ト:トハj`! i. / トー┤lルj,リ
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* + そのゴッグじゃないです
n ∧_∧ n
+ (ヨ(*´∀`)E)
Y Y *
なお、
そっちのゴッグは、ラフスケッチや台本では「ゴック」となっているので本作と同名となったのは偶然である。
『
ゴッグ(GOG)』は、1954年に製作された
アメリカ合衆国の
SF映画。監督はハーバート・L・ストロック、製作はイヴァン・トロスが手がけた。カラー作品で、50年代当時流行した3D撮影技術も一部に導入されている。
本作は、リアル志向の科学描写を重視した作品であり、超技術や人間的なコンピュータの登場を排し、現実の科学技術に基づいた表現が特徴である。
目次
概要
アメリカ南西部ニューメキシコ州に位置する地下の極秘研究所において、相次ぐ不可解な事故が発生。事態を重く見た当局は、主人公を現地に派遣する。
地下施設内のすべての機器はコンピューター「NOVAC」が制御し、その中には強力なロボットハンドと多数の機器を備えた
ロボット「ゴッグ(Gog)」と「マゴッグ(Magog)」も含まれていた。
調査が進むと、スイスでNOVACが製造されていた際に、設計者の許可なく強力な無線送信機と受信機が秘密裏に組み込まれていたことが突き止められ、
敵国による遠隔操作を用いた陰謀であることが判明していく。
SF映画にありがちな奇抜なデザインや派手な演出よりも、当時の最先端科学技術を忠実に描写することに重点を置いた作品である。
例えば、真空管式コンピューターやロボットハンドの映像は、史料的価値があるとされる。さらに、巨大な
鏡を用いた太陽光兵器や宇宙服訓練など、科学的考証に基づいた描写も特徴的である。
あらすじ
ニューメキシコの砂漠の地下に建設された広大な宇宙ステーション研究所では、宇宙ステーション建設のための研究が進められていた。この施設の全ての装備は「ノヴァック(NOVAC:Nuclear Operated Variable Automatic Computer)」と呼ばれる原子力変数自動計算機によって制御されており、「ゴッグ(GOG)」と「マゴッグ(MAGOG)」の2台のロボットが運用されていた。
ある日、宇宙空間での人体保存実験を担当していた2人の科学者が極寒の環境下で凍死する事件が発生。
謎の力により実験装置が制御不能になったことが原因だった。科学調査局「Office of Scientific Investigation (OSI)」のデヴィッド・シェパード博士は、施設の所長であるヴァン・ネス博士と面会し、彼から最新の宇宙探査計画の説明を受ける。
計画では、ロケットのパイロットを冷凍保存し、ロボットが航行を制御。目的地到着後、パイロットはレーダー波で解凍されるというものだった。
しかし、ヴァン・ネス博士は施設内に潜む破壊工作員の存在を疑っていた。
その後、助手のジョアンナ・メリットがデヴィッドに2つの小型レーダービーコンを発見したことを報告。
これらは原子爆弾を搭載したロケットを研究所に向けて発射するほどの強力な信号を発していた。
ジョアンナはデヴィッドの元恋人でもあり、彼女は施設の5つのレベルにまたがる科学研究を案内する。
施設内では、太陽エネルギー収集用の巨大な鏡を開発するエルゼヴィア博士夫妻、ノヴァックを設計したツァイトマン博士、そしてゴッグ&マゴッグのロボット開発者といった科学者チームが働いていた。
NOVACは全実験を統括する「巨大な頭脳機械」として機能しており、ゴッグ&マゴッグはパンチカードでプログラムされたロボットだった。
しかし、シェパードとジョアンナは調査を進めるうちに頻繁にふざけ合い、軽くイチャつく場面がある。
その一方で、モニター機器の異常な音響現象、放射性同位体による殺人事件など、研究員たちの命が次々と奪われる。
さらに研究所の上空には謎の航空機が旋回しており、敵対勢力による工作活動の可能性が浮上するが、航空防衛司令部が対応する前に事態は深刻化していく…。
やがて、ノヴァックが何者かによって乗っ取られ、施設内の設備が暴走していることが判明する。
さらに、ノヴァックの指示によってゴッグとマゴッグの2体のロボット が科学者を襲い始める。
調査を進めるうちに、ノヴァックにはスイスでの製造時に密かに強力な送信機と受信機が組み込まれていたことが明らかとなる。
敵国がこの通信装置を使い、施設上空を飛行するステルス無人機 からの電波を使ってNOVACのすべての機能を遠隔操作していたのだ。
最終的に、NOVACの指示によりマゴッグが原子炉の安全制御棒を引き抜こうとするが、シェパード博士が間一髪で阻止。彼は
火炎放射器を使いロボットを無力化する。
しかし、次にゴッグが原子炉へ向かってくる。シェパードの火炎放射器が燃料切れを起こし、彼は必死にノズルを使ってロボットの電子部品を破壊しようと試みる。
そこへヴァン・ネス博士がもう一台の火炎放射器を持って現れるが、バルブが詰まってしまう。
