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鬼切丸(漫画)

登録日:2012/09/04(火) 11:15:13
更新日:2026/08/17 Mon 23:28:15
所要時間:約 3 分で読めます




おれに名は…ないんだよ。
ただ…ただ、この刀が鬼切丸と…


【概要】

鬼切丸とは1992年から2001年まで「少年サンデー超増刊号」に連載されていた、楠桂氏原作の漫画である。
1994年にはケイエスエス製作のOVA化(全四話)もされた。何故かヒロインのCVが美少女戦士ばかり。
その美麗で繊細なタッチとは裏腹に、幼女や美少女、美少年が醜悪な鬼になったり、頭から食われたり、犬や猫が虐待、惨殺されたり、描写にまったく容赦がないが、美しく残酷な人間ドラマはメッセージ性が非常に高い。
オムニバス形式故に複数回登場するのは極限られた人数だが、各ゲストの顔が全て異なるとも称される、その多彩な描写にも注目されたし。
2013年に「コミック乱ツインズ戦国武将列伝」にて過去の物語である「鬼切丸伝」が連載。
本誌の休刊後2016年にコミック乱ツインズに移籍し、2018年でデジタルwebコミックのpixivコミックに移籍し2025年まで連載した。
鬼切丸の少年、鬼姫鈴鹿、我を保ったまま鬼と化した織田信長らを中心に物語が展開される。
人間を拒絶している少年が、如何にして無印時代の人間大好きな存在になっていくかにも注目。
なお物語の舞台は平安時代〜江戸時代中期まで描かれており、ほぼランダムで舞台が変わっている。現代を舞台にした前作と異なり、鬼以外の妖怪も登場する。


【あらすじ】

はるか昔、鬼の屍より少年の姿をした鬼が生まれた。
その者、純血の鬼でありながら同族殺しを天命とし、頭部に生えぬ角の代わりに鬼を殺す神器名刀を手に持つ。

すべての鬼をこの世から絶やせば人になれると信じる
その者に人としての名は無く―――
民はただ、刀を「鬼切丸」と呼んだ。


【主要人物】

◆鬼切丸の少年
主人公。サンデーどころか連載漫画史上でも他に例を見ない名無し。呼び名を与えようとする者もいたものの、「名前を持つ」事は呪いの対象になる事でもあるため、多くの鬼の怨みの対象となる彼は防衛策として特定の名を名乗ることはない。
必要な時は暗示をかけて近しい人物だと思わせるが、例え女子校の中でも違和感を抱かせない。その際は自ら様々な名を名乗るがいずれも名字で下の名前ではない。一度だけ名前が無いはずがないから下の名前を当ててみせるとして呼ばれた際は照れ臭そうにはにかんでいた。ちょっとかわいい。
他の鬼が人の負の感情から産まれる中、唯一鬼の屍から産まれた純血の鬼。
鬼でありながら角や爪が無く、見た目は完全な人間である。
代わりに鬼の肉を断つ刀「鬼切丸」を持ち、人になれると信じて鬼を斬り続ける。
人を守った際も「助けたわけじゃない。鬼を斬っただけだ」とそっけない態度を取ることが多いが、意外と軽口には乗ってくれるし、夜道の女の子の独り歩きは付き添ってくれる。
出会ってきた人の事はちゃんと覚えているようで、老婆になっていても「あの時の…」と少しの会話で思い至っている。
ちなみに人間大好きでもイジメっ子のような鬼畜は唾棄する存在のようで、鬼と化したイジメられっ子に襲われた際に「へぇ、あんな笑ってばかりの女でも自分が痛いと泣くんだな」と蔑んでる。(※見捨ててはいません)
あとなんか子供には優しい。
学ランなのはバビル2世の影響とのこと。ちなみに両者のOVA版のCVは同じ人。
戦国時代は武者、江戸時代は虚無僧、明治時代は書生、第二次大戦末期は軍刀を持った日本兵と時代に応じてその姿を変えている。
サンデーコミックス単行本のあらすじでは「全ての鬼を絶やせば人間になれるという高僧の言葉を信じて」と書かれているが、この高僧が何者なのかは謎。
作中でも人々の間でおとぎ話的に語られている要素だが、無印だけでなく、過去を描いた『伝』においても「全ての鬼を絶やす」という、人間になるための手段に至った経緯は語られなかった。そして無印でこの情報が初出のエピソードで既に「鬼は人間から産まれる一方だからいつかなんて日は来やしないのに」と子供心に哀れまれてる。


