SIG社_SIGSAUER社(銃器関連)

登録日:2025/07/31 Thu 20:17:47
更新日:2025/08/21 Thu 00:11:35
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概要

SIG社はスイスに本社を置く工業製品メーカー。
2000年頃以降は1906年から続けていた食品包装機器の事業に専念しているが、設立は1853年、鉄道貨車の建造工場としてである。
日本では大日本印刷と提携している。

アニヲタ諸氏にとってはSIG SAUERブランドの銃器製造が有名であろうがこちらは事業の一部であった。
銃器は1860年~2000年の間製造を続けていたが、2000年に鉄道(フィアットSIG)の株式ともども部門を売却し撤退。
売却後は国内向けのSIG SAUER AGとアメリカのSIG Sauer社に分かれており、P320ら新型の製品はもっぱら後者の米国産となっている。

本項目では2000年以前のSIG社及び現在の米SIG Sauer社の銃器生産に焦点を絞って解説する。



歴史

1866年よりスイス陸軍向けのVetterliライフルの生産から銃器製造に参入。第二次大戦後までは軍用銃器の設計と主な製造はBern造兵廠で行われていたが、その間モンドラゴンM1908の製造などでノウハウを蓄積している。
戦後、ルガーP08の後継コンペに出されたP210がBern Pistole 43(ブローニングハイパワーのコピーといわれる)を下し1949年に採用される。
それ以降SG510、SG550、P220とスイス軍向け銃器の納入を継続。諸外国にも輸出を行い高級で高品質な銃器メーカーとしての路線を築いた。
ブレーザー社も買収しており、ストレートプルで有名なR93ブレーザーボルトアクションライフルもこの間の製品。
P220の頃(1985年)からSAUER&Sohn社を傘下としてSIG SAUER合弁企業とそのブランドを展開。
1985年にアメリカ法人としてSIG Arms社を設立。のちの米SIG Sauer社となる。
P220とそのバリエーションであったP226がヒットし順調に見えたが、上記の通り2000年にSIG社が銃器産業から撤退。以後既存製品と新規商品開発は米SIG Sauer社が行うこととなった。

SIG社時代最後のポリマーフレーム拳銃であるSIG PROシリーズのマイナーチェンジモデル(SP2022)を2004年から販売し、その路線でP250、P320とアップグレード。P226時代に逃した米軍制式拳銃M17/M18の座を得るなどの躍進を遂げる。
突撃銃としてもSG556(2006)、SG516(2010)を経て2013年にMPX短機関銃を開発。同等のデザインで2015年にMCXを開発した。
MCXは6.8x51mm .277 SIG Fury弾に対応したMCX Spearの発展型が存在。米軍次期小銃であるNGSW計画のコンペに勝ち上がりM7小銃として採用。M4カービンからの置き換えが始まっている。
機関銃としては2018年のMG338より参入し、M250としてMCX Spearと同じく採用された。
周辺機器も販売しており、特にドットサイトであるROMEOシリーズとそれに対応するブースターであるJULIETシリーズ、TANGO6Tライフルスコープは有名。



製品

Vetterliライフル

スイス陸軍が1869~89年使用。黒色火薬を使用した10.4x38R弾を11発チューブマガジンに装填する連発式ボルトアクションライフル。後継はシュミット・ルビン銃とK31。

モンドラゴンM1908

メキシコの独裁者であったマニュエル・モンドラゴン将軍が考案した自動小銃。メキシコの当時の工業力では実現できなかったためSIG社その他に持ち込まれた。
400丁納入した時点でメキシコ革命により政府が購入をキャンセルしたため、ドイツ帝国に3600丁販売されるなどした。

SG510

AK53までガスオペレーションによる連射を試験していたものの連射速度が極端に遅く実用的ではなかった。そのためドイツのStg45からローラーロッキング式ディレイドブローバックを参考にしたAM55を試作。良好な結果を示したため改良の末1957年にStgw-57として採用されシュミット・ルビン銃とK31を置き換えた。

SG530

5.56x45mm弾に対応するためにベレッタ社と共同で研究していた。SG510の機構では5.56x45mm弾の反動では動作しきれないと判断しガスオペレーションに回帰。その後共同開発を停止し各々でSG530とAR70/223として完成させた。

SG540

SG530では製造コストが高くついたので、ロングストロークガスピストン ターンロックボルトのオーソドックスな動作に改修したもの。武器輸出の都合フランスで製造していた。派生型として7.62x51mm弾を使用するSG542とカービンのSG543が存在。

SG550

SG540をスイス陸軍がStgw-90として採用するにあたり5.6x45mm Gw Pat90(スイス版の5.56x45mm弾でSS109より弾頭が少し重い)に対応させたSG541の名称を変更したもの。派生型としてカービン版のSG551、さらに短くしたSG552とその改良版であるSG553、.22LR弾対応のSG522が存在。