シェパードが最後の力を振り絞ってゴッグを攻撃し続けると、ロボットは制御を失い、腕を激しく振り回した後に完全に停止。
その直後、アメリカ空軍のF-86とF-94戦闘機 が敵国の無人機を撃墜し、NOVACの暴走も終わりを迎える。
登場人物
- デヴィッド・シェパード(演:リチャード・イーガン)
- 研究施設の調査を担当する科学者。
- ジョアンナ・メリット(演:コンスタンス・ドウリング)
- 研究所の科学者。シェパードと共に事件の謎に迫る。
- ヴァン・ネス博士(演:ハーバート・マーシャル)
- 施設の所長。
- ツァイトマン博士(演:ジョン・ウェングラフ)
- ピーター・バーデン博士(演:デヴィッド・アルパート)
- ピエール・エルゼヴィア博士(演:フィリップ・ヴァン・ザント)
- エルゼヴィア夫人(演:ヴァレリー・ヴァーノン)
- カーター博士(演:パイロン・ケイン)
- 施設の科学者たち。
- ノヴァック(NOVAC:Nuclear Operated Variable Automatic Computer)
- 研究所の原子力変数自動計算機コンピューターシステム。敵国の陰謀により暴走し、研究員を攻撃する。
- ゴッグ&マゴッグ
- ニューメキシコの地下にある宇宙ステーション研究所内に設置された、原子炉内作業用ロボット。ノヴァックのコントロール下にあり、研究施設の運用をサポートしている。
- 車輪による移動が可能で、4本のマニュピレータを装備し、火炎放射器を搭載。コンピューターの指示で科学者を襲う。
- 「ゴッグ (GOG)」と「マゴッグ (MAGOG)」という名称は、歴史や宗教的な背景を持つ可能性が高い。特に、以下の2つの伝承に由来している可能性がある。
- ゴグとマゴグ
- 旧約聖書の『エゼキエル書』や『ヨハネの黙示録』、そしてクルアーンにも登場する終末的な存在である。
- エゼキエル書(38~39章)では、ゴッグはマゴッグの地の支配者であり、神の軍勢と戦う敵対勢力とされる。
- ヨハネの黙示録(20:7-8)では、ゴッグとマゴッグは悪の象徴として神に対して戦いを挑む存在として描かれる。
- クルアーン(18:94, 21:96)では、"ヤジュージュとマジュージュ" という名で記され、人類に混乱と破壊をもたらす勢力として語られる。
- この伝承に基づくと、映画『ゴッグ』のゴッグとマゴッグもまた、人間のコントロールを離れ、科学者を攻撃する脅威的な存在として描かれている点で共通している。特に、コンピューター「NOVAC」が敵国の陰謀により乗っ取られ、ロボットが暴走する展開は、「ゴグとマゴグ」 の終末的な役割と似ている。この名前が選ばれた理由としては、終末的な恐怖を喚起する象徴的な意味を持たせるため、または敵対勢力の破壊的な力を強調するためと考えられる。
- イギリス伝承のゴグマゴグ
- イギリスの伝説では、ゴグがコーネリウス、マゴグがゴグマゴグとされ、巨大な戦士の名前として登場する。
- ブリテン島の創世神話では、まだブリテン島がアルビオンと呼ばれていた時代、その先住民であったこの二人の巨人がトロイアの王子アエネーアースの子孫ブルートゥスによって倒されるという物語がある。
- その後は、かつてのロンドン市庁舎ギルドホールの場所にあった宮殿の門に鎖でつながれて門番として働かされていたと伝えられている。
- それにちなんでロンドンの守護者像として、「ゴグとマゴグ」の巨人像がロンドン市庁舎に飾られていた。
- オーストラリア・メルボルンのロイヤル・アーケードでは、ゴグが大時計の北側に立ち、マゴグが南側に立つ像が15分ごとにその時刻の数だけ鐘をたたくようになっている。
本作のロボットは、人工知能によって制御された機械であり、暴走することで科学者を襲う存在となる。
彼らはもともと宇宙ステーション建設のための作業用として設計されたが、敵国の陰謀によりコンピューターが乗っ取られたことで、人間に対する脅威となる。
この設定は、ゴグマゴグの伝説と興味深い類似点を持つ。特に、無秩序な破壊者としての側面や文明を脅かす存在という点で共通性がある。
最新技術の象徴として登場するロボットが制御不能になることで、人間に牙をむく。
この構造は、原始的な力を持つゴグマゴグが文明を脅かした伝説と類似しており、「人類の発展が生み出した脅威」というテーマが共通している。
映画の製作者であるイヴァン・トロスがこの名称を意図的に選んだ可能性も考えられる。
当時のSF作品では、宗教的・神話的なモチーフが頻繁に引用されており、ゴグとマゴグの名前がロボットの破壊的な性質を強調するために採用された可能性がある。
これにより、視聴者に対して終末的な危機や制御不能の恐怖を強く印象付ける狙いがあったのかもしれない。
また、敵国によって制御されたロボットが破壊者となる点は、伝説の巨人ゴグマゴグがブリテン島の侵略者によって征服されるという物語と対比的である。
ロボットが敵国の策略によって人類に牙をむく構造は、伝説の巨人が侵略者に反抗する姿と重なるのではないだろうか。
作品について
本作は、1953年の短期間の3D映画ブームの最後期に制作された作品の一つである。
