そして人魚はいなくなった(名探偵コナン)

登録日:2014/11/04 (火) 13:21:53
更新日:2021/03/21 Sun 07:48:03
所要時間:約 14 分で読めます





矢を手放せばその身に
魔が巣を作り…

男は土に還って
心無き餓鬼となり、

女子は水に還って
口利かぬ人魚となる…


『そして人魚はいなくなった』とは、『名探偵コナン』において江戸川コナン服部平次が解決した事件のうちの一件である。
単行本第28巻に収録されている。テレビアニメでは第222~224話として、2001年1月29日~2月12日にかけて放送された。


以下、ネタバレにご注意ください。



【あらすじ】
工藤新一宛の手紙を受けた平次は、コナン達を誘い福井県の若狭湾沖にある美國島へ向かう。
この島は地元では「人魚の棲む島」と呼ばれ、島に着いた当日は年に一度行われる「儒艮祭り」で盛り上っていた。
しかし、依頼主の沙織は3日前から行方不明で、幼馴染の3人の証言によると去年の祭りでもらった儒艮の矢を失くして人魚の祟りに怯えていたらしい。
その晩、祭りの最高潮である儒艮の矢の授与が行われていた時、人魚の滝の中で首を吊った幼馴染の一人・寿美が発見される。
これを皮切りに沙織の幼馴染が次々と殺害されていく。果たして一連の犯行は矢を奪おうとする沙織の仕業なのか…?
捜査が進む内にコナンはとても信じがたい真相に辿り着く。その推理を聞かされた平次はそんなわけがないと反発。そして……


【事件関係者】
※なお、人名の元ネタは七福神。

  • 門脇沙織
CV:和田みちる
土産物店店員。27歳。
平次の今回の依頼人で「このままじゃ人魚に殺される」という謎の依頼文を送る。
なぜかその依頼文の頭に「工藤新一様へ」と書いてあった。
3日前から行方不明らしいが、彼女の姿は島のあちこちで目撃されている。
禄郎に「人魚に復讐される」と洩らしていたようだが…?
名前の由来は「毘沙門天」。

  • 海老原寿美
CV:藤貴子
沙織の幼馴染で網元の娘。27歳。
口調が少々軽めで、沙織同様不老不死の伝説を信じている。
祭りの日のその反応から矢が当たったと思われていたが、授与の会場である人魚の滝の滝壷には現れず、後に滝で首を吊った状態で発見される。
名前の由来は「恵比寿」。

  • 黒江奈緒子
CV:香月弥生
沙織の幼馴染で土産物店店員。28歳。
あまり口には出さないが、寿美や沙織同様不老不死の伝説を信じている。
弁蔵、和葉と共に儒艮の矢に当選。しかし、同じ当選者の弁蔵には不信感を抱いている。
寿美が殺害された翌日、寿美の家の裏の砂浜で八百比丘尼の伝説に見立てられ、絞殺された後で網に絡められる。
名前の由来は「大黒天」。

  • 福山禄郎
CV:神奈延年
沙織の幼馴染で漁師。28歳。
島の消防団の一員でもあり、3年前に起きた美國神社の倉の火災現場で、下半身が粉々に砕けた身元不明の焼死体を発見する。
両親は既に他界。寿美の許婚だったが、他界した両親が決めた事だったので寿美の死に対してはあまり悲しみを見せなかった。
しかし、君恵が死亡したと判明した時には今までの冷静な態度は一変、激しい悲しみを見せた。
名前の由来は「福禄寿」。

  • 島袋君恵
CV:高橋美紀
美國神社の巫女。27歳。
他の幼馴染の女性陣とは違い、不老不死の伝説は信じていない。
4日前に歯医者に行くために、沙織と本土に渡ったらしい。
禄郎に言い寄られるも、大御婆様の命様がいるこの島を離れたくないという理由で断る。両親は他界している。
3年前と同じく神社の倉で火災が起こり、焼け跡から遺体が発見され、歯型が一致したことで遺体が彼女だと断定された。
名前の由来は「布袋」。

