大砲とスタンプ

登録日:2025/05/05(月) 20:40:00
更新日:2025/05/06 Tue 22:04:41NEW!
所要時間:約 35 分で読めます






「責任問題ですよ!」


『大砲とスタンプ』は、月間モーニングtwoにて2020年11月号まで連載されていた速水螺旋人の作品。
全9巻。




概要


「大公国」と「帝国」が同盟を組んで「共和国」と戦争をしている世界*1で、大公国軍に存在する兵站軍を舞台に新任少尉マルチナ・M・マヤコフスカヤの活躍と日常、戦争の背景で起こった事件について描いた物語。
仮想の戦争が題材になっている作品だが、作者の、ミリタリー関係の趣味や知識を持たない読者にも分かりやすい話にしたいという考えと、自身の官僚主義萌えもあっていわゆるお役所仕事や軍隊生活に纏わる話が中心になっている。
この辺りは作者自身が、かつて読んで感銘を受けた「海軍めしたき物語」とその続編「海軍めしたき総決算」、および「鏡の国の戦争」の影響が強いと分析している。
大公国軍の制式ヘルメットの形状などは「鏡の国の戦争」のオマージュだとか。


その為、軍事ものでありながら直接的な戦争描写は控え目で、代わりにどこかで経験したような書類仕事や見聞きしたような理不尽な話、打ち合わせ/調整/すり合わせの為の会議が続く風景が展開される。
そしてその合間に市街戦や塹壕戦、テロ事件、戦争犯罪、あるいはヤクザの出入り等はよく描かれており、そこでは軍/民を問わず容赦なく人が死んでいく。
それがかえって戦争が日常になっている生活の雰囲気をよく表現しているように思える。



世界設定として概ね現実の第二次世界大戦~冷戦初期頃あたりと設定されているが、これは作者の、一般的な読者が戦争と聞いてイメージできるのが第二次世界大戦ぐらいまでだろうという考えから。
ロケットやミサイルなど一部分野の兵器については現実よりも発達しているようで、誘導ロケット弾や弾道ミサイルなどが実用化されているが、核関連技術は存在しない様子。
メディアはラジオと映画が主流で、TVはあるがまだ普及していないような頃。電子頭脳と呼ばれる中央集権型の文書作成システムも用いられているが、手続きは当然紙ベースである。ちなみに電子部品としては基本真空管が使われている。


具体的な名前を出すのは世界観にそぐわないとの考えからぼかしているが、モデルとなっているのは大公国=ロシア帝国、帝国=ポーランド王国*2、共和国=トルコ共和国*3と思われる。
各国で言語が違い、使っている文字も違っている*4が、作中では基本的に大公国語を話している設定のようである。
なお、共和国人が話す大公国語は訛っている事の表現として関西弁で表現されているが、共和国人同士の会話のシーンでは標準語かつ横書きで表現されている。



各話の扉絵代わりにその話で登場する各国軍で使用されている兵器、あるいはメカが解説されている。
制式兵器に試作や少数生産で終わった兵器から、珍兵器に片足突っ込んでるものまで、ちょっとした小話を添えて様々紹介されている。

単行本では各話の間に兵士が使う個人装備や小物類のイラストが描かれたページが挟みこまれている。
またいくつかの巻にはカバー裏にちょっとしたある意味驚愕のイラストやおまけページがついている。





組織


【政府】

◆大公国
大公家が統治する国で、帝国と同盟を組んで共和国との戦争を行っている。首都は“MOSKVA”*5
開戦当初は順調だったようで、共和国領へ侵攻してアゲゾコ要塞一帯*6の占領にも成功。さらに前線を押し進めていたが現在は膠着状態。
戦争が長く続いている影響か元々問題があったのか、政府や軍内部では不正と賄賂が横行し、物資の横流しを行う兵士に事欠かない程軍紀は乱れており、本国からの補給も不安定な状態。
その本国では厭戦感情が大きくなり始めており、火花党による革命の機運も高まっている様子。その為政府の一部では停戦を模索する動きもある。



◆帝国
皇帝が統治する国で、現在は大公国と同盟を結んで共和国との戦争中。首都は“KRAKOW”*7
複数の戦線を抱えているようで、アゲゾコ要塞方面を初め各地に軍が派遣されている。
軍の精強さには定評があり、アゲゾコ戦線でも反攻の主力として活動している。
長引く戦争で疲弊してはいるが中途半端な停戦は国の分裂を招きかねないとして戦争を続行している。



◆共和国
終身大統領*8が統治している国で、大公国と帝国の同盟軍を相手に防衛戦争を戦っている。首都は“TSARGRAD”*9
開戦当初は侵攻してきた大公国軍と帝国軍の前に敗走し、領土も奪われたが、その後侵攻を食い止めた上で奪還の為度々攻勢を掛けている。
特にアゲゾコ市には元々の住人達で組織された抵抗運動組織がいくつかあり、そちらへの支援を通じて大公国軍の戦力削減も試みている。
とはいえ、軍/政府共に腐敗が進んでいる事、長引く戦争で国土が荒廃している事から大公国との交渉を望む勢力もある。



◆王国
詳細は不明だが作中の戦争については中立を宣言している国。
ただ関係国へ兵器や戦略物資の輸出も行っているようで、中立をどこまで厳守しているのかは怪しいもの。
大公国軍兵士がよく聴いているラジオ・メガフォンはこの国の放送局。



