金の蝋燭台(昔話)

登録日:2018/10/3 (水曜日) 22:20:24
更新日:2023/01/16 Mon 16:04:08
所要時間:約8分で読めます



『金の蝋燭台』とは、西南アジアの昔話のうちの一つである。
父親から知り合いとの結婚を迫られた一人の少女が、金の蝋燭台を作ってもらい、それを上手く利用して魔の手から逃れるという内容である。

◇あらすじ


昔々、西南アジアのとある町に、二人組の父娘が住んでいました。
少女は満月の様に美しく、父親は彼女の事をとても大切にしていました。

父親(こんな可愛い一人娘を、知らない奴の所へ嫁になんか行かせる物か。
少し歳を取っているが、私の知り合いの所へ嫁に行かそう。そうすれば私も安心だ。)

父親はそう思い、少女にこう言いました。

父親「お前は私の知り合いの所へ嫁に行くのだよ。」

それを聞いて少女は反対しました。
何故ならかなりの年の差婚になってしまううえ、当の少女自身はそれを望んでいないからです。

少女「嫌よ!どうして私がお父様の知り合いなんかと結婚しなきゃならないの!
私はまだやりたい事があるし、第一かなり年齢に差があるじゃない!」

しかし、父親は娘の訴えを全く聞き入れてくれませんでした。
その時、娘は諦めた振りをしてある事を思い付きました。

娘「お父様、解りました。私はお父様の知り合いと結婚します。ですが、条件があります。」

お父様「条件?一体なんだね?」

娘「金の蝋燭台を作って欲しいのです。」

お父様「金の蝋燭台?そうか!嫁入り道具か!よしよし、お父様に任せなさい!」

早速鍛治屋に頼み、金の蝋燭台を作って貰いました。
しかもその蝋燭台には、娘のリクエストで部屋がついていたのです。

ある日の事、父親が仕事に出掛けている隙に、少女は井戸の所に靴を置き、自分は蝋燭台に設けられている部屋に隠れました。

仕事から帰って来た父親は、娘が居なくなったので探しました。
そして井戸の側に置いてあった靴を発見し、娘は井戸の中へ身投げしたのだと思いました。

父親「嗚呼!我が娘よ、なんて事を…!」

それから父親は娘の事を思い、嘆き悲しみました。

そして蝋燭台を見てこう思いました。

父親「そうだ!この蝋燭台を手放せば、娘の事を思い出さずに済む!」

父親は蝋燭台の中に娘がいる事を知らず、鍛治屋に蝋燭台を売り払いました。

それから暫くして、鍛治屋の前を馬に跨がった王子様が通り掛かりました。
王子様は例の蝋燭台を見て、一目で気に入りました。

王子様「これはこれは、見事な蝋燭台だ。鍛治屋の主人よ、この蝋燭台を僕に売ってはくれないか?」

鍛治屋「こ、これはこれは王子様。お目が高い!」

鍛治屋は王子様に蝋燭台を売りました。

翌朝、王子様は昨日の夕御飯の残りを食べようとしましたが、少ししかありませんでした。

王子様「誰だ?僕の夕御飯を勝手に食べているのは?」

王子様はお城にいた使いの者達に訪ね回りましたが、誰も知らないと言うのです。
そこで王子様は自らの指をナイフで傷つけ、塩をふりました。
そうすれば傷の痛みで眠れないからです。

