F-ZERO

登録日:2025/10/08 Wed 18:34:30
更新日:2025/10/12 Sun 11:22:53
所要時間:約 15 分で読めます




宇宙の歴史が始まって以来…

最高にスピーディーで、最高に過激なレース!



F-ZERO



『F-ZERO』(エフゼロ)は、1990年11月21日に任天堂が発売したスーパーファミコン(以下SFC)用ソフト。ジャンルはレースゲーム。


概要

未来世界で浮遊マシンがレースを繰り広げる『F-ZERO』シリーズの記念すべき第一作目。

SFCのローンチソフトとして『スーパーマリオワールド』と同時にリリース。
同ハードの持つ「グラフィックの回転、拡大、縮小機能」を活かした時速400km/hという表示が全く誇張に感じられないほど凄まじいスピード感、実在のレースさながらのライン取りのアツさ、そして決して油断ならない高い難易度が極めて高い評価を得た。
特に最初のコースミュートシティⅠにおけるタイムアタックは多くのプレイヤーが熱中。少しでもタイムを縮めるべく様々なテクニックが生み出されていった。

当時辛口で有名だったファミ通のレビュアーが初めて満点を出す、当時駆け出しの技術であった3Dポリゴンを使ったのではないかと展示会で言われるなど、数々の逸話が存在する。
もちろん3Dポリゴンは本作では用いられていない。
ポリゴンを用いたレースゲームの草分けである『ウイニングラン』(1989、ナムコ)が稼働して間もない時期であり、最新技術のアーケード作品と比較されるほどだったというところに本作の完成度が窺える。
後のSFCでは、本当に3Dポリゴンを用いた『スターフォックス』や『ワイルドトラックス』などの作品が発売されることになる。

あらすじ


システム

  • パワー
画面右上にある体力ゲージ。
他マシンやガードビーム(壁)、トラップにぶつかると減少していき、一定値以下になるとマシンがパワーダウン状態となり速度が低下する。さらにパワーが尽きればマシンが爆散し、失格に。
また、一部コースに設けられたジャンププレートに乗るとマシンがジャンプするのだが、コース内に着地できず落下した場合はパワー残量関係なしに即爆散する。ジュゲムなどいない。*3
パワーが減った場合は、コース上に設けられたピットエリアに入ることで補給できる。
ただし、ピットインしてから補給の準備が整うまで一瞬タイムラグがある上、回復量はピットに滞在した時間に比例する(=多く回復したいなら減速必須)点に注意。

  • Bボタン:スロットル(アクセル)
マシンが前進する。
スタート直前から押し続けるとちょっとしたスタートダッシュが可能。
しかし長く押しすぎると勢いよく飛び出した後に大きく失速してしまう*4ため、基本的にスタートのコンマ数秒前から押し始めると良さげ。
きつめのコーナーでは適度にアクセルオフすると曲がりやすい。

  • X/Yボタン:ブレーキ
マシンが減速、停止する。とはいえ、減速したい場合は大抵アクセルオフだけで事足りる。

  • Aボタン:スーパージェット(S-JET)
マシンが急加速し、数秒ほど高速走行できる。
コースを1周するごとに1回分の使用権が与えられるため、1レースにつき4回使用できる。
ただし使用権のストックは3回分までなので注意。

  • 十字ボタン左/右:方向舵左右運動(ハンドル)
マシンが旋回する。方向を微調整したい時は短く小刻みに入力していこう。

  • 十字ボタン上/下:ジャンプ中の飛距離調整
ジャンプ中、上入力で飛距離を短く、下なら長くできる。
また、着地寸前に下入力していれば減速せず綺麗に着地できる。

  • L/Rボタン:左/右に重心移動
マシンの向きを変えずに横方向へスライドする。
ハンドルと併用すると鋭い角度でのコーナリング*5も可能。

ゲームモード

  • グランプリ
5つのサーキットを連戦し、CPU達と速さを競うモード。
リーグはナイト、クイーン、キングの3種類。
難易度は、ビギナー、スタンダード、エキスパートから選択する。条件を満たすと更なる高難易度マスターが出現。
レースには規定順位が設けられており、その順位以内でゴールラインを通過できなければ失格となる。(規定順位はラップ毎に上がっていき、最終的には3位以内でゴールする必要がある。)*6
規定順位オーバー、クラッシュアウト、(ポーズ画面から)ギブアップのいずれかにより失格となった際はスペアマシンを1台消費して再挑戦可能。*7
スペアマシンが尽きたまま失格になればゲームオーバー。

