アカエイ

登録日:2025/07/12 Sat 23:28:00
更新日:2025/07/30 Wed 20:07:34NEW!
所要時間:約 5 分で読めます




アカエイは、軟骨魚綱エイ区トビエイ目アカエイ科に属するエイの総称、及びその中の1種であるHemitrygon akajeiの標準和名である。
本項目では、種アカエイを中心に近縁種についても解説する。

目次

【名称】

前述の通り、学名はHemitrygon akajei。
属名は「半分のエイ」という意味で、詳細は後述する。種小名は和名のアカエイをそのままラテン語に転写したものである。

漢字表記は赤鱏または赤鱝。鱏の字の旁は「深い」という意味があり、本来は長江の深場に棲むハシナガチョウザメを意味していたが、日本に伝来した際に底魚であるエイを意味するようになった。鱝の字の旁は「大きい」という意味があり、後述する伝承に由来するという説、或いは「噴」の意味で、背面の1対の噴水孔から水を噴き出す様子に由来するという説もある。
中国語では魚偏に工と書いてエイを意味する。工は孔の代字で5対の鰓裂や前述の噴水孔など「孔が多い魚」という意味であるとされる。他にも鯆・鰩・紅魚・飛鷂魚などもエイを意味する。

地方名としてアカエ(関西)、エブタ(和歌山県)、アカマンタ(沖縄県)、アカヨ、ホンエイ、オレンジエイなどがあり、単にエイという場合も本種を指すことが多い。なお、エイの語源は判然としていないが有力なものとして、尾が細長い様子を燕に例えた燕尾の変化、アイヌ語の「矢、矢に刺された痛み」を意味するアイの変化、稲穂の包葉の穎(えい)のように薄べったい魚、などの説がある。

英名はRed Stingray。Stingrayはアカエイ科全般を意味して、「刺すエイ」という意味である。

【形態】

全長(吻端から尾の先端まで)は120cmほどで、ごく稀に200cm近くに達する個体もいる。
体盤(胴体と胸鰭が一体化したエイの本体)は正方形に近い菱形で、僅かに吻が尖る。幅は成魚で45〜60㎝ほどだが、90㎝を超えるものがいる。
尾は鞭状で、長さは体盤幅より僅かに短い。後述する毒棘の前方にも、小棘が1列並ぶ。
背面は名前の通り赤褐色をしており、眼と噴水孔の近くは山吹色。
腹面は基本的に白いが、鰭や尾などの辺縁部が黄色からオレンジ色になる。この特徴は近縁種との識別にも有効である。

【生態】

日本国内では、北海道から本州、四国、九州各地の沿岸と伊豆・小笠原諸島と広く分布しているが、琉球列島には産しないとされる。国外では朝鮮半島から東シナ海や南シナ海、台湾やタイランド湾(シャム湾)などから報告がある。

砂泥底の魚であり、潮干狩り場や海水浴場といった水深1m以下の非常に浅い場所でもよく見られる普通種だが、時には水深800m近い深海の底引網にも掛かる。夏から秋にかけては河口などの汽水域に侵入することもあり、一時的には淡水域まで遡ることもある。

昼間は砂底に浅く潜り、目と噴水孔、尾だけを砂の上に出す。泳ぐ時には左右の胸ひれを波打たせ、海底近くを羽ばたくように泳ぐ。

食性は肉食性で、貝類、頭足類、多毛類、甲殻類、魚類を食べる。
アサリなどの漁場では、食害を引き起こすこともある。

繁殖生態は多くの軟骨魚類に見られる卵胎生で、メスは交尾後に体内で卵を孵化させ、春から夏にかけて浅海で5〜10匹の稚魚を出産する。稚魚は体盤長が10㎝ほどで、背面も腹面も一様に淡褐色だが、体型そのものはは親と同じである。

天敵はサメ類で、特にシュモクザメが天敵。毒棘もシュモクザメには通用しないようで、T字状の頭で押さえつけられ、殴打されて食べられてしまうという。

【毒性】

英名「スティングレイ」の「sting(毒針を刺す)ray(エイ)」たる所以である。
の棘があり、触れたりして刺激を受けるとのように尻尾を振い棘を突き刺す。
毒はタンパク質性で、細胞を破壊する作用があり、刺されるとハンマーの尖った部分で殴られるような激痛や腫れ、炎症に襲われ、吐き気やけいれん、発熱を引き起こし、重篤化すると血圧低下や呼吸困難を起こし最悪の場合はに至る。特にアレルギー体質の人はアナフィラキシーショックを起こす危険性もある。
2006年にはオーストラリアで「クロコダイル・ハンター」の異名で知られていたオーストラリアの環境保護活動家スティーブ・アーウィンがドキュメンタリー番組の収録中にこのエイに胸を刺されたことで亡くなっている。他にも2016年にシンガポールの閉館した水族館で飼育員が刺されて亡くなっている。