◆火花党/革命政府
主に大公国内で組織されている政党で、作中では主義者(アカ)とも呼ばれている。
打ち続く戦争による政情不安に乗じて支持を集め、物語後半に革命を起こし、革命政府を打ち立てる事に成功した。
が、革命政府の実態は国内の様々な勢力の寄せ集めであった為、情勢は非常に不安定でしっかりした基盤もない状態。政府要人であるリーザンカでさえ革命政府の名前などだれも覚えていないからと話す始末。
一応軍を掌握する為に人事権を行使したり、情勢の安定化させる為共和国と休戦協定を結んだりもしたが到底安定したとはいえず、政府が成立しては潰れる事を繰り返している様子。




【軍組織】

大公国/帝国/共和国共に、一般的な陸海空3軍を編成しており、それ以外に空挺部隊や海軍歩兵(いわゆる海兵隊)等を持っているのも共通している。
ただ大公国では兵站を一括して担当する兵站軍が編成されている。

大公国と共和国については軍内部での軍紀の弛緩が著しく、不正な取り扱いや賄賂による目こぼし、物資の横流しに責任の押し付けあいが日常的に行われているような状況になっている。
補給も良くはなく、鹵獲した兵器をそのまま運用したり、鹵獲兵器の予備部品や食料などを求めて戦線を超えた取引も行われている。



◆大公国軍兵站軍
マルチナ達が所属している軍で、大公国軍の兵站業務を一括して担当している。
陸海空軍で必要になる物資の調達と管理、前線からの補給要請の受付と輸送計画の立案が中心*10で、他には軍病院や捕虜収容所の運営も担当している。
重要な任務かつ結構な激務であるが、デスクワーク主体で基本前線には立たない事から他軍種の兵士からの評判は悪く、かつ軽視されている。
アゲゾコ要塞では帝国軍>大公国軍陸海空軍>犬>兵站軍の順に偉いのだとされていたり、「紙の兵隊」と嘲笑される事も多い程。
他軍同様規律は緩んでおり、賄賂の額によって補給のグレードを左右したり物資の横流しが蔓延している。
ただ、規律が緩いがゆえに色々と融通を利かせる事も出来たりと、妙に人情味のある軍でもある。



◆アゲソコ要塞補給廠管理部第二中隊
マルチナが配属された部隊で、アゲゾコ戦線にいる大公国軍と帝国軍の兵站業務を担当している。物語上影は薄いが第一中隊もあり、そちらは経理を担当している様子。
中隊長が職務を放棄している為、叩き上げの超ベテラン中尉がフィーリングで業務を差配していたが、そのベテランが死亡してからは業務が滞りがちになっていた。
どれほどかというと、業務指示が口頭のみの伝言ゲーム状態だった為、補給先が間違っていたり別の物資が届いてしまったりが日常的に発生し、第二中隊の所に将校が怒鳴り込んでくる事が頻繁にあった程。
マルチナが配属されてからは書面による指示を徹底させる事による業務の改善、様々な権限拡大と民間の業者や工場を活用したアゲゾコ市での生産を通じて存在感を増していき、ついにはマルチナの異名から「タイプライターギャング」と呼ばれるようにまでなった。



◆アゲゾコ憲兵隊
アゲゾコ要塞に駐留している大公国軍兵士の取り締まりと防諜を行う憲兵隊。
兵士達の不正の摘発、思想統制、スパイ狩り等と共に一般的な警察業務も担当しており、特にアゲゾコ市の抵抗運動組織によるテロの鎮圧、掃討に力を入れている。
ただ憲兵隊自体も腐敗が進んでおり、不正な手数料の徴取や強権的な取り調べ、横暴な態度等から他部署からの恨みを買っている。



◆抵抗運動組織
大公国・帝国軍による占領後もアゲゾコ市に住んでいる共和国人からなる、いわゆるレジスタンス組織。
一部は共和国軍情報部の支援を受けており、大公国軍人や大公国政府要人の暗殺、施設への破壊工作、軍事情報の奪取等を行っている。
当然大公国軍からはテロリストと見なされており、度々掃討作戦が行われているがあまり効果はない様子。
組織自体は複数あり、統一的な司令部の下で連携しているようだが、縄張り争いや意識の違いから内部対立を起こす事もある。




【メディア】

◆ラジオ・メガフォン
戦争に対して中立を標榜している王国のラジオ放送局。
大公国/帝国/共和国にとって都合の悪い事も報道する為、前線兵士達にとって戦争の実態や本国の動静を知る為の貴重な手段となっている。
大公国軍上層部からすれば苦々しい限りだが、禁止した場合の士気に及ぼす影響を恐れて黙認せざるを得ない様子。
時折取材の為に記者団が派遣されて来るようで、宣伝用の偽塹壕や専門部隊が用意されており、接待紛いの取材対応を行っている。まぁ見抜かれている訳だが。



◆赤紙ラジオ
大公国が放送しているラジオ放送局。
基本的にはプロパガンダ放送だがラジオドラマ等も扱うなど娯楽色が強いようで、大公国/共和国軍問わず前線兵士からの人気は高い。
特に前線兵士からの投稿を女性アナウンサーが読み上げるコーナーは、女性アナウンサーの技量もあって本当に女の子が読んでいるとしか思えず、自分の投稿が読まれないかを気にする兵士が多数。*11
この番組を通じた情報漏洩疑惑で色々あった後、何故か共和国側でアーネチカが人気になったため、コーナー*12を持たせてもらっている。