  • プラクティス
練習用モード。タイムアタックモードとしての側面も持っている。
走れるコースは7つのみで固定。
練習相手としてCPUによるライバルマシンを1台だけ指定可能。ノーライバルにして1人だけで走ることもできる。

  • レコード
上記のどちらかにおいて、1コースでも完走し記録を残せば出現。
過去に完走したコース毎に、ベストラップと総合タイムが見られる。
タイムの下線が桃色だとグランプリ青緑だとプラクティスの記録*8

マシンとパイロット


▶︎ ブルーファルコン
あらゆる性能のバランスが取れた万能型。
癖がなく扱いやすいため、初心者が基本操作を身につけるのに最適。
特段苦手なコースもないため、グランプリを安定して攻略したい人にもオススメできる。
ただし速度面の性能はやや控えめなため、速さを追求するとなると物足りなさを感じてくるかも。

パイロットはキャプテン・ファルコン
年齢不詳*9。ポートタウン出身。
F-ZEROパイロットであると同時に凄腕の賞金稼ぎとしてその世界では有名らしい。
説明書に掲載されたコミック『THE STORY OF CAPTAIN FALCON』では主役を務めており、彼の賞金稼ぎ稼業の様子が描かれている。

▶︎ ゴールデンフォックス
加速性能に特化したマシン。
…なのだが最高速度、速度維持性能が全マシンで最低なためどうしようもなく遅い。
さらにグリップが悪く、コントロールするにも一苦労。おまけに打たれ弱さもワースト級。
そのため上級者向けマシンとされているが、大抵の上級者はファイアスティングレー一択になるため通好みと表現した方が適切かも。

パイロットはドクター・スチュワート
本名はロバート・スチュワート。
31歳。ミュートシティ出身。
医師としてのエリートコースを歩んでいたが、父ケビン・スチュワート博士の死を機に、その遺産であるゴールデンフォックスのパイロットとしてグランプリに参加した。
コミックではキザでナルシストな性格として描かれており「走りの芸術家」を自称していた。

▶︎ ワイルドグース
打たれ強さに特化した性能で、耐久力が高い上、他のマシンとぶつかってもバランスを崩しにくい。そのため大量のNPCマシンやトラップが揉み合うグランプリで真価を発揮する。
しかし旋回性能が低く、僅かなハンドリングでも失速しやすい。おまけに加速性能も悪い部類なため、コーナーの多いコースは苦手。
説明書には「攻撃的な走りを重視」と書かれているが、実際はむしろ安全重視で走りたい慎重派向きのマシンと言える。

パイロットはピコ
34歳。デスウインド出身。
元ポリポト軍の特殊部隊で働いていた軍人らしい。
表向きはF-ZEROパイロットだが、裏では有能なヒットマンという噂もある様子*10
性格は攻撃的だが、それを補う冷静さも併せ持つ。コミックでは攻撃的というより血に飢えたサイコパスのような爆弾発言を見せた。

▶︎ ファイアスティングレー
最高速度、速度維持性能、グリップが全マシン中最高で、打たれ強さも良好と調整ミスを疑うレベルの高性能マシン。
その速さが仇となり、道幅の狭い急コーナーではブレーキをかけるか壁に激突しつつ突破する必要があるが、それでもなお400km/h以上を維持できたりする*11ため強力なことに変わりはない。
加速性能は極めて低いが、他のマシンに追突してもらうことで一気に速度を上げてしまえる。
ミスさえしなければ非常に速く操作性も良い本機はタイムアタックと相性抜群であり、多くのプレイヤーに愛された。

パイロットはサムライ・ゴロー
年齢、出身地ともに不詳*12
レッドキャニオンをアジトとする盗賊団のボス。
身分を隠してグランプリに参加しているが、彼のマシンは盗品ともっばらの噂。
コミックでは、狙っていた賞金首をファルコンに横取りされた借りを返すべく、ナイトリーグに飛び入り参加したことが明かされている。

NPCマシン(仮称)
グランプリにのみ登場するCPU専用マシン。
茶色点滅紫色緑色の4タイプが存在する。
茶色点滅タイプは周回遅れという名目で現れる障害物的なポジション。特に(パワーダウン中と思われる) 点滅タイプはぶつかると爆発し、パワーも速度もごっそり持っていかれてしまう。
そのためこれらをいかに無駄なく回避するかがグランプリ攻略のカギとなる。
一方で紫色緑色タイプはメインの4台のすぐ後ろを周回遅れ達と違って真面目に走っており、マスタークラスでは彼らが上位に食い込む光景も珍しくない。
後述するF-ZERO99ではこれらNPCマシンを元にしたバンパーが登場しているが、登場演出や走り方がかなり異なるため同一の存在と言っていいかは微妙。

