超兵器R1号(ウルトラセブン)

登録日:2012/09/22 Sat 21:25:46
更新日:2023/06/01 Thu 15:25:07NEW!
所要時間:約 8 分で読めます








それは……血を吐きながら続ける、

悲しいマラソンですよ。





超兵器R1号とは、『ウルトラセブン』第26話のタイトルである。

【放送データ】

監督:鈴木俊継
脚本:若槻文三
特殊監督:的場徹
制作NO:26
放送:1967年3月31日


◆ストーリー

地球防衛軍が遂に、惑星一つをぶっ飛ばしうる超威力の弾道ミサイルを開発した事から物語は始まる。
メインスタッフのセガワ博士、マエノ博士らが持ってきた超兵器「R1号」の図面を見て隊員達は歓喜。
R1号は新型水爆8000個分(地味にその水爆も凄くないか)の威力を有し、隊員の多くは「この存在があるだけ侵略者はいなくなる」、そう信じていた。
フルハシ「地球を侵略しようとする惑星なんか、ボタンひとつで木っ端微塵だぁ!」
アンヌ「使わなくても、超兵器があるだけで平和が守れるんだわ」

…しかしそんな中、一人浮かない顔をした隊員がいた。
我らがセブンダン隊員である。

ダン「地球を守る為なら、何をしてもいいのですか?」
そう、フルハシ隊員に問いただした。
しかしフルハシは「忘れるなダン、地球は狙われているんだ」と言い、実験を止めようと参謀室に向かったダンを制止する。
ダンは叫ぶ。


侵略者は超兵器に対抗して、もっと強烈な破壊兵器を作りますよ!


フルハシは平然と返す。


我々はそれよりも、強力な兵器をまた作ればいいじゃないか!



ダン「それは……血を吐きながら続ける、悲しいマラソンですよ




実験場(という名の見せしめ)として、生物が存在せず地球への影響もないと判断されたギエロン星が選択され、R1号が発射される。
実験は大成功し、ギエロン星は人間の手で宇宙から永久に抹殺された。

喜びもつかの間、ギエロン星の在った場所から巨大な破片と思われる影が現れる。
同時に、宇宙観測艇8号が何者かの攻撃を受けて通信を絶った。

ギエロン星のあった方角から真直ぐ地球に向かう奇妙な物体。
それは惑星を滅ぼされ、超兵器で変異したギエロン星獣だった。
生物が生息できないと判断されたはずのギエロン星には、そこに暮らす生物が存在したのだ!

因みにこの時セガワ博士は「この危機を救うものは、超兵器R2号だけです」と発言した。
またマエノ博士はそれに対し「そんな事をして、さらに巨大化したら!」と反対した。
そもそも惑星を破壊できる兵器を地球上で使っていいのか。

一度はウルトラ警備隊の放ったミサイルの前に爆殺されたギエロン星獣だったが、驚異的な生命力で再生復活。
更に強化された肉体で、故郷の仇とばかりに暴れ狂うギエロン星獣に対し、セブン(ダン)はやむなく応戦した。

アイスラッガーをも弾く頑丈な体と放射能を含んだガスに苦しめられるセブンだったが、最後はギエロン星獣の片腕をもぎ取りアイスラッガーで喉笛を切り裂く事で息の根を止める。
美しい花畑の上でギエロン星獣は暴れ、のたうち、黄色い血液を撒き散らし、一帯を血染めにして死んだ。

放射能を浴びた為、メディカルセンターで休む事になるダン。
一方、参謀室には重い空気が立ち込めていた。
マエノ「本当は美しい星ギエロンに住む平和な生物だったのかもしれません」
配慮の欠けた兵器実験が凶悪な化け物を生み出してしまった。
更に言えば、地球を守る兵器で地球に住む人間の生活を脅かしてしまった。

そして、タケナカ参謀はキリヤマ隊長と話し出す。
タケナカ「キリヤマ隊長、超兵器R2号が完成したら、地球の平和は絶対に守れると思うかね?」
キリヤマ「侵略者は、より強力な破壊兵器を作るかもしれません」
タケナカ「うむ、我々はさらに強力な破壊兵器を作る」