CVはOVAは草尾毅、『伝』のボイコミは渡辺和貴。

続編の「伝」では誕生経緯について、
酒呑童子によって母・醜女尼僧が丸呑みにされた際に、相手の妖力を奪い取って鬼切丸で斬り裂きながら=鬼の屍から産まれたということが明かされた。その正体は鬼を倒す為に使わされた仏神の御子
しかし、その誕生経緯から茨木童子からは祀られなかった神の忌み子と蔑まれ、事実上母親を見殺しにした*1源頼光ら人間へも激しい憎悪を向けたため「鬼に違いない」と恐れられることとなった。
このため『伝』における「人間は救わない。鬼を斬るだけ」は無印時代と微妙にニュアンスが異なる。しかし『伝』では男女問わずけっこうモテるようになって、共に暮らそうとするものも現われる。
なお、誕生秘話を描いたものの「鬼鳴里で生を受けた」という発言を作者が完全に忘れていて矛盾が発生したため、整合合わせの必要が生じ、『鬼を斬る鬼』を名乗るようになった決意表明の場ということで乗り切ったついでにやたらと自分の母への情を募らせるので日本最古のマザコン扱いされた。



◆後藤紗英
自称心霊ルポライター。
怪奇現象を追う中で鬼切丸の少年に出会い、それ以降彼を追い続け、ありえないくらい鬼に関わる事になる。
……それこそ自らが鬼になってもおかしくない程に。
七郎の鬼落としから救われた際に胸元に負った鬼切丸の刀傷によって、2度と鬼に落ちることはなく、鬼の爪が届きにくい身体となった。何故か男性の同僚が刀傷の事を知ってるが深い追求は避けるべきか?
頻繁に会うため何気に少年からは相棒認定されている。
OVA版のCVは勝生真沙子。

◆幻雄
鬼を調伏する修行を積んだ結果人間でないものに変化してしまった僧、裏僧枷の残党の一人。
人を恨んだり、狂ったりした裏僧枷の中で、唯一現代に溶け込んでいる。
裏僧伽は共通して鬼を「喰う」調伏方法を取るが、彼は不動明王呪をこめた弾丸を拳銃で撃つことで鬼を勾玉に封じてから食べる。
後藤と出会ってからは彼女の持つ「鬼縁」に目をつけ居候アシスタントとして行動を共にするようになる。

帰命(ナウマク)普遍(サマンダ)金剛諸(バサラダン)不動()明王()


◆結城七郎
身を守るために周囲の女を意識的にも無意識にも鬼に変えてしまう「鬼おとし」の能力を持つ結城一族の末裔。シスコン美少年。鬼切丸の少年に命を狙われ、最愛の姉・夕香緒を鬼におとしたショックで逃走する。
その後は圭子を道連れに、少年を挑発するかのように無関係な女性を鬼におとし続けたことで「お前だけは鬼切丸で斬るのではなく、鬼切丸で殺してやる」とガチギレさせている。
しかし鬼に落ちた者にも人間のしての意識が有ることを知ると絶望し、死を選ぶが……。

じゃあ…圭子は…ぼくのことを
恨んでいた…の?責めてたの…憎んでいた…の?
ふっ……そうか…
哀れんでいたんだね……

◆新井圭子
姉を鬼に落として結城邸から出奔した後、交通事故に巻きこまれた七郎が運ばれた病院の看護婦。
姉を鬼に落とした罪に耐えかね、自殺を図ろうとする七郎に事故にあったのに何か(●●)に守られたように怪我だけですんだのだから、君は生きなければならないと諭す。
しかしそれは七郎にとって身を守るための鬼おとしと自分を守る鬼に人を喰わせる事を正当化させる動機となり、鬼におとされた後に長期にわたり使役されることとなる……死すら許されぬほどに。

◆寂影
裏僧伽の残党の1人で唯一の女性。
山を降りた後は同じく裏僧伽の宗賢と行動を共にし、
死ぬことはないにもかかわらず鬼を喰えない「空腹感」には苦しめられるという生き地獄から狂気にかられ、罪のない女性を鬼におとして喰おうと画策する。
その様は幻雄からは「自分が女として生きられなかった恨みから、他の女を女として死ぬことも許さず、鬼におとしてから殺してるだけ」と評されている。
冷酷な性格だが、唯一弟の「聖行(じょうあん)」だけは可愛がっている。
彼女が用いるのは軍荼利明王呪。*2

オン・アミリティ・ウン・パッタ!