惑星都市

F-ZEROグランプリは9つの惑星で繰り広げられる。惑星によっては複数のサーキットが設けられていることも。

  • ミュートシティ
別名ミュータント・シティ。
宇宙間交易によって繁栄した、宇宙連加盟惑星最大の都市であり、その人口は2億人を超える。
3つのリーグ共通のオープニングがここで飾られる。
ドクター・スチュワートの出身地。

  • ビッグブルー
地表の99%以上が海に覆われた星。

  • サンドオーシャン
地表一面が流砂に覆われた星。かつて原始生物が生息していたが、今は化石でしかそれを確認することはできない。

  • デスウインド
一時たりとも休むことなく、強い風が吹いている星。
ピコの出身地。

  • サイレンス
物音一つ聞こえてこない、静寂の星。

  • ホワイトランド
地表が水晶に覆われた、宇宙一ロマンティックな星。

  • ポートタウン
古くから宇宙交易の中継点となっていた港町。
キャプテン・ファルコンの出身地。

  • レッドキャニオン
サムライ・ゴロー率いる盗賊団のアジトがある惑星。コミックにもこの惑星と思しき場所が描かれている。

  • ファイアフィールド
キングリーグ最終戦が行われる惑星。
説明書に情報が全く記載されていないため、少なくとも本作の時点ではどのような設定なのかを窺い知ることはできない。
(『9つの惑星』と記されているため、ここも一応惑星としてカウントはされている様子。)

コース紹介

プラクティスで選択可能なコースは緑色で表記。




余談

WiiWii UNew3DSにてバーチャルコンソールソフトとして移植。
ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコンNintendo classicsでも収録ソフトの一つとして登場している。
ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン発売時には公式で本作開発者へのインタビューが掲載された( リンク )。

双葉社から、本作を元に独自の解釈やアレンジを施した小説『F-ZERO…そしてスピードの神へ』が発刊されている。
(執筆された時期を踏まえると仕方ないのだが)後発のシリーズ作品とは設定が大きく異なるため、パラレルワールドに相当する作品と言える。
ファルコン達が活躍した時代よりも未来の話」「オリジナルキャラが主人公で、キャプテン・ファルコンからブルーファルコンを受け継ぐ」「(意図的に)マシンを高速回転させての体当たり」「F-ZEROマシンにレギュレーション違反である武器を搭載する(それも主役サイドが)」等、後発のシリーズ作品を先取りした描写が見られる。

サテラビューにて、本作をベースに新たなコースやマシンを実装した『BS F-ZERO GRAND PRIX 2』が期間限定で配信。

さらにNintendo Switch Online加入者限定特典として、本作を99人によるバトルロイヤルにアレンジしたF-ZERO99が登場。
システムには大幅な変更が加えられているが、後に本作のルールとマシン間の性能格差をリスペクトした『クラシックレース』が実装された。

本作発売後に2人プレイができるF-ZEROの開発テストが行われたが、スーパーファミコンのハードの制約上、長い直線コースを2分割の画面で表示するということが不可能なことから計画は立ち消え、代わりに曲線を増やして真四角状のコースに収め、それに合わせてマシンもカートにするという方向性の転換がなされた。
そうして完成したのがかの『スーパーマリオカート』である。



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最終更新:2025年10月12日 11:22

*1 約91.44m。

*2 約30.48cm。

*3 もっとも、過度なショートカットをした時に空中からマシンをキャッチして強制的に戻してくる「オフィシャルカー」は存在するのだが……

*4 この性質を逆手に取り、他マシンの前方へと飛び出て追突してもらうことで加速するテクニックも存在する。

*5 このテクニックは後発の作品では「スライドターン」と呼称されている一方で、「F-ZERO 99』では「ドリフト」名義となっている。

*6 また、順位が20位まで落ちるとコース上のどこにいようと即リタイアとなるが、例え初心者であっても狙ってやらない限りまず起こり得ないと言える。

*7 スペアマシンは、レース中に得られるポイントが一定値に達するごとに追加される。

*8 説明書ではそれぞれ赤と緑として記載されている。

*9 取扱説明書には「30代前半と思われる。」との記述がある。

*10 後発の作品では本当にヒットマンだったことが発覚。

*11 同じようなコーナーでは、他のマシンは400km/h未満にまで減速しないと突破できないことが多い。

*12 説明書では同時に40代前半の日系人とも記載されている。

*13 ジャンププレート、下方向強制マグネットだけは未登場。

*14 ファイアスティングレーだけは例外で、ダッシュゾーンによる恩恵の方が大きい。