ウルトラマンA(作品)

登録日:2025/08/19 Tue 01:19
更新日:2025/08/19 Tue 01:38:21NEW!
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『ウルトラマンA』は1972年(昭和47年)4月7から1973年(昭和47年)3月30日にかけてTBS系列で全52話が放送された空想特撮ドラマ。


【概要】

前作『帰ってきたウルトラマン』の成功により第二次怪獣ブームが幕開けとなったことで、円谷プロは後続番組も新しいウルトラマンを作ることになった。

脚本家の市川森一、上原正三、田口成光はそれぞれ『ウルトラハンター』『ウルトラV』『ウルトラファイター』という企画案を出し合い、それらの長所を整理し纏めることで製作がスタートした。

同時期には前作と鎬を削っていた『仮面ライダー』が人気を博していたこともあってかその影響も受けて
  • 男女二人が合体してウルトラマンに変身する
  • ショッカーのようなレギュラー登場する敵キャラクター
  • 怪獣を超える能力を持つ超獣

と、様々な新機軸の要素を取り入れて番組を盛り上げようと意欲的であった。
これまでのウルトラシリーズでは前後編を除いて、2話以上に渡って怪獣や宇宙人が登場する機会は初代のバルタン星人や再生怪獣が散発的にある程度だったが、本作では作品全体の敵役としてヤプールが設定されるのは初めての試みであった。

前作で初代ウルトラマンウルトラセブンがシリーズを跨いで登場したことも好評となり、本作ではゾフィーも含めて歴代のウルトラマン達が1話目から総出演するウルトラ兄弟の設定が明確化され、作中でエースの助っ人として登場する頻度も増えていった。

こうして意欲的な新要素を加えてスタートしたウルトラマンAであったが、それらが番組で活用されたとは言い難いものがあった。

ウルトラマンに変身する主人公が二人になったことで「二人分のドラマを作らなければならなくなる」「二人が一緒にいないとウルトラマンに変身できない」と制約が生まれてしまい、却ってドラマ作りの足枷となってしまっていた。
時には二人が離れ離れなのに合体変身するというご都合主義的な展開までも描かれる始末であった。

敵役のヤプールの存在も脚本家同士のイメージや解釈がそれぞれ違っていてあまりにも漠然とし過ぎていたため、「どんな敵キャラなのかよく判らない」と視聴者にも首を傾げられていた。
また、結果的に敵キャラが固定化されたためにストーリー展開がワンパターンになりがちで、
  • 事件が起きる
  • 事件を通報したり調査をしても信用されない
  • 北斗が孤立する
  • 事態が悪化して超獣が暴れる
といった流れになることが多かった*1

超獣についても、能力こそ視聴者の度肝を抜くような演出が多々見られたが、全体的な扱いについては従来の怪獣と大して変わらず、宇宙人の操る刺客や尖兵の怪獣の域を出ないものとなっており、宣伝ほどの魅力を視聴者には伝えられなかった。

結局、これらの要素は番組中盤でヤプールが全滅して退場し、合体変身についても南夕子を超展開で退場させて北斗が単独で変身する従来の展開に戻ってしまったりとオミットされてしまう。
ヤプール退場後も超獣は引き続き登場したが、結局従来の怪獣との線引きが曖昧になり、同じような扱いとなることに拍車をかけてしまった。

さらに中盤からは新たな路線で前作の坂田次郎のようなゲストキャラと北斗との交流を描こうともしたが、こちらも消化不良で中途半端なまま終わってしまったりと、番組の路線は一貫性が無くなってしまう。

メインライターだった市川森一や上原正三もドラマ作りに限界を感じ、第一クールが終了した辺りから降板までしてしまう事態にもなってしまった。

新要素が機能しなかったことは視聴率にも表れ、初回放送こそ30%近い最高視聴率を叩きだした前作の放送終了直後ということもあって、同じレベルの高視聴率を叩きだしたが、たった3話で10%台に一気にダウンし、第二クールの終盤まで20%台に回復することもなかった。
これは前作と全く同じであり、しかも第三クールの後半からはまた視聴率が低下してしまう。

ドラマ面に関しては前作よりもやや娯楽性を意識した作りが特徴だが、登場人物はやたらとエゴが強く良くも悪くもリアリティを重視しており、ヤプールがそれらを利用してくる卑劣さをエグく描写しているのも相まって、ウルトラマンAという作品の個性として確立されている。


【世界観】

前作の最終話から地続きになっており、MATが壊滅した以降は地球防衛軍が代わりに地球を防衛しているという設定になっていた。

また、第1話でウルトラマンAの口から銀河連邦なるものが存在することが仄めかされていたが、作中でそれらが掘り下げられることはなかった。


超獣攻撃隊 TAC

第1話で防衛軍がベロクロンに全滅させられたために結成された対超獣の対策チーム。

超獣対策のために結成された割には怪奇現象を信じない者が多く、組織としての意義に疑問が感じられることも。
前作のMAT以上に序盤はギスギスした人間関係で通報者や目撃者の証言を頭ごなしに否定したり、仲間の報告さえも信じないなどチームワークや立ち回りは良くない。

