ジャイアンよい子だねんねしな(ドラえもん)

登録日:2022/12/06 Tue 21:24:00
更新日:2022/12/12 Mon 01:48:08
所要時間:約 17 分で読めます





「ジャイアンよい子だねんねしな」は、漫画『ドラえもん』のエピソードの1つ。
てんとう虫コミックス27巻および藤子・F・不二雄大全集11巻に収録。

小学三年生1981年2月号掲載時のタイトルは「のび太の子育て」


【あらすじ】

今日もジャイアンスネ夫にいじめられて帰って来たのび太

どうしてぼくの友だちは、意地悪なやつばかりなんだろう。

「きみがもっとしっかりすればいい」と諭すドラえもんに対し、あくまで悪いのは意地悪をするジャイアン達であると主張するのび太は、「もっといい友だちが欲しい」と訴える。


そこへ突然、「二十二世紀デパート」から大きな荷物がのび太の部屋へ届けられた。
しかしドラえもんは注文した覚えがない。

荷物の中身は『クローン培養基*1。生物のコピー、すなわち「クローン」を作るための道具だった。

動物でも植物でも、小さな細胞が集まってからだを作ってるんだ。
その細胞の組みたてかたの設計図を遺伝情報というんだよ。

遺伝情報はあらゆる細胞のひとつひとつに組みこまれている。
だからたとえば髪の毛一本でもあれば、それをもとにコピーが作れるんだ。


遺伝子とクローンの関係について実にわかりやすく解説するドラえもんだが、のび太はてんで理解できず。

呆れつつ返品の手続きを行うドラえもん。どうやら誤配達された品物らしい。
デパートへ電話するも話し中なので、タイムマシンで直接向かうことに。


おもしろそうなのになあ。一ぺんくらい使ってから返せば……。

先ほどの説明はわからなかったものの、道具には興味津々ののび太。培養基を押し入れの中にしまい込み、引き取りに来た配達員と手続きを済ませ戻って来たドラえもんにはそれぞれウソをついて返品処理を完了したことにしてしまう。

続いて、外を歩いていたジャイアンとスネ夫から、やけに慣れた手つきで髪の毛を一本ずつむしり取る。
「ぜんぜん」理解できてなかった割に、「髪の毛で人間のコピーが作れる」という要点はしっかり把握していたようだ。

さらにドラえもんから使用目的を濁した上で『かべ紙ハウス』を借りる。これをのび太の部屋に貼り付け、押し入れにしまっておいた培養基をハウスの中へ持ち込む。これで念願のクローン作りの準備は完了だ。


カップに細胞を入れて、メインスイッチを入れ……、

説明書の手順通りに培養基を操作するのび太。
やがて機械が作動し始める。

スネ夫とジャイアンのコピーが出てきたら、
おとなしくすなおな子にしつけて、
友だちになろう。

間もなく生まれゆく新しい「友だち」への期待に、のび太は胸を膨らませる。

しばらくして機械の動きが止まった。すると、機械のノズルから風船のようなものが膨らみだす。
それは直径1メートルほどあるタマゴのような物体となり、2つが転がり出て来た。
そして中から現れたのは…。


バア。


やあ、そっくり!!

素っ裸のジャイアンとスネ夫……の「コピー」。ついにクローン人間がここに誕生したのだった。

こんちは、ぼくのび太。
きみたちを作ったのはぼくだよ。
そのつもりで尊敬しろよ。

生まれるやいなや生みの親アピールを始めるのび太。ところが…。



ホギャー。ホギャー。


ビ~~~~~~~~。


2人のコピーは赤ちゃんのように泣き出してしまった。全く話が通じそうにない。


のび太は一旦ハウスを出て、再びドラえもんの下へ。実際にコピーを作ったことは秘密にした上で、「クローン培養基」で作ったコピーとは赤んぼうなのかを尋ねる。


赤んぼうじゃないよ。
細胞の持ち主と同じ年まで成長して出てくるんだ。
でも、脳や運動神経は赤んぼうなみだから、いろいろ教えなくちゃならない。


見た目は本人と瓜二つでも、中身は生まれたてそのままのクローン人間。当然言葉も話せないし泣いて訴えるばかりで、のび太も困ってしまう。
お腹を空かせているのだと判断し、台所から持ち込んだご飯を与えてみたところ、上機嫌で食べ始める。特にジャイアンのコピーは元が元だけに食欲旺盛だ。