しかし、監督のハーバート・L・ストロックは片眼が見えないため、3D映像を視認できなかったという。
3D映画として制作されたが、3D効果を過度に強調することなく、没入感を重視した映像表現が特徴的である。
とはいえ、本作の3D効果は十分に活用されたとは言えず、多くのシーンで3D特有の演出が見送られた。
例えば、オープニングの針が観客に向かって突き出されるシーンは視覚的なインパクトがあるものの、噴射が下向きに行われるなど、3D演出の機会が十分に活かされていない。
大げさな3D効果を避けた結果、当時の作品としては控えめながらも、近年の3D映画の方向性に通じるスタイルとなっている。
また、3D映像の副作用として、セットの背景の奥行きの浅さが非常に平面的に見えてしまうという問題もある。
本作は二眼式のナチュラル・ビジョン・システムで撮影されたが、3D上映はわずか5館でのみ行われ、それ以外の劇場では2D上映となった。
これは、当時多くの映画館で2台の映写機を完全に同期させて3D上映することが困難だったためである。
さらに、本作はテレビ放映時にカラー作品でありながら白黒で放映されるという扱いを受けた。
これにより、多くの視聴者が映画本来の映像表現を知らないままとなった。
DVD-R版では右眼の映像を用いてカラー版が復元されたが、オリジナルの3D版は「失われた映画」とされていた。
しかし、3D映画アーカイブ専門家のボブ・フルマネック(Bob Furmanek)の努力によって、左眼用映像の唯一の現存プリントが発見・復元された。
Blu-ray版では、画質の向上が顕著であり、特にロボットの動きに隠されたワイヤーなど細かなディテールが見えるほど鮮明な映像になっている。
しかし、一部の暗いシーンでは圧縮ノイズがわずかに発生している点も指摘されている。
本作の3D復元は驚異的であり、オリジナルのフィルム状態が極めて劣化していたにもかかわらず、視聴者が気付かないほど見事な復元が施されている。
特に左目用のフィルムの劣化が著しく、色褪せが激しかったが、Blu-ray版ではそれをほぼ補正している。
多少のゴミや汚れが見える場面はあるものの、復元技術の優秀さを考えれば奇跡的に良好な仕上がりとなっている。
彼の活動は、『The Bubble』や『3-D Rarities』などの3D作品の復元と同様に、映画史において重要な意義を持っている。
さらに、Blu-ray版には通常の2D版の視聴オプションも含まれており、3Dに慣れていない視聴者にも配慮されている。
こうした技術的な制約の中で制作された作品だが、SF映画としての歴史的意義は高く評価されている。
本作は、科学的描写への強いこだわりを持つ1950年代SF映画の一つであり、監視技術や自動化された制御システムといった、当時としては画期的なテーマを扱っている。
派手なVFXや壮大なセットといった映像的な豪華さには欠けるものの、それゆえにかえって、
冷戦下の不安や科学技術への期待と懸念がリアルに映し出されているとも言える。
一方で、ロボットや施設での異変といった要素に、SF的恐怖感やサスペンスの演出がやや控えめであるという指摘もある。
宇宙探査や原子力などが現実のものとして語られ始めていた1950年代という時代背景を踏まえると、本作はむしろ、その時代を象徴する作品としての歴史的価値が高いと評価される。
Blu-ray版では、当時のフィルム素材をもとにした復元が施されており、その技術的成果も含めて、作品単体としての評価よりも、その時代性や文化的背景を味わうことに意義を見出す向きも多い。
問題点と評価点
本作は、当時の最先端技術―真空管式コンピューターやロボットハンド―を忠実に描いている。
機械が自我を持つのではなく、敵国がコンピューターを遠隔操作して研究所を混乱させるという筋書きは、現実的なコンピューター社会への不安を先取りするようだ。
「Gog」と「Magog」の2体のロボットは、まるで後のモビルスーツのような存在感を放っていた。火炎放射器で破壊されるシーンなど、戦場の緊張感を彷彿とさせる。
一方で事件の発生から真相判明までの展開がやや冗長で、緊迫感が持続しない。戦場ならば判断の遅れは命取りだ。
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さすがゴッグだ、昔のSF映画の追記修正をお願いしてもなんともないぜ。
- ゴーバスのエスケイプが持ってたゴクとマゴクってこれが元ネタなのか? -- 名無しさん (2025-06-21 22:41:18)
- マイナー気味だが50年代SFの中では禁断の惑星と並んで評価が高い作品だと思う -- 名無しさん (2025-06-22 00:55:00)
- 記事内の批評がパラディオン氏のブログに -- 名無しさん (2025-06-22 07:24:58)
- ↑失礼 載っている同映画の感想に酷似しているのですが… -- 名無しさん (2025-06-22 07:26:34)
最終更新:2025年07月05日 12:36