白夜/極夜

登録日:2025/8/18 Mon 23:04:12
更新日:2025/08/25 Mon 13:38:57
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白夜/極夜とは、極地方で見られる太陽の現象のこと。



概要

地球は公転面の垂線に対して地軸が約23.4度傾いており、この傾きによって夏は一日中太陽が沈まない現象が起きる地域がある。
これを「白夜(英語:Midnight Sun)」と呼ぶ。
この時期は深夜帯になると若干弧を描くように下がるがそれでも地平線より下にはならない。

その逆で、冬は一日中太陽が登らない現象もセットで起きる。
これを「極夜(英語:polar night)」と呼ぶ。勘違いされがちだが「黒昼」とは呼ばない。
どちらか片方だけが起きることは基本的にないが、66〜67度地域では冬至前後は2時間程度のみ太陽が昇る。
また極夜の期間もずっと真っ暗な夜の状態が続くわけではなく、太陽は地平線の下まできているので、直射日光は届かないが正午頃の空は夜明け前や日没後くらいの明るさにはなる。
まあほんの数時間で真っ暗になってしまうが。

これらの現象は基本的に緯度が66.6度(90度-23.4度)以上の地方で発生する。
(極夜は厳密には約68度以上で発生する)期間については後述。

北緯/南緯の緯度が上がるに連れて白夜と極夜の期間はそれぞれ長くなっていき、特に地球最北端と最南端の89〜90°地域では昼と夜が半年ずつ続く。
すなわち、1年に一度ずつしか日の出日の入りがないことになる。
ただしそれより低緯度の60度34分以上の地域でも太陽は完全に沈むものの、真っ暗にならない薄明のまま朝になることがあるのでこれも白夜ということがある。

以上の条件から発生する地域は北半球では北極圏や北欧諸国(ノルウェー、フィンランド北部やアイスランド等)、グリーンランド、ロシア北部、カナダ北部、アメリカ合衆国アラスカ州、南半球では南極大陸の大部分で観測できる。

この現象により発生地域では日照時間が夏と冬で数値の差が非常に大きいものになる。
空気が乾燥していることにより雨が非常に少ない南極点などの場所では雲に太陽が隠れることも少ないため年によっては夏期の月間日照時間が720(744)時間近くになることもある。
逆に冬は完全に0になることもあり、両極端な数値になることも。

ちなみに白夜の読み方は現在は「びゃくや」と呼ぶのが一般的だが、これは昭和40年代に『知床旅情』(森繁久彌作詞・作曲)が流行したことによって歌詞にある「びゃくや」という読み方が世間一般に広まり定着したと考えられている。
それ以前は辞書の標準見出し語も「はくや」とされていたようだ。


白夜・極夜の期間と日照時間

※極夜の期間がない場合は冬至時の可照時間を表記
あくまで大まかな目安でり、年によって若干変動することがある。
北半球には詳細な期間が緯度毎にあるが南半球は全て南極大陸内になるためそこまで詳細なデータ入手は困難であるため、Wikipediaなどにも載っていない。



主な極地方の月平均日照時間


+ 北半球
地名 1月  2月  3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
ムルマンスク68° 1.9 44.5 133.4 188.6 205.2 234.8 249.4 165.4 108.3 51.7 5.8 0 1389
トロムソ69° 3 36 111 171 215 239 226 164 96 55 8 0 1324
ロヴァニエミ66° 15 57 132 203 237 271 260 182 112 60 18 3 1550
ユーリカ79° 0 0 120.2 353.8 486.3 386.4 360.5 238.9 98.4 12.5 0 0 2057
ヘイス島80° 0 0 66 234 226 193 171 83 30 1 0 0 1004


+ 南半球
地名 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
南極点90° 558 480 217 0 0 0 0 0 60 434 600 589 2938
昭和基地69° 346.7 186.9 118.4 59.8 22.4 0 6.2 65 144.4 194.1 320.5 414.2 1925.9
アムンゼン・スコット基地90° 406.1 497.2 195.3 0 0 0 0 0 34.1 390.6 558 616.9 2698.2
ボストーク基地78° 696.4 566.8 347.3 76.3 0 0 0 0 203.4 480.2 682.3 708.8 3761.5


日本では

日本は最北端でも45度程度であるために無論見ることができない現象である。
そのため馴染みがないと言えようか(気象庁観測地点では最北端の宗谷岬の夏至の日長でも16時間に満たない)。
また日照時間が1ヶ月間完全に0になった事例も存在しない。

もちろん南極観測基地である昭和基地では見ることができる。
具体的には白夜の期間は11月下旬から1月下旬、極夜に期間は5月末から7月中旬となっている。
白夜の期間では好天の日には日照時間が23〜24時間になることもある。
現状最長日照時間記録を持つ1984年12月は日照24時間が3日、23時間・22時間台が6日ずつあった。


特徴

極夜の時期は美しいオーロラが最も綺麗に長く見ることのできる時期とされている。

一方で問題点として特に極夜は日光を浴びることができないことにより体内時計がリセットできず乱れてしまい、メラトニンの分泌不足による不眠症やセロトニンの分泌不足による「冬季うつ病(季節性感情障害)」になりやすい。
実際南極基地の観測隊員たちは極夜期になると睡眠薬に頼る例も少なくない。
その他ビタミンDの不足により骨粗しょう症やくる病などの骨の健康や免疫機能に影響を与えることもある。
対策としては人工の明るい光を浴びたり適度な運動によって体内のセロトニンやメラトニンの分泌を調整する方法がある。

ドームふじ基地で越冬隊員の協力を得て1年間に渡り、各季節、計8回、体内時計時刻を知ることのできるホルモンの測定を行ったところ、隊員の体内時計時刻は夏の白夜期にくらべて極夜期では約4時間も遅れていたという。
無論スケジュールは変わらず体内時計よりも4時間早く起床しなければならないため時差ボケに近い症状が起きやすくなる。


他の天体の白夜/極夜

天王星は自転軸が公転面に対して約98°も傾いているため、極地方では約42年間(地球時間換算)白夜と極夜(昼と夜)が続く。

余談だが天王星からみた太陽の明るさは-20.2等で、当然ながら地球と比べると相当暗く、デパートの売り場の半分以下の明るさしかない(それでも満月の640倍ほどは明るい)。


追記・修正は白夜と極夜を半年ずつ経験してからお願いします







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最終更新:2025年08月25日 13:38