現象(Another)

登録日:2016/04/02 (土) 23:26:25
更新日:2023/12/29 Fri 00:21:11
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ただ単に、それは起こるんだよ。だから「呪い」じゃないと。だから「現象」だと。
台風や自然なんかと同じ自然現象、ただし超自然的な



ここでは綾辻行人の小説『Another』で物語の根幹となる怪奇現象について解説する。


本作の物語の中心である夜見山北中学3年3組とその周囲に発生する「超自然的な自然現象」のこと。
これによって人の死が多発することからも、3年3組に掛けられた『呪い』と認識されることもあるが、
一方で、この現象を長く観察してきたある人物は、これによって起こる出来事に「何者かの作為や悪意が介在しない」と結論付け、
それを基に、項目冒頭の論理展開から、これを『呪い』ではなく『現象』と表現している。
また、毎年起こるわけではなく、年度によって起こる場合と起こらない場合があるが、その法則性は不明。



【要素】
大きく分けて2つの要素により構成される。


  • クラス関係者の死
所属する生徒、担任・副担任、及びそれらの2親等以内の親族が、年度初めの4月から月に1人以上死亡する。
ただし親族に関しては血縁の者に限り、養父母や義兄弟等は除かれる(逆に血縁関係さえあれば戸籍上範囲外でも対象となりうる)。

また現象には地理的な範囲もあり、夜見山を離れるごとに影響は薄まっていく。
市外での死亡例は生徒でもごくわずかであり、他所に住む親族が犠牲となった例はない。

犠牲者の死因は超自然的なものではなく、事故や病死、他殺に自殺など、ケースによって様々。
このため、場合によってはとある死者が「現象」による犠牲者の条件に該当していても、周囲にそれと気付かれないこともある*1
超自然的な力で犠牲者が死に至らしめられるのではなく、「事故に遭う」「死に至る病に罹患する」「他人に殺害される」といった、
「日常生活において死に繋がるトラブルに遭遇する確率」が特定のコミュニティ及びその周囲で異様に高くなることが「現象」の本質といえる。
また、これによって「何気ない日常の光景が急にショッキングな死に繋がる」という展開の連続が、この作品の見どころの一つとも言える。「そうはならんやろ」←「なっとるやろがい!」

アニメ版ではスタッフの悪ノリで強烈なインパクトを残す死亡シーンが原作より大幅に追加された。(特に終盤)
そのためアニメ放映後は他作品の何気ないシチュエーションに「Anotherなら死んでた」などというコメントが付くネタすら出来上がる始末。


以下、印象的な死亡例。





  • 『死者』の蘇生
その年度以前の現象による犠牲者がランダムに1人蘇り、クラスの一員として紛れ込む。蘇生した犠牲者は作中で『死者』と称されている。
蘇生した時点でその『死者』の死はなかったものとなり、『死者』本人も自分が蘇生したという自覚がないので、現象が起きている間の『死者』の特定は非常に困難。
しかし、本来のクラス人数に合わせて置かれた机の数は変わらないため、『死者』が紛れ込むと机が一つ足りなくなる。このことが「起きる年」の目安ともされる。(死者が生徒の場合だが)

そして、『死者』の蘇生に際して様々な形で現実が改竄される。『死者』本人を含む関係者の記憶から、クラス名簿や写真といった記録等が対象となる。
事件や事故で死んだ者が蘇生したならそれらに関する記録や記憶は無くなり、『死者』の遺族や友人はその者が『死んだ』ことを忘れ、今までその者が生きていたと記憶が改竄される。
これらの改竄には客観的には不自然なものも起こりうるが、そうした違和感さえ感じ取れなくなるようである。
夜見山市にいない人物の記憶にもその影響は及ぶようで、劇中では夜見山市に住んでいる人間と電話で話していた際、
最初の方こそ『死者』に関する記憶(情報)に関して両者の間に齟齬があり、夜見山市にいない方に影響はなかったことが窺えるが、
会話を続けるうちに、いない方の『死者』に関する記憶も改竄されていくような描写がなされている。

このことから、夜見山市にいない人物は、「現象」が起こっても『死者』に関する記憶が改竄されることはないが、
何らかの手段で夜見山市にいる人物と連絡を取ると、「現象」による『死者』に関する記憶改竄が起こると推測され、
また、夜見山市出身者で現在市外に住んでいる人物と『死者』に関する情報をすり合わせることで『死者』を割り出すという方法は(おそらく)使えないことも分かる。

ただし、記憶の改竄にも限度があるようで、認知症の老人がふいに放つ言葉や、インコの覚えた言葉などはそのままになっている。


『死者』は卒業式の終了と同時に消失する。
改竄された記録・記憶は元の状態に戻り、それまで活動していた『死者』に関する記憶は個人差はあるが次第に失われていく。
ただし、「現象」の終了後にとった『死者』の名前などの記録はそのまま残される。また何らかのきっかけで『死者』に関する記憶が一時的に戻ることもある。



