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ジョー・アガスラック(ゴルゴ13)

登録日:2015/05/05 (火) 17:09:14
更新日:2026/05/31 Sun 14:10:49
所要時間:約 5 分で読めます







氷の上でおれさまに勝てるやつがいるものか!
それどころか近づくことすらできやしねぇ!




ジョー・アガスラックとは、漫画『ゴルゴ13』の第30巻に収録されたエピソード「氷結海峡」に登場するゲストキャラクター。

※元々はエスキモーという語が使用されていたが再録された際には全てイヌイットに差し替えられている。この項目ではイヌイットで統一する。

概要

ソ連軍の基地の情報を盗み、CIAと接触しようとしたイヌイット(極圏に住む原住民)の男性。
他のイヌイットが近代化によって衰える中、最後に残った本物のイヌイットと評される人物。
イヌイット仲間からも「超人イヌイット」と呼ばれていた。

氷に閉ざされた猛吹雪のベーリング海峡を単独で走って横断し、ホッキョクグマをナイフで仕留めるなど超人じみた身体能力を持つ。
狩人としてのスキルは万全で銃の扱いにも長けている。

性格は豪気で逃走中にやたら叫んでは大笑いしていた。
政治や思想的な背景は持っておらず、スパイを引き受けた理由は金目当てだが、金の使い道は婚約者の為に暖房付きの家を買うというものだった。
周囲には「アメリカ海軍の大仕事」、婚約者には「近いうちに大金が入る」と説明していたようだが、周囲の反応も「ジョーならなんとかするだろう」と特に疑問を持たれていなかった辺りも、ジョーの人間性の評判を伺える。

強くて豪快な人物だが女性関係は純情で一途として知られており、「スージー・マガズック」という美人の婚約者がいる。
スージーは都会育ちだが前時代のイヌイットとしての生き方を貫くジョーに惹かれたらしい。
唯一の泣き所といえるほどにジョーが惚れ込んでいる。地元でもその関係は有名だった。
家族からも祝福されるなど幸せな関係だったが…。

ジョーの逃走経路は氷結したベーリング海峡を徒歩で横断するという途方もないものでそれ故に追跡は困難を極めるものだった。
本来の追跡部隊であるソ連軍はクレバスに次々と落下してしまい、スパイを捕えるどころか接近することさえ出来なかった。
情報漏洩を危惧したKGBはゴルゴ13に機密情報がCIAに渡ることを阻止しようとして依頼したことにより、標的となったばかりかとんでもない不幸に襲われることになる。

劇中の活躍

常人ならば数マイルで凍死する過酷な死の世界の中、ジョーもゴルゴ13が迫ってきたことを超人的な聴覚で何者かが追跡してきたとして気が付き、対峙する二人。
ところが敵対するゴルゴ13は懐からテープレコーダーを取り出し再生する。

録音されていたのは助けを求めるスージーの凄惨な悲鳴であった。

ゴルゴ13は海峡を渡る前にスージーを拉致して強姦しており、その際の音声を録音していたのだ。 

最愛の女性の助けを求める声に我を忘れて駆け出すジョーだが、それは声のする方向、すなわちゴルゴ13の方向に接近することを意味している。

愛する婚約者の名前を叫んでいたこともあって位置を捕捉されてしまい、闇の雪嵐を弾丸が貫く。

2発の銃弾を浴びてジョーは死亡。最後に立っているのはゴルゴ13のみとなった。

ジョーの殺害に関して

婚約者を拉致されて強姦されるというあまりにも卑劣かつ美しくない手段で殺されたことにより、ゴルゴ13という作品のライバルキャラではトップクラスに不憫なキャラとなっている。

そんなこともあってか、ジョーの登場するエピソード「氷結海峡」は数あるゴルゴ13のエピソードの中でも最低の作品として真っ先に名前が挙がるタイトルである。
ジョーの不憫さとゴルゴの下劣さだけではなく、作中内ではソ連軍が「本物の超人同士の対決だ」などと散々煽っておきながら、神業的な狙撃技術はおろか超人的なサバイバル能力も何も発揮されないままにあっけなく終わってしまうことや、「過酷な極寒の地での死闘」という同じ趣旨の作品は『アラスカ工作員』『白竜昇り立つ』『極北のテロル』などが存在し、そのいずれも完成度の高い名作揃いだったということもある。
かつて存在したゴルゴ13のファンサイトで行われたワースト作品投票でダントツの1位を獲得したことがあるほど。
ジョーというキャラやエピソードを描いた脚本担当は外浦吾郎(船戸与一)氏であり、『鬼畜の宴』、『おろしや間謀伝説』、『毛沢東の遺言』 『落日の死影』などといった評価の高い名作にも携わっていたことに対するギャップも、評価に困惑を呼ぶ一因となっている。

一応、ゴルゴ13の行為については、
「ゴルゴ13が任務を遂行する為に無関係な人物を巻き込んだ例は他にも多数ある」
「女子供といえども容赦なく射殺した例があるし、場合によっては女を強姦するエピソードすらあるなかで何を今更」
「所詮ゴルゴ13は殺し屋でありテロリスト、読者がゴルゴ13を神格化し過ぎている」
「ゴルゴ13が殺人者でありダークヒーローであることを象徴する依頼」
「標的を狙撃するにはこの方法しかなかった、それだけの難敵だった」
「任務遂行のために手段を選ばないのもプロとしてのありかた」
「あくまでも悲鳴を録音することが目的なので強姦は未遂だったのではないか*1
などといった読者のフォローの声も見られる。
ファンからの解釈と評価も分かれているといえる。


公式ファンブック『ゴルゴ学』においてはゴルゴ13の手段を「ちょっと卑怯」と評している。
また、文庫版の後書きではこの作品に多くの批評が寄せられていることを認めているようなコメントがあるが、一方でゴルゴ13の行動が正当であるとも弁護している。
ちなみにファンからの批判意見が多いこととその理由について、後書きで述べている作品はこの他にも『日米・コメ戦争』(ゴルゴ13が登場するのが遅すぎる)『フルマーク』(画風が大きく異なる)などが存在する。


しかし、登場エピソードが議論されやすい話になったことが原因で、良くも悪くもジョーというキャラクターの知名度も歴史の長いゴルゴシリーズのゲストキャラクターとしては高い部類に入っている。
メタ的に見れば語り継がれるキャラになっただけある意味ジョーは恵まれていると言える…かもしれない。
一方的な解釈をして貶したり、無かったこととして扱うのも考え物だろう。

余談

前述の通り、ジョーの登場エピソード「氷結海峡」は元々はエスキモーという語が使われていたが再録の際にイヌイットに差し替えられている。
『ゴルゴ13』が再録された際の奥付には「本作品では描いた当時の社会的・文化的慣習を反映させており、今日、差別的な表現と見なされる箇所もありますが、作者に差別的な意図はありません。ご理解ください」という注意書きがあり、実際にニグロやジャップといった差別的な表現を修正しないことがほとんどである。
そのような中、措置としてはかなり珍しいものである。




追記、修正はキャラクター像の解釈の違いを考慮した上でお願いします。

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最終更新:2026年05月31日 14:10

*1 まあこの説が事実だったとしてもスージーは知らない男にいきなり腹パンされる、乳房を露出する、ビンタされるなど散々な思いをさせられたことは変わらず、ジョーが死んだ以上はどちらにせよ精神的大ダメージが与えられることは想像に難くないので結局悲惨なのだが。