鈴鹿御前
奥州の鬼、悪路王の妻。鬼の姫でありながら、人間を愛し、坂上田村麿と共に悪路王を倒した後、人間に擬態しながら暮らしている。
人としての名は小山内鈴香。転校することでセーラー服✕日本刀とブレザー✕日本刀の両方を披露してくれた一粒で二度美味しいキャラ。
『伝』にも登場し、人に寄り添い鬼切丸の少年にちょっかいを出す「人の強さ」を説く。また、何故彼女が人間を愛する鬼なのか?という点も最終エピソードでその一端が明かされている。


◆きよみ
ある小島で80年に1度行われる海鬼神の祭りの巫女。
しかし実態は生贄で、その名は鬼に与える子と書いて「鬼与子(きよみ)」と読ませる。
名を持たずに生まれた少年は名を捨てて生きていきたい彼女に同情したようで、
普段は「救う」という言葉を「鬼切丸で斬って鬼であることを終わらせる」という意味で使っているのに対し、
「命を救う」という意味合いで「あの子は俺が救ってやるんだ」と独白している。
しかし、島民に怯え鬼と化した彼女はその力で人々を手に掛けながら「元凶」の海鬼神殺害を目論見……

◆良子
明治時代に鬼切丸の少年が出逢った少女。
孤児として拾われ、主人達に虐待されていたが、憎しみや妬みを持たない無垢な少女で、それ故に鬼を受け入れてしまい、悲劇に繋がってしまう。
OVA版のCVは鈴鹿千春。登場する『怨鬼哀歌の章』は実は漫画をアニメ化したのではなく、アニメが先でそれを漫画化したエピソードだったりする。*3

わたしたち二人とも、涙はみせないけれども泣きながら生きている…

◆鬼魅香
女性の他人の美しさを妬む感情から産まれ、男女を魅了する美しさを持つ鬼。誰よりも美しく誰よりも残酷で誰よりも女。しかし、後頭部には醜い鬼の顔が隠されている。
鬼切丸の少年に好意を持つが、鬼に憑かれた良子と同じことを言ってしまった為に拒絶されてしまう。

人間よりも何よりも、純血のあなたを愛しているわ。

◆覚丹
裏僧伽と異なり人間の身のままで鬼を調伏する事ができたとされる大僧正。
明治時代に1度だけ少年と共闘。彼に英生(えいしょう)という名を授ける。
明治時代当時は無茶苦茶イケメンである。

◆哲童
裏僧伽最後の一人。
作中では女将に取り憑いてるが男性で、その素顔がハッキリと映る事はない。
裏僧伽となった後で絶望して自殺を図るも死ねなかったことで更なる狂気にかられ、新たな肉体を得ようと鬼切丸の少年、鈴鹿、幻雄を誘い込む。裏僧伽の幻雄の肉体を奪う意味はあまりない
無印のラスボス。
本編で非道の限りをつくした寂影をして「裏僧伽で最も残虐な男」と称される。寂影の非道が裏僧伽になった事に起因してる事を考えると彼は元からそういう奴という事になるのでそのヤバさがわかるだろう。
用いるのは降三世明王呪。


【用語】

●屍鬼
供養されずに8年経った死体が変貌する鬼。
作中ではイジメから逃げるあまり川に落ちて人知れず命を落とした少女が変貌した。本来鬼の死体は現世に残らないが、その時は鬼切丸で斬った後に元の少女の頭がい骨がその場に遺された。
最終エピソードではその存在を知らずに8年前の行方不明者が断トツで多い事を大発見と騒ぐ後藤に対し「あんたどんだけ鬼が好きなんだ」と幻雄は呆れ果てた。

●鬼鳴里(きなさ)
鬼発祥の地と呼ばれるN県の村。*4鬼気あふれるこの地では鬼は完全に死ぬことはないとされる。故に鬼の鳴く里。
鬼女でありながらその地の住民に尽くし“貴”女として祀られた紅葉が治めた地で、鬼女は本来子どもを産む能力を持たないはずが紅葉は人間との間の息子を産んだという。
鬼鳴里の鬼は鬼鳴里の住民を襲わないとされるが鬼は鬼。近隣の住民はその被害にあっていたとされる。
鬼切丸の少年はこの地で生を受けたという。