SG556

アメリカ向けにSG551をよりスリムなハンドガードに置き換えたモデル。派生型として7.62x39mm弾に対応したSG556R、ストックなども置き換えた556XIも存在。

SG516

AR-15クローン。同様のM400と異なりショートストロークガスピストンへの転換を行っている。設計者は後にMCXなどを生み出すことになる。

MCX

AR-15クローンにMPXでのデザインを取り入れたもの。

MCX Spear

MCXを6.8x51mm .277SIG Fury弾に対応させるために改修したモデル。レシーバー左面にコッキングハンドルが追加されている。ボルトフォアードアシストがあるXM5となくなったXM7が存在(その他にも変更点が点在)。
米軍向けにはXM157射撃管制ユニットが装着されており、弾道計算や戦術データリンクなどに対応している。

P210

フランスのM1935A SACM拳銃をもとに開発しスイス陸軍にP49として採用。

P220/P225

よりオーソドックスな拳銃として開発しスイスにてP75として採用。ロッキングラグと排莢口とを合体させたデザインが特徴。米国向けに.45ACp弾に対応したP245も存在する。

P226/228/229/P224/P239/モスキート

SIG P226の項目を参照。

P230/P232

SIGSAUER P230の項目を参照。

SIG PRO(SP2340/SP2009/SP2022)

P226系統をポリマーフレーム化し.40S&W弾、.357SIG弾、9mmパラベラム弾に対応したモデル。

P250/P290

SIG PROから手動安全装置の排除、DAO化、機関部のユニット化、ドットサイトマウントの追加を行ったモデル。

P320(M17/M18/P322)

P250をストライカー式に変更したモデル。米軍向けにはサムセーフティーが追加されている。

GSR/SIG SAUER 1911

SIG社製のコルト M1911クローン。

P238/P938

M1911をもとにした超小型拳銃。

S202/S205/S303/SSG-2000/SSG-3000

SAUER&Sohn社が販売していたライフルの派生型。

ブレーザーR93

ブレーザー社が開発したストレートプルボルトアクションライフル。

MG701-3

MG42の影響を受けた汎用機関銃。スイスでは採用されなかったがブラジルやチリにて採用された。

MG338

.338ラプアマグナム弾を使用する汎用機関銃。

M250

.277SIG Fury弾に対応した汎用機関銃。

MPX

AR-15を意識した短機関銃。



製品のフィクションでの活躍

SG550

  • Rainbow Six Siege
GSG-9をモチーフにしたIQ、オリジナルPMC ナイトヘイヴンのGRIMが552を装備

SG556

  • Rainbow Six Siege
FBI SWATがモチーフのTermite、オリジナルPMC ナイトヘイヴンのOSAが556Xiを所持

MCX Spear

  • Battlefield 2042
M5A3として実装

P226/228/229

SIG P226の項目を参照。

P230/P232/P239

SIGSAUER P230の項目を参照。

MPX

  • Rainbow Six Siege
Navy SEALsがモチーフのValkyrie、米シークレットサービスがモチーフのWARDENが所持



余談

P320(M17)、MCX Spear(M7)とM250についてはそれぞれ米軍の眼鏡にかなう高性能な銃ではあるものの、導入後より初期不良や暴発の問題がささやかれている。

P320

  • 特定の方向から衝撃を与えると暴発する
 一度任意でのパーツ交換が行われているが根本的には対処できていないといわれる。
 2025年には米空軍兵士が暴発により胸を負傷し殉職する事態が発生しており、対応中とされる。

MCX Spear

  • ガスオペレーション用に銃身に穴をあける個所の加工ミスで異常に銃身が削れる
 M16の初期でみられた不良と同様のもの。その他にもエキストラクターのパッキンが入っていない/バレルの固定時に規定トルクで閉めていないなど工場側の管理品質に問題があると報告されている
  • サプレッサーのロック機能が破損する
  • XM157射撃管制ユニットが作戦行動を維持できない
 72時間の作戦行動7回を完遂できない、1000発撃つと壊れる等ソフトウェア側の問題が発生
  • 操作系統の問題
 後部のチャージングハンドルがストックと干渉する。左面の者は引きづらい。
 アンビ用の左マグキャッチが指以外でも容易に押せるほど飛び出てしまっている

M7に関しては初期配備中のブラッシュアップ期間(2025年より本格配備開始)であると言え改善がすすめられているのだが、M17については制式採用前からSIG SAUER社の対応姿勢には疑問が残る状態が続いていた。
小銃機関銃拳銃全てに関わっているSIG SAUER社のキャパオーバーなのでは、等憶測がささやかれているが、ともかく一刻も早い改善が望まれている。


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最終更新:2025年08月21日 00:11