主要登場人物


【主人公】

◆マルチナ・M・マヤコフスカヤ

「ええい騒ぐな、文書で出しなさい文書で」

階級は物語開始時点では兵站軍少尉。作中で最終的に大尉にまで昇進する。
士官学校を出たばかりの女性新任少尉でアゲソコ要塞補給廠管理部第二中隊へ配属となった。

小柄で胸は小さく、髪は短く、近眼のため眼鏡をかけている。
性格は非常に生真面目かつ度が過ぎた堅物。「いい加減な事をするのが嫌」で、それが昂じて過度に規則に拘る官僚主義的な傾向がある。
その辺りは本人も自覚しており、そういった自分を活かすために軍隊に志願したという経緯がある。
大佐辺りまで出世し、実家の居酒屋にタダ酒を集りにくる警官たちに「挨拶」するのが夢。

着任直後に見た第二中隊の業務実態があまりにいい加減な事にブチ切れ、以降度々「責任問題ですよ!」と金切り声を上げて業務の改善と効率的な遂行に邁進するようになる。
当初は「すぐに根を上げるだろう」と高を括っていた第二中隊の面々も次第にマルチナのやり方に倣うようになり、やがてマルチナが第二中隊の実務面を取り仕切るようになった。

実務能力は非常に高く、各方面からどっと雪崩れ込んでくる補給要請にも連日連夜続く業務にもめげず、寧ろ嬉々として案件を処理し続けていく。
時折「最後にベッドで寝たの何時だっけ…」と零したり、「ルーチンワークを邪魔する年中行事め~」と愚痴ったりはするが。
そういった激務の中でも、自身の性格もあって業務における手続きの厳守と書面での記録は徹底させており、その邪魔が入ろうものなら規則を盾に横槍を跳ね除け、書類にわずかでも誤りがあれば容赦なく突っ返し、規則通りに動いていない部署へは強烈な抗議を行っている。
その際には相手が上官であったり他の軍種であっても突っ込んでいくため、着任早々"突撃タイプライター"なる異名を奉られるようになった。


物語が進んで経験を積んでゆくに従って権限を拡大させていくが、状況に応じてイレギュラーな対応を行う必要がある事も徐々に理解してゆく。
元々善良な気質かつ人種差別的な考えからもほど遠い考えの持ち主でもある為、不公平な取り扱いを改めるために柔軟な采配を見せて事態を処理する事も多くなった。

その仕事ぶりから部下からの信頼も厚く、特にアーネチカからは「メガネのお姫様」として親しみを寄せられている。
その一方あまりに堅物すぎる事、色恋沙汰に疎い事、世間ずれしておらず人間の悪意に慣れていない事を心配されてもいる。

一兵士としての戦闘能力は非常に怪しく、銃撃戦に巻き込まれて銃の安全装置を解除せずに撃とうとしたり、銃弾を装填していない事にも気づかず応戦しようとする有様。


好物は懐中汁粉。実家から送ってもらって貯め込んでおり、激務の最中の息抜き用に食している他出先でも持って行って折々食している。
他に紙巻煙草を吸っているが、これは軍隊に入ってからストレス解消の為に覚えたようで、愛煙家という訳ではない様子。
特別学があるという訳ではないが勉強熱心であり、作中で片言ながら共和国語の会話能力を身につけている。


実家は町の居酒屋で、両親のほか兄と妹がいる。
親兄弟からは「マーリャ」という愛称で呼ばれており、同じ町の住人だったドプチンスキイからは「マルチナ嬢ちゃん」と呼ばれている。


元々は作者がメールゲーム用に作成したキャラクターが原型。
ちなみにその段階では身長190cmの巨乳キャラだったが、「マルチナの性向にこの外見では要素を盛り過ぎ」との判断から変更となったとか。



◆スタンプ
イタチモドキと呼ばれている架空の生物でおそらくオス。
マルチナがアゲゾコ要塞へ着任する際に搭乗した船に積まれていた物資に紛れ込んでいた。
いろいろあってマルチナにペットとして飼われるようになり、以来出張先や修羅場にまで着いていっており、マルチナの危機を救った事もある。
名前はインク壺をひっくり返した足で書類を踏んで、足跡をスタンプしてしまった事からマルチナが命名した。




【管理部第二中隊】

◆キリール・K・キリュシキン

SF(ファンタスチカ)は変な本じゃねえよ!」

階級は兵站軍大尉。管理部第二中隊の副官で、第二中隊の実質的な指揮官。
大公国では超名門とされるキリュシキン家の出身なのだが、本人は軍人になるつもりがなく、兵站軍に入ったのも親との妥協の結果。
そのため軍務にやる気はなく、勤務中も趣味であるSF(ファンタスチカ)小説の執筆に精を出しており、書き上げた原稿や作品批評を専門誌や編集部に送っている始末。


ただ兵站将校としての能力は高く、マルチナ着任後は彼女に兵站事務を任せて自身は他部署との交渉や根回しを行い、必要な権限や資金の確保に不要な業務の負担逃れ、またはマルチナが"突撃"した後のフォローを行うようにしている。
その際には高い交渉力と柔軟な思考と洞察力を発揮するが、必要とあればとる手段には合法/違法を問わない為、マルチナから「またこの人は不穏な事を」と突っ込まれたりもしている。



詳細は明らかにされていないが、マルチナ着任以前から第二中隊にいる将兵はキリールに恩義があるようで、物資横領罪でキリールが逮捕された際には武力での奪還も辞さないと気勢を上げていた。
キリール自身も第二中隊に愛着があり、中隊を放り出す訳には行かないとかなり強引な手段で昇進および異動の話を潰している。

物語が進むうちに、徐々にマルチナに想いを寄せるようになり、ちょっかいを掛けてくるスィナンとやり合ったりしていたが、マルチナが人事異動で本国へ戻る事になったのを機に告白。
マルチナと結ばれる事になった。*13