隊長の竜は良くも悪くも厳格であり、北斗を含めて部下には謹慎や出撃停止処分を乱発する傾向にあり、『謹慎TAC』という不名誉なあだ名がつけられている。
昭和シリーズファンからは『ウルトラマンレオ』のMACと並んで、評判の悪い防衛チームとされる。


竜 五郎
演:瑳川哲朗
極東支部の隊長。
厳格だが冷静沈着で部下の命を何より大切に思っており、時には北斗の命を無視する高倉長官に鉄拳を喰らわせるほど。
部下には謹慎や出撃停止処分を乱発してしまう傾向があり、『謹慎TAC』と呼ばれる原因になっている。

山中一郎
演:沖田駿一
副隊長。射撃の名手で二丁拳銃が得意。サングラスをした格好はどう見てもヤクザ。
良くも悪くも短気で現実主義な性格で、しばしば北斗を怒鳴りつけたり、目撃者の証言を否定することが多い。
婚約者がいたが、メトロン星人によって殺されてしまう。

北斗星司
演:高峰圭二
元パン屋の運転手。
『ウルトラマンA』の主人公にして南夕子と合体変身することでウルトラマンAとなる青年。
報告や証言を夕子以外に中々聞いて貰えず、よく孤立する。

南 夕子
演:星光子
元看護婦。北斗星司と合体変身することでウルトラマンAとなる女性。
誰も北斗を信じない状況でも北斗を信じることが多く、二人は強い絆で結ばれている。
実はかつてルナチクスに故郷を滅ぼされた月星人……という超展開によって、ルナチクス撃退後は北斗にウルトラリングを授けて離脱した。
一応、後にも2回だけゲスト出演はしている。

今野 勉
演:山本正明
ロケット工学の専門家。デブ。
ムードメーカーかつ怪力キャラのポジションを併せ持っているのだが、設定ともどもイマイチ活かされなかった。

吉村公三
演:佐野光洋
宇宙生物学の権威。過去に登場した怪獣などに精通している。山中隊員並みに射撃も上手い。

美川のり子
演:西恵子
もう一人の女性隊員。夕子離脱後はTACの紅一点となる。
爆発物の専門家で、身に付けているペンダントやイヤリングには爆弾が内蔵されている。

梶洋一
演:中山克己
兵器開発担当。ポジション的には『ウルトラQ』の一の谷博士や『ウルトラマン』の岩本博士に近い。
タックガンのアタッチメントや様々なハイテク兵器を開発しており、中には超獣さえも撃破できる代物まで作れる凄い人。
北斗を信用する場面が多い等、人格面でもよく出来た人だったが、31話を最後に何の説明もなく物語からフェードアウトしてしまう。

高倉司令官
演:山形勲
南太平洋本部の司令官。
非常に横暴な最低の上司で職権を乱用して報復人事を行ったり、自身の失敗が発覚しても保身しか考えず、部下やウルトラ4兄弟さえも平気で見捨てようとするなど、シリーズに登場する地球人の中では最低の部類に入る。


【北斗星司を取り巻く人物】


梅津ダン
演:梅津昭典
28話で夕子が降板した直後、交代するように登場する少年。北斗を兄のように慕う。
自分を「ウルトラ6番目の弟」と自称しており、ウルトラの星が視認できる不思議な能力を持っている。
登場時期は次作である『ウルトラマンタロウ』の企画が進んでいた頃であり、自称の6兄弟が却って不都合になったためか、掘り下げもされないまま43話を最後にウルトラマンのホシノ君のように何の説明もなく姉の香代子ともども、フェードアウトしてしまう。

■梅津 香代子
演:宮野リエ
ダンの姉。北斗のアパートの隣室に住んでおり、彼に好意を抱いている。
前作のルミ子に近いポジションだが、ダンと同じく43話を最後に物語からフェードアウトしてしまった。