裸のままではかわいそうなので、自分の服を着せようと(ジャイアンは着れるのか?)タンスを漁っていたところへ、ママの呼ぶ声が。


お台所の食べ物がゴッソリなくなってるけど。

あんまりおなかがすいたから、
昼寝のしすぎで……。

イヌとかネコとか恐竜とか飼ってるんじゃないでしょうね。


おそらくフタバスズキリュウを育てていた時の事を受けての疑惑をぶつけるママ。まさかクラスメートにそっくりな赤ちゃんを2人匿っているなどと言えるわけがない。

なんとか理屈をつけてママから逃れたのび太だったが、この先こんな調子で子育てをしていくには大変な苦労が伴うことに気づき始める。怒られるのを承知でドラえもんに相談しようとも考えた矢先…。


ホギャ ホギャ

かべ紙ハウスの中からまたもや大きな泣き声が響く。その声を聞きつけたママを誤魔化しながら、人目につきにくい物置の脇にハウスを移動させる。

中ではジャイアンとスネ夫のコピーがおもらしをしてしまっていた。中身は赤ちゃんでオムツなども履かせていないのだから無理もない。

そこでのび太はドラえもんから、かべ紙ハウスに続いていくつか道具を貸してもらうことに。


トイレができる『かべ紙トイレ』の他、『かべ紙レストラン』に『かべ紙洋服屋』……何もない空間だったかべ紙ハウスの中に様々な「お店」が立ち並ぶ。
これで食事や排泄の心配はなくなり、必要に応じて洋服からおもちゃまで欲しいものをいつでも手に入れることができるようになった。

『かべかけテレビ』でアニメなどに夢中にさせられるので、のび太がいない時に泣き出す心配もなくなった模様。

あれで言葉もおぼえるだろう。

ともかく育児の大変さが身に沁みてわかったのび太は、ママの肩叩きを始めるのだった。

めずらしい!!




ふたりはおとなしくしてるかな。

翌日、学校も終わりのび太は足早に帰宅。途中、本物のジャイアンとスネ夫へすれ違いざまに「おもらし」の件をこすってみるが、当然無反応だった。
宿題も遊びも後回し。のび太は何よりも2人の子育てに夢中になっていた。



ワーイ、ノビ太ガ来タ。

ノビ太アチョボ。


昨日まで赤んぼうだった2人は、すでに言葉を喋れるまでに育っていた。

とりあえず呼び捨てはやめるよう注意しつつ、のび太は2人を『かべ紙小学校』に入学させる。


勉強はとてもむずかしいものです。
先生のいうことをよく聞くように。
なまけると立たせるからね!!

すっかり教師気分で有頂天ののび太先生。
だが、一日で凄まじい成長ぶりを見せるコピー達は学問においても飲み込みが早く、ひらがなや一桁の足し算といった小1レベルは短時間で覚え、掛け算に至っては逆にのび太が間違えて笑われる始末…学力はあっという間に追い抜かれた。
体育の授業でも跳び箱3段を難なくクリア。のび太が模範演技を見せるまでもないのであった。

学校なんかどうでもいいんだ。
子どもは遊ばなくちゃいけない。

これ以上教鞭を執っていても自分が赤っ恥をかく一方だと悟ったのだろう、のび太は早々と授業を切り上げ、大得意のあやとりを教えてやることにしたが…。


そんなのつまんない。

おもてでいせいよくパーッとさわごうぜ。

かべ紙ハウスの外へ出ようとするコピージャイアン&スネ夫。
慌ててのび太は2人を止め、「外の世界には何もない」と説明するが…。


本にかいてあったぞ。
外には空があって太陽や月がのぼるって。

テレビで見たぞ。
山や海や町があって、飛行機や車が走ってるんだぞ。


のび太の知らぬ間に、2人は与えられた情報媒体によって「外の世界」を知り尽くしていたのだ。
しかし、何があろうとここからコピーを外へ出すわけにはいかない。語気を強めて2人を一蹴し、『ゴマロック』でハウスの入口を施錠するのだった。