先述したように春から夏にかけては浅瀬の砂底に潜っていることが多いため気づかずに刺される事故が起こりやすい。生体が死んでも毒は消えないので、見かけても絶対に棘に触らないように。
棘にはノコギリ状の返しがついているため無理に引き抜くと傷口が広がってしまう。

万が一刺された場合は傷口を清潔なガーゼなどで覆い、毒を吸い出すか絞り出し、患部を43℃程度のお湯に30分以上浸すと毒が失活して痛みが和らぐので、応急処置をしたら病院に行こう。

なお毒は同種には効かないらしく、仲間の棘が刺さったまま泳いでいることもある。

ちなみにエイ最大種であるマンタ(オニイトマキエイ)は毒棘が退化していて、刺される心配はない。その上性格はおとなしく、好奇心が旺盛で人懐っこいためダイバーの間では非常に高い人気を誇る。


【人間との関わり】

食用

棘の存在から釣り人からは嫌われ、漁業価値も高くはないが、身は脂肪が少なく繊維質が強いためエイの中では最も美味と言われ、刺身、湯引き、煮付け、煮こごりなどに利用される。エイヒレ(ヒレを干物や燻製にしたもの)も、酒のつまみとして人気がある。
捕まえた場合は刺されないよう真っ先に尻尾を切り落とすことがほとんど。

他の軟骨魚類にも見られる特徴だが時間が立つとアンモニア臭が発生するため、日本では酢味噌やショウガ、酒などを用いて臭みを消す料理が一般的である。
ガンギエイを海中で発酵させた韓国料理のホンオフェ(홍어회)はこの強烈なアンモニア臭によりかの有名なシュールストレミングに次いで世界で2番目に臭い食べ物と言われている。


飼育

沿岸性の大型魚であることから、水族館などでもよく飼育される。

その平べったい型や腹面の顔のような鼻の穴などから人気も高く、棘が発達していない稚魚はふれあい体験コーナーで触ることができたりする(棘は万が一のこともあるので抜いてある)。


俗語

美女の俗語として使われる。
理由は生殖器の外見が人間女性の其れに似ているから。
なお、アカエイの肛門は女のあそこより具合がいいらしい。


【関連キャラクター】

マンタ(オニイトマキエイ)・シビレエイモチーフのキャラクターは含まない。

神話

  • クンツゥカブ/コロトラングル(アイヌ神話)
  • 赤えい(日本妖怪)
  • フォルネウス(ソロモン72柱)

ウルトラシリーズ


仮面ライダーシリーズ

  • エイ怪人(仮面ライダーBlack(漫画))
  • スティングレイロード(「仮面ライダーアギト」)
  • 仮面ライダーライア/エビルダイバー/ジェノサイダー/ジェノサバイバー(「仮面ライダー龍騎」)
  • イッタンモメン(「仮面ライダー響鬼」)
  • 仮面ライダースティング/セレビースト(「KAMEN RIDER DRAGON KNIGHT」)

スーパー戦隊シリーズ


ゲーム

  • 堕天使フォルネウス/妖魔イソラ(「女神転生/ペルソナ」)
    • こちらも天敵のサメと合わせたモチーフになっている。
  • ジェット・スティングレン(「ロックマンX4」)
  • コルベット/スティングレイ(「FINAL FANTASY Ⅴ」)
  • レイギガース、さつじんえい、シャークマンタ*1(ドラゴンクエストシリーズ)

漫画

  • アカエイ(鉄人28号)
    • 電気を帯びており鉄人の操縦を狂わせる空飛ぶアカエイ。棘や毒は言及されていないし見た目もマンタ系だが皆アカエイと呼ぶので一応。ジャネル・ファイブのロボットだと思われていたが、後に不乱拳酒多飲博士の実験動物だったことが判明。さらに後に電気を帯びていないロボットのアカエイも不乱拳博士の秘密基地に実際いることが判明し…ああややこしい。


追記・修正は毒棘に刺されないようにお願いします。




この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2025年07月30日 20:07

*1 名前通りオニイトマキエイがモチーフだが、レイギガースやさつじんえいの色違いである関係で毒針が付いている。