そしてキリヤマ隊長はダン隊員の言葉を思い出す。

キリヤマ「…そういえば、ダンがしきりにうわごとをいったんです。血を吐きながら続けるマラソン、だと…」
マエノ「人間という生物は、そんなマラソンを続けるほど、愚かな生物なんでしょうか?」


その後、ダンは参謀にR2号の開発中止を進言しようとするが、タケナカ参謀が聞く前に承諾し、マエノ博士も他の委員の説得をすると約束した。
悲劇を再び生まないために…。

だが……。


◆用語

【セガワ博士】
  • 地球防衛国際委員会の人
  • ハッキリ言って今作最大の元凶。ギエロン星獣の脅威に対し、惑星を粉砕できる威力のR2号を東京近郊で使おうとした。
  • 侵略者を倒すためにR1号だけでなくR2号や理論上だけでR3号、R4号と構想している。狂ってる。結果ファンからはマッドサイエンティストと呼ばれ、空想科学読本では「迷惑な科学者ワースト1」と呼ばれる始末。
単一電池に対する単三電池のように数字が大きくなると威力も小さくなるという可能性も無いでは無いが…。

【マエノ博士】
  • 宇宙生物学の第一人者
  • セガワの方が責任重大なのに彼以上に責任を感じている。

【惑星攻撃用超兵器「R1号」】
  • 新型水爆8000個の爆発力。
  • 実験用である。
もう一度言うが、実験用である。

【シャール星座第7惑星ギエロン】
  • 温度270度、酸素0.6%。
  • 金星とよく似た、燃えない焦熱地獄。
  • 住めるはずがありません(ジャミラ涙目)。
(調査期間6ヶ月) byマエノ博士
  • R1号で跡形もなく消滅

【再生怪獣 ギエロン星獣
  • 木っ端微塵にされても再生できる。
  • ガスを吐いて東京を放射能まみれにした。
  • 弱点は首であり、頚動脈を切られて失血死。

【血を吐きながら続けるマラソン】
  1. 人類が地球を侵略者から守るために超兵器を作る。
  2. 侵略者は、もっと強烈な破壊兵器を作る。
  3. 人類はそれよりも強力な兵器をまた作る。→2に戻る。


≪余談≫

劇中リスが登場するが、台本では本編と微妙に異なっている。
元々はアンヌが基地内に忍び込んで弱っていたのを治していたとされ、物語の前・中・後に登場していた。
『血を吐きながら続ける、悲しいマラソン』の狂言回しがこのリスの役割だった。
また台本ではダンが「やめるんだ、もうやめるんだ、お前も…」と心の中で呟きながらリスを凝視して終わっている。
ちなみにこのリスは山村哲夫氏が飼っていたのを、営業部の末安正博氏に引き取ってもらっていたリスらしい。

監督の鈴木俊継氏は、ラストのリスのシーンをプロデューサーからカットするように要求された時に「これを切るくらいなら作品を捨てる」とまで言って断固として断ったという。
鈴木氏は普段温厚な人物だったそうで、特撮監督の的場徹氏は「こんな激しい面があったのか」と驚いたそうだ。

本エピソードの一件を反省し、超兵器の製造を取り止めた…かと思いきやそんな事は一切なく、
ウルトラマンタロウ』ではヨーロッパの某国がトロン爆弾を製造、ムルロア星を爆破した為ムルロアが復讐の為地球を襲撃、暗黒の闇に包み込む事態になっており、
ウルトラマンレオ』では第25話でクリーン星にCS137ロケット弾を撃ち込み、爆破した事でサタンビートルが報復の為に飛来、同作39話では未使用に終わったもののコントロールを失い地球に衝突しそうになったウルトラの星を爆破する為にUN105X爆弾が製造され、
ウルトラマン80』でも放置しておけば地球滅亡の危機があったとはいえ
はぐれ惑星レッドローズをレッド1で爆破した際レッドローズはおろか後述する怪獣の故郷であるガウス星を含む他の4つの惑星まで巻き添えを喰らって
粉々に消し飛ぶ事態になっており、挙句に怪獣ガウスが地球を襲撃と悪い意味で歴史を繰り返している。


≪派生作品への影響≫

ウルトラマンオーブ』ではR1スパイナーという名前がよく似た新型爆弾が登場した。
(「スパイナー」に関してはキル星人およびグドンの記事を参照)