かわいくなくなったなあ。

「おとなしくすなおな子」に育てるつもりだったはずが、どうも雲行きが怪しい。もしかしたら、人間のコピーは外見だけでなく性質も本物そっくりになってしまうのだろうか?
のび太は寝る前に(あくまでコピーを作った件は伏せたまま)ドラえもんにこの疑問を投げかける。


もちろん。
だけど、実際には人間のコピーなんて作る者はめったにいない。

なぜっておなじ人間がふたりもいちゃ、さわぎのもとになるからね。

それに、人間をつくるってたいへんなことなんだ。
作ったからには、しあわせにしてあげる義務があるし、一生責任をもって……。


ドラえもんの答えは、今ののび太には最も耳が痛いであろう正論だった。
自分の面倒さえ見きれないのび太に、一生責任をもって2人のコピーを幸せにしてあげるなどとても無理な話である。


そんなことを考えながら重い足取りで下校していたのび太。そこへ、本物のジャイアンとスネ夫が無理やり野球へ誘いに来た。
案の定、打てば三振、守ればエラーと散々。敗因と見なされた挙げ句袋叩きに遭う。

だれが入れてくれとたのんだ。

ズタボロになりながら例のかべ紙ハウスへ入室。ところが、そこでも「ジャイアンとスネ夫」が野球をやろうと大はしゃぎ。
明らかに人数が足りないが、おもちゃ屋で購入した「バッティングマシーン」を使って三角ベース*2ならできるという。

野球にウンザリしていたのび太は「あやとりをするぞ!!」と猛反発。だが、生みの親でありながらすっかりナメられてしまっていたのび太は、2人のコピーに誂われてしまう。


かけ算もできないくせに。

とび箱もとべないくせに。


「いい友だち」欲しさに作り出したクローンは、本物のジャイアン・スネ夫とまるっきり「おなじ人間」に育ってしまっていた。

カッとなったのび太は2人のコピーに殴りかかってしまう。しかし、その2人も負けじと反撃を行う。

大慌てでハウスを飛び出し、ゴマロックをかけるのび太だが、2人は意地でも外へ出ようとドアを破壊しにかかる。

恐るべき事態に直面したのび太は、とうとう様子を見に来たドラえもんに全てを打ち明ける。



えええ~~~~っ!


なんとかしてよ。


どうにもならないよ!!
なるわけないだろ!!


もはやドラえもんでも収拾がつかない状況と化していた。

そんな中、ハウスを脱出しようと試行錯誤していたコピーの2人は、部屋の隅に置かれていた一台の機械に目をつける。


あれなんだ。

ぼくも前から気になってた。

そして、何気なくその機械をいじってみると……。






話しあってみるしかない。
どこかほかの星に住んでもらうとか。

しょうちしてくれるかなあ。

どう考えても承知してくれそうもない説得を試みる2人は、覚悟を決めてかべ紙ハウスの中に入る。


…ところが、中はもぬけの殻。その理由はすぐに判明した。

あっ、取り消しスイッチを入れたな。

コピーの2人は、どうやら「クローン培養基」で作り出したクローンを元の遺伝情報…すなわち「髪の毛」に戻すスイッチを自ら押してしまったようだ。




こうしてクローン騒動は終結。
その後、抜かれた髪の毛を元通り本物のジャイアンとスネ夫へ植え付けるドラえもん。二度と勝手なことをしないようのび太に注意するのだった。

よくわかりました。


【登場したひみつ道具】

〇クローン培養基
髪の毛など遺伝情報(いわゆるDNA)からコピーを作り出すことができる道具。
カップに髪の毛などを投入し、機械を作動させると卵が生成されコピー生物が孵化する。外見はコピー元の生物と同様だが、知能や運動神経などは赤ちゃんと同等。そのため誰かが育てなくてはならないのだが、成長速度は普通の人間より格段に早く、数日で本人と同等の知能を得る。
しかし、どのように育てても性格や性質は元の人間と同じように形成されるらしく、のび太はジャイアンとスネ夫のコピーを善良な子供に育てようとしたが、元の意地悪で乱暴な2人に成長してしまっていた。
「取り消しスイッチ」を押すと、作られたコピーは元の髪の毛などの状態に戻る。