その晩、王子様がベッドから部屋を見張っていると、あの蝋燭台から一人の少女が出て来たのです。
王子様は驚きました。

そう、父親から知り合いとの結婚を迫られた、あの少女が蝋燭台の中に身を隠し、何とか父親から逃れ、このお城に辿り着いたのです。

少女は蝋燭台から出て来て王子様が食べた夕御飯の残りを食べ、蝋燭台の中に戻っていきました。

翌日。

王子様「君は人間なのか?それとも悪魔なのか?」

王子様は、蝋燭台の中にいた少女に尋ねました。

少女「私は人間の子供です。」

少女は一部始終を王子様に話しました。

王子様「嗚呼、なんという事だ。僕はすっかり、君の事が好きになってしまった。」
少女「私も、王子様が好きです。」

王子様と少女は、すっかりお互いを好きになってしまいました。
それから二人は、毎晩一緒に遊んだり、お話をしたりして、幸せな時間を過ごすようになりました。

少女「ウフフフフ。」
王子様「あはははは。」

ところがある日、その様子を一人の女中が発見してしまったのです。
王子様と少女の関係は城中に響き渡り、それは王子様の許嫁の女性の耳にも入りました。

許嫁の女性「私の王子様を奪うなんて許してなるものですか。しかも、私よりも可愛いじゃない!あの小娘!」

ある日、王子様が狩に出掛けた隙を見て、許嫁の女性は蝋燭台に蝋燭を何本も立て、一切に火を着けました。

中にいた少女は堪えきれず、遂に中から飛び出してしまいました。

少女「熱い!熱いよお!シシカバブになっちゃう!」

可哀想に、火膨れになってしまったのです。

許嫁の女性は気絶した少女を筵にくるみ、女中に頼んで町外れのお堀に捨てさせました。

暫くしてお堀の側を、一人の貧乏なお爺さんが通り掛かりました。
お爺さんはお堀の中にある筵を発見し、何やら嫌な予感を感じました。

筵の中には、火膨れになってしまった少女がいました。

お爺さん「可哀想に、誰が一体こんな事をしたんじゃ…。」

お爺さんは少女を家に連れていき、手当てをして食料を食べさせました。
少女の火膨れは治り、数日後には元の美しい少女になりました。

お爺さんには子供がいなかったので、少女はお爺さんの家で暮らすことになりました。

その頃、お城では少女がいなくなったショックで王子様が病に倒れました。
食事は愚か、薬すらも口にしません。

大臣「このままでは、王子様はお隠れになってしまいます。」

王様「ううむ、どうすれば良いのやら…。」

王様と大臣は悩みましたが、ある事を思い付きました。

大臣「そうだ!国中の皆に、それぞれの自慢の料理を王子様に食べさせてみては如何でございましょうか!?」

王様「お!ナイスアイデア!」

そんなこんなで『王子様の病を治せ!自慢の料理コンテスト』が開かれました。

勿論、そのコンテストのお知らせは少女とお爺さんの元にも届きました。

少女(王子様に、もう一度会いたい!)

少女は大麦の粉ですいとんを作り、粗末な丼に入れました。
そしてすいとんの中に、王子様から貰った指輪を入れたのでした。

さあ、いよいよコンテストの日。

お爺さんはすいとんの丼を篭に入れ、お城に行きました。

コンテストの参加者の一人「まぁ、立派な料理です事(嫌味)。」

お爺さん「ワシと娘にとっては、これが精一杯の料理なんじゃよ。」

王子様は誰の料理も口に入れようとはしませんでした。

さっきおじいさんに嫌味を言ったコンテストの参加者の一人「うそーーーん!?」

そんなこんなでいよいよお爺さんの番です。

お爺さん「ワシの娘が作ったすいとんです…。」

王子様は貧乏なお爺さんを見て申し訳ないと思いましたが、すいとんの暖かさを感じ、思わず手を伸ばしました。

そして……。

王子様「う、美味い!なんて爆発する様な美味さなんだ!こんなすいとん、初めて食べたよ!」

王子様はすいとんをすっかり平らげました。

すると、丼の底に指輪が一個ありました。

王子様「こ、この指輪は!」

王子様はお爺さんから全てを聞き出しました。
すると、王子様は奇跡的に快復したではありませんか。

早速、王子様はお爺さんの家に使いの者を向かわせました。
少女は使いの者に連れられてお城に到着。

少女「王子様…私は貴方に、ずっとずっと会いたかった…。これからは、何時までも一緒です!」
王子様「僕もだ…マイプリンセス。」

CHU……。

少女と王子様は結婚しました。

貧乏なお爺さんにも、豪華な着物等が贈呈されたという事です。

めでたしめでたし。

◇登場キャラクター


  • 少女
このお話の主人公。
父親から知り合いとの結婚を迫られた末、部屋付きの金の蝋燭台を作ってもらい、更に井戸の側に靴を置いて入水自殺に見せ掛け、自身は蝋燭台の部屋の中に身を潜めた。
結果、父親は娘が自殺したと思い込み、彼女が隠れている蝋燭台を売り払う。
それから王子様と廻り合い、お互いを愛し合い、最終的には結婚した。

  • 父親
少女の父親。
娘を思う余り、彼女の結婚相手を強引に勝手に決めた。
結果として娘は劇中での行動を取り、父親は娘が井戸の中へ身投げしたと思い込み、娘が蝋燭台の中に隠れている事を知るよしもなく、それを手放した。

  • 王子様
少女が身を潜めている蝋燭台を鍛治屋から購入した事がきっかけで彼女と運命的な出会いを果たし、お互いを愛し合う。
少女がいなくなった事で病に倒れたが、最後は少女が作り上げたすいとんを食べ、完治する。
そして少女と結婚し、永遠の愛を誓った。

  • 貧乏なお爺さん
王子様の許嫁であった女性の手により、火膨れとなってしまった少女を救出した老人。
最後は少女の火膨れを治した事と、少女と王子様を再び引き合わせた功績が称えられ、豪華な着物等を贈呈された。

  • 許嫁の女性
王子様のかつての許嫁であった女性。
少女に対する逆恨みと嫉妬により、少女を火膨れにした。
結局末路は物語中には描かれなかったが、恐らく死刑になった事だろう。


追記・修正は、蝋燭を灯し、すいとんを食べながらお願いします。
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最終更新:2023年01月16日 16:04