アレックス・ランドルフ

登録日:2023/02/15 Wed 00:15:31
更新日:2024/04/05 Fri 20:49:39
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アレックス・ランドルフ(Alex Randolph, 1922年5月4日 – 2004年4月28日)は、ゲームデザイナー。
一般にはあまり知名度はないが、「ボードゲーム」を一つの文化として確立させた巨匠の一人である。

略歴

実は前半生についてはあちこちのサイトで書いてあることが食い違っており、第一次世界大戦の混乱もあって微妙に判然としない。
「ボヘミア出身」とも「アメリカのコロラド州出身」ともされている。
スイスの私学に留学するなど、裕福な家庭の出身だったことは間違いないようだ。
戦時中は米軍の情報部に所属していた、と本人は言っているが、事実かどうかは不明。ただ、4ヶ国語に堪能であったことは確かだったようで、スカウトされてもおかしくはなかっただろう。
ハッキリしているのは、38歳の時にアメリカ国籍を取得したこと。これ以前の国籍については不明瞭であるため、とりあえず「アメリカ人」として紹介される事が多い。

1961年に『Pan-Kai』でゲーム作家デビュー。ちなみに当初は本人に売り出すつもりはなかったとのことだが、代理人に勧められて発売された。

1961年に日本に移住し、プロのゲームデザイナーとなる。ちなみにこのとき40歳。遅咲きの作家だった。
結局日本には7年間も滞在し、その間に将棋の段位まで取得している。
ちなみに、当時は将棋を学ぶ外国人が希少だったためか、将棋雑誌の取材も受けている。…が、当時は(あるいは今も)ボードゲーム作家という職業の認知度が低かったため、その際の肩書きは「発明家」。間違っちゃいないと言えばそうだが…。

1982年には『ザーガランド』でドイツ年間ゲーム大賞を受賞するなど、次第にその名を高めていく。

2004年、移住先のヴェネツィアで亡くなる。81歳であった。

作風

「徹底してシンプルに余計なものを削ぎ落とした結果生まれるギリギリの駆け引き」がランドルフ作品の魅力。
基本的に、運が強く絡むゲームは少なく、戦略と心理戦で勝利を掴むゲームが多数(これはランドルフが将棋と囲碁に傾倒していたことも影響しているかもしれない)。
まさに「人間相手の顔を合わせての直接対決」だからこそわかるボードゲームの本質的な魅力が詰まった作品群である。

「ボードゲームに作者の名前を入れる」文化を最初に作り上げたのもランドルフ。それまでのボードゲーム作家はあくまで裏方であり、会社の名前で売り出されても作者は表舞台に立てないことが主流であった。
そんなボードゲーム作家の地位を大きく高め、今日のボードゲーム文化を作り上げた一人としても知られる。

前述の経歴もあってか、日本のことが好きだったらしく、そのまんま日本語なタイトルの作品もいくつか発表している。

ちなみに『Dr.スランプ アラレちゃん 大追跡』なんてイメージぶち壊しなゲームも実は作っていたりする(ちゃんとランドルフのクレジットが入っている)。

代表的な作品

ハゲタカのえじき

ランドルフといえばこれ、という代表作の一つ。
コンパクトなセットに安価な値段もあり、ボードゲーム初心者がまず手を出す作品としてもオススメしやすい。

各プレイヤーに1〜15までのカードが配られ、10〜-5までの15枚のハゲタカカードを取り合うことが目的。
カードを取れるのは一番大きい数字を出したプレイヤー、という実にシンプルなルール。マイナスのカードは逆に一番小さい数字のプレイヤーが引き取らなければならない。
ただし、数字がバッティングするとその数字は無効
このルール一つで、シンプルな数字の出し合いが極めて奥深い心理戦になっているのが見事。
だいたい「どのハゲタカカードにどの数字を出すのが有効か?」の価値基準は定まっているものの、思考パターンが似通っているプレイヤーがいたりするとバッティングの連続で他のプレイヤーに漁夫の利をさらわれる。ではあえて定石を外すべきか…?という読み合いが熱い。
1プレイにかかる時間も短く、ルールもすぐにわかる単純さからパーティーグッズとしてもおすすめできる。