◆コースチャ・K・キリュシキン

「キリュシキン家の軍人なら武勲を立てて当たり前なんです!」

階級は兵站軍少尉で、8話で第二中隊に配属され、その後中尉に昇進する。
キリールの異母弟。名門軍人家であるキリュシキン家に生まれた事を誇りとしており、軍人として功績を上げて勲章をもらう事を念願している。
その為陸軍での前線勤務を望んでいたが、母親の強い主張によって兵站軍で勤務する事になった。

その為部隊配属後も転属願を出し続けていたり、荒事の気配があると中隊兵士を武装させて打って出ようとしたりと騒動を起こし、マルチナ達を困惑させている。

兄であるキリールの事を「人生をなめた適当人間」と呼んで軽蔑しているが、口も聞かない程嫌っている訳ではない。
また兵站軍将校としての仕事も真面目に行おうとはしているが、事務処理能力は低いようで*14、あまり役に立っていない。
一応第二中隊の幹部で序列No.3に当たるのだが。

特技は狩猟で覚えた料理と士官学校で覚えた女装。
女装についてはバッチリ決めるとマルチナでも見分けがつかない程。


元々前線志望なだけあって兵士としての能力は高く、特に射撃についてはかなりのもの。
しかし将校としては兵士たちの先頭に立って突撃するようなタイプのようであり、部隊の指揮官としての能力は正直疑問符がつく。
一応9巻で帝国軍相手の防衛戦では機転を利かせて遅滞戦闘を成功させてもいるが。


ある事がきっかけでマルチナを姉上と呼んで慕う事になるが、結構な女好きかつ浪費家な面があり、給料日につけ払いの清算を求められて慌てている時もある。



◆ボリスラフ・B・ボイコ

「兵営からやり直したいか、トンマどもー!」

階級は兵站軍曹長。元は陸軍に所属しており、アゲゾコ要塞の一部将兵の間では「不死身のボイコ」の名前で通っている。
第二中隊の最先任下士官で兵士たちのまとめ役となっている他、マルチナ達第二中隊将校の相談役およびボディーガードを努めている。

初老に近い年齢ながら大柄な大男で左目に眼帯をしており、パイプ愛用者。歴戦の下士官らしく豪胆な性格で修羅場になっても臆する事はない古強者。
特に白兵戦に強く、危地に突っ込んでいくマルチナの護衛や救出に腕を振るっている。
また、共和国人の妻がいる関係で共和国語での会話も出来るため、通訳としても頼りにされている。



◆アーネチカ・A・アルセニエワ

スラム(ヒトロフカ)のドブで産湯をつかったあたいが田舎モンだっテ? ア?」

階級は兵站軍兵長。スラム(ヒトロフカ)出身の、かなり気合の入った赤毛の女性兵士。
普段は見えないが体に大きな傷跡や刺青が刻まれている。また言葉の端々にカタカナで表記される訛りがある。
ヤクザかつ自由奔放な性格で、学もなく字も書けない為事務作業には不適だが、数々の修羅場をくぐってきた経験から裏社会の事情に通じている。
その胆力と戦闘能力は凄まじく、荒くれ兵士共に周りを囲まれてもナイフ1本を構えて中指立てつつタンカをきり、相手を威圧する程。
ボイコと共に第二中隊のボディーガード役を努めているが、マルチナの事を特に気に入っており、「メガネのお姫様」と呼んで親しんでいる反面、彼女があまりに世間ずれしていない事を心配していた。

軍に入る前の一時期女性用監獄船に収容されていた事があったが、そこでの振舞い方から、女囚仲間には野良猫と呼ばれていた。
また性的にも奔放で、監獄船にいた頃は看守と寝て物資をくすねたり、軍に入ってからも行きずりの将校と一夜限りの関係を結んだりしている。ちなみに両刀使い。
ただ相手は自分で選ぶ主義のようであり、強引に迫ろうとした相手に「たかがいっぺんしゃぶられたぐらいで調子に乗んナ!」と切り返している。

学はないが危機的な状況における判断能力は高く、また他人の本質的な性質を見抜く嗅覚のようなものも備えている。
片言ながら共和国語が話せるが、いわゆる兵隊言葉であり、非常に下品な言い回しになってしまう。*15




◆マクシム・M・マンチコフ

「やったー、ケガしたー、除隊だぁー」

階級は兵站軍軍曹。会社勤めのサラリーマンだったが徴用によって第二中隊へ配属となった。
中隊では古参にあたり、能力はあるもののあまり真面目に軍務を務めるつもりはなく、サラリーマン時代に培った技能を駆使してサボる事に余念がない。
また、兵站軍に入ってくる情報を基にインサイダー取引による金儲けを企んだり、目付け役として自称中立国に派遣された際には兵士間のトラブル仲裁と手数料徴取に精を出すなど、金儲けの為には危ない橋を渡る事も厭わない。
これについて本人は「軍隊に引っ張って来たのは国なんだから多めに見て欲しい」と開き直っている。
その一方、手品が趣味だったり隊内の余興ではバンドリーダーとしてヴォーカルを努めたりと結構な宴会部長っぷりを見せたりもする。



◆ザミャーチン

「いま中尉殿が倒れると兵もくじけちまうんで、頼むッスよ!」

階級は兵站軍軍曹。元々陸軍兵士だったが、持ち場である陣地が壊滅した際に少数の部下と共に生き残った。
そして同じ陣地に打ち合わせで訪れていたマルチナに率いられて味方陣地へ帰還するも、それを敵前逃亡と断じられて反攻用部隊への編入を命じられる。
その際にマルチナの渾身の擁護とキリールのフォローによって兵站軍所属となり、九死に一生を得た。
以降車両小隊に所属して兵站軍業務の一部を担うようになった。