ドラえもんが元々持っていたひみつ道具ではなく、二十二世紀デパートから誤って配達されたもの。ドラえもん曰く、様々なトラブルを招くおそれがあることから未来世界でもこの機械でコピー人間を作る者はほとんどいないという。

〇かべ紙ハウス
9巻「かべ紙の中で新年会」にも登場した、家の絵が描かれたポスター型の道具。壁に貼ると内部に広々とした部屋のような空間が出来上がる。こっそりコピー人間を育てようとしたのび太がドラえもんから借りた。

〇かべ紙トイレ、かべ紙レストラン、かべ紙洋服屋、かべ紙おもちゃ屋、かべ紙小学校、かべかけテレビ
「かべ紙ハウス」の派生形で一部は「かべ紙の中で新年会」にも登場した。それぞれ本物の施設と同様に利用することができる。コピーのスネ夫が本を読んでいたことから、書店か図書館に相当するかべ紙施設もあると思われる。

〇ゴマロック
大全集第8巻「ゴマロック」に登場した鍵型の道具。本来は「とじよゴマ」と言って鍵で扉などに触れると絶対に開かなくなるというもの(使用者本人が『ひらけゴマ』と言えば開くようになる)。コピーのジャイアンとスネ夫がかべ紙ハウスの外へ出られないようのび太が使用した。
マイナーなひみつ道具の一つだが、本作では使い方が詳細に描写されていない*3ため、(『大全集』が発売されるまで読む手段がわずかに限られていた)「ゴマロック」の回を読んだことがないとわかりにくいかもしれない*4

タケコプター
毎度おなじみ。のび太がジャイアンとスネ夫の髪の毛を抜くために、ドラえもんが元通り植え付けるためにそれぞれ使用。ちなみに具体的にどのようにして髪を元に戻したのかは不明。


【余談】

  • 本作は、大山のぶ代版・水田わさび版ともに現在一度もアニメ化されていないエピソードのひとつである。
    おそらく、実際の日本の法律では産生が禁止されている「クローン人間」を題材にしていること、最後にクローンが消去されてしまうオチ、さらに外見が小学生で中身が赤ちゃんレベルという子供の描写などが放送コードに引っかかるためだと考えられる。
  • ラストで反省した素振りを見せるのび太だが、後に掲載された「かぐやロボット」では、ロボットだが人間にそっくりな女の子を育てようとしている。また、本作と同様に子育てを軽はずみに考えていたのび太に対しドラえもんが「人を幸せに育てること」の責任能力を問うていた。なお、こちらは大山版・水田版ともにアニメ化されている*5
  • 「かべかけテレビ」には「オバケのQ太郎」の主人公・Q太郎が映っている。
  • 当初「のび太の子育て」として雑誌に掲載された際には、単行本版とは異なる扉絵が描かれていた。単行本版ではベビー服を着て泣いているジャイアンとスネ夫をのび太があやしているが、雑誌掲載版ではのび太が全裸のジャイアンとスネ夫に正座をさせている。(単行本版も負けていないが)ストーリーを知らないと結構シュールな光景である。
  • なお、同じ藤子FによるSF短編「恋人製造法」でも、主人公がクローン人間を作り一から育てるというストーリーが描かれている。
    こちらの主人公は片思い相手から創ったかわいい少女を予想と違い半ば娘の様に愛し育んだが、やっぱり養育費の高さとコピーゆえの外出を厭う想いが2人両方を苦しめ、クローン機の提供者に「彼女の人権を抑圧している」件を責められた後、彼との愛ゆえに「彼と離れて自由に過ごす」未来を受け入れられない彼女のため主人公が選んだのは…。



本にかいてあったぞ。外にはアニヲタWikiがあって、追記ができるって。

テレビで見たぞ。項目が沢山あって、修正もできるんだぞ。

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最終更新:2022年12月12日 01:48

*1 大全集では「クローン培養機」表記。

*2 二塁がなく狭い空間・少人数で遊べる簡易野球の一種。

*3 のび太が施錠・解錠時に必要な合言葉を喋っていない。

*4 もっとも、この道具を使えば鍵がかけられるという最低限の仕様はわかるようになっているが。

*5 ただし水田版はストーリーに大幅な改変が加えられている