ちなみに君恵を含めた幼馴染5人は大学まで一緒だったらしく、映研で「比丘尼物語」という映画で金賞を受賞したことがある。
特に沙織の特撮と君恵の特殊メイクは凄かったらしい。
しかし、その1年後に君恵と禄郎の両親、沙織の母親が乗った船が嵐に遭い、行方知れずになっている。

  • 門脇弁蔵
CV:秋元羊介
沙織の父親で漁師。52歳。
いつも酒を飲んでいる酔っ払いオヤジ。娘の沙織とはしょっちゅう喧嘩をしていた。
儒艮の矢の当選者の一人。祭りに参加していなかった老夫婦に娘が1年前に当選した矢を100万円で譲っていた。
寿美の通夜の後で姿をくらます。
名前の由来は「弁財天」。

  • 島袋弥琴
CV:北川智繪
儒艮祭りの象徴的存在で島の人々から「命様」と呼ばれている。明治2年(1869年)6月24日生まれの130歳。
不老不死の身体を持つとされる老婆。美國神社に君恵と一緒に住んでいる。
身体はかなり小さく、平次曰く「ただの厚化粧のバアさん」で化粧を落とした顔は「妖怪」。
儒艮の矢の当選番号は適当に決めており、競馬の当たり番号だった時も。
3年前の身元不明の焼死体の埋葬した1年後、墓荒らしを避ける為に信用のおける人物に頼んで森の中に移してもらった。島の人はその墓を「人魚の墓」と呼んでいる。
儒艮の矢の当選者の和葉に「決して身から離すな」と忠告した。


【レギュラー陣】

ご存知主人公。
前の事件の最後に平次たちと合流して、美國島へ向かうことになる。
電話で平次に冬休みに人魚探しに行くと言われたことを信用しておらず、最初は人魚の話に興味はなかった。
事件の捜査が進んでいくうちに、信じられない結論に至る。

ご存知蘭姉ちゃん。
今回は和葉の恋を茶化す役回り。

ご存知迷探偵。
平次の急な依頼に嫌々ながらも同行した。

ご存知色黒関西弁探偵。
沙織から奇妙な依頼文を受け、コナン達と共に美國島へ。
コナンの推理を聞かされ反発するも、森の中で人魚の墓を見つけ真相を受け入れる。
そしてそこで……。

ご存知関西娘。
儒艮の矢の当選で大喜び。
しかし、森の中で平次と共にピンチになった時にその矢を使って……。

ご存知哀ちゃん。
一行には同行していないものの、作中のとある場所で彼女の本名「宮野志保」が登場する。


【その他】

  • 辻村貴善
  • 桂木幸子
CV:松原ひろの
外交官殺人事件』で知り合ったカップル。
ラストで少しだけ登場する。
ちなみに貴善のみ声優が変更されている。

  • 警部
CV:仲木隆司
福井県警。本名は不明。
何かと小五郎たちに頼りがちな県警には珍しく、探偵をあまり信用しないタイプ。
しかし堅物というわけでもなく、ちゃんと頼みごとは聞いてくれる。