ガイスター

ランドルフの代表作の一つ。ハゲタカが多人数でわいわい遊ぶ作品の代表なら、こちらは2人で黙々と遊ぶ作品の代表か。
互いに8体のお化けコマを持ち合い、これを相手側にある出口に進める、というシンプルなルール。また将棋のように相手のお化けコマは取ることが可能。
ただし、お化けの中には取ってはいけない悪いお化けも混ざっている。自分の良いお化けを全て脱出させるか、相手に悪いお化けを全て取らせるかのどちらかで勝利。
いかにも取ってほしそうな動きでやってくるこのお化けは果たして悪いお化けなのか、それともブラフなのか…?これも読み合いが熱いゲーム。

ツイクスト

ランドルフが日本で最初に作ったゲーム。囲碁を元に作られたという陣取りゲームである。
互いに「ペグ」というピンを盤面に刺していき、その間を「ブリッジ」で繋いで最初に盤面を端から端まで繋げたほうが勝利。しかし、ブリッジは他のブリッジをまたぐことができないため、必然的に互いに置ける範囲は狭まっていくことになる。
相手を妨害するのか?自分が先に進むのか?という頭脳戦が楽しめるが、セットの値段が高く、頭も使うためかややマイナー。とはいえ大会も開かれるなど愛好家も多い作品である。

ワームアップ

こちらは一転子供も楽しめるシンプルな芋虫レースである。
各プレイヤー、球体を繋げた「芋虫」をコントロールしてゴールを目指す。芋虫は各プレイヤーが出したカードの数字分、後ろの球を前に繋げて先に進めることができる。
しかしこれも先のハゲタカと同じく、数字が被るとそのカードを無効にされてしまうので、闇雲に大きい数字を出しても勝てない。また芋虫は他の芋虫を追い越せないため、あえて一直線にゴールに向かわず、体を曲げて妨害するのも有効な戦略。
さらに、「X」のカードはワイルドカードとして扱えるだけでなくなんとゴールを回転させて動かすことができるというレースゲームとしては前代未聞の効果を持つ。
球が繋がった芋虫が自然と尺取り虫な動きをしてくれる可愛らしさや、ゴールが動き回る波乱万丈さ、そして緩い見た目に似合わぬハードなガチレースが楽しい大人も子供も盛り上がる一作。

チャオチャオ

『VS魂』でゲームとして採用されて話題になったこともある一作。
ゲームシステムを一言でいえば「すごろく+ダウト」。ゲーム自体は、たった8マスの橋を渡りきればクリアというすごろくとしては極めてシンプルなもの。
特徴的なのは、サイコロの目を確認できるのは自分だけで、別に嘘を言っても構わないこと。しかし、嘘つきは見抜かれてしまえば谷底に落とされてしまう。
……じゃあ常に本当のことしか言わなければいいのでは?と思われるかもしれないが、そうは問屋が卸さない。
なんとこのゲームで使うサイコロは1〜4の目しかなく、残り2面の☓の目が出たら必ず嘘を言わなければならない
たったこれだけで、シンプルなサイコロゲームが手に汗握る騙し合いに化けるのだから秀逸である。

嘘つきは橋から谷底に突き落とされる。
嘘つきにはみんなでこう言ってやろう。
チャオチャオ〜(さようなら)

しかし、正直者に疑いをかけたやつもやっぱり谷底に突き落とされる。
そんなやつにもこう言ってやろう。
チャオチャオ〜(さようなら)

ゲームを納めている箱がそのまま谷にかかった橋というゲームボードになるデザインも美しく、シンプルなルールながら騙し合いが白熱する一作。

ハイパーロボット

プレイ人数:2〜という衝撃的な作品。
一見ゴツそうな見た目だが、やることは極めて単純。ボード上に配置されたロボットが目的地にたどり着くまでの最小工程数を当てるだけ。ただしロボットは障害物に当たるまで直進しかできない。こんなポンコツなのにどこが「ハイパー」なんだ…?
全員が同じコマを使って一斉に考えるので、参加人数に制限が存在しないのである。
ルールはシンプルだが、一見すぐそこに見える目的地に全員で頭を悩ませても全然たどり着けなかったり、時に目的外のロボットを動かしてわずか数手でたどり着ける妙手が登場したりと、参加人数が増えれば増えるほど盛り上がる作品。



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最終更新:2024年04月05日 20:49