◆ドラガン・D・ドプチンスキイ

「これは公私混同なのでは?」

階級は兵站軍兵卒。マルチナが生まれ育った町の映画館経営者で、もう孫もいるような年齢の老人。
兵のなり手が払底し始めた大公国政府の手違いで徴兵されてしまい、前線へ送られる所をマルチナの介入によって第二中隊に配属となった。
配属後は第二中隊の事務および従卒のような仕事を担当していた。

若い頃は俳優をしており、特撮映画での死にっぷりは一部映画マニアには評判だったとか。



◆エロフェーエフ

「俺が世界で一番憎んでいるのは、この制服なんだ」

階級は兵站軍少佐。第二中隊の中隊長で本来の指揮官だが「俺は軍が嫌いだ」と放言しつつ酒浸りの日々を送っており、執務室にも滅多に顔を出さない。
マルチナも着任以来あった事がなく、ようやく会ったのは6巻に入ってから。

元々は能力も責任感もある将校だったが、アゲゾコ要塞占領時、通常の兵站業務に加えて捕虜収容所の運営も担当させられてしまった。
正規軍への補給も滞っている中、捕虜の待遇や移送を巡って騒動が起きてしまうが、そこで誤って捕虜を殺害してしまう。
本人はその責任を取ろうとするも、体面を憚った軍上層部が事態をもみ消したため軍に失望。
総力戦の最中とて辞職もさせてもらえない為、以来軍務をほぼ放棄している。
一応左遷されないだけの努力はしているとか。




【大公国軍人】

◆イグナチェフ

「兵站軍の膨大な業務だ、多少は間違いもあるだろう」

階級は兵站軍少将。マルチナが配属された当初のアゲゾコ要塞司令部参謀長。
歴とした軍の高官だが、第二中隊を利用して大規模な物資の横流しを主導していた。
マルチナの注進によって事態が発覚する事を恐れ、キリールに罪を被せようとするも失敗。
マルチナ達をテロリスト掃討の名目で殺害しようとするも、その最中に通りかかった監督に暗殺される。



◆ロフマトキン

「ご苦労、この倉庫はただいまより野蛮連隊の管理下に入る」

階級は海軍少佐。その後兵卒へ降格。登場時は第19海軍歩兵連隊、通称"野蛮連隊"の第一大隊長。
"野蛮連隊"とは犯罪者上がりの兵士等の荒くれ達で構成されている事で付いた通称だが、戦闘能力は高く、各地の戦線を転戦してきていた。
休養の為アゲゾコ要塞に引き上げてきたが、そこでの待遇に我慢がならず、兵站軍の管理する倉庫を占拠してしまう。
マルチナおよび第二中隊の活躍で事態はうやむやに解決したが、上官に銃を突きつけた事から兵卒へ降格。
とはいえ後任の大隊長がほぼ素人でロフマトキン頼りの為、あまり変わりないが。



◆スィナン・カライブラヒム

「俺ホンマに頭がええなぁ、そない思うやろ?」

階級は憲兵隊中尉。アゲゾコ市出身の共和国人だが、実際には大公国人と共和国人のハーフ。市内の利権構造や情勢に詳しい事から憲兵隊にスカウトされた。
大公国語/共和国語のどちらも堪能である事から抵抗運動組織の活動や共和国軍の動静を探知し、逆に憲兵隊からの偽情報を流す等の工作に重宝されている。

その一方、憲兵隊としての権限を悪用してアゲゾコ市内の酒場や組合からみかじめ料を取ったり、物資の横流しを行っている大公国軍兵士のグループやアゲゾコ市内のギャング等にも喰い込んで利益を得てもいるが、
それとは別に共和国軍や市内の抵抗運動組織に通じており、憲兵隊や大公国軍の情報をそちらへ流すなどスパイとしても働いている。
とはいえ共和国に忠誠がある訳ではなく、これらの行動は単に戦争の混乱を利用して自分の利益を追及する為に行っている。

その為に様々な組織に対して複数の立場を切り替えて巧みに対応しており、情報操作や演技も含めて常に自分の価値を高めるように立ち回っている。
その行動は怜悧ではあるが身勝手かつ非道なもので、必要と判断すれば、ついさっきまで普通に話をしていた相手を殺す事も厭わない程。
例えば抵抗運動組織の一員に、大公国の対空ロケットシステムの情報を渡し、その見返りに共和国の攻勢開始日についての情報を得るが、その実対空ロケットシステムについての情報はデタラメであり、それが発覚する事を恐れて相手を射殺。
更にその銃声を聞きつけて部屋に入ってきた憲兵隊の部下も射殺し、憲兵隊とテロリストの銃撃戦があった体にして自身の行動を隠ぺいするなど。*16

当初は兵站軍の業務へ介入する為にマルチナを利用しようとしていたが、悪意なく動くマルチナの行動を読み切れず、マルチナ自身に興味を寄せるようになった。
マルチナに向ける感情にも変化が出始めていたが、義勇アゲゾコ軍団の蜂起に際して自身の正体を知られたため、口封じのため殺害しようとするがキリール達の救援により失敗。
以降袂を分かつことになった。

とことん誰かを利用し切り捨てるという行為は最後まで変わる事は無く、物語ラスト付近ではとうとう市街戦にまで発展した中で自分だけでも逃げようとするのだが、
そこで兵站軍の一部隊と偶然の遭遇を経て、銃撃戦を行い被弾してしまう、
やっとの思いでアジトに逃げ込んだがもはや動く事もできず、ベッドに倒れると誰にも看取られずに亡くなるという自業自得の最期を迎えた。