【以下、事件の真相…さらなるネタバレに注意】











命様の役を…
おばーちゃんから引き継いで…

島のために一生懸命演じ続けた…

哀れな女の成れの果てよ…


  • 島袋君恵
今回の事件の犯人「人魚」。
倉で焼死したと思われていた遺体は実は沙織のもの。
火災の後で君恵は、学生の時に映研で培った特殊メイクの技術を使って命様に変装していた。声色はどうやって変えていたかは不明。
遺体の歯型が君恵と一致したのは事前に沙織の保険証をくすねておき、紛失したと思った沙織が「代わりに使って」と手渡された君恵の保険証で歯の治療を行った為で、島に帰った後で沙織を殺害して火を放ち、遺体が君恵のものだと錯覚させた。
本物の命様は既に他界しており、今までの命様は全て君恵が一人二役で変装していた。
その前の命様は、5年前の嵐で行方知れずになったと思われていた君恵の母の変装だったが、3年前の倉の火事で死亡。後に発見された身元不明の焼死体は君恵の母のものだった。
倉に火を放ったのは今回の被害者3人で、矢の当選が外れた腹いせに命様が本当に不老不死の身体なのかを確かめるという理由によるものだった。
炎の中君恵の母は電話で「命様を殺さないで」と言い残し、君恵に後を継がせた。
火事の真相は1週間前に矢を失くして混乱していた沙織の口から発覚。
その時の彼女は人一人の命を奪った罪の意識がなかったどころか、人魚の墓(君恵の母の墓)の場所を聞き出し遺骨を掘り起こそうとしていた事を君恵に明かしていた。
自分が不老不死になるためなら他人の命などどうでもいいような発言をした沙織を目にし、火事に関わった3人に復讐する事を決意する。
しかし、沙織を殺害した時に泣いていたようなので、幼馴染を手にかける事に多少抵抗があったのかもしれない。
これまで母と自分の2人きりで頑張ってきたのにと涙ぐむ君恵だったが……。

ちなみに、コナンが君恵に目を付けた理由は、名簿が見つからないことについて平次に「あの婆さんが持って行ったんちゃうか?」と言われた彼女が「そんなはずはないわ」と迷わず即答したことだった。

  • 門脇沙織
  • 海老原寿美
  • 黒江奈緒子
不老不死に執着しすぎたあまり、人の命を奪ってしまった今回の被害者たち。
他の2人は知らないが、沙織に関しては命様のからくりを知らなかったとはいえ、3年前の放火について罪の意識は全くなかった。
残りの2人も人魚の墓の場所を教えるという君恵の口車に簡単に乗っていた事から反省はしていなかった模様。
同情の余地がないこの行為が、不老不死どころか自分たちの命を縮める結果となってしまった。

  • 門脇弁蔵
通夜の後で行方をくらましたのは、神社で保管している番号札の名簿を盗む為。
たまたま川で拾った番号札が寿美のものだったら犯人にされかねないと思い先回りしたようで、拾う時に一緒にあった証拠品の浮き輪にもうっかり触ってしまったらしい。
何とも人騒がせな話であるが、彼の行った行為は窃盗罪や住居不法侵入に当たる可能性がある。

  • 福山禄郎
君恵が死亡した(と思われていた)際の態度から、平次には犯人ではないと言われていたが案の定犯人ではなかった。
彼が犯人でない理由としては寿美と奈緒子に矢が当選することをあらかじめ知っていた人物でなければ犯行不可能なため(この点は弁蔵も同じ)。アニメではそれに付け加えて、もし彼が犯人なら第一の事件で寿美を事故死に見せかける際、彼の腕力なら寿美の遺体を川へ放り投げることはたやすく、わざわざ証拠の残る浮き輪を使用する必要はない(つまり、それにも関わらず証拠が残る浮き輪が使用されたため、禄朗は犯人ではない)と語られている。
死んだと思われていた君恵が生きていて尚且つ今回の一連の事件の犯人であったことに他の島民と同様に度肝を抜かれていた。
親同士が勝手に許嫁と決めた寿美はともかく、想いを寄せていた君恵が警察に逮捕され島を出ていってしまい、花嫁候補を一度に2人も失ってしまったことを考えると何とも気の毒な話である。

  • 美國島の島民
実は島の若者以外はほとんど命様のカラクリを知っており、3年前に焼死したのが君恵の母だという事もわかっていた。
火事の後で祭りは終わりにしようと考えていたが、命様に扮して自分達を出迎えた君恵を前にすると、何も言えなくなってしまったらしい。
事件の真相に気づきながらも空想の産物から生み出される宝の山を捨てきれず、島民ぐるみで黙認していたが、真実が暴かれると島民全員が君恵に対し謝罪をした。
今回の事件で命様がインチキだった事が判明した上に島で連続殺人も発生したため、観光客と収入が激減してしまうことは免れないだろうが、島には美味しくて安い海鮮料理や素晴らしい景色等観光資源もまだ残されているので、事件のショックから立ち直る事も難しくないだろう。