●裏僧伽
鬼を討つために鬼以上の化物と成り果てた修験者たちの総称。
五大明王*5の力を以て鬼を勾玉に封じて喰らい、体内で鬼を浄化する。
ほぼ不老不死*6のようで鬼を喰わなくても死ぬことはないが強烈な飢餓感に苛まれる。幻雄曰く「鬼への恐怖を飢えが上回っている」。その血肉は鬼にとって猛毒で、喰らった鬼は死滅するようである。知ってるってことはかじられでもしたことがあるんだろうか?
人の為に鬼を討つ能力を身につける試練を受けて来いと言われたのに、突破できたら「死して仏に帰依すべし」と言って、僧兵が殺しにかかってくる凄まじい理不尽仕様である。そら「人間のまま戻れたら」とは言ってたけどさ……。アンタらこそ鬼や。
何気に作中で突破した構成人員が15年後の鬼退治漫画における、鬼討伐部隊の最終試験突破者と同じだったりする。何の因果か銃使いの鬼喰いもいるという。
「鬼切丸の少年がしょっちゅう鬼に会ってるのに何で飢えるんだ?」とのツッコミもあろうが、作中で幻雄も言ってるように逆説的に少年が先を越してるからありつけないのだと思われる。

【余談】

「鬼切丸」は実在した宝刀、「髭切」の別名である。(鬼切とも言う)
「髭切」は時期によって名が改名されており、「鬼切」と名付けられていたのは平安時代中期辺りで、渡辺綱の他、鵺を退治したことで有名な源頼光も持っていたという。
その後源為義に「獅子ノ子友切」と改名され、平安末期には元の名の「髭切」に戻された。
『伝』で鬼切丸の少年を「髭切」の名で呼ぶキャラがいる*7
また『伝』作中で渡辺綱が茨木童子の腕を斬り落とした刀に鬼切丸の名が与えられているが、茨木童子はちょっとした余興で腕を斬らせただけで実際はピンピンしていた。

「名を持つことは呪われる事」は翻って「名前を持つ鬼は名を囁かれるだけでも力を持つ」という意味でもあるが、
ネームド(史実の伝説持ち)の鬼よりもその辺の己を正義と信じて疑わない少年とか先生に横恋慕してる女子高生相手の方がよっぽど苦戦してたりする、というか鬼切丸では勝てなかった。
鬼では人間に敵わないようだ。
ネームド最強は恐らく『伝』における織田信長楠先生が名古屋出身在住だからか?
ちなみに鬼魅香はこの仕様で名を囁かれれば再生してくる
なお、最初のネームドの大嶽丸は前後編にもならず1話で退場しているが、後藤さん初登場なのでOVA化の恩恵には預かれた。

2013年8月3日、吉祥寺シアターにて舞台版公開が決定した。
2017年は第二弾となる『鬼切丸伝〜源平鬼絵巻〜』が公演された。
舞台版では鬼切丸の少年の相方として刀の方も擬人化されている。なんだか某刀剣ゲームを彷彿とさせるが、作者の楠桂は『刀剣乱舞』のプレイヤーである。






修正・追記は鬼切丸の少年に出会ってからお願いします。

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最終更新:2026年08月17日 23:28

*1 頼光の名誉のために言うと母自身が「自分は鬼に襲われないから大丈夫」と告げていたため、様子見を選択してしまった。

*2 ちなみに宗賢は金剛夜叉明王、聖行は大威徳明王

*3 他の『小角の章』『般若の章』『大嶽丸の章』は2〜3巻収録で、この話だけ12巻収録と時期が大きく離れている

*4 現実のN県…もとい長野県の鬼無里との関連は不明。

*5 不動明王、軍荼利明王、金剛夜叉明王、大威徳明王、降三世明王

*6 宗賢が鬼切丸で斬殺されてるので、物理耐久は普通の人間と大きくは変わらないと思いきや、哲童が首をくくって肉体が朽ちてなおも死ねなかったと語った際は幻雄を絶句させている。

*7 作中での理由は髭がないから