◆クリム・K・キリュシキン

「いま来ておる兵は文句なしの勇者じゃ、惜しいのぅ」

大公国軍退役元帥。キリールとコースチャの祖父で見かけは瀟洒な好々爺。
父親とは折り合いの悪いキリールも祖父とはそうでもなく、コースチャとも親しくしている。

大公国の政財界に通じており、大公家ともつながりを持つ重要人物。
本国で隠居生活をしていたが、長引く戦争を止めるためにアゲゾコ要塞を訪問。
その後、共和国との極秘交渉の為ユキンコへ移動しようとしたが、その最中に抵抗運動組織の襲撃を受け、乗っていた飛行機が墜落。
その際に瀕死の重傷を負うが、護衛についていたマルチナとスィナンによって救助される。
治療中も負傷を押してユキンコへ向かおうとするがキリールの説得もあり、本国へ戻った。



◆ディーマ

「こういう時は度胸が大事だって教えてくれた人がいてさ」

階級は陸軍兵卒。大学卒業資格も持つインテリだったが徴用され、一兵卒としてアゲゾコ要塞へ配属となった。
歴史に強い興味を持っており、中世以来の歴史を持つアゲゾコを訪れられた事を喜んでいた。
市内のボッタクリバーで荷物を奪われ、途方に暮れている所をアーネチカに助けられ、以来アーネチカとちょっとした縁ができる。

その後共和国人の彼女が出来たが、"監督"の介入によって別れさせられそうになった。
その時はアゲゾコの歴史に対する敬意とアーネチカ譲りの度胸で交際を認めさせたものの、後日別れる事に。*17



◆スミルノフ

「中途半端な安酒出回るのガマンできなかっただけよ!」

階級は兵站軍曹長。アゲゾコ要塞の調理場勤務の兵士。何故かインチキ中国語っぽい口調で話す。
自家製酒の製造を趣味としていたが、兵士たちの間で出回っている密造酒の質の悪さに我慢ならず、自身で製造し始めた。
当初は小規模に製造していたが、品質の良さから「アゲゾコ・スペシャル」という名前で評判を取るようになり、遂には第二中隊に追及されるようになった。
発覚後、第二中隊に自身の動機を訴えた事で事態は収束。その後アゲゾコ市内の工場へ技術協力担当として配置換えになった。



◆グロム

「ふん、一応もっともらしく聞こえるが、どう判断したものかな…?」

階級は陸軍中佐。歴戦の精鋭部隊"黒死病連隊"の連隊長。顔に横一線の縫い傷がある大男。
特に治安戦の経験が豊富という事で、活性化した匪賊対策の為アゲゾコ要塞に呼ばれて作戦を行う事になった。
規律に厳しいが部下の戦死を嫌う部下思いであり、相手が匪賊であっても油断せず、マルチナを「紙の兵隊」と見下す事もない等優秀な指揮官ではあるが、
共和国人の村人にもてなしを強要したり、それに異を唱えたものを敵と断じたうえ容赦なく殲滅する苛烈な性格でもあった。
その行動が各地での虐殺行動に繋がり、その一部を目撃したマルチナがPTSDを発症するきっかけにもなった。



◆ハルチャン

「別荘地とまではいきませんがいいところですよ!」

階級は陸軍曹長。ステテコ島にある気象観測所の所長を務める女性兵士。
穏やかな性格であり、島自体が主戦線から離れている事もあってか島の住人とも良好な関係を保っていた。
共和国軍が上陸してきた際にはたまたま訪れていたマルチナの指揮下で防衛にあたった。



◆ハムザ・パシャ

「君の事は聞いとるよ、世話になったのにすまんなぁ」

階級は将軍。元共和国軍の将軍で「火薬樽」の異名をとる猛将だったが、現在は大公国軍に所属し、義勇アゲゾコ軍団を率いている。
実は共和国側と連絡を取り合っており、本国の侵攻作戦に合わせて蜂起する計画を持っていた。
スィナンの策謀により軍団の武装解除が決定した事を受けて急遽計画を実行するが蜂起は失敗。
降伏しようとするもスィナンに射殺される。



◆ユルドゥズ

「誰かが赦してやらんと、あんまりにもみじめやないか」

階級は大尉。元々はアゲゾコ市でも有名な学生運動家で、アゲゾコ市の独立を訴えて警察に逮捕された経験がある。
現在は義勇アゲゾコ軍団に所属しているが、軍団兵の現状と将来を悲観しており、部下がアゲゾコ市内で略奪を行っても咎めようともしなかった。
ユルドゥズの嘆きを聞いたマルチナが正規の補給を行うよう手配した事で、兵士たちの待遇改善がされた事と、これで生きるための希望を与えてやれると喜んでいた。
アゲゾコ軍団の蜂起の際にはハムザ・パシャ将軍の司令部におり、将軍達と共にスィナンに撃たれて死亡した。




【大公国人】

◆リーザンカ

「力学です、法則ですよ、世界はとてもきれいなのです」

戦前からの女性火花党員で、革命を目論んで世論工作や扇動を行っていた生粋の主義者。
女性用監獄船に収監されていた時にアーネチカと知り合い、アーネチカの世話で脱獄を図るも密告を受けて別の監獄船へ移された。
その後の経歴は不明だが、大公国で発生した革命に乗じて政権を奪取した革命政府の軍事委員としてアゲゾコへ赴任。
この頃はペンネームであるストレルカを名乗るようになっており、顔に×字様の傷跡がついていた。