【以下、さらなるネタバレ】










もっと早よ目ェ覚ますべきやったんや…

不老不死なんちゅう悪い夢から…


  • 服部平次
ふとしたアクシデントにより、崖から転落しそうになり、和葉に助けられるが、今度はその和葉がはずみで崖下に転落しそうになる。
とっさに飛び込んだ平次は、何とか和葉を引き上げようとするが、掴まっているのは今にも折れそうな枝だけだった。
せめて平次だけでも生き残ってほしいと悲痛な表情を浮かべ、和葉は平次の手の甲に持っていた矢を突き刺す。
(アニメでは和葉が涙を浮かべて「バイバイ」と言いながら刺していて、余計に痛々しい…)
しかし、それでも手を離そうとしない平次。

残念ながらその後どうやって助かったのかの描写はないが、傷だらけの2人の姿を見る限り、相当なドラマがあったものと思われる。

無事生還した後で推理ショーの場面に現れ、命様のカラクリを知っていた奴は他にもいたんじゃないかと島民に問う。
今まで黙って手助けしていたことを謝罪する島民を前に、「それならどうしてもっと早く…(言ってくれなかったのか)」と、号泣する君恵。その彼女に向かって平次はこう言った。


命には限りがあるから大事なんや…

限りがあるからがんばれるんやで…

と……。


その翌朝、福井県警に連行される君恵を見送るために島中の島民が港に集まったが、再び海は大時化となり船がなかなか出港できなかった。
その光景は、まるで3年間島を支えた君恵との別れを拒むかのようだったとコナンは語っている。

なお、手の傷は帰りの船で見せてと言ってきた蘭と和葉に対し、「朝起きたらかさぶた取れてもうた」と手を見せ残念がらせている。しかし、その手は傷を付けなかった逆の手であり、それを見たコナンに「このカッコつけ」と特大ブーメラン級の発言を言われている。

  • 辻村貴善
  • 桂木幸子
平次が受け取った奇妙な手紙の原因を作った人たち。
初めて会った時の平次が犯人のミスリードに見事に引っかかってしまった為、幸子の中では新一が一番頼りになる探偵になっているようである。
幸子が美國島の出身で、昔隣に住んでいた沙織に相談を受け、新一を紹介した。
島に来た目的は祭りではなく島の海鮮料理だったが、事件で取り込んでいたからすぐに帰りの船に乗ったらしい。
どうやらこの2人は親が起こした殺人事件を乗り越え無事に結ばれたようだ。



【一つの謎】

こうして殺人事件は解決したが、実は一つだけ謎が残されている。
コナンと平次が歴代の祭りの参加者名簿を確認していた時に、コナンは「宮野志保」の名前を見つける。
その時のコナンは「永遠の若さと美貌を欲しがるタマじゃねーし別人だろう」と軽く流していた。
更には平次が見ていた名簿の中に「大黒連太郎」といういかにもな名前が記入されていた事から、読者の中には彼こそがあの方ではないかと主張する者もいた。
平次の言葉からすると、昔の日本を動かしていた大物らしいので、表向きの仕事として可能性はあった(現在はあの方の名前が判明したため否定されている)。
なお、作者曰く名簿にある「黒澤陣」はジンの事で、これが裏設定ではジンの本名。
ちなみにこちらは明言されていないが、隣にある「魚塚三郎」はウォッカの事だと思われる。
灰原の研究テーマが不老不死の薬の開発だったとしたら、研究のためにジンやウォッカと一緒にこの島を訪れていた可能性がある。
原作者の青山はこれは伏線であるとインタビューで語っており、20年以上*1経過しているが伏線回収はいつになるのだろうか…?



【余談】
本エピソードで平次が発した台詞「命には限りがあるから大事なんや…」は、
パズル&ドラゴンズ』において「西の名探偵・服部平次」のリーダースキル名として採用されている。



不老不死に執着のない方、追記・修正お願いします。

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最終更新:2021年03月21日 07:48

*1 本作のサンデー掲載は2000年初頭。