小説作品『ウルトラマンメビウス アンデレスホリゾント』ではトリヤマ補佐官がかつてギエロン星獣と交戦した経験を語っている。
普段は怪獣の名前をよく間違える彼だが、この戦いでは同期が放射能を浴びて被爆し、今でも後遺症に苦しんでいることから強く覚えていたようだ。
ギエロン星獣だけでなく、上層部に振り回された現場の隊員たちもまた被害者であることも忘れてはならないだろう。

漫画作品『ウルトラマン超闘士激伝』では、どう考えてもR1号を想起させるネーミングのR1キャノンなる兵器が登場したが、
ゼットンに対して打ち込まれそうになったのを見てウルトラマンが「もっと強化されてしまう」と断固として使用に反対し立ち消えとなった。

SFCゲーム版『ウルトラセブン』でギエロン星獣を倒した時だけリザルト画面の絵が専用のものになる。
音楽も暗く悲しい曲に変わり、メッセージは他の怪獣のように「○○ 撃破」ではなく「ギエロン星獣 永眠」となっている。

GBAのゲーム作品『ウルトラ警備隊Monster Attack』では、爆破されるのはペダン星に変更になっている。

switchの「ウルトラ怪獣モンスターファーム」ではギエロン星獣のクッキーが登場して、育成怪獣に特徴を付与することができる。
その特徴「一夜の復活」は、ライフが尽きた時に一度だけライフ1で踏みとどまれるというポケモンで言う「がんじょう」に相当する優秀なスキル。
特に一撃食らったらアウトな回避系の紙装甲怪獣には非常に相性がよい。
ただし、同じようなスキルであるインペライザーの特徴と組み合わせて二回耐えるということはできないので注意。

≪「血を吐きながら続けるマラソン」について≫

◎岩石宇宙人 アンノン
◎策略星人 ペダン星人
◎宇宙正義 デラシオン
◎超科学人 ダークバルタン
以上の面々は、それぞれ地球が侵略しに来たと判断して反撃に出たアンノンとペダン星人、地球人は他の星を脅かすと断じて消去しに来たデラシオン、
地球人はやがて自分達を侵略しに来るとして先手を打ちに来たダークバルタンである。
個々で見ると言いがかりに思えなくもないが、今回のギエロンの一件を思うと必ずしもそうではないと言える。

ただし、同時に地球が常に外敵の脅威を受けているからこそ超兵器が作られている事、そして、作られていった兵器によって、地球を守っている事実も決して忘れてはならない。
マラソン選手に大会を棄権する権利はあっても中止にする権利はないように地球だけが超兵器開発を止めた所で、侵略者が超兵器開発を止めてくれる保証などどこにもない以上、マラソンの否定が「綺麗事の理想論」と言う意見も否定出来ないのだ。
事実として、近年では光の国ですら、ウルトラカプセルやウルトラメダル等の超兵器の開発を行っており、そしてそれを見事に侵略者に悪用されてしまっている。
そしてかつて地球人に対して「血を吐きながら続ける、悲しいマラソン」と言ったダン=ウルトラセブンが、これらの開発に関与している*1のだ。
また、映画『シン・ウルトラマン』では人類が宇宙人への抵抗力をほとんど持たなかったが故に、対等な交渉も許されず良いように翻弄され、何度も滅亡や隷属の危機に遭っている。
最終的には人類どころかウルトラマンにもどうにも出来ない超兵器ウルトラマンの同族により送り込まれ、進退窮まったウルトラマンが別の超兵器の技術を人類に教示して事態の打開を図るという、R1号とは真逆とも取れる展開が描かれている。

とはいえもちろん、自身の手に余る無軌道な超兵器開発が肯定されている訳ではない。兵器開発に熱中するあまり、より大きな被害を招いては、本末転倒も良い所である。
そのため2010年代以降のシリーズでは「自衛のために兵器を開発するのは良いが、それを正しく使わなければならない」と言う、バランスを重視した描写にシフトしつつある。
特に『ウルトラマンZ』では、「自衛のための正しい力・キングジョー ストレイジカスタム」「自衛の域を越えた制御不能の力・ウルトロイドゼロ」の双方が登場している。


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最終更新:2023年06月01日 15:25

*1 直接的な描写はないが、「ウルトラマンヒカリが、セブンに無断でセブンのカプセルやメダルを作る」と言うのは考えにくいだろう。