酒呑童子

登録日:2009/06/22(月) 20:00:00
更新日:2024/10/09 Wed 02:45:23
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酒呑童子(しゅてんどうじ)


平安時代、京の都は大江の山に巣くっていた鬼達の頭領。
身の丈一丈*1の巨漢であり、酔っ払いのごとき赤ら顔だったとか。


現存する最古の出展は「大江山酒天童子絵巻」であるが、大元になっている話自体は大分前からある様子。
また、時代の推移と共に様々な伝承や話と合体分離を繰り返しており、誕生篇だけでも様々なバージョンが存在している。

その長い歴史からか、大魔縁崇徳院・白面金毛九尾の狐玉藻御前と並んで『日本三大悪妖怪』にあげられている。



  • 誕生篇
※諸説ありすぎて大部分省略

①大江町ver.1
元々は町一番の美少年だった酒呑童子は、数多の女性に告白され沢山の恋文を貰うも、ことごとく拒否。
彼に振られた女性達は、恋わずらいから死亡したという。
そんなある日、人間だった頃の酒呑童子は山で火を焚くと、女性から貰った恋文をそれで燃やして処分しようとしたが、
その煙には恋文に宿っていた女性達の怨念がこもっており、それを浴びた彼は気がついたときには鬼に変貌していた。

恐るべきは喪女毒女の呪いというべきか。逆恨みでは?とか言ってはいけない


②大江町ver2
町の平凡な寺に生まれた酒呑童子は、なんと赤ん坊の頃から歯が生え揃っており、
生後間もない頃から言葉を話し始めた上に、5歳から酒を飲むようになった。
やがて成長すると酒の飲み過ぎでその体は真っ赤になり、顔も醜く変わった。


③伊吹山ver
スサノオノミコトにズタズタ切られ弱体化した八岐大蛇は出雲から落ち延び、伊吹山に住み着く。
色々あって落ち着いた大蛇は、近くの農家の娘を貰い息子を設けた。それが酒呑童子である。

後に寺へと入れられた酒呑童子は、やがて「三塔一の学僧」と称えられるようになったが、
かなりの酒好きであったために軽蔑もされており、一度は師に言われて断酒する。
しかし、ある行事で鬼の面を被って踊る「鬼踊り」を披露した後に酒を振る舞われた酒呑童子は、
酒を鯨飲した後に鬼の面を着けたまま山に戻って寝たが、起きると鬼の面が外れなくなっていた。
寺から追い出され、祖父からも拒絶された酒呑童子は、伊吹山に籠って神通力を身に付け、本物の鬼になったという。
その後伊吹山から出ると、色々あって意気投合した「茨木童子」などの鬼達と大江の山に住み着いたとか。




こうして大江山に住み着いた酒呑童子が率いる鬼たちの乱暴狼藉に頭を痛めた朝廷は、
「土蜘蛛退治」や「一条戻り橋の鬼退治」で有名な『源頼光』率いる『頼光四天王』を召集し、これの討伐に向かわせた。

命を受けた頼光たちは山伏に扮すると、鬼たちの総本山である大江山に突入。
ほぼ無策で突入した彼らはあっという間に遭難してしまうが、そこにある老人が現れる。

老人の正体はなんと神様であり、道に迷った頼光たちに正しい道を示すだけでなく、
「人には薬となるが、鬼には毒となる」という『神便鬼毒酒(じんべんきどくしゅ)』と神の鎧、星冑を授けた。

こうして頼光たちはようやく鬼の宮殿に辿り着くと、酒呑童子たちに「道に迷った鬼を信仰する旅の者」を名乗り、一宿を求める。
近々京から鬼退治の者たちがやってくると耳にしていた酒呑童子は彼らを警戒し、詰問するが、
頼光の巧みな受け答えによって警戒を解き、他の鬼たちにも「杯を交わした以上家族同然だ」として警戒を解かせた。

頼光たちは歓迎会で供された若い貴族の姫君の血酒や生肉を口にして、さらに鬼たちを油断させると、 
授けられた『神便鬼毒酒』を酒呑童子たちに呑ませることに成功する。

酒呑童子は最初気分よく自分の身の上話などを語って聞かせていたが、やがて毒酒が回って身動きが取れなくなり、
その機を逃さなかった頼光たちにより、配下の鬼たち共々、一人残らず討ち取られた。

騙し討ちにされ、配下の鬼たちまで討たれる光景を目の当たりにした酒呑童子は、
「情けなしとよ客僧たち、偽りあらじといひつるに鬼神に横道なきものを」*2と批判するが、
頼光は「勅なれば」と切って捨て、刀を一閃し、酒呑童子の首を落とした。

生命力が凄まじい酒呑童子は、生首だけの状態でも死なず、頼光の兜に噛みつくが、
頼光によって刀でその両目をえぐり出されると、ようやく力尽きて地面へ落ちたのだった。
この刀が、国宝指定の「童子切安綱」とされる。

その後、頼光たちは討ち取った酒呑童子の首を引っさげて意気揚々と帰路についたが、
老の坂辺りに差し掛かると、酒呑童子の首が急に重くなり、遂には持つ事も叶わなくなったため、その場に埋めて帰ったという。
その場所は、「首塚大明神」として現在も立派に奉られているとか。



  • 余談

  • 某地方に伝わる昔話の一つにその後の酒呑童子が出て来る話がある。
    首だけになった今でも酒をねだって空を飛び回り、居酒屋で酒を飲ませてもらっては、ニコニコしながら酔っぱらう毎日だとか。

  • 辛い酒を俗に「鬼ころし」というが、この語源は酒呑童子に呑ませた酒であるという。
    「鬼を殺せるような辛い酒」から来た言葉で、いかにも商品名っぽいが一般名詞であり、商標登録されていない。
    そのため、どのメーカーであっても「鬼ころし」という名の酒を売ることが出来る。

  • 酒呑童子を鬼と呼んだのは都の人たちで、地元での彼は人望篤かった。
    頼光に討ち取られたあと、大江山には彼を弔うための碑が建てられ、彼の命日には「鎌止め」といって刃物の一切を使わず彼の霊を慰めた。
    • そういった事情からか、伝承でもやっていること自体は悪逆非道であり、
      上述の通り頼光たちに「ご馳走として」攫って殺した貴族の姫の人肉や血を振る舞ったりもしているのだが、
      「仲間だと認めた相手には人間であっても気前がいい」
      「騙し討ちでしか討ち取れなかった=正面からの戦いでは勝ち目が無かった」
      「首を落とされても死なず、首だけになってもなお活動を止めない」
      「地元では現在でも祀られている」
      という風に、現代はおろか当時から大事に扱われている。
      もしかしたら鬼の正体は「何らかの理由で堕ちてしまった人間」なのかもしれない…。

  • 首塚大明神は現在も京都市に存在しているが、地元では心霊スポットとして有名で、怪奇現象も多数報告されている。
    日本最強と恐れられる鬼が祀られているのだからさもありなんといったところだが、決して遊び半分で行かないように。





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最終更新:2024年10月09日 02:45

*1 だいたい3.3m

*2 「信心を偽り、裏切るとは情けない。こんな真似は鬼でもやらん」(意訳)