歴史や社会学に通じているようで、対人関係や組織内の力学を見極めて状況を操作する事に長けており、その手腕で革命政府の要人に成りあがった。
アゲゾコ方面軍が軍閥化する事を恐れる革命政府の意を受け、その弱体化を図る為の一環としてキリールを横領罪で逮捕。
その解放交渉で自身の真意を問うマルチナに対し、「飛行機が自由に飛ぶためには機体は不安定でなければならない」事を例に出し、戦争状態を続ける事で組織に活力をもたらす事が目的だと話す。



◆ポクロフスキー師

「えーと、描いた方の熱意はよくわかります」

大公国軍の従軍司祭。
前線で勤務する将兵を鼓舞し、処刑を待つ将兵に言葉を掛ける等、兵士達の精神を支える任務を熱心に努める司祭。
長引く戦争で低下した士気を高揚させるため、公国の至宝である絵画「聖戦の女神像」がアゲゾコ要塞に運ばれた際、一緒にアゲゾコへ赴任した。
それ以前から自分の言葉が兵士たちを奮起させ、結果死に追いやっている事を悩み続けていたが、今回「聖戦の女神像」までもが戦争に利用される事に耐えきれず、「聖戦の女神像」を盗み出した。
事態が発覚した後はその贖罪と司祭としての任務を果たすため、マンチコフが作った偽の「聖戦の女神像」を掲げて最前線へ赴き、奇跡的に生還した。



◆リハチョフ師

「大公国が出来る前から神々はおわすのだがな」

大公国軍の従軍司祭。
ポクロフスキー師と共にアゲゾコへ赴任。
司祭ながら大公国の宗教的本山である神殿の方針に懐疑的であり、ポクロフスキーの悩みも薄々気が付いていた。
理不尽な扱いを受けて逃亡する兵士を支援する地下組織と繋がりがあるようで、処刑寸前となっていた将兵の逃亡を手助けしている。



◆かあちゃん

「あはは、やっぱりでっかーい」

ボイコ曹長の妻。名前は不詳。
ボイコが陸軍に所属していた頃に知り合ったが、彼女がスパイと疑われていた所を助けられ、その後結婚。現在は大公国の都市で子供らと共にボイコの帰りを待っている。
ボイコとはかなり年の離れた美人で、ボイコへの見舞いの為にアゲゾコ要塞にやってきた際に会った第二中隊の面々が衝撃を受けていた程。



◆マルチナ父

「戦死したご近所さんもいるのに喜べるか!」

街で居酒屋を経営している父親。パイプを愛用しており釣りが趣味。
戦時下とあって経営も厳しい中でも店を維持し、お客に出来る限りの料理を振舞っている。
休暇で戻ってきたマルチナがPTSDに似た症状で苦しむ様子を見て、自身の例を引いて正念場を逃す事の無い様する事が償いになるんじゃないかと忠告する。


◆マルチナ母

「存分にやっちまいなさい!」

夫ともども居酒屋を経営している母。
女ながら軍人になった娘を心配しつつも信頼しており、警官と騒ぎを起こした娘に味方して「いてまえ」と発破をかける。




【帝国軍人】

◆ラドワンスカ

「そこで「はいそうです」と言わないのも、よい将校の条件だよ」

本名はガブリエラ・ラドワンスカ。歴とした帝国の名門貴族の女当主。所領には夫と息子を残しており、軍務にかまけてなかなか帰れていないのを気にかけている。
階級は登場当初は大佐でアゲゾコ要塞派遣軍の参謀長を務めていたが、その後少将へ昇進に伴い本国へ栄転。
更に中将に昇進してアゲゾコ要塞派遣軍司令官として再度アゲゾコ要塞へ赴任した。

かなり体格の良い女性で、第二中隊の面々からトドやらセイウチ呼ばわりされているが、若い頃はかなりの美人。
若い頃はまだお嬢様口調が抜けきっておらず一々言い直していたが、現在は口調も態度も男性将校そのものになっている。そのせいで担当編集には当初男と思われていたとか。
重要な決断を下す際に「憲法と議会と皇帝陛下の名において」をつけるのが癖。

軍人としての指揮能力は疑いなく高く、その上政治的な駆け引きや占領地での民生分野への配慮も怠りない等硬軟両面を使い分けられる優秀な将官。
また目下の者へも細かな配慮を欠かさない人格者でもあり、周囲からの信頼も厚いが公私の別には厳格。*18
友軍である大公国軍についてはさほど期待しておらず、その防諜についてはザル以下と切って捨てている。
ただ兵站軍に限っては高く評価しており、キリールとマルチナに帝国の勲章を与えている程。


マルチナとはイグナチェフ少将の告発に関する件で知り合い、以降「良い将校の条件」として助言を与えたりする等個人的に信頼する様子を見せている。*19
戦争の実態およびその行方についてはかなり醒めた視点を持っており、マルチナが黒死病連隊が引き起こした戦争犯罪についての話を持ち込んでも、戦争である以上あり得る事であり、その手の自体が発生しないきれいな戦争など存在しないと諭している。
もちろんそういった犯罪行為を許容している訳ではなく、軍人としてはそのような事態が出来るだけ起こらない様抑えられている内に勝って戦争を終わらせる事以外出来る事は無いと割り切っているという事である。