【エピソード】

話数 タイトル 監督 特技監督 脚本 登場怪獣・宇宙人 備考・余談
1 輝け!ウルトラ五兄弟 筧正典満
田かずほ
佐川和夫 市川森一 ベロクロン
2 大超獣を越えてゆけ! 上原正三 カメレキング
3 燃えろ!超獣地獄 山際永三 田口成光 バキシム
4 3億年超獣出現! 市川森一 ガラン
5 大蟻超獣対ウルトラ兄弟 真船禎 大平隆 上原正三 ギロン人
アリブンタ
ウルトラサイン初登場
6 変身超獣の謎を追え! 田口成光 ブロッケン
7 怪獣対超獣対宇宙人 筧正典 佐川和夫 市川森一 ドラゴリー
メトロン星人Jr.
ムルチ(2代目)
シリーズ初の三対一
8 太陽の命 エースの命 上原正三
9 超獣10万匹!奇襲計画 山際永三 田淵吉男 市川森一 ガマス
10 決戦!エース対郷秀樹 田口成光 ザイゴン
アンチラ星人
次郎君、シリーズを跨いで再登場
11 超獣は10人の女? 平野一夫 佐川和夫 上原正三 ユニタング
12 サボテン地獄の赤い花 サボテンダー
13 死刑!ウルトラ5兄弟 吉野安雄 田口成光 バラバ ウルトラ4兄弟全滅
14 銀河に散った5つの星 市川森一 バラバ
エースキラー
エースロボット
15 夏の怪奇シリーズ
黒い蟹の呪い
山際永三 田淵吉男 田口成光 キングクラブ
16 夏の怪奇シリーズ
怪談・牛神男
石堂淑朗 カウラ
牛神男
17 夏の怪奇シリーズ
怪談 ほたるヶ原の鬼女
真船禎 高野宏一 上原正三 ホタルンガ
鬼女
18 鳩を返せ! 田口成光 ブラックピジョン
19 河童屋敷の謎 筧正典 佐川和夫 斎藤正夫 キングカッパー
アンドロイド
20 青春の星 ふたりの星 田口成光 ゼミストラー
21 天女の幻を見た! 山際永三 川北紘一 石堂淑朗 アプラサール
天女アプラサ
22 復讐鬼ヤプール 上原正三 ブラックサタン
宇宙仮面
23 逆転!ゾフィ只今参上[注釈 73] 真船禎 高野宏一 真船禎 巨大ヤプール
ヤプール老人
ヤプール、一時退場
24 見よ!真夜中の大変身 平野一夫
真船禎
マザリュース
マザロン人
妖女
25 ピラミットは超獣の巣だ! 筧正典 川北紘一 斎藤正夫 スフィンクス
オリオン星人
26 全滅!ウルトラ5兄弟 田口成光 ヒッポリト星人 ウルトラ5兄弟全滅
27 奇跡!ウルトラの父 ウルトラの父登場
28 さようなら夕子よ、月の妹よ 山際永三 佐川和夫 石堂淑朗 ルナチクス 南夕子の退場
29 ウルトラ6番目の弟 長坂秀佳 ギタギタンガ
アングラモン
梅津ダンの登場
30 きみにも見えるウルトラの星 岡村精 川北紘一 田口成光 レッドジャック
31 セブンからエースの手に 山田正弘 バクタリ
32 ウルトラの星に祈りを込めて 筧正典 佐川和夫 田口成光 コオクス
33 あの気球船を撃て! 石堂淑朗 バッドバアロン
34 海の虹に超獣が踊る 志村広 高野宏一 長坂秀佳 カイテイガガン
35 ゾフィからの贈りもの 古川卓己 久保田圭司 ドリームギラス
36 この超獣10,000ホーン? 筧正典 川北紘一 長坂秀佳 サウンドギラー
37 友情の星よ永遠に 石森史郎 マッハレス
38 復活!ウルトラの父 山際永三 高野宏一 石堂淑朗 スノーギラン
ナマハゲ
ウルトラの父とサンタクロース
39 セブンの命!エースの命! 田口成光 ファイヤーモンス
ファイヤー星人
40 パンダを返して! 鈴木俊継 川北紘一 スチール星人
41 冬の怪奇シリーズ
怪談!!獅子太鼓
石堂淑朗 シシゴラン
カイマンダ
邪神カイマ
42 冬の怪奇シリーズ
神秘!怪獣ウーの復活
上野英隆 高野宏一 田口成光 アイスロン
ウー(2代目)
ウー、シリーズを跨いで再登場
43 冬の怪奇シリーズ
怪談 雪男の叫び!
石堂淑朗 フブギララ
44 節分怪談!光る豆 筧正典 佐川和夫 石森史郎 オニデビル
45 大ピンチ!エースを救え! 石堂淑朗 ガスゲゴン
46 タイムマシンを乗り越えろ! 古川卓己 田淵吉男 ダイダラホーシ
47 山椒魚の呪い! 石堂淑朗
山元清多
ハンザギラン
48 ベロクロンの復讐 菊池昭康 市川森一 ベロクロン二世
女ヤプール
49 空飛ぶクラゲ 石堂淑朗 アクエリウス
ユニバーラゲス
50 東京大混乱!狂った信号 深沢清澄 神沢信一 シグナリオン
レボール星人
51 命を吸う音 筧正典 高野宏一 ギーゴン
52 明日のエースは君だ! 市川森一 ジャンボキング
サイモン星人(ヤプール)


【余談】

  • 当初の番組タイトルは「ウルトラA」として決定し、序盤の脚本もそのタイトルで制作が進められていたが、「怪傑透明ウルトラエース」という玩具がすでに発売されていたことから「ウルトラマンA」に改められた。

  • 第二期ウルトラシリーズではOP映像で影絵が使用されるのは本作が最後となり、タロウ以降は実写映像がメインとなる。

  • OP映像の背景は、前作の第35話「残酷!光怪獣プリズ魔」に登場したプリズ魔の攻撃エフェクトの合成で使われた素材がそのまま使われている。


これだけは覚えておくがいい。

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最終更新:2025年08月19日 01:38

*1 ウルトラセブンでも主要な敵役を宇宙人に固定したため、怪獣がメインとなる話を作れなくなる制約が生まれていた。