【発端】
現象の発端とされているのは、「夜見山岬」という生徒の死とそれに対するクラスメイトのある行動であるとされている。

本編における26年前の西暦1972年、3年3組で夜見山岬という男子生徒が亡くなった。
彼はクラスの人気者であり、同級生はその死を大いに悼んだ。そんな中で誰かがふと言い出した。

「ミサキは死んでなんかいない、今もほら、ここにいるじゃないか」

その言葉に賛同する生徒が次々に現れ、やがてクラスで岬が生きているかのように振る舞う取り決めが出来上がる。
そして岬の席も設けられた卒業式の後、教室で撮られたクラスの集合写真にはいるはずのない岬が写っていた。

更に翌年度、毎月クラスの生徒や肉親が死亡し、最終的に16名の犠牲者が出る。
そして卒業式が終わった後に、クラスにいるはずのない『もう1人』(=『死者』)が紛れ込んでいたことに気づく。
その翌年度にも同様の事態が起こり、異常な「現象」として認識されていくこととなる。

作中では、最初に死者である岬をクラスメイトとして扱ったことでクラスそのものが「」に近づいた結果と解釈されている。



【対策】
犠牲者の多く出る現象を食い止めるため、クラス全体または個人レベルで様々な対策がなされてきた。
そのほとんどは無意味に終わったが、有効な策も見つかっている。


  • 夜見山からの脱出
長期休み等の間は夜見山市外で過ごす、さらには市外へ引っ越すなどの手段で現象の範囲から抜けだそうとする。ある意味もっとも確実な死亡フラグ手段
だが移動の最中に死亡することは充分に起こりうるため、万全な対策とはいえない。修学旅行中のバス事故で大勢の犠牲者が出た例も。
またアニメ版では市内で致命傷を負ったことに気付かず市外に出て、そのまま死亡した者もいる。まかせろー


  • 自宅等にこもる
死に至るリスクを最大限回避しようとしての行動だが、自室に引きこもっていた人物が事故死したために効果はないと認識された。


  • 教室の移動、名称変更
呪われているのは教室という場であるという発想から提案・実行される。しかし効果は全くなかった。


  • お参り
1983年度に、夜見北中学の合宿所がある山中の神社で行われた。行われた翌月以降、新たな犠牲者は出ていない。
その年は1998年以前で唯一、一度起きた現象が途中で止まった年であり、お参りの効果であるという説もある。
だが実際にはお参りした直後にも犠牲者は出ており、現象が止まったのは別の要因によるものと考えられる。
その後にも実行されたようだが、効果が出ていない。


  • 『いないもの』の設定
現状、唯一の有効性が認められた対策。
『死者』の混入によって増えたクラス人数の帳尻を合わせるため、クラスから1人を選んで『いないもの』とする。
選ばれた者は他のクラスメイト及び担任からまるで存在しないかのように扱われ、会話などのコミュニケーションは一切が禁止される。
その代わりに授業への参加義務などは免除され、出席や単位にも便宜が図られる。
ただし、『いないもの』として扱われる範囲や期間といった取り決めが不明瞭なため、周囲が『いないもの』として扱いきれなかった(と看做された)り、
『いないもの』となった者が孤独などに耐え切れずに役割を放棄してしまったりすると失敗となり、「現象」が起こってしまう。
また一度「現象」が起きてしまった後に『いないもの』を選んでも効果は出ない。
1988年度に初めて行われ、「現象」の発生防止に成功する。





【判明している『死者』の一覧】
卒業式の終了とともに消失した『死者』は、記憶が完全に消滅する前にメモを取るなどして誰であったかを知ることができる。
ただし記憶が消えてしまった後にその事実を知っても「そうであったらしい」と推測することしかできない。


○夜見山岬の弟
1973年、最初に起きた「現象」で復活した『死者』。本来は自宅の火事で岬含め家族もろとも死亡している。
当時の担任の手帳に残されたメモで彼が『死者』であったことが判明するが、もちろん当事者の記憶はない。

○浅倉麻美
アイマス声優を合体させたみたいな名前1996年度の『死者』。本来は93年度に病死している。
犠牲となった時点で14歳だったが、3年後の復活の際もそのままの年齢であり、それに合わせて過去の記憶も改変されている。




【判明している『いないもの』一覧】
1998年度までに6回、生徒がいないものに選ばれている。そのうち成功は2回。

○佐久間
1996年度に『いないもの』として選ばれ、年度の前半は犠牲者を出すことなく終える。
しかし重圧や疎外感に耐え切れず役割を拒否、自身の存在をアピールし始める。結果、「現象」が途中から発生することとなる。
その後立て続けに犠牲者が出始め、自身も1月に自殺。






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最終更新:2023年12月29日 00:21

*1 家庭の事情で犠牲者が3年3組の生徒と血縁関係にあることを知る者がごく一部に限られている、元々病弱でいつ病状が急変してもおかしくなかった等。