【共和国軍人】

◆デュラン

「ひとんちの事情、ほっといてんか」

共和国軍中佐。
父親が共和国の商務大臣を努める裕福な家柄である事から、第二中隊の身代金請求作戦の第二候補として目を付けられる。
抵抗運動組織を通じた交渉の結果、無事捕虜交換が成立するが、その後交渉をうやむやにしたい共和国側が攻勢を掛けた際に、攻勢の指揮官に自殺を仄めかして攻勢を停止させた。
実はSF愛好家でもあり、特にキリールの作品のファンである事が判明。攻勢を仕掛けた事の詫びついでにキリールのサインをねだった。

後日、鹵獲兵器の予備部品調達を目的に第二中隊が自称中立国を作った際、共和国側の窓口として再登場。
買収を兼ねて貴重なSF雑誌をキリールに渡し、SF談義に耽っていた。
その後自称中立国が帝国軍の攻勢で壊滅した際に戦死。
キリールは酒浸りになりながら貴重な同志の死を悼んだ。



◆エミーネ

「一般市民など存在しない、いるのは敵か味方さ」

共和国軍中尉。
本国の情報部からアゲゾコ市内の抵抗運動組織へ派遣されてきた女性工作員。
共和国に協力しないものは敵という苛烈な考えを持っており、治安の悪化による大公国軍の負担増を狙い、アゲゾコ市民も巻き込む大規模なテロを立案。
"監督"からは反発されるものの支援先の切り替えをチラつかせて作戦実行に同意させる。



【共和国人】

◆監督

「テロリストとちゃうよ、て・い・こ・う・う・ん・ど・う」

本名は不明。元々は学校の校長だったらしいが、開戦後はアゲゾコ市を占領する大公国・帝国軍への抵抗運動を組織し、みずから暗殺などもこなすようになった。
いつもハンチング帽を被っており、一見すると背の低い冴えない男のように見えるが銃の腕前は確かで、大公国軍人や大公国軍への協力者またはアゲゾコ市の一般市民へ危害を加える者には容赦がない。
抵抗運動の指導者の一人だが、占領軍に打撃を与えられるのであれば何でも良いとは考えておらず、民間人への被害が出たりするような事は嫌っている。その為エミーネ中尉とは反発し、ついには彼女を謀殺する事になった。

抵抗運動組織のリーダー達の中では慎重派として振舞っており、無謀な作戦に反対したりスィナンが裏切っている可能性について警戒している場面もある。
開戦当初にアゲゾコ住民を見捨てて撤退した共和国本国を信用しておらず、「本国の言う通りにしていたら勝てるものも勝てない」と漏らす事も。

相当な映画好きで、一々映画のセリフを引用したり、襲撃の際にも映画の一場面を再現したがったりする。
相手がノッてくれず映画のセリフの通りに返してくれない際には「セリフが違う!」とのたまい、挙句「映画見てアタマようなれや!」と毒突く程。
ちなみに戦争映画と特撮映画が特にお気に入りのようで、ドプチンスキイと会った際には状況を忘れてサインをねだったり逸話の真偽を問いかけたりしていた。



◆ユースフ

「軍隊嫌いや」

アゲゾコ市に勢力を持つアッバス商会の若頭子飼いの部下で、少年ながら凄腕の暗殺者だった。
ある一件での不始末によって若頭に見捨てられた所をスィナンに拾われ、以降、持ち前の射撃技術を活かして数々の暗殺を行っていた。



◆メルテム

「こういうのちゃんとしておかへんと落ち着かなくて…」

元はアゲゾコ市内に住んで師範学校に通う学生だったが戦争で学校が閉鎖されたため、実家のあるミエシュコ村へ戻っていた民間人。
ふとした事でマルチナと知り合い、学校へ戻る事を望んでいたが、「羊飼い作戦」の一環で村を訪れた黒死病連隊のもてなしを強要された際に親を殺され、思わず銃を抜いたところを射殺された。





追記・修正は兵站軍アニヲタWiki取扱規定で指定されている書式に則って作成した申請書を管理第二中隊に提出し、認可を得てから行って下さい。



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最終更新:2025年05月06日 22:04

*1 作中の地図では現実における東ヨーロッパ〜黒海の周辺に近いそれ

*2 ただしポーランドがドイツorプロイセンを吸収した形になっている様子

*3 ただし地図を見る限りでは前身であるオスマン帝国の版図に近い

*4 大公国はキリル文字、帝国はラテン文字、共和国はアラビア文字に似た文字

*5 モスクワのロシア語読み。キリル文字表記ではМОСКВА。

*6 現実で言えばウクライナの南部、クリミア半島〜オデッサにかけての沿岸部に相当する

*7 クラクフ。17世紀に現在のワルシャワに遷都するまでのポーランドの古都。

*8 大公国曰く独裁者

*9 ツァーリグラード。オスマン帝国時代までのトルコの古都であるイスタンブールの、ロシアをはじめとした東欧圏における呼称。

*10 実際に物資を運んでいくのは輸送部の担当

*11 実際には放送作家が作ったネタを読み上げているだけ

*12 野良猫アーネチカの一発やってケ

*13 その直後に本国で革命が起きた為に異動の事は有耶無耶になった

*14 「沢山の字って眠くなりますよね」とのたまう程

*15 試しに発言してみた所、発言を聞いた共和国人が思わず目を剥き、通訳をさせられたボイコから叩かれた

*16 とはいえやり過ぎたのか、抵抗運動組織の一部ではスィナンの行動を怪しむ人物も出始めている

*17 彼女曰く「歴史の話ばっかり」、ちなみにディーマは何が悪かったのかも解ってない

*18 執事の息子が従軍する際に身内びいきを避ける為に介入しなかったが、その息子が行方不明になった事を聞いて安全な部隊に置くべきだったと後悔する場面がある

*19 同時に「安易に頼るな」と警告もしている