鈴鹿御前

登録日:2014/07/28 (Mon) 1:56:00
更新日:2025/01/10 Fri 15:44:31
所要時間:約 3 分で読めます




鈴鹿御前とは日本の伝承に登場する不思議な女性である。
何が不思議なのかというと、話によってただの女盗賊だったというものもあれば、
天女であったという話もあり、はては天竺の第四天魔王の娘の鬼女など、
出白が話によってバラバラなのである。
ただ、すべてに共通するのが絶世の美女…即ち別嬪さんだったという事だ。
別名を鈴鹿姫、立烏帽子、鈴鹿権現とも。

★概要


彼女が登場する話の中で最古と思われるものに『保元物語』というものがあり、
ここでは立見烏帽子という盗賊として登場するがここから話が発展し、
数多くのバージョン違いが存在している。
あまりに細かいバージョン違いが多すぎてすべてを説明するとらちが明かない為、
此処ではメジャーなバージョンの一つを書く。

三重県滋賀県の県境に存在する山である鈴鹿山に大嶽丸と言う鬼がいた。
そこへ父親の命で天竺からやってきた鈴鹿御前は大嶽丸と夫婦の契り(契りとは名ばかりで
単なる盟約だったとも)を交わし、朝廷を転覆させ、鬼の国家を作ろうと画策する。
大嶽丸は酒呑童子と並ぶ最強格の鬼であり、三大悪妖怪に崇徳院ではなく彼が入っていた時期もあった程の凶悪さを持っていた。
大嶽丸と鈴鹿御前の連合軍は都に収められるはずの金品などを掠奪したり、人間たちへ危害を加えたりとやりたい放題であった。
あまりの傍若無人、暴虐っぷりに困った朝廷は坂上田村麻呂を派遣、鬼退治に向かわせる。

そこで鈴鹿山へ向かった坂上田村麻呂を迎え撃ったのが彼女なのだが、戦いは互角で一向に決着がつかなかった。
しかしここで驚くべき事態が発生する。
なんとあろうことか、田村将軍は敵である鈴鹿御前のその美貌に惚れてしまったのだ
彼女の方も田村将軍の逞しさに惚れ、二人は相思相愛になり、彼女は遂に盟友である大嶽丸を裏切って
田村将軍側に付き、大嶽丸とその部下の鬼達を討伐する*1
そして二人は結ばれ、間に小りんという娘をもうけるものの、彼女は天命であるたった25歳という若さで
この世を去ってしまう。
悲しみに明け暮れる田村将軍であったがどうしても諦めきれず、なんと冥界にまで赴き、彼女を連れ戻したのである(諸説あり、閻魔大王に頼み込んで蘇らせてもらった、人間の女性に転生させてもらったという説もある)
こうして、二人は娘と共に仲睦まじく暮らしたというハッピーエンドを迎える展開が良く知られている。

先述したようにこの話には某ゲームの如く、複数のルート基伝承があり、大嶽丸ではなく、
悪路王という別の鬼の妻で悪路王が死んだ後に田村将軍の妻となったという伝承、
鬼女ではなく天女であり、大嶽丸に惚れられていたのを利用して騙し討ちに協力した伝承、
田村将軍に惚れるも想いは通じず、なんと悪路王と共に斬り殺されてしまった
いうある意味バッドエンドを迎えたという伝承も存在するようだ。

ちなみに彼女が持っていた三振りの宝剣は大通連、小通連、顕明連という名前がある。*2
大通連は文殊菩薩の智慧の剣、小通連は普賢菩薩の慈悲のであり、敵の気配を察知すると自動的に動いて飛んでいき、襲い掛かるというチート機能があったとも言われているようだ。
顕明連に至ってはホーミングしないものの、旭日にかざすと三千大千世界を見渡せるという鬼チートっぷりである。

更に余談だが鈴鹿山という山は存在しない。
これは現:三重県亀山市(鈴鹿市ではない)〜滋賀県甲賀市に存在する鈴鹿峠という鈴鹿山脈で『比較的*3』通行が容易かつ東西移動において重要なルートであるにもかかわらず山賊が横行したり歴史的にも重要な局面*4で使われていたり、自然と人への畏敬の念が集まった結果、これらの伝説が生まれていったとされている。

★鈴鹿御前が登場する作品


ただ、知名度で言えば同じ鬼である酒呑童子最強妖狐である白面金毛九尾の狐
恨みで天狗と化した崇徳上皇に比べればマイナーであり、こうした方面のマニア以外には
あまり知られていない存在ではあるが日本の伝承においては数少ない戦う女性であることから
和風ファンタジーでは意外と登場の機会はある。

Fate/EXTRA-CCC FoxTail

セイバーのサーヴァントとして鈴鹿御前が登場。
本作においての彼女は鬼ではなく狐娘であり、経歴もバッドエンドを迎えた伝承を基にしてる模様。
田村将軍こと坂之上田村麻呂も存在していることが示唆されるが…?

鬼切丸

同作におけるヒロイン。女子高生として人間の世界で暮らしながら人に害を与える鬼を退治してきた。

ペルソナ4

里中千枝のペルソナ・スズカゴンゲンとして登場。
名前から判断する限り鬼としてではなく天女としての鈴鹿御前をモチーフにしているようだ。

仁王2

「鈴鹿」と「立烏帽子」がそれぞれ別のキャラクターとして登場する。
前者は主人公の母である深芳野(斎藤道三の側室)と同一人物であり、大嶽丸の妹という設定。
ストーリー冒頭で果心居士に殺されてしまうが、その後に意外な形で再登場する。

後者は大嶽丸に救われた女盗賊。父を知らず、母も幼少の頃に疫病で亡くしており、盗賊として辛うじて行きていたところを大嶽丸に拾われ、霊石の力により妖怪へと生まれ変わった。
大嶽丸に深く心酔しており、彼の夢を叶えるために非道を働く。



修正、追記は三振りので切られても平気な方がお願いします。



この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 古典
  • 天女
  • 盗賊
  • 鬼女
  • 美女
  • Fateサーヴァントネタ元項目
  • ある意味鬼嫁
  • 別嬪
  • 田村将軍
  • 鬼姫
  • 立見烏帽子
  • 鈴鹿姫
  • 鈴鹿権現
  • 妖刀
  • 大通連
  • 小通連
  • 顕明連
  • ラブストーリー
  • ルート多数
  • バッドエンドもあるよ
  • 鈴鹿御前
  • 三重県
  • 滋賀県
  • 鈴鹿
  • 鈴鹿山
  • 鬼娘
  • アニヲタ妖怪シリーズ
  • 異類婚姻譚
最終更新:2025年01月10日 15:44

*1 奥浄瑠璃「田村三代記」では田村麻呂はボコボコにされ、殺されかけるもやはり田村麻呂を気に入って立烏帽子の方から求婚するがこの時「嫌なら殺す」と脅しに近い形で迫ったという。

*2 元々は大嶽丸の持ち物であり、鈴鹿御前と坂上田村麻呂が共謀し大嶽丸を騙して剣を奪ったという

*3 近代日本においてすら道路開通に多くの時間と費用がかかった超難所。

*4 壬申の乱等